流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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44話 一難去ってまた一難

今までの所業は、決して赦されるものではない。

 

死刑じゃ済まされないことは判りきっている。

 

実際、本来なら絶縁されて当然のことだと諦観し、信武と向き合うことに怖気付いて逃げていた。

いつまでもそうしてばかりじゃいられないと、頭では理解していながら。

 

……それでも、許してくれた。

 

信武を好いていながら、気に入らない所もあったけど、信武もそれ以上に不満を抱えていたようで、戦闘中は互いに本音をぶちまけたわけだが、

 

スバルに過去の記憶を見せた時と同じように、事情を知った上で許すと言ってくれた。

……まぁ、無断で日記を読まれたのは不本意なんだけどね。

 

生きてくれとせがまれた時は戸惑ったものの、こんな自分を必要としてくれるのなら、諦めるには早いなと思わされると同時に、何年も辛い思いをさせた自分を心底恥じた。

 

そんなこんなで、結局は信武の言葉に絆されしまい、今に至る。

 

 

 

それにしても……まさか男同士で、こんなに密接するとは。

 

まぁ、いつか恋人みたいな関係になれたらなと夢見ていたし、かと言って、未だに信じられないとも思っている。

 

ただ、いきなりのことでも拒絶してこない信武の寛容さに、もう少し甘えていたかったのだけれど、

 

『いつまで戯れ付いておるのだ、人の子よ』

 

誰の目も無く2人っきりだから、時間が止まっているようにさえ感じる雰囲気だってのに、エコーの掛かった声に水を差され、慌てて離れてから信武と顔を合わせられずにいた。

 

水希「い、いや、その……出来心といいますか、なんかちょっとそういう気分だったと言いますか……」

信武「そうそう! だから今のは大目に見て貰いたいと言いますか……」

 

『誰が、顔を火照らせながら惚気けろと言った……』

 

人差し指を合わせながら俯く僕も、目を泳がせながら頬をポリポリと掻く信武も、言い逃れしようとするけど、語尾に連れて弱々しくなるくらいの気まずさに、声の主からは煙たがられ、ぐうの音も出ねぇですコンチキショー……。

 

うん。言ってなかったね。頼んでもなかったよね。

惚気話好きだから我も聞かせて〜、だなんて。

 

実際に口にしたら殺されそうなので胸の内に押し留める。

 

……そう言えばまだ、綺麗さっぱりに解決したんじゃないよなぁと、横槍入れてくる声の主が姿を見せてから、思い知ることとなる。

 

水希「――って、でっかぁぁーーー!!!」

信武「おいおいマジかよ!?」

 

二人して目をかっ開いてドン引きする理由がね、そもそもとしてデカすぎんのよ。

 

体長はパッと見15メートルくらいあって、外見はリヴァイアと同じ。

角の生えた首長竜と似て、全身を水で構成したかの様に流麗だが、体色が明るいリヴァイアと違って彩度の薄い群青色であり、切れ長の両眼は鮮血の如き赤く、顔から背中にまで埋め尽くす菱形の鱗は目を凝らすと黒ずんでいた。

 

水希「……これが、リンドヴルム……」

 

初見ながら噂に違わぬ禍々しさだと感じ、同時に悟った。

太刀打ち出来る相手ではないと。

 

信武「……あんなデカブツの力を何年も封じてたんだろ、改めて思ったけどスゲーなお前……」

水希「いや、封印に関してはリヴァイアに任せっきりなんだよ。こっちから任意で解放できるだけでね。……そうさせる為の権限を譲って貰えなきゃ、そもそもとして力を行使できなかったでしょ」

信武「なるほどな」

 

どうやら信武も眉間を寄せて警戒する辺り、リンドヴルムの底知れ無さを勘付いたらしいが、一部誤認している所を訂正したら納得してくれた。

 

クラウン「――よもや、再び相見えるとはな……」

 

そう言って眼前に実体化するクラウンは、どこか感慨深そうに見遣るリンドヴルムと対面した。

 

リンドヴルム『久方ぶりだな。幼子だった頃は遠く昔のことだが……、相変わらずちまっこいなぁ』

 

クラウン「ヒトのコンプレックスを言うな!」

 

