……本当に、何日振りの再会だろうか。
戻ってきてくれたことに安堵し、泣きつく僕の頭を撫でてくれたリヴァイアの優しさは、どんな姿だろうと関係なかった。
リヴァイア「レティから聞いた話じゃ、お前5日も眠ってたようだけど、体の調子はどうだ?」
水希「……うん、大丈夫みたい。力を使い過ぎたってのに、体力ごっそり持って行かれたのが嘘みたい」
やっと泣き止んで落ち着いた頃。
二人で窓の外を眺めようとして横並びに腰掛けたら突然聞かれたので、平気だと答えたらリヴァイアは「なら良かったよ」と、優しく微笑みかけて言った。
リヴァイア「……正直、もうお前に会えないかと思ってたよ」
水希「ホントにね……、本当に、ごめんなさい……」
もっと他に言うことがあるのに、いざ言葉にするのにも戸惑い、子供っぽい謝罪しかできなかったわけだが。
リヴァイア「いつまでもショボくれんなよ。お前は、笑ってる顔が一番似合ってるんだから」
責められるどころか、昔以上に甘やかされている気がするけど。
水希「………ありがとう」
感謝の言葉を告げた時、久方ぶりに上手く笑えた気がした。
……ただ、このままイイハナシダナーって展開で終わって欲しかった……。
数分後の自分がそう思う事態に見舞われましてな……。
信武「――水希。見舞いに来た、ぞ………誰だお前?」
リヴァイア「俺か? ……普段なら“相棒”だって答えるけど、あえて言うなら“彼氏”ってやつだ」
ノックした後に入室する信武も、反応に個人差があれど……リヴァイアを見て訝しんでいるのが声音から察せた。
てかちょっと待って、今なんか不穏な空気に満たされてんですがそれは。
リヴァイア「そういうワケだから、お前なんかに水希は渡さねぇ」
そんでもって呆気に取られてる信武へ、リヴァイアが振り向きざまに宣戦布告した瞬間。
信武「……………は?」
戦場や日常でも、かつて感じたことのない殺気に当てられ、恐怖のあまり身震いしてしまっていた。
てか彼氏って、あれ冗談半分で言ったつもりなんだけど!?
信武「……水希、ストーカーに迫られてるんならもっと早く相談してくれりゃあいいのに。何なら今すぐにでも八つ裂きにしてやれるけど……どうして欲しい?」
リヴァイア「ストーカーじゃなくて彼氏だ」
信武「喋んな。水希に聞いてんだよ俺は」
ヤバいヤバいヤバい……もしかしなくても信武の顔、きっとお姉ちゃんの何倍も怖い……!
殺気が凄まじくて後ろ振り向けないよ!!
信武「……何も答えてくれないんだ? 悲しいなぁ、俺のファーストキス奪っておいて浮気なんてさぁ、さすがに酷くね?」
リヴァイア「……ふぁー、すと……?」
水希 「ッ?! リ、リヴァイア、これには
リヴァイア「――え、ちょっと待って、嘘だろ俺が最初じゃないの?? ねぇ水希、なんかの間違いだよね!? 俺が最初だって言ってくれぇぇ!!」
肩揺すられながら尋ねられてもこっちが困るんですけどっ?!
信武「ブハハハハ、アハッハハハハ! おいおいダサすぎんだろ……ひぃぃ〜腹痛ぇ。全部テメェの勘違いで済んでいい気味だわ」
青ざめながら困惑するリヴァイアを見て爆笑する信武が、どこか勝ち誇ったかのように見えるんだけどさ……僕からすれば『張り合うとこなの?』って疑問に感じちゃうんだけど。気のせい?
信武「ちなみに言っとくけど、俺との時は水希からしてくれたんだぜ? それも二回もな」
あ、あれ……おかしいな、知らぬ間に地雷踏んじゃってる僕?
