流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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28話 食い違い

「……お、どうやら始まったみたいだな」

 

同時刻。コダマタウンの展望台に一人の青年が双眼鏡を片手に立ち、付近にある校舎のウェーブロードを見ていた。

だが双眼鏡のレンズはサーモグラフィーと同規格のものに置き換えられており、見えた先にいる二体のシルエットのみが赤く反応し、様子からして戦闘中だと推察する。

 

『報告。レーダーから膨大なエネルギー波を検知。……解析結果ですが、二つのうち一つは星河水希とリヴァイアの二人から発せられたものと思われます』

 

事の詳細を伝える彼の声は、左腕につけているトランサーから発せられていた。

 

「もう一つは多分、ジャミンガーのようだな。見た目かなりゴツいけど……」

『はい。ですが実際の戦闘能力は彼らの方が優れている。それだけでも十分脅威に感じます』

「確かに、ジャミンガーに隙を与えない辺りちゃんと戦い慣れてるよな。 ……? あれって、翼か…?」

 

水希を相手にしている敵の予想も合致し、体格差をものともしない軽快な身の熟しを目の当たりにして青年は感心するのだが、突如訝しむように水希を注視すると彼も遅れてその異変に気づく。

 

『これは……かなりまずい状況にありますね』

「何かわかったのか?」

『えぇ。わたしの見解が間違っていなければですが、恐らく禁忌を破ろうとしたのでしょう。それも上の許可もなしに』

「マジかよ……。 聞いた話じゃ、おいそれと破れないもんなんだろ?」

『そのはずですが……いや、もしくは承知の上で実行したとしか……』

 

考えられませんと言うのを遮るように、ジャミンガーを倒す瞬間を二人は見逃さなかった。

 

『対象、沈黙。星河水希はウェーブアウトしたようです』

「みたいだな……それで、さっき言ってた禁忌を破ってからどのくらい経った?」

『20秒も経過していません。あの方の言う通りなら、力を使用する時間が長いほど負荷が増すものですから。今回は試し打ち程度に留めた、と言ったところかと』

 

彼の持論を聞いて、表情を険しくさせたまま双眼鏡を下ろす。

 

「試し打ちで敵を瞬殺か……お前から見て勝算はあるのか?」

『本来の彼らの実力は未知数。故に、今のわたし達ではまず勝機は薄い。ですが奇襲を仕掛けるか、本気を出される前から短期決戦に持ち込めば済む話です。 機動力なら彼らにも後れを取らないはずでしょう』

「ハハハ! 俺も随分と買われてるな! パートナーのお前にそう評価して貰えると尚更」

『無論、まだまだ課題点は多いですが』

「仰る通りです、はい」

 

用件も済んだところで二人は展望台を後にするが、

 

『わたしからすれば彼はまだ、殺すには惜しい存在だと思いますがね。散々使い潰しておいてこの仕打ちとは……上の意図は心底理解しかねます』

「まぁな……」

 

水希について思うところがある彼に同感し、青年は苦笑してしまうのだった。

 

◆◆◆

 

展望台での出来事から少し遡る。

 

水希がジャミンガーと交戦している一方で、スバル達四人は校内にある購買部へと避難して尚そこに留まっていた。

……というのも、体育館を出た直後。水希から事情を聞いて駆けつけた育田と鉢合わせ「勝手な行動はしないようにな」と鬼気迫る顔をして念押しされたからだ。

当然。一人を除けば、妙な真似はしないはずだが。

 

スバルが急にトイレに行きたいと言い出し、引き止める間もなく走り去る様子は三人からすれば呆れたものだったろう。

 

ルナ「……ゴン太、キザマロ、ちょっといいかしら?」

キザマロ「なんですか急に?」

ゴン太「どうしたんだよ、いきなり……」

 

二人はなんやかんや言いながらルナに視線を向ける。

 

