流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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27話(後) 侵入者

(ここが、スバルが通っていた小学校か……)

 

昇降口をくぐり抜けた先で三人が待っていたにも関わらず、初めて訪れるのもあってあちこち視線を投げていた。

トロフィーと表彰楯が飾られるのは分かるけど……三人の背後に佇む博士帽をかぶった銅像やKODAMAと大きく書かれたカーペットがよう目立つ。

 

水希「校内は初めて見たけど、結構綺麗だね」

スバル「確かに、前と雰囲気が変わってる気がするけど……」

 

久々に母校へ来たはずのスバルも僕と同様に周りを見回しながら言うと、白金さんが率直に問いかけてきた。

 

ルナ「どう? 3年ぶりの学校は」

スバル「どうって…、さっき兄ちゃんにも話したけど雰囲気が変わったなぁとしか……」

ゴン太「最近改装したんだぜ。なんでも、校長先生の意向とかでよ」

「お〜い、なにやってるんだお前ら〜」

 

ゴン太くんの話を遮ってまで皆に呼びかけた、白衣を着た先生らしき男性がこちらに近づく。

それぞれ中身が違う2本のフラスコを首に下げ、髪から顎髭に至るまで実験に失敗したかと思わすボンバーヘアが何とも特徴的である。

 

キザマロ「先生、こんにちは!」

「おう、昨日ぶりだなキザマロ。……で、お前ら何で学校にいるんだ? 今日は祝日だろ?」

キザマロ「それがですね……」

 

キザマロくんが僕ら2人に視線をやるが厳密にはスバルに対して向けられており、先生も気がついて近づくのだが……スバルは即座に僕の後ろに隠れたようだ。

それも人を盾みたく扱うようにな。

 

水希「ちょっとスバル、失礼でしょ……」

スバル「だって……」

「はは、構わないよ」

 

何も気にすることは無いと言って、先生はスバルと目線を合わそうと膝をつき自己紹介をしてくれた。

 

「初めましてスバルくん。私は育田(いくた)道徳(みちのり)。ここにいる委員長達も含めて、君の担任を受け持っているんだ。よろしくな!」

スバル「ど、どうも……」

育田「君の事はお母さんから聞いているよ。なんでも星を眺めるのが好きなんだってな?」

スバル「は、はい……。いつも学校裏にある展望台の上で見ているんです………」

育田「確かに、あそこなら見晴らしも良いからな。ところで君は……スバルくんのお兄さんなのかい?」

 

急に話を振られてしまえば返答せざるを得まい。

 

水希「初めまして、星河水希と申します。厳密にはスバルとは叔父と甥といった関係なんです」

育田「なるほど。思い出したよ、確かにスバルくんのお母さんから弟が面倒見てくれていると聞いてね。

……いやぁでも、こうして並んでると兄弟にしか見えないな」

水希「よくそう言われて驚かれてます。僕もここに来る前、姉から先生のことについてお聞きしたんです。人当たりが良くてとても話しやすい方だと」

育田「そう思っていただけて光栄だよ。それで、どうしてうちの学校に?」

ルナ「私からお誘いしたんですわ、先生」

 

ここぞとばかりに自己主張する白金さんである。

 

ルナ「今度やる劇のセットを見てもらいたいと頼んだら、星河くんが来る気になってくれたんです!」

スバル「あのさぁ……さっきから水差すようで悪いけどさ、僕一言も行きたいなんて言ってないからね!? ()()ッ!!」

 

事実3割、虚偽7割の説明をする白金さんに対し、スバルも黙ってられなかった様子。

 

ルナ「あら心外ねぇ、でもなんだかんだで付いてきてくれてるじゃない? 本当はアナタも満更じゃないんでしょう?」

スバル「うぐっ、元はと言えば兄ちゃんが行くって聞かないから! ……そこぉ、口笛吹くなッ!!」

水希「なっハァッ……!?」

 

何でだろう。不穏なSEが突然脳内に流れて、その上タイキック〜♪ と幻聴さえも聞こえたんだけど……。

そして予告通りに制裁されて奇声上げちまったんやけど……。

挙げ句、体勢を崩してしまい目の前にいた先生に支えてもらう羽目になってしまったという。

 

水希「すみません、スバルは嫌がってましたけど僕自身興味があってここへ来たもので……」

育田「……どうりで。とすると委員長も半ば()()()連れてきたということか」

ルナ「そ、そんなことありませんわ先生! 私はただ、星河くんのためを思って……」

 

ウォーロック (嘘だろ…)

リヴァイア (嘘くせぇ…)

ゴン太 (嘘だな)

キザマロ (嘘ですね)

水希 (嘘だよね…?)

スバル (嘘だッ!!!)

