重たげな作品であることは承知ですが、感想やお気に入り登録をしていただけると執筆の励みになりますので、何卒宜しくお願いします。
それでは本編、どうぞ!
戻ってこいと必死に呼び止める天地さんを差し置いて死地へ行く……そんな時になっても考え込んでしまう。
本当はわかっていた。
さっきは誰も彼に期待しない生き方が楽だとほざいたが、天地さんだけじゃなくてお姉ちゃんも、最後まで味方でいてくれたことをちゃんと理解していたつもりだった……けれど、いい加減頼りっぱなしじゃ駄目だと感じていたのだ。
たかが一人の為に、中には己が身を投げ打ってまで奮闘し尽くしてくれる皆の姿を、何度も、何年も見ていながら、心苦しくて耐えられなかったから……。
それこそ、
死を以てして、こんな疫病神の柵から解放されれば周りもどれほど楽になるだろうかって、考え続けていたんだよ。
所詮は独り善がりのエゴに過ぎないというのにね……。
水希「――――」
――弱音を吐く暇があるなら、いい加減覚悟を決めろ。甘さを捨てろ。
袂が分かたれた今、目的を第一にしてきたなら引き返すまでもないだろ。
そう言い聞かせ、やがて二人の元へ辿り着く。
上昇しきったところでスピードを落とし、近くのウェーブロードに着地するまでの間、都庁の天辺に立っている二人を見下ろしながら下降する。
しかし、こうも空が暗雲に埋め尽くされていると二人の佇まいに不気味さを際立たせるもんだ。
深祐「フッ……見ていて滑稽だよ。そんな醜い姿を晒しておいて、理性を保っているとはね」
水希「自ら地に堕ちた奴に言われりゃ世話が無いね。お互い」
対面して早々、鼻で笑いだす深祐さんと罵り合ったからか良い気はしない。
深祐「でも好都合だよ。あのとき君から手を切ってくれたお陰で、こうして気兼ねなく戦えるんだからさ。お前もそう思うだろ?」
信武「…………」
隣にいる信武にも同意を求めるが、こちらを睨みつけたまま頑なに口を開こうとしない。
深祐「言うまでもないか――それでだ、水希君」
急に名指しを受け、再び深祐さんと目線を合わせる。
深祐「僕らはこれから王命に従い、この星を壊すつもりだ。けれど君がいては円滑に事が進まないだろうね。もう何を言いたいかは、判ってくれるかい?」
水希「……本当にいいの? 天地さん言ってたよ。深祐さんが作ったフライングジャケットを見て、すごい出来栄えだって……同じ研究者としてうかうかしてられないって、闘志を燃やしながらも称えてたよ。いつかアンタが暴走して行方知れずになった後だって、ずっと心配してくれてたのに……」
挑発とも取れるような発言を投げてこられるが、誘いに乗る手前、彼に改めて訊ねた。
これで少しでも揺らいでくれたら、と淡い期待を抱きながら。
水希「それに何しろ、
語れるだけ語りかけたけど、取り憑かれてからだろうか……人を見下すような視線は変わらないが、嘲笑うように歪んだ表情はとうに消え失せていた。
深祐「……黙って聞いていれば何だ。君だって人に物言えた口じゃない癖に、よく人を説教をする気になれるね。相変わらず羨ましい思考回路をして―――」
言い終える直前に放った雹弾が、深祐さんの頬を掠めて生々しく血は滲みだすが、やがて顎にまで伝い落ちようと気にも留めず無表情を貫いていた。
水希「二度は言わない。答えて」
深祐「……分かりきったことを……退くつもりはないと言っている。力を手放した所でもう戻る場所なんてないんだから、今更君が気に病むだけ無駄なんだよ」
水希「……そう、本気なんだ」
交渉の余地も無ければ結構。
討伐を請け負った身として都合のいい理由ができた以上、最早多くを語ることはないだろう。
水希「だったらここで、いつぞやの借りを返すとしますか……」
右手を前へ掲げ、氷のように冷たく透き通った
その三叉槍から只ならぬ気配を感じ取った信武は警戒心から目を細め、逆に深祐さんは研究者らしく興味深そうに槍を見つめてくる。
深祐「見た目のわりに禍々しいチカラを感じるね。なんて言うんだい?」
水希「……神話に出る海神の武具をモチーフに――名をトリアイナ。本来の姿で戦う以上、まとめて始末するには十分過ぎる代物だよ」