全身を跳ねてキレるクラウンだが、ちまっこいのは否定しようがないし、再開して早々にそれはねーだろとツッコミを入れてくて仕方ないけれど、藪から棒に尋ねた。

 

水希「ねぇ……いきなりなんだけど質問いい?」

 

リンドヴルム『何だ……?』

 

水希「二人って、ひょっとしなくても知り合い……なの?」

クラウン「知り合いも何も、FM星に現存する漁村の生まれじゃったワシは、物心がつく時に奴と知り合っただけのことじゃ」

信武「ふーん。それはそうと……どう見ても凸凹コンビだよな」

水希「言えてる」

クラウン「ほっとけ!」

 

話を聞く限りじゃ、リヴァイアと同じ故郷に住んでたってことになる。

意外っちゃ意外だが、今はそんな話をしている場合ではなかった。

 

水希「……ッ、そうだ、リヴァイアが……!」

 

ほぼ強制的に変身を解かれて尚、リヴァイアの気配が感じられないことに焦りを抱き、慌ててトランサーの画面を見たけど、……やっぱりいない。

 

原因は突き止めるまでもない。他ならぬ自分が蒔いた種だから。

 

……けれど、動悸が収まらず、真っ白になった頭では事実を受け止めるどころの話じゃなかった。

 

水希「……リヴァイアを、返して……!」

 

リンドヴルム『我が力を返上しておきながら、言えた台詞か?』

 

いくら懇願したとしても、奴からすれば被害者面もいい所。

怒気を含ませた物言いに身を退いてしまいそうになる。

 

リンドヴルム『――我は未だ、あの屑共には生涯を以てしても殺し足りんと思うておる。……だが、汝は復讐の念があろうと、裡にある望みを棄てようとせん。その理由は、言うまでもなかろう』

 

水希「……それは……」

 

……返す言葉もない。

 

ブラザーバンド計画における建前であり、夢である、異種族との共存。

その実現を夢見ていたからこそ、『お前が優柔不断だから、やること成すことが中途半端になるんだぞ』って、遠回しに怒ってるんだと思う。

 

でも、それとこれとは別問題でしょ?

 

水希「もう二度と戦えないなら、それでいい。……けど、リヴァイアがいないと……」

 

リンドヴルム『その隣にいる男が、汝と共に生きようとしておるのに……図々しいものだな』

 

そんな、吐き捨てるような物言いに狼狽えていると、

 

信武「………それが、“星河水希”だから。だろ?」

 

突然、信武が沈黙を破るように口を挟み、続けて言いだした。

 

信武「まぁ図々しいのは否定しねぇよ。コイツはいっつもワガママで、自分の意見を曲げない頑固者だしな。その癖して寂しがり屋だから、心の拠り所がなきゃ生きられない。

そんな弱虫が、俺と一度縁を切っても生きて来られたのは、俺の代わりに寄り添った奴が、待ち人の安否に気を遣る水希と一緒に帰りを待とうとしていたから」

 

傍らで聞いていたが……心なしか、段々と怒りがこもっているように感じ取れる。

 

信武「俺だけじゃダメだって打明けたように、築き上げてきた絆をそう易々と失えねぇんだよ!!」 

水希「信武……」

 

怒鳴り声を上げる信武とて気持ちの整理がつかない筈だけど……なんやかんや理解を示し、目の前の悪魔に猛抗議まで……。

 

……本当に、友達になれたのが奇跡としか思えない。

 

 

けれど奴は、信武の言葉に全く意に介すことはなく、せせら笑う。

 

リントヴルム『……ならば、お望み通り、汝の元へと返上してくれよう。――ただの傀儡(くぐつ)をな』

 

その上、聞き捨てならない発言をされて、顔が強張りながらも問いかけた。

 

水希「……何が言いたいの?」

 

リンドヴルム『汝が扱ってきた力は、基より我が力だ。……故に、此奴を生け贄に復活を遂げられるのならば、その残滓をくれてやると言っておるのだ。

……尤も、抜け殻如きに自我が宿ると思えんがな』

 

水希「そんな……」

信武「ゲスが! どのツラ下げて言いやがんだ!」

 

リンドヴルム『アクエリアスの子として産まれたリヴァイアはな、謂わば我を(かたど)った転生体なのだ。……そして月日を経て、表裏一体の存在となった我らが完全に独立するためには、片方の自我を取り込むことで成される。

……酷ではあるがな、どの道こうなることは必然。早いか遅いかの違いよ』

 

水希「そんなの、いや……リヴァイアまで……!」

信武「ッ、まだそうなると決まったワケじゃねぇだろ! しっかりしろよ、おい! ……クソ」

 

生まれた経緯にも驚く部分はあったけれど、それ以上に最も聞き捨てならない話に打ちひしがれていた。

 

……リヴァイアが、消える? これからなのに……?

