流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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27話(中 i) 内なる声、打ち明ける。

ただそこで虚無感に苛まれて立ち尽くす彼。――ウォーロックを差し置いて、水希は二階にあるベランダから屋内へ戻っていった。

もちろん水希も、FM星人達と融和的な関係を結ぶ前に徹底抗戦へもつれ込んでしまったこと、先程のように拒否権すらない交換条件を言い渡したことを心底悔いていたのだ。

 

微かな希望を頼りに茨の道を選んだスバル。

孤立を恐れ…甘言に乗せられた、スバルの同級生。

今もなお、憑かれたまま生存不明となった元ブラザー。

敵でありながら自我を持ち、交戦した後は行方知れずの幼馴染み。

しかし、ただ一人。……スバルと同い歳の少女が、紆余曲折の末、味方についてくれたことがせめてもの救いだろう。

 

それでも、力に飲まれた後の苦しみを味わうのは、せめてリヴァイアと二人だけに留めておくべきだったのに……。

なりふり構ってられない状況を作りだした、己の無力さを憎むしか……。

――――それくらいしか、残されていなかった。

 

スバル「あ、おはよう兄ちゃん!」

 

不安が募って気分は沈みがちだったが、リビングの戸を開けた先――冷蔵庫の前にいる弟に迎えられ、かつての快活さを取り戻したかのような姿を見て、少しばかり笑顔がほころぶ。

 

水希「おはよ。やっと起きたか」

スバル「うん。でも今日は早いと思うよ、お茶を飲みに下りてきたばっかだけど」

 

口ぶりから察するに、既に冷蔵庫から麦茶ポットを取り出したらしい。

 

水希「…てことは、ずっと部屋にこもってたワケか」

スバル「そうなるね。……そうだ、ロック見なかった?」

水希「いや、見てないけど」

スバル「そっか…」

 

お茶を注ぐ途中…気落ちするように呟かれて、水希もつられるように苦笑してしまうが、ところがどっこい。

 

ウォーロック『――俺がどうかしたか?』

スバル「ウェッ!!? ……い、いつの間に?!」

 

いま一瞬、危うくポットを落としそうになり、それを目にした水希も軽く肝を冷やした。

 

ウォーロック『幸いにも近くに気配がねぇから、眠気覚ましにぶらついただけさ』

スバル「そうなんだ……」

 

スバルも言うようにウォーロックの登場はいきなりの事で、おまけに欠伸までかきながら、それらしい理由をつけて無理にでも納得させたようだ。

 

水希「ねぇ、スバル」

 

驚きに面食っているなか構わず声を掛けたのも、すぐに戻ると分かっていたからこそ。

水希は時刻を確認しつつ提案を促した。

 

水希「もうすぐ12時になるけど、ごはん食べる?」

スバル「うん、食べる。……あとさ、兄ちゃんに聞いて欲しいこと…あるんだよね」

水希「聞いて欲しいこと?」

スバル「うん……」

 

なんだか歯切れが悪そうに頷いて、そのままお茶を口に含んで飲み込もうとしたのだが、

 

水希「……恋バナ?」

スバル「ブ―――ッ!!」

 

その寸前で的外れな回答を聞き、たまらず吹きこぼしたではないか。

 

スバル「ゲッホ、ゲッホゲッホ……っ!」

水希「きったな、床までこぼしてんじゃんよ……」 

スバル「兄ちゃんが変なこと聞くからじゃんかよ! なんでそう解釈すんのさ?!」

水希「いやぁ最近、妙に表情豊かだし、案外満更でもなさそうだな〜と思ったからさ〜。ヘヘッ」

スバル「とりあえずニヤニヤすんな。ムカつく」

水希「はいは〜い。ノロケ話は後で聞いたげるから、ちゃんとお掃除済ませといてね〜♪」

スバル「だから違うっての!!」

 

その後。水希がルンルン気分で調理する傍ら、スバルは赤面してむくれながらも掃除に励んでおったとさ。

 

◆◆◆

 

水希side

 

昼ごはんを食べ終えた頃、スバルが体験した摩訶不思議な出来事を聞いておりました。

 

スバル「……ていう事があって、目が覚めたら何故かペンダントが光ってたんだ……」

水希「そうかそうか、それでスバルもとうとう恋に目覚め…」

スバル「殴るよ?」

水希「……ごめんちゃい」

 

きゃあ、暴力反対! マジな顔で腕上げないでー!