信武「……言ってろ、負け犬」
憎々しげに言って、曇り空へ掲げた右手に雷が落ち…信武もカリブルヌスを握る。
無謀にも開放してしまったが、奴はまだ暴れる気配はないし、乗っ取られるまでの時間なんて気にしていられない。
ただ二人を殺さない程度に倒せばいいんだ。相手がどれだけ強敵でも。
(……スバルだって、ミソラちゃんを上手いこと助け出せたんだもん……大丈夫だよ、できる……)
己を奮い立たせた矢先、状況は一変する。
「バトルカード! プラズマガン!」
水希「!……なんで来たの……スバル」
背後から弟が助太刀に来てくれているものの、僕からすれば本当に間が悪いとしか思えず振り向くことができなかった。
スバル「兄ちゃんから離れろッ!!」
怒声をあげながらプラズマガンを撃つが、信武は手に持った剣を迫りくる雷弾に向けてかざす。
……するとどうなるか。
バチィッ! と弾くような轟音を立てるが、しかしそのエネルギーは消えておらず、刀身に纏わりついて滞電している。
恐らく雷は通用しないと見せしめてるつもりなんだろうけど。目の前の元親友が大胆なことをされれば流石に驚くってのに。
まったくもう、一々肝を冷やすような真似しないでよ……。
スバル「うそ…弾かれた!?」
ウォーロック「いや違う、エネルギーを吸収してるんだ!」
(成程ね……あの剣自体、避雷針の役割を果たしているもんだからプラズマガン程度じゃ屁でもないってわけか)
水希「どうりで、わざと避けなかったんだ……」
やりとりを聞いてウォーロック達が取り乱すのも分かる。
たった数日、たかが数日程度でここまで力を使いこなせるなんて……スバルや深祐さんもそうだけど、信武の順応性の高さは目を見張るもの。
何しろ単純なステータス(攻撃力、守備力、危機察知・回避能力)だけなら、この場にいる僕らより明らかに群を抜いている。剣道有段者としての戦いぶりを試合で、応援しながら見てきたから分かるのだ。
スバルだったら速攻でやられる。その辺はもう考えるまでもなく確信しているからね……。
信武「深祐、ガキの相手をしてくれ。乱戦になると気が散る」
視線を一方向に定めて淡々と用件を述べる信武を尻目に、深祐さんは喉を鳴らして笑いだした。
深祐「いいよ、譲ってあげる。お互い積もる話もあるだろうしね」
信武「さっさと行け……」
深祐「はいはい」
茶化したせいで邪険にされても気に留めず、らしくないほど軽々しく二つ返事であしらい、翼をはためかせて猛進する。
来ると思って即座に身構えたが「信武と遊んでなよ」と、すれ違い様に言って通り過ぎていった。
そこでようやく気づいたが、振り返ればとっくにスバル目掛けて拳を突き出そうと構えているではないか。
水希「! ――スバル!?」
ウォーロック「来るぞ!」
相方に言われるまでもなく、直前で左腕をソードに変えて、深祐さんの正拳突きを受け止め、全力で払い退けた。
スバル「兄ちゃん! 絶対、自分に負けないで!」
切羽詰まりながら激励を掛けてくれたのを皮切りに、深祐さんと交戦し始めたスバルの姿は徐々に遠ざかっていく。
それ以降は風の音しか聞こえないくらい静けさが増し、特に喋ることもなかったのだが……、
信武「……見ねぇ間に随分と力をつけたんだな」
先に口を開けたのは信武だった。
必然的に二人きりになってしまい非常に気まずいが、事が事だけに黙り続けているわけにもいかない。
未だ戦闘中であるスバルの無事を祈って、視線を戻す。
水希「……そうじゃない。元から備わっていた力を今まで封じてたってだけ。開放させたとはいっても制御は不完全なままだし、リヴァイアも言っていたように望んで手にしたわけでもないんだよ」
今でも引きずっている。
こんな力があったせいでユリウスを、ユリウスと共に過ごした時間すら失った。
あの時の自分の無力さをどれだけ恨み、嘆いたことか…。
水希「開放する余波で災害が訪れてないだけ、マシかもしんないけどさ……正直、名前を口にすんのも忌々しいくらいだもん……」
信武「……気の毒なことで」
当然ながら他人事っぽく返す信武にその心情を理解されなくとも、愚痴をこぼさずにはいられなかった。
