流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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EX-10話 再び前へ。 〜抗戦の兆し〜

暴動事件が解決して3日後に至るまでの話をしよう。

病み上がりのまま裁判に挑むと聞いて不安だったが、大丈夫!と迷い無く意気込むミソラちゃんは、結果的に勝訴を獲得したそうだ。

今まで伏せられた悪業も、芸能関係者やスタッフ達に暴かれ反論の余地すら与えられず、事務所側から賠償金や解雇通知を提示された時は泣く泣く受けつけたらしい。

 

その後どうなったかは知る由もなく、ミソラちゃんの苦労が報われたと思えば、その苦痛は痛くも痒くもなかったが。

 

 

 

―――そして現在、展望台にて。

 

あかね「まさか、あの子から直々に特等席を譲ってくれるだなんてね」

水希「実際に来るのは初めてだけど、すごい人だかりだよね」

 

助けてくれたお礼にと三人分のチケットを受け取り、せっかくなら家族連れで観に行こうと思って、母と兄を誘った。

二人には、珍しいこともあるなと誂われるが満更でもなさそうで提案した甲斐があったものだ。

 

強い日差しの下。群衆から発せられる熱気に耐えつつ主役の登場を待ち構えていると、程なくして歓喜が湧き上がる。

 

ミソラ「みんなー! 今日も集まってくれてありがとー! ……それと、この前行うはずだったライブを中止にしちゃって、本当にごめんなさい。迷惑をかけてしまった分、時間いっぱい歌って盛り上げていくから、楽しんでねー!」

 

ミソラちゃんなりに誠意をもって謝罪した後、声援を贈るファン達に励まされながらギターを構えると、感謝の意を歌にして返す――アイドルとしての“響ミソラ”を取り戻そうと奮闘し始める。

 

〜♪ 〜♪

 

聴いていくうちに…日が浅いなりにだが、ファンの心が掴まれる理由が解ったかもしれない。

 

軽快で、歌詞一つ一つに活気が溢れていて、ミソラちゃん本人の心情が描かれる世界観にみんな惹き込まれていって……。

それらが人気となる要因なのだろう。と。

 

……ただ、色々と振り返ってみれば、商魂逞しそうな元マネージャーとは方向性と価値観が違い過ぎていて、芸能界に入って間もない頃からギャップを抱えたのなら逃げ出したくなるのも頷ける。

 

ミソラ「続いて新曲行っくよー!――ハートウェーブっ!!」

 

そうして一人考え耽っている間にも、ミソラちゃんは観客達の威勢に負けじと盛り上げていき、熱狂は一際強くヒートアップしていく。

 

――本当に、良かった。

ミソラちゃんも言ったようにライブを中止にされて怒ったかもしれないけれど、むしろ引退を聞いて悲しみつつも楽しんでくれたようだ。

 

だが時間はあっという間に過ぎていくもの。

ライブはいよいよ終盤に差し掛かるのだった。

 

ミソラ「これが、引退ライブ最後の曲となります。皆さん…聞いてください。

……『グッナイ、ママ』」

 

タイトルコールを済ませた直後。比較的落ち着いた前奏が会場を包み込み、それに伴い皆静まった。

 

 

 

あのね 気がついたの

私 一人じゃない ってね

寂しさはまだ 癒えないけど

泣いてばかりじゃ 笑うかもね

 

だけど 怖気づいて 

前に 進めなくなれば

涙 拭って 一歩ずつ行くよ

振り返らずに 未来へ

 

グッナイ、ママ。 愛しているよ

いつか逢う日を 祈らせて

グッバイはもう 伝わらずとも

天国(そら)に 届くと 信じてるから

 

 

 

揺るがない決意を母へ手向けた歌。

まだ序盤を歌いきったばかりなのに、胸を締めつけるような想いが込められて、中には涙ぐむ人もいただろう。

 

……隣で観賞していた兄のように。

 

スバル「兄ちゃん、目が…」

水希「え? ……あれ、おかしいな、なんで急に…」

 

初めて見る姿に一瞬呆けてしまうが、居ても立っても居られず背中を擦った。

 

スバル「兄ちゃん、大丈夫?」

水希「うん、ありがと。なんかさ、急に昔の事を思い出しちゃって。…はぁ、ダメだなぁ…大の男だってのに…」

あかね「ふふふ、やっぱおっきくなっても涙脆いわねぇ。み・ず・き・ちゃん?」

水希「うっせ、あとちゃん付けで呼ぶなっ」

 

肩を震わせながら誂う母を小声で諌め、すぐさま落ち着きを取り戻してステージを見やる。

 

水希「あの子の歌…凄いね。初めて、ライブに来たってのに……聴いているだけで、こんなにも心が温まるなんて…思いもしなかった…」

 