さっきからずっと『早くここから逃げろ…!!』って本能に囁かれてる気がしなくもないんだけど。
リヴァイア「………ふーん、そっかぁ………」
でもそんなの、肩を掴まれてる時点で脱出不可なんだよね。
リヴァイア「なぁ水希……怒らないから、どういうことか説明してくれる?」
水希「……誰か助けてください……」
病院内じゃなきゃ、今のセリフ思いっきり叫びたいところだよ。まったくもって。
それからというもの……窓際にリヴァイア、その反対側に信武が立っており、僕はその間を挟む形でベッドの上に正座して事情聴取されておりました。
信武「―――つまりコイツは、お前にいつも付きまとってるクソ蛇で、人間の姿になれたのはレティのおかげってわけか?」
リヴァイア「そんでこの青二才と和解出来てから、嬉しさのあまり“二回も”キスしやがったのか?」
水希「……左様でございます……」
萎縮ながらも肯定すると、二人してデカい溜め息を……いやこっちが溜め息吐きたいんですけどいいですか? 駄目ですかごめんなさい黙ります。
リヴァイア「くそったれ……奥手なヤツだと高くくってたのに先越されてたなんて……おのれ許すまじぃぃ!」
信武「ホントうるせぇなコイツ……」
悪態をつく信武に先を越されたと知って、この上なく悔しがっているリヴァイアについさっき言われた言葉が過ぎった。
《――よう、お目覚めか? お姫サマ》
……もしかして、寝てる間にキスされてたの?!
そう考えると余計恥ずかしくて赤面してしまうのを他所に、二人の口論は続いていた。
信武「相棒だか何だか知んねぇけどよ、たかだか水希のペット風情が無理して彼氏ヅラすんなって話だろーが」
リヴァイア「んだとテメぇ!!」
信武「ハッ、殺んのか? まぁ俺に勝てる奴なんて、レティ以外に早々見当たる筈ないだろうけど」
リヴァイア「面白え、表出ろクソガキ」
信武「上等。ボロ雑巾にしてやるよ」
火花散らして睨み合う両者だが……まさか恋愛モノの三角関係あるあるな展開を繰り広げて、こうして間近に見るなんて夢にも思わないよ……。
水希「男の嫉妬ってホント醜い……」
クラウン『同感じゃ。そばで聞いてるワシも耳栓が欲しいくらいじゃわい』
「「誰のせいだと思ってんの?」」
水希「そこは息ピッタリなんだね……」
どのみち僕はいま入院患者なわけだから逃げられないが、撒いた種だとしてもこの殺伐とした空間から逃げ出したいと思っていると、再びノックの音がしてすかさず入ってくる足音がした。
……しかも、複数人?
スバル「兄ちゃん、お見舞いに来た……失礼しました」
水希「待って待って! 見捨てないでスバルぅ!!」
縋るように手を伸ばすなか、今度はお姉ちゃんが入ってきたようで……
ねぇ気のせいだよね?!
あかね「アンタ、やっと起きたのね」
水希「………ひょっとしなくても、怒ってらっしゃいます?」
あかね「……、病み上がりだから我慢しようと思ったけどやっぱ無理ね。一発打ちたいからとりあえずツラ貸しなさい? リヴァイア君もね」
リヴァイア「俺も巻き添えなんですか!?」
あかね「弁解の余地はない。覚悟しな」
皆の者、恐れおののけ。
……いやちょっと待ってお姉ちゃん! ひと目見てリヴァイアだって分かったの!? いま擬人化状態なんだけど!?