 

先生に図星を突かれながらも言い繕っている時点でボロが出てるようなもんだよ、白金さん。

……それに多分、白金さん以外全員考えてることは一緒だろうし、スバルもスバルで不意にキャラ変わる某少女並にキレてる気がしなくもないんだけど……。

 

育田「事情は分かった。委員長の気持ちも分からなくないが、別に無理をしてでも来ることはないと思うんだ」

ルナ「いいんですか? 教師である貴方がそんなこと言って」

育田「百も承知さ。確かに学校でしか学べないこともあるけど、それを理由に強制させてもスバルくんは喜ぶと思うのかい?」

ルナ「それは……」

 

先生に諭されて、何も言い返せずに口を噤んでしまう。

 

育田「スバルくん。すぐに決められることじゃないが、君が本当に行きたいと思うのなら我々は安心して通えるように迎え入れるつもりだ。今はまだ考える時間がいるが、答えが出たらいつでも連絡してくれ」

スバル「……は、はい……」

 

先生はそう言い残して、職員室へと戻った。

 

話を聞けば聞くほど、本当はお姉ちゃんと同じ心境なんだと理解した。

その証拠に、スバルの意思を汲み取った上で猶予を与えた。選ぶのは君次第だと前置きを残して。

 

お姉ちゃんとの会話を思い出し、いかに生徒思いな人物なのかがよくわかった。

 

ルナ「チッ。あともう少しだってのに…

スバル「いまなんか言った?」

ルナ「別に。……とにかく、先生の話も一理あるけど、あなたはちゃんと学校に来た方がいいと思うの。私としても、クラスメイトが全員揃わないなんて居心地が良いと思えないわ……」

 

 

◆◆◆

 

 

体育館に入った途端、準備が整うまで待ってほしいと指示する白金さんに従い、ステージの手前で背を向けて待つこと数分。

 

ルナ「良いわよ。上がって」

 

僕とスバルは階段を伝ってステージに上がる……のだが、

 

スバル「……なに、これ……」

ルナ「……? なにって、見ての通り劇に使うセットじゃない」

 

上がって早々絶句するスバルに首を傾げて、訝しげに返す。

 

ルナ「どうしたのよ…何か問題でも?」

スバル「い、いや、何でもない……」

 

まぁね、あんまり大きな声で言えないけど問題しかないのよ。

 

スバルの態度から見て取れるように不穏になっちゃうのも無理ないと思う。

ステージに置かれてある小道具に既視感しかないのだって、三人は知らないだけで当事者がここに二人もいるんだからね……。

僕もスバルにつられて焦っているが顔に出さないよう気張っておりました。

 

水希「ちなみに、何をテーマに劇を作ってるの…?」

ルナ「それはですね、ズバリ!――」

 

白金さんは良くぞ聞いてくれましたと言いたげに目を輝かせているが、なぜか勿体ぶらして返事待ちの様子。

 

水希「……ズバリ?」

ルナ「『ロックマン&水使いvs牛男』ですわ!」

水希「水使い、ね……」

ルナ「えぇ、忘れもしませんわ! 二度に渡ってピンチの時に駆けつけてくれたロックマン様を陰から支える、いいえ! あの方はもはや水神様と言い表すべきですわ!!」

水希「す、水神……?!」

リヴァイア『……いっつも悪魔とか畏れられてたが、まさか神と崇められるなんてな、俺たち……』

 

ほんとねぇ。彼女の説明でようやく納得したわ。

 

要するに、劇の内容はオックスに巻き込まれた事件に基づいていて、その時救出された感動とヒーローが実在することを知ってもらいたい、と言ったところだろう。

他に気になる点があるとすれば、ヒーロー役二人の衣装のみ気合が込められているくらいか。

 

腰に巻き付けてあった布も再現するとは、洞察力凄まじいね。

 

ゴン太「なんと言っても驚きなのは2回目のアマケンの時なんだぜ!」

キザマロ「そうですそうです! ロックマンが敵にやられそうになるタイミングで水使いさんが現れて……」

ルナ「水神様よ、キザマロ。でも本当、遠くからしか見えなかったけれど、あれは間違いなく変身しているようだったわ」

水希「へぇ…そうなの……」

 

そうかあの時か……君達もいたのねアマケンに。

 

不意にメールの通知音が鳴る。

 

スバル『兄ちゃん、アマケンの話に関しては本当にごめん…。あの時無理矢理ついて来られて』

水希『そう気に病むな、弟よ。遠くで見てたんだから絶対身バレしてないって』

スバル『だと良いけど……』

 

盛り上がっている三人を他所にメールでやりとりしている最中だった。

 

リヴァイア『水希! 上!!』

水希「!? ――危ないっ!!」

 

慌ただしくなるのには理由がある。

頭上を見てすぐスバルの肩を掴み、後ろへ飛び退いたのと同時に照明が落下してきたからだ。

落ちた衝撃で散乱した破片が当たらないよう覆い被さるようにして庇った。

 

水希「――スバル、怪我は!?」

スバル「大丈夫。兄ちゃんは?」

水希「ぜんぜん平気。……そうだ皆は!?」

ルナ「私たちも無事ですわ…!」

 

近くにいた三人へと視線を投げたが、幸いにも落ちた場所から離れていると知って軽く息をつく。

 

それにしてもなんで……?