信武「ところでよ、あの女はどうしたんだ? こないだ『
水希「?……あぁ、レティのこと? タイマン張るからしゃしゃり出んなって釘刺しといたのよ。端からアイツが介入できる問題じゃないしね。要はね、これ以上
信武「面倒事か……。大元を辿れば、お前らが好き勝手した結果だってのにか?」
物事をすべて面倒事で片付ける僕に、どの口が言うんだと鋭い眼光で訴えてくるが、
水希「文句ある?」
それでも尚、だから何だと一蹴する。
信武「…………そうかよ」
そんな僕に呆れながら、竹刀を握るように構える信武に続いて、矛先を向けるように握り直し………数瞬、間を置いた直後。
ほぼ同時に地面を蹴り、剣と槍が交える。
そこから生じる衝撃波と力が拮抗したが押され気味になり、一度距離を取ろうとしたその時だ。
足場となるウェーブロードへ転移した信武は、間髪入れずに技を名告る。
信武「〈センチネル・ゴースト〉」
一見可愛らしいマスコットと侮ると、以前のように最後は手も足も出なくなるから脅威――――とはいえ舐められたものだ。こっちは飛行できるからどうってことないのに。
水希「……今更小手調べのつもり? だったら……」
攻撃を避け続けた末、ドクロ兵達の眉間に魔法陣を貼り付け、
水希「撃ち落せ――〈ホーミングミサイル〉!!」
また自身の両脇に出現した魔法陣からミサイルが降り注ぎ、ことごとく撃破していくが、守護を担う兵は手に持つ盾を主人ごと包み隠すよう変形させ、全方向から降り注ぐミサイルを余すことなく防いで無傷。
お見事、前回拘束されて身動きできなかった信武を、絶対零度のブレスから守り抜いただけの事はあるなと感心してしまう。
爆煙が晴れ、盾が縮小した頃に間合いを詰めて、今度はこちらから仕掛けた。
初手。胴体目掛けての中段突きは上に流され、そのまま勢いを殺さんとばかりに振り下ろす剣を、槍の柄で即ガード。
二手。剣を押し返し、左から右へ薙ぐように槍を払うが、信武も片手持ちに同じ動作で払い退け、打ち合った拍子に激しく火花が散る。
三手。……こればかりは卑怯だけども、かざした左手に魔法陣が浮かび上がり至近距離で雹弾を射出させるが、信武の元々の動体視力が優れているからか、真横に飛び退くことでマントに穴が開く程度で済んだらしい。
信武「チッ――――来い!」
しかし、回避はしたが足場までの距離が縮まらず、舌打ちしながらも盾の兵を踏み台代わりに呼び寄せ、近くのウェーブロードに飛び移った。
クラウン『……ワシの自慢の駒達なのに、足場じゃないのに、雑にしおってから……』
信武「うるせぇな……そんくらい我慢しろよ―――!」
わなわなと声を震わすクラウンに悪態をつく信武だが、お喋りしている二人に構わず急接近し、槍を振り下ろすのだが………腹立たしいことに、既の所で受け止められてしまう。
水希「……ムカつく。お喋りしてられるほど余裕なんだ?」
信武「まぁ余裕だな。前よりか動きはマシだろうが、力を開放した以前に本気じゃねーのが見え見えだ。どうせお前のことだからな……怖いんだろ? 誤って人殺しになるのが。
そんな心持ちじゃあ、いつまで経っても俺に一撃入れられねぇぞ」
水希「ならさっさと仕留めたら? 剣道の試合でも、ましてや稽古ですら無いのに、律儀に打ち合ってるアンタも大概怖がってんじゃないの?」
信武「お前にだけは言われたかねぇわ!」
水希「あ、っそ!」
言い放たれた皮肉にムキになりながらも煽り返し、翼を前方へはためかせて後退したものの魔法陣を展開させる間もなく間合いを詰められ、互いの得物を用いて攻防を繰り広げた。
……嫌でも理解させられる。たとえ力を開放したとしても、剣一つで互角どころか…攻撃を受け流し、反撃の一手となる隙をうかがってくる信武の強さは決して揺らがないことを。
場数の多さはこちらに分があると思いたいけれど、こと戦場において信武は自身の持ち味――剣道で
悔しいけど、そこは認めるべきだろう。
(……けどね、信武。アンタには心底理解できないだろうけど、こっちにも意地があるんだよ。こんな所で負けてちゃ、大吾さんにも……ユリウスにだって一向に顔向けできないんだよ……!!)
