流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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31話 本当の意味での決別

一人の男の子が今日から復学してきた。

 

名前は星河スバル。

僕と同じクラスメイトで、いつもガラ空きだった席に彼が座ることでやっと、パズルのピースがはまったように満ち足りたような思いがあった。

 

その証拠に、自己紹介をした後は僕も含め皆がスバルくんを歓迎しており、時間が経つにつれて彼の不安とも取れる表情が和らぐ様子が伺えた。

 

 

『ついこの間まで悩んでてさ。母さんだけじゃなくて、委員長からも学校に来ないかって迫られてもその時は全然決心がつかなかったの』

 

……以前、先生から聞いたところによると、お父さんを失くしたというトラウマがあったせいで登校しづらかったそうだ。

 

厳密にはそれが原因で人と関わるのが嫌だったとは言え、将来のことに関して思い悩んでいたというジレンマを抱えていたのも、決断しかねていた要因だったらしい。

幸いどの学校でも通信教育を導入してるはずだから学力面に関しては問題ないのも事実だ。

 

しかし、

 

『だけど、兄ちゃんから「流れに身を任せてみたら?」って言われて、その時になって行こうって思えたの』

 

兄と呼び慕う叔父から生き様を否定をされなければ強要もされず、むしろスバルくん本人の判断に委ねるというその一言一句が彼の背中を押し、復学を決意するきっかけとなったそうだ。

 

……親に捨てられ孤児として生きてきた僕にはそういった経験がまるでない。

 

だからずっと、血の繋がりがある人との日常を欲していたせいか、彼が恵まれているように見えて余計に羨ましくてたまらないと思った。

何故かと問われようと僕だって人間なんだ。何も考えていない訳がない。

 

悟られたかはわからないが、そういった羨望や嫉妬を彼に向けてしまっていたのかもしれない。

 

ごめんねスバルくん。話を聞いているうちに居た堪れなくなったんだ。

 

もちろん本音は言えないままそれらしい理由をつけ、走り去るように家路に就こうとしていた。

 

しかしまぁ、柄にもなく全力で走ったもんだから息切れどころでは済まず、途中からバスに乗って帰宅する。

 

ようやく孤児院に着いた頃に門を通り抜けると、中に居た保母さんが僕に気づいて窓を開けた。

 

「おかえりなさいツカサくん」

ツカサ「……ただいま。帰ってきて早々なんですけど、お風呂借りてもいいですか?」

「それは構わないけど……何か困ったことがあったら相談して頂戴ね? 一瞬思い詰めている様に見えたから……」

 

流石は保母さんだ。職業柄、よく人を見ているだけの事はある。

悟られたことへの戸惑いを隠せずに、ただただ気遣ってくれたことへの感謝を伝えて中へ入った。

 

 

替えの服を取りに自室へ向かう間も、浴室で頭から被るようにシャワーを浴びている間も、本当に彼と友達になれるのか? そのことで頭がいっぱいになっていた。

 

少しでも期待していたのだ。

境遇が似ているから。その痛みを彼となら分かり合えると思っていた。

 

――否、思い込んでいた。

 

でも違っていた。まだ彼には血の繋がった家族が身近にいるから。

僕と違って愛情を受けて育っているから。

 

ツカサ「――――――」

 

……僕も愛情を受けてるって実感があれば、スバルくんのように強くなれたのかな。

 

◆◆◆

 

次の朝――

 

水希「うぅぅ……まだ体中が痛い……ハムエッグ美味しい……」

あかね「まったく、食べるか悶え苦しむかどっちかにしなさいよ」

水希「……と、張本人が申しております」

 

先日から響く筋肉痛に堪えながら朝食を食べ進めた挙句、自分だけのせいではないと言い張る水希に、あかねは肩を竦めて物申した。

 

あかね「ほとんどアンタの自業自得じゃないの。それに、男の癖になんでか腕っ節弱くて相手してるこっちがヒヤヒヤしちゃうわ」

水希「確実に息の根止めにきておいてよく言うよ」

あかね「大袈裟ねぇ。あれでも結構加減したつもりよ?」

スバル「……あのさぁ、朝から物騒な話題出さないでくれる? 聞いてるこっちも気が滅入るんだよ」

 

その傍ら、味噌汁を啜っていたスバルが文句をつけてくる始末だ。

反論の余地もなく、二人は口を慎もうとするが咄嗟に水希が話題を振ろうとしてきた。

 

水希「ごめんて。でさスバル、昨日聞きそびれたけど今度の劇でどんな役になったの?」

スバル「……さま」

水希「へ?」

 

そっぽ向いてボソッと呟くスバルだが、水希が聞き取れないとばかりに返すと気だるそうな表情を全面的に見せた。

 

スバル「だから、水神様だよ。いきなり主役に抜擢されるなんて普通思わなくない?」

水希「うーん、まぁそうだね。キザな役は似合わなそう」

 

水希からそう指摘され、スバルの表情をますます重くさせた。

 

スバル「……母さん、今日休んじゃダメ?」

あかね「駄目に決まってるでしょう。病気じゃないなら行きなさい」

スバル「……は〜い」

 

不貞腐れたように返事をして、支度が整ったところで学校へと向かう。

 

そして、

 

水希「……行くか」

リヴァイア『あぁ』

あかね「どこへ行く気?」

 

