兄ちゃん達が今頃戦っているかもしれない状況下、こっちはこっちで苦戦を強いられている所だった。
一見互角でも僕の方が押され気味だし、スターフォースが未だに使えない上、前回と違って本気で仕留めに来られているのに……何故だか向こうの動きについて行けているのだ。
自分でも不思議に思うけれど、今の僕を突き動かさせるのはきっと……微力ながら兄ちゃんを守りたい、助けたいって気持ちでいっぱいだから。
その想いが背中を押すように感じさせられるものだ。
ウォーロック「――スバル、よく聞け」
その合間、宇田海さんとの距離を取ろうとしながらロックの話を聞き入る。
ウォーロック「水希がリンドヴルムに侵されているのと同様に、宇田海のやつもキグナスとの同化が進んでるからな。……一心同体と言える状態じゃあ、恐らくは――」
スバル「……死ぬかもしれないんでしょ?」
思い当たる節、現状を見れば兄ちゃんと同じく深刻なのはわかる。
言い分から察するに、
答えを言った途端に黙り込んでしまったロックの反応が、猶予がないということを証明しているから。
大体、ゲームでよくある呪われた装備のように、パワーアップの対価が不釣り合いなんだよ。
宿主の人格を奪うなんてふざけんなって話だろ。
スバル「なら尚更、早いこと倒さないと……ッ!」
攻撃に移ろうとして振り返ると、瞬時に間合いを詰めてきた宇田海さんが拳を突き出される。それを両腕をクロスさせて防ぐが、しばしせめぎ合った。
深祐「二人で仲良くお喋りとはね、気楽なもんだねぇ」
スバル「そう見える? こっちは結構焦ってんだけ、ど!」
勢いをつけて振り払い回し蹴りで応戦するも、身長差が相まってか体を仰け反らすだけで簡単に避けられた。
そこからは、僕はバトルカードを、宇田海さんは持ち前の能力と武術を駆使して、攻防を繰り広げるのだが……どれも互いの決定打とならず、時間が過ぎていくばかりだ。
……しかし、その時。不意に起こった出来事によって流れが変わる。
スバル「―――――!?」
呆気に取られたのは、放たれたキグナスフェザーをガトリングで撃ち落とした直後、煙幕が晴れた瞬間だった。
宇田海「たすけて、助けてくれ、スバルくん……!」
それもこれも、同化が進んでしまっているからこそ為せる芸当だと思うが、実際目の当たりにして驚かない方がおかしい。
ウォーロック「躊躇うな、攻撃しろ」
スバル「待って、少し話をさせて」
ウォーロック「……正気か?」
当然、僕なりに一旦頭を冷やそうとしたつもりだ。
兄の手解きがなきゃ、きっと動揺したまま攻撃できなかったと思う。何せさっきから『
その様子に耐えかねたロックが攻撃を促し、即刻拒否して別の行動をとる僕を見て訝しんでいたけど、構わずに宇田海さんと対話を試みるのだった。
スバル「そんなんで誤魔化せると思ったの? 宇田海さん。いや……キグナス」
眼前の
キグナス「まあ、既に正体がバレてるから仕方ないけど…驚いたよ。意外にも平然としているなんて」
スバル「御託はいいから、宇田海さんを解放しろ!」
逆に本気で騙せるとでも思ったか。
だとしたら無性に腹が立って仕方がない。
キグナス「……そんな睨まないでくれよ。せっかくそのつもりでいるってのに」
ウォーロック「ハッタリだな。良心の呵責すらもねぇテメェらがそんな真似する道理がねぇ。……一部を除けばな」
キグナス「ふん、善人ぶってるキミ如きに言われたくないね」
ハープは違うと補足するロックに苛立ちながらも、鼻で笑い飛ばした。
キグナス「スバルくん。一つだけ、いい事を教えてあげるよ。そこにいるウォーロックはね、君のお父さんが乗ったキズナ号を攻撃したんだよ」
その時、間をとるように雷が落ち、次第に雨粒が降り注がれていく。
キグナス「彼から何を吹き込まれたかなんてどうでもいい事だけど、所詮は侵略者である僕らとおんなじってわけさ」
突拍子もない発言に硬直しかけたが、何も知らされていないと思い込んでいる奴を見て、ついほくそ笑んでしまう。
確かに。記憶を見て事情を知ったとはいえ、兄ちゃんの視点での事だから真偽はわからない。
……だがどうにも、キグナスの言動は動揺を誘うための罠だとしか思えなかった。
スバル「……兄ちゃんのお陰かもね。何も気負わなくて済んだから」
ウォーロック「スバル、俺は……」
キグナスに聞こえない程度での独り言に、ロックが不安げな顔でこちらを覗うけれど、
スバル「大丈夫だよ」