 

唯一無二の理解者を、信武に次ぐ親友を、実の兄のように慕っていた人を、自分が怒り任せに力を解放したせいで戦うための力すら失くしてしまう。

 

考えれば考えるほど……恐怖で身が竦み、かつてない絶望を感じて目の前が真っ暗になる。

 

それ程までに憔悴し、信武の呼び掛けに反応できなかったが、気がつけばまるで親の仇でも見るように睨みつけていた。

 

水希「なんで……そんなことを平然とできるの……?」

 

リンドヴルム『……我は、汝のような腑抜けと生涯を共にする気は毛頭ない。それだけだ』

 

「それだけの理由で、水希の大切な人を奪おうだなんて……横暴すぎじゃないかしら?」

 

突然割って入ってくる女性の声。聞き覚えも何も、レティだとすぐに気がついた。

この場にいる全員の注目を集めながら、天女の如く舞い降りるなか、酷く冷淡な眼差しをリンドヴルムに向けていた。

 

水希「―――レティ」

 

か細い声音で名前を呼びかけると同時に、レティもこちらの方へ一瞥する。

 

信武と戦ってる間は全く気配を感じなかったけれど、協力関係であるからこそ、今この状況を黙って見過ごす筈がないだろうなと、彼女の心中を察する。

 

レティ「アンタに聞きたい事は山程あるけど、まず先に問題を片付けてからよ」

 

先程と打って変わって妙に穏やかな口調であっても、表情から見るにキレているのは明白なこと。

後々されるであろう説教から逃れたいと考えていたら、レティは視線を戻してリンドヴルムに問いかけようとしていた。

 

レティ「水希の体のことも考慮して()()()()()()しかできなかったわけだけど、まさか自分から出ていくなんて驚きね。一体どうやって抜け出せた?」

 

リンドヴルム『汝の言うておる妨害は、人の子が床に伏しておる合間に消え失せておったぞ』

 

レティ「……なんですって?」

 

リンドヴルム『何、簡単な話よ。汝が人の子の体内に流し込んだノイズを、人の子自らが悪影響を取り除いた上で取り込んでおったのだ』

 

……え? いつの間にそんな、◯キジェット吹きかけられるようなことされてたの?

まぁ確かに、これと言った弊害もなく動き回れたわけだけど……自分で自分を虫扱いしちゃってなんか悲しくなるんだけど。

 

レティ「口ではどうとでも言えるでしょうけどね……理論上は不可能よ。並の電波星人はおろか、人間如きに成せる技能じゃない。ノイズの悪影響だけを除去して身体に馴染ませるなんて話……そもそもとして土台無理なコトなのよ?」

 

リンドヴルム『だが、それに適した道具が既に作られておれば、果たしてあり得ないと言い切れるのか? 現に、それを人の子が証明しておるだろう』

 

レティ「………随分と自信満々に言えるのね」

 

リンドヴルムの発言に対し、訝しげに眉を顰めるレティ。

その2人のやりとりを傍で聞いて、悪影響を取り除くという点で一つだけ思い当たる節はあった。

 

水希「もしかして、“ジョーカープログラム”のことを言ってるの?」

 

リンドヴルム『そうだ。最初の暴走にて、あの男は汝の体にプログラムを埋め込み、我が無理矢理にでも主導権を握ろうとするものなら、システムが作動し迎撃するよう仕掛けられておったのだ。

しかしそれも……晴れて自由の身となれば、脅威にすらならんがな』

 

体に埋め込まれた、か。

たしか、ヨイリーおばあちゃんからもそう言われたような……。

 

だとしたら、封印を解いた後でも、自我を乗っ取られるまでの時間が長引いていた理由にもなる。

 

水希「また、助けてくれたんだね……ユリウス」

 

別れた後も知らぬ間に見守ってくれたんだと勝手に解釈し、胸に手を当てながら彼の名を声に出した。

 