……と言うかどうしましょう。家庭内カースト(割と平和)と力関係が現在進行系で危ぶまれているじゃないですか、やだぁ〜…。

あぁ、()()()()()()()()誰が一番上かは……お察しの通りだと思います。

 

水希「でも変だね。アンタも同じように夢の中で遭遇するなんて」

スバル「え…?」

 

当然思いもしない発言に、スバルは目を見開いた。

 

スバル「その言い草じゃあ……兄ちゃんもなの?」

水希「そうだけど、アンタらと違って相手はペガサスだった」

ウォーロック『ペガサスだと……!?』

 

思いもしない発言に、ウォーロックも驚きを隠せない様子だ。

 

水希「3つの動物を模した人工衛星(サテライト)が打ち上げられてる事は知ってるでしょ。あれが開発された当初、ペガサスの他にレオ、ドラゴンが地球へやってきたの。『何もしなければ、この星はいずれ滅ぶ』と予言まで残してね……。

その後は各々が管理者を買って出て、今もずっと地球の電波環境をまかなってくれてるんだよ」

スバル「初めて知った……」

ウォーロック『まさかとは思ったがな……』

 

ずっとトランサーに潜んでいるから声しか聞こえないけど、スバルと二人して呆気にとられる姿が想像できるから苦笑してしまった。

 

水希「やっぱ複雑? リヴァイアに飽き足らず、地球(こっち)側に加担してる人が他にいると思うと」

ウォーロック『そりゃそうとしか言えねぇだろ。あれでもAM三賢者の肩書きを持ってんだぞ…? 実力だって確かなはずなのに』

スバル「……三賢者…?」

 

スバルは半分ほど理解が追いつかず首を傾げていたが、奴等のことは追々話す、とウォーロックがあらかじめ断ってから話を戻した。

 

ウォーロック『で、ペガサスは、お前らになんて言ったんだ』

水希「……話せる範囲ならだけど、『リヴァイアの内に潜み続けたチカラを開放しろ』って。でも開放には、かなりのリスクが伴うの」

ウォーロック『何…?』

水希「具体的に言うとね。僕自身が、そのチカラを十全に扱い、尚かつ反動に耐えきれるほどの器じゃなきゃ意味が無いってこと。器として相応(ふさわ)しくなければどうなるか……大体は予想がつくんじゃない?」

スバル「それって…暴走する、ってこと……?」

 

しばらく口を(つぐ)んでいたスバルだったが…か細い声で途切れ途切れに答え、僕は無言で頷く。

 

水希「前に一度だけ開放したけど、思った以上に負荷がデカすぎてさ。…そこから数年間、ずっと鍛え続けてタイミングを伺ってたの。

でもさすがに2回目となると、賭けに出るようなもんだと思う」

スバル「………っ」

 

ただでさえ苦々しい表情をするスバルの目が、涙を流さずとも悲哀に満ちていた。

 

スバル「なんで、そんな事を話したの…?」

水希「……情報として知った上で、戦う以前に逃げる……スバルにとって最善の選択を取って欲しいからだよ。

いくら無謀と言っても、()()()()()()がちゃんと務めを果たしてくれるから」

スバル「もういい、やめて……」

 

スバルはとうとう耐えきれず俯いてしまった。

心中察するに、宇宙へ行くと決意した頃の大吾さんと重ね合わせてしまったからだと思う。

僕自身…場慣れし過ぎて感覚が狂っているとはいえ、この落ち込みようも無理ないことだろう。

 

ウォーロック『……解らねぇな』

 

そう呟いた途端、ウォーロックは実体を現して訝しむように僕を睨んだ。

 

ウォーロック「お前、本当は一体何がしたいんだ?」

水希「……別に? なんも変わんないよ。目的も、過程も、信念もね……」

 

……そう。今も昔も、何も変わることはなかった。

 

今や不可能とされた計画を再興するため、一日でも早く大吾さん達を地球へ送還させるという“目的”も。

選定の日に向けて、否が応でも戦力増強を試みるという“過程”も。

普通の人生を捨ててまで費やしてきた日々。取り返しのつかない過ちによって築かれた報われぬ半生を、自分にしかできない償いを以て清算したいという“信念”も。

 

何一つとして、変わるはずがなかったのだ……。

 

ここまで来て今更引き返せると思うか?