ルナ「あの人は覚えてないと思うけど。……私、過去に会ったことがあるかもしれないの」

ゴン太「……あの人って……」

キザマロ「水希さん、ですか…?」

ルナ「そう。二年前、3年生の冬休みに誘拐事件に巻き込まれてね」

ゴン太「誘拐…?」

キザマロ「そんなことありましたっけ…?」

 

ルナの発言に対して理解が遅れるのは、生徒に不安を煽りすぎないためでもあり、また被害者であるルナの傷口を抉らないようにと教師等があらかじめ配慮していたからだ。

二人の様子からあまり知れ渡っていないと察して、続ける。

 

ルナ「私としても良い思い出じゃないから、墓まで持っていくつもりだったのよ」

キザマロ「じゃあ、どうして急に?」

ルナ「誘拐犯から私を助けてくれた人と水神様、ひょっとしたら水希さんがそれに当てはまるんじゃないかと思ってね」

ゴン太「……つまり、どういうことだよ委員長?」

ルナ「だ〜か〜らぁ! 水希さんが水神様かもしれないってことよ! まったくもう、少しは人の話をちゃんと聞きなさいよね!? アンタいっつも食べ物のことしか頭にないんだから!」

キザマロ「まぁまぁ落ち着いてくださいよ委員長…。 ゴン太くんだって悪気があるわけじゃあ……」

ルナ「悪気がない方が余計タチ悪いわよ!!」

キザマロ「否定はできませんけども……」

 

要点を掴めなかったゴン太にルナは怒鳴り散らし、キザマロが割って入って宥める始末であるが、一度咳払いをして話を戻そうとした。

 

ルナ「つまり、水希さんはロックマン様と接点があるかもしれないと思うのよ」

キザマロ「もしそうだとしても委員長、どうするおつもりで…?」

ルナ「うふふ、決まってるじゃない。ロックマン様にサインを書いて頂けないか聞いてみようと思うのよ!」

ゴン太「……なんというか……」

キザマロ「……委員長らしい、ですね……」

 

目を輝かせ、さも当然とばかりに愛しのロックマンへお近づきになろうと企てる傍ら、その場でズッコケそうになり呆れ果てる二人であった。

 

 

◆◆◆

 

その頃、スバルとウォーロックはというと……

 

スバル「ひとまず誤魔化したけど、どうすんのさ?」

ウォーロック『アイツらの加勢に決まってんだろ!』

スバル「言うと思った」

 

人目につきにくそうな男子トイレへ駆け込み、相方から変身を促されるところだったが、

 

「その必要はないよ、ウォーロック」

 

そう言った直後、閉まっていた個室のドアが開く。

出てきたのは水希だった。

 

スバル「兄ちゃん……ちゃんと流したの?」

水希「どう考えても違うよねさっきまで上で戦ってたんですけど!? 流石のアンタでも想像つくはずだよね! ねぇ!?」

スバル「ちょっと何言ってんのかわかんない」

水希「いや分かれよ?! ……ちゃんと使ってはないな、よし!」

リヴァイア『なんか誤解を生みそうな言い回しになってますぞ、水希さんよ……』

 

唐突にボケ散らかす水希(アホ)スバル(ポンコツ)の会話よ……。

兎にも角にも5分と経たずに戻ってきたということは、

 

ウォーロック『その様子じゃ、もう終わったのか?』

水希「まぁね。さっき仕留めたとこ」

ウォーロック『相変わらず仕事が早いことで……つーかそれよりもよぉ、さっき馬鹿デケぇ力を二つほど感じたんだが、ひょっとしなくてもお前か?』

水希「半分当たり。急に敵がパワーアップしてこられたから、こっちもそれなりにね」

ウォーロック『……目には目をってか?』

水希「そういうこと」

 

回りくどい会話の意味を何となく察したスバルは、動揺を隠せないまま水希に問い詰めた。

 