レティ「どうやら、聞くべき事が一つ増えたようね……」

 

その発言は、ジョーカープログラムの存在を知らず、レティの妨害が裏目に出る可能性に気づけなかったのを指しているんだと思う。

何しろ、自分の口からレティに伝えてなかったからね。

 

しかし、不意に笑みを浮かべ「でもまぁ」と声に出したレティは、手の平サイズのゲートから軍刀を取り、切っ先を突きつける。

 

レティ「ここでアンタを消滅させれば、リヴァイアも復帰できて一石二鳥よね?」

 

形容しがたい威圧感に身が縮こまりそうではあるが、軍刀以外の武装もせずに戦線へ立つ姿はむしろ、頼もしさすら感じ取れた。

 

リンドヴルム『それは不可能と断言しておこう。我を斃せば、人の子は戦力外になるぞ』

 

その瞬間。海面から水で創られた龍の頭が無数に召喚され、開いた口から咆哮を放とうとしているが、これと言って動じないレティも対抗すべくして、スパークの迸る音に伴って発生するノイズを切っ先へと凝集させた。

 

レティ「お生憎様。私に不可能という言葉は存在しないの。それに……」

 

放たれる超高水圧のブレスを、たった一筋の赤黒いレーザーが迎え討とうとする。

 

レティ「そもそもの話。私を斃すことすら不可能なら、水希相手にコンタクトを取ろうと思わないわよ」

 

そうして、衝突の後に爆煙を起こしてから……本格的な戦闘が始まろうとしていた。

 

◆◆◆

 

水希との戦闘でボロボロだったから、この際助太刀してもらえるのはありがたい……なんて呑気に思っていたら、

 

信武「マジか……!?」

 

目の当たりにした光景に、驚愕のあまり声が出てしまっていた。

 

リンドヴルムが追撃で放ったブレスを、レティは軍刀一本で、いとも容易く叩き切ってみせたのだ。

わざわざ攻撃を受けるにしても、衝撃が凄まじいのは想像つくだろうに……。

()()()じゃなくて()()()()ゴリラを超越するレベルの腕力じゃないですかヤダわぁ〜。

 

実際に口にしたら殺されるので胸の内に押し留める。

 

……しかし、注目すべきなのはリンドヴルムもだろう。

 

レティの保有能力であるノイズ。

かつての戦闘を思い返しても……まともに立てないレベルの船酔い感覚と、呼吸困難になる程の息苦しさを同時に受け、開始から10秒足らずで惨敗してしまったという苦い経験しかない。

 

現に今も、原因がレティによるものなのか判らないけれど、時折目眩がして気分が優れないのだ。

 

だからこそ、水希から離れたのなら、何かしらの悪影響が出てもおかしくない筈だが……デカい図体をしていながら、レティの攻撃には物ともしない様子。

恐らくは、水希が言ってた【ジョーカープログラム】なる物の効果によって耐性が付いた……となれば、平然としてられるのも納得できる。

 

……でもぶっちゃけノイズの使用よりも、拳一つで鎮められそうな腕力の方が厄介だけどな。

 

クラウン「相変わらず規格外じゃのう……あの女もじゃが」

 

確かに。言ってしまえば両者とも本調子じゃないにも関わらず、それでいて互角に()()()()()()()

 

出せる全力を以て攻撃を仕掛けて尚、どちらとも被弾せず、大した疲労も見えない。

 

水希「リヴァイア……」

 

その一方で、不安で押し潰されそうな……思い詰めた顔をする水希の肩を抱き寄せ、慰めになるかわからないまま言葉にした。

 

信武「今は、信じるしかない。レティが……お前の為に頑張ってくれてるんだから」

水希「……そう、だよね……」

 

もし、コイツらが全力を出そうものなら……レティが完膚無きまでにすると思うが、はっきり言って見たくもない。

 

ただ言えるのは……今は戦いの行方を、水希と二人で見守るしかなかった。

 

水希「小さい頃から、ずっと一緒だからさ。考えたことも――ううん、考えたくもなかった。……でも、確かにレティならなんとかしてくれるって、そう思えるの」

信武「――――」

水希「少しだけ、信じてみようと思う」

 

その言葉に、思わず笑みを溢してしまう。

 

