流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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36話 覚醒

『速報です。昨日、都内各地に電波障害が相次いでいる、と電波管理局から情報が入りました。

当局、最高責任者のコメントによりますと【サテライト当機、及び中継機のいずれかに不具合があると見ており原因究明に努めている】と述べ、また【現段階での復旧の目処は立ってない】との事。

これを受け、住民に不安の声が上がっています』

 

学習電波での一件から5日経つ朝。報道された内容通りの事案が多発しているそうだ。

中には交通面でも支障をきたしているとネット上でも騒がれていて、穏やかとは縁遠い日々を送っている。

 

そんな状況におかれながらも、未だに水希は目を覚まさない。

あかねが仕事の日は看護特化のナビに任せているとはいえ、ろくに何も食べられず寝たきりの状態にある水希を見て、スバルも気が気でなく、用意された朝食が喉を通らないようだ。

 

あかね「……心配なのは分かるけど、ちゃんと食べなさい。せっかくの料理が冷めちゃうじゃない」

 

そんなスバルに気遣いながら悪態をつくあかねも今日に限って量が少なく見えるが、指摘する暇もなくトーストをかじった。

ご飯の時にしても、こんなにも静かなのは滅多にないから余計寂しく思う二人である。

 

あかね「今日は確か、学芸会なんだっけ?」

スバル「そうなんだよ。まさかたった一週間の練習で本番迎えると思わないじゃん?」

あかね「そうね、普通なら一ヶ月は必要ね。でも、学校に戻るタイミングが悪かったと思いなさい。あとは悔いの無いようにやりきればなんとかなるわ」

 

苦笑しつつ意見に賛同するあかねだが、発言がどこかの誰かさんを思わせる。

 

スバル「なんか兄ちゃんに面と向かって言われてるみたい」

あかね「そりゃあ血を分けた姉弟ですもの。似てた?」

スバル「かなりね」

 

雰囲気だけなら似ていてもおかしくないと、スバルは内心感じた。

 

 

 

 

 

朝食を済ませ、玄関にて靴を履き替える頃。

 

あかね「悪いわね、せっかくの晴れ舞台を見に来られなくて」

スバル「仕方ないよ。兄ちゃんを放ったらかしにはできないだろうし」

 

あかねも見送りをする体で立っていたが、開口早々に詫びの言葉をかけ、スバルも易々と受け止める。

 

(……本当は僕も休みたいところだけど)

 

学校へ行かず付きっきりで看病したいが、それでは学校に戻るきっかけを作った水希の為にならないし意味がない。

 

もっと言えばレティに全て任せようと思ったが、あかねがいる手前、下手に会わせても得策じゃない上、連絡先も知らないのだ。

 

色々と段取りが悪すぎるから、消去法で頼れるのはもう天地くらいしか思い当たらないが。

 

スバル「やっぱり、天地さんに任せるしかないのかな……」

 

ふとした発言に、あかねも同じ考えを持っていた。

天地と飯島が家に訪問した後日に送られてきた『サテラポリスの面々が黙ってない』というメールでの脅し文句を、説教された時の言葉と重ねる。

 

――今ある大事な命を守ることが、貴女にとっては先決なんじゃないんですか!?

 

あかね「わかってるわよ、そんなの……」

 

夫に続いて弟もか。

 

憔悴していたあかねがギリギリ平静を保てたのは、言わずもがな息子の存在だ。

元気に……とまで行かなくとも通ってくれるだけで充分。高望みが行き過ぎてもお互いを苦しめる。そう割り切っているのにも関わらず…弱音をこぼしてしまいそうな気分だった。

 

スバル「母さん…大丈夫?」

あかね「! ごめんね、取り乱しちゃって。何でもないから」

 

本音を言うと、逃げたい。

自分を取り巻く環境から。

子育てと仕事の両立から。

 

それを今、頑張ってる息子の前で言えるわけがない。

 

――確実に止められる術が無いのなら、こちらも無いなりに手を打たせてもらいます。

 

「行ってくるね」と言って、玄関の戸が閉まった直後にボソリと呟いた。

 

あかね「何でもない、か……」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

スバル「ツカサくんが休み!?」

ルナ「そうなのよ、困ったことにね」

スバル「そんな……」

 

聞くところによると、本番当日を迎えたこの時に限って風邪を引いたそうだ。

何とも心細いものだとスバルは内心思うが、ルナは既に代替案を編み出していたらしい。

 

ルナ「だからもう、星河くんにはセリフを一つだけに絞って、残りは私達でカバーすることになったの」

スバル「それなら助かるけど、本番でなんて言えばいいの?」

ルナ「そうねぇ……」

 

 

 

 

耳打ちされた台詞にむず痒くなりながら、本番を迎えた。

 

ルナ「キャー! 誰かぁー!」

 

牛男を目の前に、助けを求める台詞を言い切ったタイミングでスバルが登場する。

ここまでは順当に行ったが、

 

スバル「そこまでだ!」

 

猛々しく声を上げて舞台袖から登場した姿に、ルナは目を剥いてしまっていた。

 

ルナ「あ、あなたは……?」

スバル「僕はロックマン! 君を助けに来た」

 

味方と称する台詞の後半にはスバルのアドリブが含まれ、劇に沿って作った簡易的な衣装でなく、いつか見た御姿が勇ましさをより強調させている。

 

しかし、夢見る瞬間も束の間。

 

突如視界が暗転するというアクシデントに見舞われ、気がつけば自分が作った衣装になっており、単なる見間違いかと呆気に取られるなか、スバルが再びセリフを言う。

 

スバル「君は、僕が必ず守る」

ルナ「……!」

 

――もう大丈夫。僕が絶対守るから――

 

何故かは分からないが誘拐事件のことを思い出させる。

似ても似つかないのにまるでそっくりだと錯覚させられる。

 

頬が熱くなるのを感じながら、ルナはしばらく固まっていた。

 

 

 

◆◆◆

 

スバル「……兄ちゃん、まだ寝てるかな……」

 

時刻は午後3時を過ぎ、劇が無事終わった後の帰り道。

兄を(おもんぱか)るなか、ロックが急に慌てふためいて言い放った。

 

ウォーロック『スバル、マズいことが起きた!』

スバル「どうしたの?」

ウォーロック『遠くからでも微かに感じ取れたんだ、水希の気配が。恐らくもう目を覚ましたかもしれねぇ……!』

スバル「ロック、方向はわかる?」

ウォーロック『一応な。急いで電波変換だ』

スバル「わかった」

 

今はとにかく、ロックの指し示す方向を目指して後を追うしかなかった。

無事を祈りながら、兄が向かう先へと。

 

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