スバル「大丈夫なの兄ちゃん? 言ってたじゃん、前は負荷が大きかったって」

リヴァイア『そこら辺の(さじ)加減は考えてるさ。だから長くても30秒程度に留めたんだよ』

スバル「30秒? ……え、30秒?!」

リヴァイア『うん。30秒』

水希「何回同じこと言うねん……。んで、この後どうする? 早いとこアマケンに行かなきゃだし」

スバル「あぁ……どうしよう……」

リヴァイア『もういっそのことバックれたら良いんじゃね?』

ウォーロック『オレも賛成』

水希「それはダメ。まず不審がられるでしょうが……」

リヴァイア『冗談。で、やるべきことは』

水希「一つしかないっしょ」

 

……その後。

 

ルナ「あ、あの! 水希さんは……」

水希「あーあーなんかお腹痛いから病院行かなきゃなー(棒)」

ルナ「え…!?」

スバル「悪いけど失礼するね!」

ルナ「ちょ、ちょっと!!」

 

帰り際、サインくれくれ星人に足止めを食らうが上手いこと切り抜けて学校を後にする。

 

ルナ「う……ぐぬぅ……なんなのよぉ……!」

ゴン太「……大丈夫か委員長?」

キザマロ「今日はもう帰った方が――」

ルナ「うるっさーい! 絶対に、絶対に正体を暴いてやるんだからぁ!」

 

みすみすスバル達を見送り、チャンスを逃してしまう羽目になったせいか、苦悶に満ちた顔を浮かべていたが、ここで諦めきれるほど彼女は折れていない。と、長い付き合いであるゴン太とキザマロは再認識するのだった。

 

 

 

 

場所は移り、天地研究所。

水希達はロビーの受付に立ち寄る。

 

「あらこんにちは。いつも通り所長に御用ですか?」

 

何度も通い詰めているため受付嬢には顔を覚えられていたので、やや砕けた口調のまま出迎えられる。

 

水希「そんなとこですね。今回はスバルと一緒なんですよ」

「でしたらゲストパスを二枚お渡ししますね」

水希「いや、一枚でお願いします」

「? ……成程。では所在を確認しますので少々お待ちください」

 

天地から受け取った通行許可証を提示すると受付嬢も自ずと納得し、受話器を手に取る。

 

「萩山です。お客様が二名お越しになられましたが今どちらに……ええ、そうです。畏まりました、それでは失礼します」

 

思ったよりも手短に終わり、受話器を戻した。

 

「お待たせしました。所長は今、研究室におられます。お帰りの際もう一度こちらにいらして下さい」

水希「わかりました、ありがとうございます。それじゃ行こ」

スバル「……うん」

 

職員専用区画へと続くゲートに向かい、付属のパネルに許可証をかざして通り抜けてからエレベーターに乗り、水希は入って右奥の壁に背を預けたまま腕を組み、スバルは左奥の壁にもたれかかり俯いていた。

 

スバル「……いいよね、兄ちゃんは何でも持ってて……」

水希「どうした? また不機嫌そうにしちゃってさ」

 

目的の階まで上がる途中、スバルは羨ましがるように呟くが、二人きりで静まり返っていたせいか水希の耳にも届いた。

 

実際、ゲストパスを手渡した時もスバルが不貞腐れているのに気づいてはいた。わかった上で口に出すまで自然体を装っていたのだ。

 

スバル「だってさ、いつの間にそんなもの持ってると思わないじゃん。科学の話とか興味ない感じなのに」

水希「実験体として付き合わされてるし、良く言えば持ちつ持たれつの友ってやつよ。って言ってもほとんど大吾さん絡みの縁だけどね」

スバル「実験って…もしかして危ないやつじゃ!?」

水希「違う違う。バトルカードの性能を試すためにウイルスと戦って調整してんのよ」

スバル「あぁ、そっち……?」

 

水希の身に危険が及んでいるのかと心配するが、拍子抜けすぎてそれ以上は言う気も失せたらしい。

エレベーターの扉が開き、スバルは水希の後をついていく。

 

水希「なんなら自分から頼んでみたら? 天地さん優しいしすんなりOKしてくれるかもよ」

スバル「……なら、そうしてみようかな」

 