あかねが行手を阻むように呼び止めたが、散歩と誤魔化して家を後にした。

無論、勘の鋭さなど関係なく見破られていたが、

 

あかね「……ほんと、嘘ばっかり。ただの散歩ならそんな険しい顔しないでしょうに」

 

悲痛な面持ちを浮かべて弟を見送ることしかできずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

水希にとって憩いの場であり、もう一つの始まりの場所。

スバルがよく訪れる展望台沿いに位置する河川敷へ向かうこと数分。

ふと足を止め、ベンチにもたれかかって座る待ち人を土手から見下ろしながら溜息をこぼした。

 

水希「……『着いてから連絡を寄越せ』って言っといて、自分から待ち伏せとはね」

「――――――」

 

ただ川を眺めるだけで何も答えない待ち人に痺れを切らし、水希は土手を降りて歩み寄った。

 

水希「そんなに僕と会いたかったの? ――信武」

信武「……敵対してる時点でノコノコと顔を出すお前も大概だけどな」

水希「で、用件は何?」

 

勿体ぶらずさっさと言え。とばかりに本題に入ろうとする水希に信武も溜息をこぼし、単刀直入に申し立てた。

 

信武「お前の本当の目的を教えろ」

水希「はぁ、目的? んなもん決まってるよ。大吾さん達を探し出すって目的が――」

信武「本当にそれだけか?」

 

急に立ち上がった信武の周りを金色の光が覆う。

 

信武「例の件について無知でも状況を整理して考えりゃわかるさ。クルーの皆を見つけて終わり、なんてもんじゃねぇだろ。

それにさっきも言ったよな?()()()()()()()()()()()()って」

 

光が晴れたと思えば既に換装した状態でカリブルヌスを携え、誤魔化しは通用しなさそうだと悟った水希に切っ先を向けた。

 

水希「……答えた所でどうするつもり?」

信武「お前の回答次第だ。そこで方針を固める」

水希「っそ、じゃあ結論から言わせてもらうわ。()()アンタに答える義理はない」

信武「……何だと?」

水希「敵対関係である以上は、ね……」

 

睨みつけてくる信武を前に無防備同然の水希も、対抗すべくして換装した。

 

水希「でも敵味方関係なくアンタにだけは聞いてほしくなかった。むしろすべて解決するまでは、僕を死人として認識したままでいてほしかった」

信武「だからなんでそうなるんだよ…!なんでいっつもそうやって抱え込もうとするんだよ! 何がお前をつき動かさせるんだ? 誰がお前をそうさせた!?」

 

御託を並べられるあまり怒りを剥き出しにしてまくし立てようと、水希は何も言い返そうとしない。

 

ただ、いつも笑顔でいてほしいと思った。

できることは何でもしたつもりだった。

でも次第に、笑わなくなった。

 

元からあった人を疑う性格が、より強まったからか?

俺の行動すべて、ありがた迷惑だったから気を遣ったのか?

だったら……その笑顔は全部作り笑いだったのか?

 

募る不信感が信武の心を逆撫でさせる。

 

信武「……そんなに俺が邪魔ならハッキリ言えよ!!」

リヴァイア「……お前、いい加減に……!」

 

水希の相変わらずな強情さに腹を立て、ついには怒鳴り散らしてしまう信武を見て、辛抱ならなそうにリヴァイアも姿を表すが、

 

横槍は不要と、そう言いたげにリヴァイアを止めた。

 

水希「確かにそうだよ。信武は良くも悪くも真っ直ぐだから、目的を話せばきっと、引き離そうとするほど追ってくるって思ってた。それが嫌で仕方なかったってだけ」

信武「ッ……」

リヴァイア「水希……」

水希「これだけ言えばわかるでしょ。もう昔のような関係には戻れないんだよ、僕らは」

 

修復不可能にまでなっている。

そんな分かりきった事を言い切ると、信武は換装を解いて無表情のまま光すら失せた目で水希達を見やる。

 

信武「次会った時は遠慮なく殺す」

水希「好きにすれば。タダで殺られるつもりないし」

信武「言ってろ負け犬」

 

吐き捨てるように罵り、そのまま去っていった。

 

 

そして、足音が遠のいた途端に換装が解かれ、力無く崩れ落ちる水希をリヴァイアは抱き抱える。

 

リヴァイア「……大丈夫か?」

水希「……こんなこと、言うべきじゃないのはわかってるけどさ。なんでこうなっちゃったんだろうね……?」

 

信武とはおやつの取り合いなど、いつも些細なことでしか喧嘩したことがないから尚更、恐怖で震えが止まらなくなり、終いには涙を堪えきれず、己の過ちによって悪化していく状況に嘆くばかりだ。

そんな水希の泣き虫な一面を近くで見てきているリヴァイアも、いつもなら優しく励ますか叱咤するだろうが……今ではかけてやれる言葉すら見出せず、抱きしめる腕の力を強めるしかなかった。

 

学校から漏れ出ている不吉な電波を感知するまで、ずっと――――




閲覧していただきありがとうございます。
長い間格闘していたミソラ編の制作から解放されて筆が少し進んだ気がしますが、今回は短くなりましたね。
ともあれ次回につなぐ分には十分ですので、更新ペースを早められるように取り組んでいこうと思ってます。
それでは!
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