和解を経てようやく、意識を変えてくれるのかもなと、内心期待しているその時。

 

信武「………!?」

 

リンドヴルムの野郎が、雹弾を全方位に……それもデタラメに掃射するもんだから、当然こちらにも流れ弾が来る。

 

しかしまだ変身を解いてないおかげで、水希を抱えながら動くための余力は残っていた。

 

水希「な、何故お姫様抱っこ……!?」

信武「口閉じてろ。舌噛むぞ!」

 

顔を赤らめる水希に構っている暇はなく、流れ弾を避けながら来た道を引き返すように森へ向かう。

 

 

 

 

あの二人の視界から外れることができて、尚且つこっちからは充分に見渡せる場所となると……森の入口付近しか思い浮かばない。

 

……だが、雪に覆われながらも生い茂る草木が身を隠すのにはうってつけだと、己の判断に従って進み行く。

 

信武「……。……ここまで来れば大丈夫か」

 

そう言って、水希を抱えたまま、休息も兼ねてその場に座り込む。

地面にも雪が積もってるから、凍えさせるわけにもいかないしな。

 

水希「……重くないの?」

 

俺の顔を見るなり訊ねてくるが、正直言って5キロの米袋を持つより断然軽いと感じている。

それもこれも電波変換した恩恵だろうけど、変身を解いても平気だと言える自信はある。……なんてったって、

 

信武「鍛えてるからな。これくらいで音を上げちまうなら騎士(ナイト)にすらなれねぇよ」

水希「……バカ」

 

不安を押しのけるように笑って返すと、照れ隠しのつもりなのか、罵りつつも俺の胸元に顔を埋めた。

 

あのさぁ……いちいち可愛い反応しないでくれる?

お前から、その……キ、キス、されて……今にも限界突破して襲いかかりそうで理性失いかけてんのよ。わかる?

 

……っと、いけないいけない。

あの2人の攻撃が来ても対処できるように警戒しとかなきゃと気を張った時。

 

気怠げな視線を俺たちに向けながら、クラウンが質問しようとしてきた。

 

クラウン「イチャつく所悪いが……水希よ。訊かせてくれぬか?」

水希「……何を?」

クラウン「彼奴(きゃつ)は、同族であるFM星人……主に都市部の連中から疎まれた被害者なのじゃ。じゃから連中への復讐心に関しても、同情を禁じ得んのじゃ」

水希「……」

 

腐れ縁的な関係だからなのか、あのデカブツに対して不憫に思うのが伝わってくる。

それこそ、俺だって……学生時代に皆から距離を置かれてる水希を捨て置けなかったように、クラウン自身も同郷の者として何とも思わない訳がないだろうしな。

 

などと考えていると、いつにも増して真剣な面構えをしながら、言葉を発した。

 

クラウン「じゃからこそ今一度聞く。お主は、本当にFM星人(ワシら)と友好的になれると思うておるのか?」

 

そう問われてから少しの間、考え込んだ末に水希は答えた。

 

水希「僕個人としては、ただの絵空事だと思うけどね。アンタの言う連中らに警戒されたら尚の事。……でも、リヴァイアみたいに優しい人もいる筈だし、大吾さんが叶うって言ったなら、なんとかなりそうだと思える。……妄信的かもしれないけど、あの人の思想に感化されたからこそ、学業を疎かにしてでも護衛として付いて来たワケだしね」

信武「おうコラ、お前に費やした勉強時間返せよ」

水希「にゃにおう。都立に合格したって余裕かましてたクセに」

信武「首席合格目指してたけど、トップ2止まりだったの。その後の模試で追い越してやったけどな」

水希「うわ出たぁ、マウント発言」

 

心底煙たがるように言われ、拳骨食らわしたろかと思ったが……クラウンめ、微笑ましげに眺めてんじゃねぇよ。

 

クラウン「……“ガクギョウ”とやらについては言及せんが、彼奴が指摘したように望みを棄てきれんのじゃな」

水希「そういうこと。我ながら未練がましい性格してるからね。……だから今は、リヴァイアの無事を祈るしかないんだよ」

 

戦場と化した海辺へと視線を向けて、不安気にそう呟いた。

 

この場にいる誰もが、元通りになって帰ってくるという確証があるかどうかなど、知る由もないのだから……。

 




次回「時代の終わり」
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