程なくして研究室に着き、ノックをすると扉越しから「どうぞ」と言われたので入る。

 

水希「来たよ、天地さん」

天地「やぁ、待ってたよ。それで、どのようなことを聞きに来たんだい?」

スバル「……これの事、なんだけど……」

 

スバルは大吾の形見であるペンダントを外す。そしてある日を境に光ったこととその原因が分からずじまいであると告げて差し出した。

受け取った天地も神妙な顔を浮かべつつ調査に取り掛かるのだった。

 

 

それから一時間後。

結果として分かったのは、このペンダント自体が小型の通信機で損傷はあれど機能し続け ており、また光った原因については身につけた状態でブラザーバンドを結ぶことを条件に通信機能が作動した。

以上を踏まえ、ごく稀にだが誰かと交信している可能性が見られるとのことだった。

 

そんな緻密なものを作り上げる大吾の力量には、天地はおろか聞いていた二人ですら息を呑むものだっただろう。

 

天地(仮に大吾先輩が生きてるとして、捜索の手がかりとなるために作ったのなら辻褄は合うはずなんだがな……)

 

スバル(父さんからのアクセスシグナルはロックが現れてから全く感知しなくなったけど、今日のはまた別なら、一体誰が……?)

 

水希(……なんか無性にドーナッツ食いたくなったわ……)

 

一人、間抜けな顔をしているが、三者三様に思案する様子が窺える。

 

スバル「ねぇ、天地さん、誰かと通信できるのは稀だって言ってたよね?」

天地「そうだけど……もしかして試すつもりなのかい?」

スバル「うん、相手が父さんかもしれないなら、やってみる価値はあるんじゃないかって思ったんだけど、どうすればいいかまでは……」

天地「単純だよ、通信環境の整ったところまで行けばいいだけ。せっかくここに来たんだ、あそこのロッカーの近くにある非常階段から屋上へ行けるから、そこで試してみるのもいいと思うよ」

スバル「分かった、ありがとう天地さん」

 

天地の提案のもと一人屋上に向かった直後、水希もまた沈黙を破るように口を開いた。

 

水希「……ひとつ聞きたいんだけど」

天地「何だい?」

水希「ここまでの流れから、大吾さんの意図は読み取れたの?」

天地「そうだねぇ…。言うなれば三賢者が地球に居座ることになったのもある種の保険でしかないのかもね、先輩の仕組んだ思惑通りなら」

水希「じゃあ、アクセスシグナルの送り主がもし大吾さんじゃないとしたら……」

天地「間違いなく今回は彼らの仕業としか思い当たらないね。さっきペンダントを解析して分かったが…スバル君に交信したのが複数人、それも同じタイミングで、位置的にサテライトから発信されたということになる。

だから……あの子には悪いけど、現時点では確実に大吾先輩とコンタクトが取れるわけじゃないんだよ……。可能性があるってだけでね」

水希「……だから、あえて誰かと繋がってるって話したわけ……」

 

天地はそれ以上は何も返さなかった。

 

水希(……どうせアンタのことだからペンダントやビジライザーが見つかったのは偶然にしろ、いずれ僕の隣にスバルも立つと見越していた。そのつもりで僕を地球に帰そうとしたんでしょ? 大吾さん……)

 

天地「それはそうと気がかりなのは君の方だ。困るんだよ、そう易々と()()()()()()()()()()()

水希「……なんで分かったの?」

 

全て見透かされているような発言に顔を顰め、誤魔化さずに訊ねた。

 

天地「悪いね。名前は明かさないけど、いつどこでも君を監視できる人から情報を得ているんだよ。……で、話を戻すが使っただろリンドヴルムを。

再三注意したはずだよね? 万が一の出来事に見舞われたらもう誰も助けることができないって。下手したらどうなるか、君が一番理解してるんじゃないのか?」

水希「けど……それでも最終的に力をコントロールできなきゃ、修行し続けた意味すらないんだよ」

 