数手打ち合って、信武が剣を横薙ぎに払うところを上空に飛び退いて躱した直後。バク宙で身を翻しつつ、足場代わりに展開させた魔法陣に着地。
水希「――〈ミラージュ・ドール〉」
その名を告げ、すぐさま着地の反動を使って獲物を突き刺すように構えながら肉薄する。
傍目から一直線に突っ込むだけと思い込んだか、信武は避ける素振りもなく剣を振るうが、しかし……
信武「……ッ!?」
刹那、剣先に触れた箇所から霧と同化した。
技名にもあるように蜃気楼を意図的に発生させ、残像を作った上で姿を眩ませたという事だ。一瞬の隙をつく布石にしては我ながら上出来と言える。
現に信武は動揺を隠せず硬直してしまっているようだ。
それを見逃してやるつもりは無く、矛先を脇腹めがけて猛突進する………が、甲高い金属音が交わるのと同時に、押し返される程の衝撃が接近を阻んだ。
無理もない。本来〈ミラージュ・ドール〉は隠密行動に限定すれば持続時間は無限に等しいが、先程のように残像を併用していると極端に短くなるのが致命的欠点。
故に接近の際、透明化が解かれたのを視界の端で捉え、とっさに三叉槍の隙間に剣を引っ掛けて防いでみせた。ということになる。
想定内とはいえ、どこまでも油断ならないから厄介だ。
水希「……何も、真正面から討つなんて言ってないからね。今更卑怯もクソもないでしょ?」
信武「無駄打ちだがな……」
互いに口では余裕こいていたけど、冷や汗を滲ませている事だろう。
信武「……本当にお前がしたいことってさ、今みたいに俺といがみ合って殺し合うことか? それに親父達が助かる可能性があるって、本当に思ってんのか?」
こうして今、刃を交えているにもかかわらず藪から棒な質問を投げかけられるが、こちらの返答を待たないで続けた。
信武「前にも言ったが深祐から聞いたぜ。例の計画に加担したのも、誰一人欠けることなく笑顔に満ちた世界を作りたかったんだってことを。
けど実際はどうだ? 奴等の襲撃から命
水希「っ……うる、さい……!」
信武「……そう思えねぇなら、いい加減認めろよ―――お前如きが、誰一人として救えねぇってことをよぉ!!」
うるさい……うるさい、うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!
黙って聞いていれば……アンタなんかにわかるのか?!
本当ならすぐにでも探したいのに、動こうにも動けないもどかしさが!
理解して貰えると限らないからこそ、話そうにも話せないやり切れなさが!
やる事なす事全てが独り善がりだとしても、もう他に方法が思いつかなかったのに―――
水希「なんにも…………なんにも知らない癖にっ!!」
―――平和ボケしきってる連中と同レベルの、お前如きが知った口叩くなァッ……!!
……抑えきれず溢れる冷気が、怒りをぶつけるように信武もろとも吹き飛ばすけれど、信武は身を丸めながらのバク宙で衝撃を逃し、屈んだ体勢で両足の踏ん張りを利かせ後退りしたのちに立ち上がる。
信武「あぁそうさ! 被害者面してる臆病者の気持ちなんざ分かるわけねぇだろ! 今でもバカみたいに抱え込んで、俺に何一つ話そうとしないんだからな!!」
水希「つい最近、力を得たばっかで、なんの打開策もなくキレてた癖に! しゃしゃり出ておいて何ができんだよ?!」
信武「出来るだろ! たとえ力が無くたって、お前の傍に寄り添うことくらい出来ただろ、昔からそうしてきたように!」
一言一句、癇に障る。聞くに堪えない。
大体話した所で何ができた? ただの傍観者風情が同情する他にできることなんかないだろ。
水希「だったらどうした!? 同じ立場になれてもいない奴なんかに最初から話すことあると思ってんのかァ!!」
頭に血が昇ったせいで二次被害を考える暇もなく、両脇から龍の頭と思しき氷像を二体生成し、開いた口から絶対零度のブレスを放つ。
「ありまくりだ、ボケ!!」と声を荒げ、真っ向から対抗せんと放った雷撃とぶつかり合う。
信武「口出しする権利くらいあったっていいだろうが! 当事者の息子として! ……お前の、たった一人の親友としてッ!!」
水希「この期に及んでお涙頂戴? くっだらな……」
信武「〜〜ッ! テメェ!!」
言い争う最中、
力と力の衝突は激しさを増すがやがて限界を迎え、互いの攻撃が行き届くことなく爆ぜた。
信武「……じゃあ聞くけどよ、ほんとは他人なんかどうでもいいんだろ? その性格故に、お前嫌々やらされたんじゃねぇのか?