何も憂いはないと諭して、僕の反応を待っている宇田海さんを見据えた。
スバル「……人を馬鹿にするのも大概にしろよ、キグナス」
キグナス「ほう?」
スバル「ロックがそんな悪どい事を、なんの罪悪感もなしにできる奴だったなら……初めから信用なんかしていない!」
声を荒げているその時、胸元のエンブレムが輝きだしたので目元を覆った。
キグナス「なんだ……あの光……?」
眩しさに怯んでいる僕を、キグナスもまじまじと見ながら呆然としていた時、
いつか夢で見た白一色の異空間に飛ばされた。
◆◆◆
地面を踏んでいる感触はなく、浮遊するかのような感覚はあった。
それどころか、よく見たら私服姿に戻っていた。
スバル「うそ、こんな時に…?!」
『――スバル』
動揺する僕を差し置いて、三賢者が黒いシルエットを取り払った姿で目の前に現れる。
そしてそのうちの一人――ペガサスに名前を呼ばれ、見上げる。
ペガサス『今一度問おう。お前は何のためにスターフォースを
……なんの為? それはもうとっくに決まっている。
スバル「僕は、このチカラで、兄ちゃんと宇田海さんを助けたい!」
ペガサス『その
……だが、今のお前の実力では、両方は助からない。我等の力を持ってしても、だ』
要は、どちらかを選べと言いたいのだろうか。
無理だ。そんな風に片方を見捨てたくない。
兄ちゃんだって、宇田海さんだって、帰るべき場所があるのに、それを切り捨てるくらいなら、両方助けたい!
スバル「それでも、助けられるなら……力を貸して!」
必死に絞り出すように答えると、ペガサスの両隣にいる二人が前に出る。
レオ『元より、星の試練を突破したお前だからこそ託したのだ。貸さない理由はない』
ドラゴン『だが忘れるな。我等のチカラの基盤は【絆】。守りたい絆が多ければ多いほど力は増すが、ふとした瞬間に崩れ去るものならば相応に弱体化してしまう代物だからな』
スバル「わかった。大切に使わせてもらうよ」
ドラゴンの忠告を最後に視界はブラックアウトした。
◆◆◆
一方、宇田海に扮したキグナスはというと、スバルを囲い尽くす光が弱まる隙を見て、攻撃に出る算段がついた途端に突進するが。
その光が、如何なるものの侵入を拒む吹雪と化し、やむを得ず後退するキグナスが苦い顔で見やった。
やがて吹雪が晴れ、戦場へと舞い戻る。
その姿こそ――
スバル「スターブレイク――【アイスペガサス】」
真にスターフォースを覚醒させたスバルがそこに立っていた。
スバル「……ロック、速攻で終わらせるよ」
「ああ、やってやれ!」と後押しするウォーロックだが、
キグナス「させるか――〈ダンシングスワン〉!」
我に返った彼も同様にケリをつけようと、再び突進攻撃に入る。
……が、背中に翼が生えた今では、軽く飛ぶだけで避けることは容易い。
スバル「――〈捕縛せよ〉!」
そうして攻撃が止むと同時にキグナスの両脇から魔法陣が展開され、そこから射出された氷の鎖が彼をがんじがらめに縛り付けた。
なぜ使えたかと問われれば返答に困るものだが、言えるとすれば「僕にもできる」とイメージしながら、無我夢中でやってのけた。それだけだ。
キグナス「なに……?!」
ほんの一瞬で身動きが取れなくなり、動揺を隠せない彼を他所に、足元から新たに巨大な魔法陣が浮かび上がる。
スバル「
下準備は整った。
あとはこれで倒しきればと、その一心で言い放った。
スバル「〈マジシャンフリーズ〉!!」
……手応えは感じた。
彼の断末魔を聞いて、効果てきめんだとスバルは確信した。
その証拠に、スーツ姿に戻った宇田海が気絶した境に落下している。
当然見過ごすことなく、瞬時に彼の下へ向かい受け止めようとした。
その後、都庁前で偶然居合わせた天地に宇田海の保護を頼み、了承を得てから付近のウェーブロードに降り立つが……いくら見渡しても姿が見えず、
スバル「ねぇ、どこにいるの……兄ちゃん!!」
何度呼ぼうとしても、スバルを呼ぶ声が返ってくることはなかった。
アニメ版より早く、原作より少し遅れて遂に覚醒しましたね、スターフォースが。
そして本来、言霊の陣でおなじみの技〈捕縛〉。
実際は水希専用のアビリティですけど、スターフォースの覚醒を経てスバルも(アイスペガサス換装時限定で)使えるようになる展開って個人的に好きなんですよ。
なんの手ほどきもなく使えると知ったら、嫉妬しそうでもあるんですがねw
予定より2話挟んでお送りしましたが、次回は
それでは!