当然ながら水希自身、過去に起きた事故を経て力を開放しても碌なことにならないと身に染みて分かっていた。けれど、どれだけ鍛えても敵わない輩がこの先居てもおかしくはない。だからこそ、強くなる為にはリスクを顧みずリンドヴルムを制御すべきなのではと、ペガサスに推されてからずっと考えていたのだ。

 

天地の他にも反対を申し出る者は多くいるはずだろうが、いずれ克服しなければ何も変わらない。

力に飲まれ自我を失うかも知れない、最悪加減を間違えて殺すかも知れないという恐怖と葛藤しながら……。

 

水希「知ってるでしょ? 深祐さんを相手に後れを取って信武にだって勝てなかった。何もできなかったんだよ……。今のままでも勝てる自信ないのにどうしろって言うのさ?」

天地「甘えたことを言うな。君は単に怯えていただけだろう。その力で友達や家族を傷つけてしまうのが何よりも嫌だから、そう思う気持ちはわかるけど、その弱さが以前の戦いでの敗因となった。忘れたのか?」

水希「わかってるよそんなこと……」

天地「本当に理解しているのなら、つべこべ言わずに向き合え。ここに帰ってきた時点で打つ手なんかなかった。どのみち君には逃げるという選択肢は無いんだから見つけ次第戦うしかないんだぞ。それとも自分の手を汚したくありませんとかほざくつもりか?」

水希「………」

 

天地は水希に対して、着実と力をつけ、それこそ禁忌を破らずとも十分に戦えると評価しているが、三年前の件で深祐と信武の二人を遠ざけたことによる負い目が水希を弱くさせているかもしれないと危惧していた。

 

事実、居場所を突き止めるのも容易なはずだが、それを延々と引き伸ばしている時点で決心しきれていないのが分かる。

 

本当に守りたいのなら、友を助けたいのなら、意地でも心を鬼にして向き合え(たたかえ)

そう説得したつもりだが、ついに黙り込んで俯いてしまう。その隣にリヴァイアが姿を現した。

 

リヴァイア「……もうその辺にしてやってくれ、天地さん。水希だって戦わなきゃダメだってのは分かってる。だから……」

天地「ほら、そうやっていつも甘やかす。大体ね、君が水希君と出会わなきゃ、こんな悲劇に見舞われることも、ブラザーを捨てる決断に至ることも無かったはずだ。

戦いとは無縁の生活を送れたかも知れないのに……そもそもの話、この子を追い詰めているのが君自身だと自覚していないのか?」

 

珍しく怒りを露わにする天地だが、リヴァイアは否定せず、バツが悪そうに視線を落とした。

 

リヴァイア「してるよ、そりゃ申し訳ない気持ちで一杯だったさ。よくよく考えりゃここにいる地球人(みんな)と安易に接触するべきじゃなかったかもしんねぇ。……けど、今までバケモン扱いされてきた分、初めてここに来て、いの一番に俺という存在を認識してくれて友達として受け入れてくれたのがめちゃくちゃ嬉しかった。

だから……ユリウスと生き別れたその時から誓ったんだよ。この先何が起こったとしても絶対に水希だけは見捨てねぇって。それが唯一、俺にしかできない償いだからな」

水希「リヴァイア……」

 

不意に肩を抱き寄せられ顔を見上げると、リヴァイアもそれに気づき心配するなと言いたげに微笑みを浮かべ、水希はどことなく安心感を覚える。

そんな二人を見て、呆れたように溜息を溢した。

 

天地「カッコつけてるつもりかい? はっきり言ってダサいよ。結局の所、水希君から離れたくないんだろ。一人でいると心細いから」

リヴァイア「そう捉えてくれても構わない。俺だって、一度はリンドヴルムの野郎を打ち負かしたさ。俺に出来てコイツに出来ないのなら、とっくの昔に故郷へ帰ってた」

天地「……好きにしなよ。殺されても知らないからね……」

 

これだけ言っても聞かないんじゃ時間の無駄でしかない。

天地は説得を放棄し、屋上へ向かおうとする二人を見送るしかなかった。

 