第一、お袋が死んだ今、親父を助け出せば喜ぶとでも思ってんのかよ……なぁ?」
水希「…………」
信武「――黙ってねぇで答えろッ!!!」
曇天から怒号が降り落つ。
そして次第に雨脚が強まるにつれ、ゴロゴロと不気味に奏ではじめる。
……やっぱり、何も分かっちゃいない。
どうして、同い年の中でたった一人の親友を、戦争に巻き込まないよう深祐さんにも協力を仰いで裏工作を重ねて来たのか。
話さなかったこっちが全面的に非があるのは認めるけどさ……どうせ信武のことだから、たとえ力がなくても付いてくるかも知れなかったでしょ?
何よりそれが、
水希「アンタさ……さっきから、所々勘違いしてない?」
信武「――――は」
いきなり突拍子もないことを言い出す僕に対して困惑してしまうのも無理ない。
水希「この際だから教えてあげる。あの計画はね、元々は他国と不可侵条約を結ぶように形だけでも抑止力を作ることが第一目標だったわけよ。僕を護衛役として投入させたのも非常時に備えての保険でしかないしね」
他種族と仲良し小好しなんて、所詮聞こえの良い建前に過ぎないけど、その建前も蔑ろにせず計画を成し遂げることが一番の理想だったからね。
水希「確かに、他人なんて所詮どうだっていい存在だよ。でもそんな私情に
信武「だったら……お前も、親父達も、星河大吾に利用されてるって、わかった上で計画に賛同したのかよ?」
水希「そうだよ。ぶっちゃけ、揃いも揃って物好きで、むしろその状況を面白がるような変態ばっかだったよ。特にアメロッパ出身のオッサンがね」
信武「オッサンて……」
それこそ侮蔑に値するだろ…と呆れながらツッコミを入れられそうだが、構わず続ける。
水希「ねぇ、信武。なんでこの星の周りがサテライトに囲まれているか、疑問に思ったことある? ……地球の通信環境をただ良くする為の道具としてじゃない。AM三賢者達が頑張って結界の役目も果たしてくれてるの。
それもこれも、リヴァイアや
クラウン『AM三賢者……彼奴ら、死に損なっておったというのか』
クソジジイもやっと誘い込まれていることに気づいたか、目を見張るほど驚きを隠せずにいる信武と同様だ。
ていうか、どっちが死に損ないだよ。
クラウン『それはそれとして、じゃ……誰がクソジジイだ言うに事欠いて失礼じゃろうが!! ワシぁこれでもまだアラフォーじゃぞ! ア・ラ・フォ・ぉー!!』
水希「ふ〜ん、あっそ」
クラウン『ぬぅ…?!こんのクソガキめがァ……!!』
心が砕け散る音が聞こえそうだけど、そこまで歳行ってないって抗議されても興味ないんだよね、全くもって。
水希「まぁ不幸中の幸いか、他のFM星人達も依代となる人間がいなきゃ力が出せないみたいだけど、そもそもの時点で戦う前にこっちが弱ってたらフェアじゃないしね」
信武「……何だよ、それ、聞いてた話と全く違うじゃねぇかよ。
その口ぶりじゃあお前、事の全てをわざとやってのけたって言うつもりか? 多くの犠牲者を生んでおいてまだ懲りねぇのかよ!?」
水希「そ。ぜぇんぶわざと。つーかさ、一から十まで教えるバカが先導者だったら、それこそ実行する以前に計画自体がパーになっちゃうじゃん」
信武「だとしてもだろ?!……親父の野郎……わざわざそんな危険地帯に出向くよりも先に自分の身を案じるだろうが、普通……」
水希「それが勘違いだっつってんの。人を怖がり扱いしてくれちゃってさぁ…そんなんだから深祐さんとクソジジイの良いようにされるんでしょうが」
クラウン『まだ言うか貴様ぁ!!』
血相変えて怒鳴る爺はさておいて……普段そういう素振りは見せないし、僕自身の事を棚に上げてしまうけれど……、時折見せる幼稚な一面――主観に囚われがちな発言は、見ていて本当に嫌気が差してしまうものだった。
今更、何をどう説明した所で釈然としてなさそうだから。
水希「ここまで言っても判んないの? 元より全員が決死の覚悟で臨んできたんだよ。
むしろ自分を大切にしろとか無理な話でしょ。出来てりゃ最初から、誰も、なぁんにも苦労してこなかったんだよッ!!」
信武「………水希、俺はただ……お前に苦しんで欲しく――」
水希「信武はさ、もっともらしい事を訴えてるつもりなんだろうけど、こちとら一々私情を挟んでらんないし。そうやってガキみたいに駄々こねられてもさ……正直見るに堪えないんだよね」
これ以上は聞いてられないと吐き捨て、敵味方関係なしにかけてくれた温情すら突っ返し、ついに信武は俯いてしまったが、
信武「…………もういっぺん、言ってみろよ」
剣を強く握り締めた途端、刀身に纏わりつく雷が憎しみを帯びたかのように黒く変色しだした。
信武「この―――クソ野郎がァァアッ!!!」
両脇にいる氷像を通して再度ブレスを放とうとした瞬間。信武の姿が一瞬消え、気づいた頃には空中から剣を振り下ろそうとした。
剣から発せられる強大なエネルギー波にあの構えは―――間違いなく、必殺技……!