感極まったと述べたその後。トイレに行ってくると告げて途中退場したきり、兄は戻ってこなかった。

 

 

 

***

 

時刻は午後3時過ぎ。

公演も無事に終え、ファン達が各々帰っていくのを見送り、二人きりになる頃には日が傾き始めていた。

 

スバル「ミソラちゃん、本当にお疲れ様。今日のライブ凄く楽しかったよ。ありがとう」

ミソラ「こちらこそ! 来てくれてありがとね、スバル君。……そう言えば、お兄さん途中から見なくなったけど大丈夫なの?」

 

不安げに訊くミソラちゃんと同様に思う所は確かにあった。

強いて言えば…歌に感動した反面、一人きりになりたがっているようにも見えたが。あまりストレートに言っても不安を煽るのは分かりきったことだ。

 

スバル「大丈夫。特に体調を崩したわけじゃないし、多分…今は母さんがついてると思うよ、きっと」

ミソラ「……そっか。なら、心配ご無用ってわけだね」

 

そうなるね。と小声で返した。

 

スバル「それに兄ちゃん、君の歌を聴いて心が温まったみたいで気に入ってくれたんだ。だから――」

ミソラ「えぇ〜、スバル君はどうなのさ?」

 

自信持ってと言う前に訊かれちゃ困るんですがそれは……。

 

スバル「ぼ、僕だって気に入ったよ。なんたって、今まで知らなかったことを後悔するくらいだったし」

ミソラ「ふふっ、よろしい!」

 

不意打ちに慌てつつも正直に答えたからか。ミソラちゃんの機嫌は損なわれずに済んだが、打って変わって神妙な面持ちのまま手すりにもたれ掛かり、夕日の差す景色を眺めていた。

 

ミソラ「ママが溺れ死んだって……この前話したよね」

スバル「……うん」

ミソラ「当時のこと、まだ断片的に覚えてたの。『自殺にしては不自然な点がある』って言葉が妙に引っかかると思ったけど、裁判が終わったあとにママの上司だった人が謝りに来たの。

『君のお母さんが死んだ原因は私の采配ミスによるものだ』って聞いて、やっと納得できた。……できたんだけどさ。悲しいのにどこか安心してたんだよね。私」

スバル「ミソラちゃん……」

 

母の死が自ら望んだものとすれば、今みたいに立ち直ろうと奮起したとは思えない。

力になりたいと告げたあの時もあっさり断られてたかもしれないが、少なくとも自分の行いが間違ってないと信じたい。

 

信じたいのだが……傍らで啜り泣く声が聞こえて、あたふたしてしまうのだった。

 

スバル「だ、大丈夫…!?」

ミソラ「ごめん、情けない姿、見せて…。泣かないって決めてたのに、ぶり返しちゃった…」

 

どんなに虚勢を張ろうと、事実を受け容れるためには時間が要る。

僕だって…当時は泣き崩れてばかりで兄ちゃんに世話を焼かせたんだから、その気持ちは痛いほど分かる。

 

――“男だから泣くな”ってのはさ、自分の感情を殺すようなもんだと思うよ。だから――

 

スバル「情けなくない。辛いならちゃんと泣けば良い。無理に強がらなくても、時間がかかってでも前に進もうと思えるなら、良いんだよ」

 

泣く度にいつも掛けてくれた言葉が過り、気がつけばそっくりそのまま口にしていた。

 

ミソラ「うん……ありがとう、スバルくん……」

 

以前の自分を思うとありえないセリフを吐いたものだと自嘲しただろう。……けど今は、なんの恐れも後悔も感じなかった。

 

あるとすれば…本当の意味で救えたという実感と初めて友人を得た喜びに、心が満たされていった。

 

 

 

◆◆◆

 

〜2

 

 

眠りについてからそれほど時間は経ってないのに、瞼越しに光が漏れ、しばらくして目が冴えた。

 

スバル「……なんということでしょう……」

 

いつもなら見慣れた天井と壁を目にしますが、今居る場所は一面真っ白で敷いた布団すら無いではありませんか。

それに加え、普段着の赤い袖もチラッと見えて

 

スバル「………あれ? ロックも?」

 

お隣さんはぐーすか寝息を立てているではありませんか。

 

スバル「―――――フフフ」(ΦωΦ)

 

塾寝(うまい)する ロックの腹を コチョコチョと

くすぐってたら 頬抓られたぁ……!