水希「元からそのつもりでいたから、そいつに伝えといて。殺せるもんなら殺してみなよ、返り討ちにしてあげるって」

 

非常階段の扉が閉まった直後、天地は二度目の溜息を吐いた。

 

天地「……宇田海や信武君を相手に善戦できなかったくせによく言うよ。君がそうやって躊躇しているから事態を悪化させているって、なんで気づこうとしないんだ。これじゃ、犠牲者となった全員が浮かばれないじゃないか……」

 

 

◆◆◆

 

 

非常階段に入った途端に地響きが起こるが、すぐ体勢を立て直して階段を駆け上がり、勢いよく扉を開けた。

 

水希「スバル、無事!?」

スバル「兄ちゃん…!無事だけど…… 」

水希「?……まさかとは思ったけどさ……」

 

スバルが指差す方向、上空に見知った顔ぶれが三体もいる、というか地響きが起こった際に予感はしたけどいきなり過ぎでしょう、アンタら。

 

「久しぶりだな、相変わらず息災であったか、リヴァイア」

 

中央にいるペガサスが、見開いて驚くリヴァイアに声をかける。

 

リヴァイア「あぁ、久しぶり、師匠」

スバル&ウォーロック「『師匠?!』」

 

二人が師弟関係であることをスバル達には話してなかったから、驚かれるのも無理ない。

本来は再会を喜ぶはずだけど、ペガサスから顰めっ面を向けられているような気がしてならなかった。

 

ペガサス「以前とは見違えるほどのチカラが感じられるのだが……お前、まさかリンドヴルムを?」

リヴァイア「そうなんだよ。ここに来る途中チカラを解放して30秒と経たずに敵を倒しちまったけど、確かに手応えはあったんだ。それもこれも師匠が背中を押してくれたお陰かもな」

 

リヴァイアが意気揚々と経緯を話すが、ペガサスだけでなく聞き耳を立てたレオとドラゴンの二人も表情を曇らせた。

 

ペガサス「待て、リヴァイア。先程の話、我は皆目見当もつかんぞ?」

水希「……は?」

リヴァイア「え? いや言ってたじゃん、アクエリアス(あの女)が持ってた強大なチカラを使えるだけの器が俺にはもう備わってるって!」

ペガサス「聞こえぬのならもう一度言うぞ。我はそのように進言した覚えは――」

リヴァイア「嘘に決まってる! だって、一週間前の夜!水希の精神世界に引き摺り込んでまで俺たちに会っただろ! なぁ!? ……、嘘だろ……」

 

声を荒げて「俺の意見は間違ってない」と主張しても、ペガサスは首を縦に振ろうとしない。

終いには崩れ落ち、澄んだ水色の肌が淀んだかのように青褪めてしまうが、少しでも不安が和らぐようにと傍に寄る。

 

水希「どうなってんの、一体……?」

レオ「我々も状況は掴めんが消去法で考えるとリンドヴルムの仕業やも知れんな。しかし、彼奴の口車に乗せられようとは情けない」

ドラゴン「これではAM星にいた頃の二の舞になるではないか……」

 

彼ら三賢者にとって凶報なのは明白だ。レオの言い分が間違ってなければリンドヴルムの野郎に都合良く誘い込まれたってことだから。

 

リヴァイア「ごめん、水希……俺、散々言っておいて、またお前に迷惑を……」

水希「謝らないで。まだそうなるって確定した訳じゃないじゃん」

リヴァイア「だけど……!」

水希「忘れた? あの野郎が言うに僕の素質次第でチカラをコントロールできるかもって話してた。ならもう後戻りなんて出来ないでしょ?」

 

今にも泣きそうなリヴァイアの額を、自分の額と合わせる。

 

水希「迷惑かけてるのはこっちも同じ。たとえ地獄へ行くことになったとしても、リヴァイアと一緒なら怖くない」

リヴァイア「水希……本当にごめん……」

ウォーロック『おい、俺やスバルにも分かるように説明しろ』

 