辛うじて見逃さずにブレスで迎え撃つが、やはり二体召喚して火力を補っているとはいえ押され気味になってしまう程、信武の力が圧倒的なんだ。
信武「お前が……お前なんかがいるから、親父達がぁ!!」
水希「はぁ……マジうっざ。あのさ、アイツらみたいに全責任をなすりつけるの止めてくんね?」
信武「うるせぇッ!!!」
吠えると更に威力は増し、止むを得ず一瞬の速さで後退すれば、さっき立っていた所にだけ道を分断するように崩れた跡が見られた。
下手に応戦して事故らなかっただけマシか、と息つく間も無く間合いを詰める信武に槍を構えたものの、ほとんど防戦一方となってしまっていた。
信武「人が必死こいて訴えかけてる姿がそんなにも見苦しいか!? 見捨てておいて責任をなすりつけんなだと!? どの口叩いてんだテメェは!!」
怒りで我を失った連撃は荒っぽさが目立つが、しっかり握っておかないと腕が持ってかれるくらい非常に重たく、より一層殺意が込められている分、反撃はおろか……今の自分にはそれを受け止めることしかできない。
疫病神として背負わされた罪禍を、まくし立てるように責める連中の顔が浮かんで、身をすくんでしまいそうだったから……。
信武「死ね、死ねっ……死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!――――――死にやがれぇぇええ!!!!」
自分はいつから傲慢で、薄情で、無神経で、人を慮ることもできないゴミクズに成り下がったのだろうか。
行き場のない責め立てにも、なんとも思わないなんてね。
どれをとっても努力が報われないなら、何のために頑張ってきたか、もうわかんなくなってきた……。
信武「アアアアァァァァァァ――――」
(は、ハハッ……やっぱどこまでも、性根が腐ってるわ……)
被っているヘルメット越しから泣きっ面を見せる信武を見て、内心…一人でに嘲るのだった。
水希「――ぐァッ!!」
自慢の槍も信武の一太刀で呆気なくへし折られ、耐えず尻餅をつくと、前回の最後みたいにまた喉元に剣を突きつけられたが……目に見えて震えており、あと数ミリが届かないままだ。
信武「――――――」
水希「…………トドメ、刺さないの?」
痺れを切らし、殺らないのかと聞くが、震えたまま剣を納め……背を向けた。
信武「失せろ……もうお前の顔なんか拝みたくもねぇよ……」
さっきまでの戦意を失くし、消え入りそうな声で言われたのを最後に戦線離脱した。
もし、この場に深祐さんもいたら、彼直々に「君は親友としての責任を放棄した。そのツケはもう払うことすらない。自業自得だよ」って皮肉めいた説教を受けたのかもね……きっと。
三機のサテライトの存在について、通信環境を良くするだけに留まらないんじゃないかと思い、サテライトの恩恵でAM星人とFM星人達が、母星にいた頃と同じとまではいかなくても、最大で60%までの力を引き出すのを助長するのではないかという自己解釈のもと、地球を覆う結界の役割も担っているという設定を作りました。
執筆を重ねる度にここまで後味の悪すぎるお話を作ることになったことは、書き始めた当時の自分からすれば想像がつかないことでしょう。
ややネタバレですが次回、心折られてしまった信武が、水希の過去について触れます。
そこで心境の変化が訪れればいいんですけどね。では!