 

ウォーロック「てんめ、この期に及んで地味な嫌がらせしてくれやがってよぉ? 悪いのはこの手か? この手か、おぉ?」

スバル「ひょめん、ひょめんなひゃいぃぃ……」

 

Oh No! 呆気なくカウンターを貰うとは不覚だ。

 

『うふふ……お二人とも、随分と睦み合っていらっしゃいますわね?』

 

何処からともなく女性の声が聴こえ、ようやく解放されたがロックはまだ怒りが収まってない様子。……はぁ、痛ってぇ。

 

ウォーロック「それ男女間で使う言葉だしイチャついてなんかねーっての! つかお前誰だよ、ここ何処だよ、教えろYO!」

スバル「落ち着けロック、血圧が上がるぞ」

ウォーロック「そりゃそうだろうな! ハマザキ初夏のボケ祭りのツッコミ対応に追われりゃあ必然的に血が上っちまうわなぁ!!」

『……此処は、アナタ方の意識の中。言い換えてしまえば夢の中でもありますわね……』

 

まさしくカオスとも言えるような状況だろうと、天の声は華麗にスルーなさるようで。そりゃそうなるわな。

 

スバル「夢の、中……?」

『えぇ。にわかには信じ難いでしょうけれど、まったくの嘘ではなくてよ?』

 

なら痛覚あるのは何故に?とツッコミを入れたい所存だが、偽りではないと吐露した途端、目の前から光の粒が集まり数秒待たずして天の声らしき者が形を成す。

だが全身がシルエットみたいに黒く覆われ、ハッキリとした姿は視認することが出来ないようだ。

 

『改めましてご機嫌よう。星河スバル。…そして我が同胞、ウォーロック…』

スバル「どうして僕の名前を…」

ウォーロック「俺まで知ってるなんて……何なんだよお前…」

『わたくしは彼等と同様。長きの間を渡ってアナタ方――地球人を見守ってきました。そしてこれからも。ずっとね……』

スバル「……何を言ってるの、この人……?」

 

状況が掴めないまま独りでに呟かれるため、ちんぷんかんぷんになる僕に対し、ロックはあからさまに青褪めて怯えているようにも見えた。

 

スバル「どうしたの?」

ウォーロック「……気をつけろスバル、コイツかなりヤバい。間違いなくリヴァイアよりも遥かに強ぇ周波数放ってやがる……」

スバル「え、……てことは、まさか敵?!」

『……ふ、ふふ、あっははは』

ウォーロック「な、何がそんなに可笑しいんだ?!」

 

ロックに続いて警戒心をむき出しにすると、予想に反して笑われてしまい呆気にとられる。

 

『いえ、失礼。やはりこの状況ですから、そう捉えてしまうのも無理ありませんわね。……ですが、あまりそう睨まないでくださいな。元よりアナタ方を攻撃する意思も理由もありません。ましてや今は封印された身ですもの……』

スバル「なら、どうして……」

『アナタ方はいずれ、大きな存在として名を轟かすと期待の元。今しがたお伝えしたいことがございまして、わたくし自らお招きした次第です。

現に、周りから見ても矮小(わいしょう)でしょうけれど、彼等のチカラを我が物とすれば……きっと、あの子達の負担が和らぐと信じておりますので……』

 

あの子達って、ひょっとして……。

 

ウォーロック「ちょ、ちょっと待て! そもそもテメーは何モンなんだ?! 彼等とかあの子とか、イチイチ言い方がまだるっこしいんだよ!! 誰なんだソイツらは!」

『申し訳ありませんが、わたくしの口からお答えすることは叶いません。急いては事をし損じますわよ、ウォーロック?』

ウォーロック「コンニャロ…っ!」

『……ではそろそろ、本題に移らねばなりません……』

 

話が進まないのもあってロックと同様に気が立っていたが、女性の柔和な雰囲気が一転して剣呑となり、思わず息を飲み込んでしまう。

 

『今後…ご自身の意志で戦うと望むのならば、ご忠告致します。

一つ。今のアナタ方は他の者よりも脆弱であります。優越に浸って自惚れてはなりません。

二つ。その身に降りかかる数多の試練を乗り越えなければ、まず間違いなく地球人の大半は滅びてしまうでしょう。

三つ。アナタ方の行動次第によって、関わりのある者の命運が左右されます。

今仰ったことを全て、胸の内に留めておいてください。いつか必ず、その真意を理解する日が訪れるでしょうから……』

スバル「――地球人、が……滅び、る……っ?!」

 

淡々と告げられて焦るなか睡魔に襲われ、気持ちを整理する時間すら与えられず視界が揺らいだ。

 

『……これにてお開きとさせて頂きます。

眠りから覚めるまでの間。アナタ方の勇姿を見届け、再び語らえる日を心待ちにしておりますわ……』

 

その言葉を最後に女性は消え去った。

 




うまいって単語を連想するとしたら「上手い(↓これ)」と「旨い(↓これ)」と「美味い(↓これ)」くらいしか思い当たらなかったというw

実質的に今回でミソラ編は完結となりますが、前回お伝えした通りもう一話挟みます。
出来栄えは70%程ですので、近い内に投稿致します!

ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます!
次回もどうぞお楽しみくださいませ!
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