トランサー越しから説明を要求するウォーロックと、戸惑いや焦りといった感情がないまぜになっているスバルに要点を伝える。

 

水希「要するに、チカラを開放するタイミングを完全に見誤った。……けど、諦めるにはまだ早いってこと」

スバル「そんなこと言ったって、下手したら死ぬかもしれないでしょ。嫌だよ、もう誰も失いたくないのに……っ」

 

死んでほしくないと嘆くスバルに返してやれる言葉が見つからない。

 

ドラゴン「少々予定が狂ったが、致し方あるまい」

レオ「水希。今後の戦いにおいて頼みの綱となるのは、スバルを除いてお前以外にいない」

ペガサス「よって、スバルが我らのチカラを与えるに相応しいか、戦った上で見極めてもらいたい」

水希「え、嫌なんだけど」

ペガサス「嫌だと…! お前いま嫌だと言ったのか?!」

水希「うん言った☆」

ペガサス「うん言った☆ じゃないだろう!!」

ウォーロック『これシリアスな場面だよな…?』

 

地味にノリツッコミする天馬さんに慄く一同である。

なにこのカオス。

 

水希「大体なんで? アンタらが戦えばいいじゃん」

ドラゴン「確かにな、我らが直々に相手をするのが筋だろうよ」

レオ「しかし、だ。その役目はお前が適役だからこそ提案したまで。お前とて悩んでいるだろう、スバルを戦場に立たせるべきかと」

水希「そこまで思考読めるとか、アンタらもしかしてストーカーなん?」

 

「断じて違う!」と三賢者達は鬼気迫るようにハモりだす。

 

ペガサス「せめて、もっとマシな言い方をだな……まあ良い。とにかく、スバルが我らのチカラを授かるに相応しいか、証明して見せろ」

スバル「兄ちゃんと、僕が……?」

 

とうとう強引に持ってこられたではないか…‥。

スバルは僕と戦う理由がない為、未だに困惑してしまっている。

尤も、自分も同様に躊躇っているけれど、この場の雰囲気から逃れられそうにない。

やむを得ないか。

 

水希「1分だけ。倒すことが目的じゃないなら充分だと思うけど?」

ペガサス「……良かろう、では試練を開始する」

スバル「待ってよ! 急に決められても困るって!」

水希「――スバル、先に謝っとく」

 

スバルの発言を遮るように謝罪を言う。

 

水希「僕らの戦いにアンタまで巻き込んじゃったのを後悔してるの。あの時ペンダントを渡した時点で今みたいな未来になるって分かってたら、真っ先に破壊してた。 でも大吾さんの形見を預けるのなら、僕やお姉ちゃんにじゃなく、スバルにすべきだと思った。唯一の心の支えになればって勝手に思ってた……」

スバル「……兄ちゃん」

水希「だから一つ賭けをしない? もし三賢者達に見込み違いじゃないって証明できたら、三年前のこと、知る限りのことを全部話すって約束する」

 

しばらく考え込むが、半信半疑と言える視線を向けられた。

 

スバル「本当に、話してくれる?」

水希「じゃなきゃ釣り合わない。――リヴァイア、やれそう?」

リヴァイア「大丈夫」

 

決心がつかないなら、不本意だけど取引してでもその気にさせればいいだけだ。

再び、電波変換してハイドロウィップを手に持つ。

 

水希「準備ができたら来な。遊んであげる」

 

そう言ってウェーブロードに上がる。

 

ウォーロック『どうする、ハッタリかもしれねぇぞ?』

スバル「確かにいつもはぐらかしてばかりだったけど、兄ちゃんの目を見て本気だってのが伝わった」

ウォーロック『フッ、なら一泡吹かせるか!』

 

スバルも覚悟を決めたようだ。

 




ペガサスと意見が食い違う場面にて、昨日の夜→一週間前の夜に修正。
過去話を見返しながら書かなきゃだめだってのにこの体たらくですよ……。
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