無論、答えはノーだ。

 

やり方が蛮行そのものだとしても、行く末が“無”となろうと、それが星河水希(ぼくじしん)の存在意義だと信じてやまなかったのだから……。

 

リヴァイア『……そろそろ、あかねさんが帰ってくる頃だ。続きはまた後にしようぜ』

水希「だね。……スバル、最後に言っておく」

スバル「……なに?」

 

椅子から立ち上がり、両手を胸に当ててスバルを見やる。

 

水希「私のことは嫌いでも、天地さんやサテラポリスの人たちは嫌いにならない――どぅえェッッ!?!?」

 

が、しかし……ものの見事に左フックを食らい、そのままぶっ倒れてしまうのだった。

 

スバル「今更…嫌うわけないじゃん、バカ……

 

スバルは泣きそうな声で、恋仲となった人にデレて内心フラれたくないと嘆くヒロインみたいに囁くが。

言動とのギャップを大いに感じた直後、足音が近づいてきた。

 

あかね「ただいま……? 何よこれ……」

スバル「おかえり、母さん」

水希「お姉ちゃん、おかえり……」

あかね「いや、だから、何なのよこの状況……」

 

元気のないスバルの声とヨボヨボな僕の声を聞いて、姉はますます困惑する。

 

水希「いやぁね? ちょっとした、兄弟喧嘩ってやつですよ……うん…」

あかね「ちょっとした喧嘩でこうなる? て言うかアンタ死にかけてるじゃない」

 

帰ってきて早々状況が飲み込めないのはわかるが、確かに死にそうだけども、そこは指摘しないでくれよ……。

 

水希「……それよりもさ、お姉ちゃんに確認したいことがあって」

あかね「何よ、急に?」

 

一旦起き上がってから説明に入った。

 

水希「スバルが預かってるペンダント……大吾さんのことだから、ただのアクセサリーじゃないとは思うけど、特殊な細工がされてるとかなんとか、知らない?」

あかね「知らないわよ。第一、主婦の私に聞くコトなの? ……あぁでも、たしか若い頃から身につけてたわね」

スバル「その話なら、さっき兄ちゃんから聞いたよ」

あかね「そう? ならいいんだけど」

 

目が覚めたらペンダントが光ったらしくてさ〜、とか言おうとしたけど信じて貰えそうにないから、あえて黙ったのは内緒だ。

 

スバル「ところで、母さん、今までどこに行ってたの?」

あかね「……学校よ。新しく担任になった先生からスバルの様子を聞きたいって。ご挨拶も兼ねて行ってきたの」

スバル「………」

 

学校というワードを聞いて押し黙るスバルに引き下がることなく、続けた。

 

あかね「母さん、先生とは初めてお話ししたけど、とても感じのいい人だったし、スバルもきっと…好きになると思ったの」

 

少し気まずそうに打ち明けたものの、スバルは視線を反らしながら俯いていた。

未だ人と触れ合うことに躊躇いがあるのは仕方ないが、その様子に姉は溜息を漏らしつつも息子の頭を撫でながら諭そうとした。

 

あかね「今更無理を言うつもりはないけどね、スバル。変わりたいと思うなら学校に行ってみればいいのよ。

たとえ辛くても、私と水希がいるんだし、ミソラちゃんや天地くんだって……。

アンタは、一人じゃないんだから。ね…?」

スバル「かあさん……」

 

気恥ずかしそうに照れながらも、スバルは抵抗を見せず…むしろ甘んじて受け入れてる様子だった。

 

あかね「ペンダントのことは天地くんにでも聞いてみたら? 父さんとは古くからの付き合いだし、そういった分野に詳しいだろうから」

スバル「じゃあ、そうしてみる」

水希「スバル、一緒に付いてってもいい?」

スバル「いいよ」

 

話がまとまったと思われたが、その前に…と、まだ何かあるようだった。

 

あかね「スバル、水希と少し話があるから外で待ってて頂戴?」

スバル「……? うん、わかった…」

 

何で?と言いたげにしていたが、大人しく玄関へと向かう。

戸の閉まる音が聞こえた所で、姉はようやく口を開いた。

 

あかね「一応訊いとくけど、あのペンダントが何なのか……判っててスバルを騙したんじゃないわよね?」

水希「んなワケないでしょ……」

 

そんなに睨まれても、見当違いも甚だしいから堪ったもんじゃない。

 

水希「いくら当事者だからって、大吾さんは教えてくれなかったから詳しくないの。

それに乗船してから任されたのは、ほとんど雑用と掃除だけだったし…」

あかね「そんなかに物騒なモンが混ざってるのは気のせいかしらねぇ…」

水希「否定はしない。でもまぁ、変に知ったかぶるよりマシじゃね?」

あかね「……それもそうか」

水希「要件はもういい?」

 

何時までも待たせては気の毒だからと伝え、姉も頷いた。

 

あかね「行ってらっしゃ〜い」

水希「うい〜」

 

互いに気の抜けた挨拶を交わし、スバルに続いて家を出た。




皆様、お久しぶりでございます。
以前はニートライフを謳歌しておりましたが、8月中旬よりパートスタッフとして業務に追われておりました。
……が、合間を縫って編集、投稿する分には問題ありませんでした。
(投稿ペースが変わるわけではないですけどね(汗))


【中編 ii】を書いてから後編を出す予定ですので、次回の更新をお待ち下さいませ。
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