 

不審に感じたので再度見上げたところ、ウェーブロード上にいる輩がこの惨状を嗤いながら見下ろしていた。

 

水希「あの野郎…!」

 

用は済んだとばかりに去ろうとする奴を犯人と見做し、後を追おうとステージから降りる。

 

水希「いいスバル? 三人と一緒に行動して安全そうな場所に避難して!」

スバル「兄ちゃんはどうするの?」

水希「先生を呼んでくる。みんなも早く体育館から出て!」

キザマロ「ちょ、ちょっと…!」

 

急かすように促し、一足先に体育館を出た。

 

ゴン太「……お前の兄ちゃん、足速いな」

スバル「うん。それに、あんなに怒った顔見るの、初めてかも」

ゴン太「そうなのか…?」

 

 

ルナ「あの人、やっぱり……」

 

 

 

◆◆◆

 

体育館から出て生身のまま周波数帯を変えウェーブロードに飛び移るが、玄関先まで移動し周囲を見回しても姿が見えない。……というより、あえて姿を眩ませているだけだと確信を持てる。

 

たった今、背後に回った敵が繰り出すパンチを魔法陣によって防いだからだ。

 

「……何!」

水希「ごめんごめん。殺るからにはちゃんと変身しとかなきゃダメだもんね?」

 

動揺する敵、――スバルを殺そうとしたジャミンガーに蔑むような言葉を投げて臨戦態勢に入り、間髪いれずハイドロウィップで胴体を縛りつける。

 

ジャミンガー「……しまっ、―――うぶッ!!」

水希「……だっさ」

 

そのまま真上へ放り投げ容赦なく振り下ろせば、運悪く地面ならぬウェーブロードとキスしたようで。あまりの無様さに思わずほくそ笑んでしまう。

 

水希「何処の差し金かは予想がつくけどまさか弟を狙うとか、いい度胸してんのな」

ジャミンガー「ケッ、ロックマンが現れるかと思えば海原の悪魔が直々にお出ましとはな……!」

リヴァイア『やっぱ俺ら、あの二人に並んで有名人になったらしいな』

水希「名が売れるのはこの際どうだっていいよ…。ところでアンタ、なんでスバルを狙った?」

 

茶々を入れるリヴァイアはさておき単刀直入に聞くと、ジャミンガーはクツクツと笑いながら言う。

 

ジャミンガー「聞いて驚け。依頼主が言うにはお前らへの歓迎の挨拶ってやつさ。王に挑発をかましてくれた御礼にだとよ」

水希「挑発? ハッ、笑わせんなよ。品性に欠けたおもてなしにクレームを付けただけだろうが。人がせっかく丁寧に教えてあげてるのにほんっと器がちっさいんだね王サマってのは」

 

皮肉めいた発言を返せば、彼奴の嘲るような表情は厭悪へと変わる。

 

ジャミンガー「……テメェ、王に向かって不敬と知っての発言か?」

水希「どう言い直そうたって事実だからね」

ジャミンガー「バチ当たりな野郎だぜ……」

水希「なんとでも言えば? どのみち襲って来るならアンタもろとも消す。それだけだから」

ジャミンガー「……だったらその減らず口、叩けなくしてやらぁ!」

 

吠え猛るジャミンガーの周りをドス黒いオーラがまとわりつくと、ひょろ長な図体がみるみると大きくゴツくなるほど変わり果て、その腕力をもって拘束をぶち破った。

恐らくはその余波だろう、この空間の大気が震えているように感じる。

 

水希「リヴァイア。もし力を開放するとしてどのくらい持つの?」

リヴァイア「リスクを控えたくば、30秒。……やれるか?」

 

()()と似て心配性なリヴァイアに充分とだけ伝えた。

 

水希「ねぇ、思ったんだけどさぁ」

ジャミンガー「あぁ?」

水希「わざわざ子供を狙うんだから、そんなに殺られんのが怖いんだ?」

ジャミンガー「〜〜ッ、ほざけ!」

水希「遅い」

 

拳を振り下ろされるよりも先にジャミンガーの懐に潜り、ガラ空きな腹に掌底を浴びせ吹き飛ばす。

 

わざわざ遊んでやる義理はない。速攻で片付ける…!

 

水希「モードチェンジ【リンドヴルム】」




投稿から3年目になってようやく、リヴァイアが授かった力の正体が明らかになりましたよ。
今回は名前だけの登場ですが、今後も出番が増えるかも。(それよりもっとハイドロウィップさんの出演頻度増やさなきゃですがw)

次回も気長にお待ちくださいませ。
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