「止しなさい、あかね。仮にもここ病院なんだから、殺るなら外で殺りなさいよ」
水希「いやもっと言い方あるんじゃない? 他の患者さんにご迷惑でしょう。とかさ――って、おかん?! てことはまさか……!?」
「み〜ず〜き♡」
水希「ひぃッ!?」
そのまさか。僕の母親、星河すみれがわざわざ足を運んだワケだから、当然の如くセットで来られるわけよ。
「会〜いたかったぞぉぉーー!!」
水希「むしろ来んな来ないで下さい!ついでに早く死ねぐえェッ!!」
ダッシュで駆け寄り勢いよく抱きつき、挙げ句は頬ずりまでしやがるこの人こそ、僕の実の父であり、今一番色んな意味で会いたくない
大事な事なので二回言いますが、実の息子に欲情する変態クソ親父です。歩く残念危険物です。
水希「ア"ァ"ァ…!ぐぅるぅじいィィいいい…!」
誠俟「もぉおなんで一つも連絡寄越してくれなかったんだよぉぉ……親子だってのに水臭いじゃねーかよ!」
水希「ぐえぇええ!?!?」
抱きつくにしても加減してよ死ぬって流石に……!!
誠俟「お父ちゃんマジでめっちゃ心配してたんだからな? このっ、このっ!」
水希「ぢょ、おとんギブっ…。マジ、でぇ……ぎぶぅぅぅ!!」
意識が朦朧とした矢先、姉が手際良く引き剥がし、母が追い打ちのコブラツイストをかましたことで九死に一生を得た。
水希「ゲホッゲホッ……は〜あっぶね。危うく天に召されるところだったわ……」
咳き込んだが、今はもうちゃんと呼吸できるくらいには回復したから大丈夫。状況はだいじょばないけど。
スバル「ねぇ兄ちゃん……あの人、本当に僕のおじいちゃんなの……!?」
何度か軽く肩を叩かれ振り向くと、青ざめているスバルにそう尋ねられた。
誠俟「何を言うんだ初孫よ! じいじはなぁ、これでも我慢してたんだぞ……せめて赤ん坊の頃の姿と生でご対面したかったのに、すみれなら良いのになんで俺だけぇ!」
水希「過去を振り返ってから文句言ってくんない?」
誠俟「過去……そうだな、お前とはいつも楽しい思い出を――」
水希「こちとら苦い思い出ばっかなんだよもう喋んなッ!!」
スバル「……この人キモい」
誠俟「グッ……ぅッ、実の孫になじられるなんて……最高」
そんでもって初見だからこそ、おとんの奇行を目にして、スバルのみならず誰もがドン引きのあまり嫌悪に満ちた顔をする一方で、姉と母だけは見飽きたような反応をしていた。
つーかスバルになじられてんのに鼻の下伸ばすんじゃねぇよ気色悪ぃ。
水希「腐ってもコイツがおじいちゃんなんだよスバル……。わかってくれた? アンタが生まれてからずっと、おじいちゃんと会わせたくなかったと思ってた僕とお姉ちゃんの苦悩が……」
スバル「身に沁みて理解できたよ。本当にありがとうね」
まぁ、道中共にしたのなら襲われる心配もあったんだろうけど、大丈夫だよ。すぐ近くにスバルの専属ボディーガード【アカネ】が控えてるんだから、おとんも弁えてるよそれくらい。
まぁね、根はいい人だけど……3年も行方くらませながらお姉ちゃんの家に居候した僕の選択、間違ってなかったでしょう?
すみれ「せめて病室にいる時くらい静かにしなさいよ、ねぇ?」
誠俟「ずびばぜんでじだぁ…」
しかし、愛する夫にコブラツイストかますとか……。星河家の女共はどうしてこうあからさまに粗暴なのだろうか。
……謂わば〈子は親に似る〉ってヤツかしら?
あかね「ねぇ、水希。一応聞くけど私のことディスってた?」
水希「いいえとんでもございませんわお姉様」
あかね「大丈夫よ。私全然怒ってないから♪」
嘘つけ顔に出てんだよっ!!と、心を覗きやがる姉に向かって思い切り叫びたい気分だった。
……数分経って、ある程度収まりがついた頃。おとんが涙ぐみながら言う。
誠俟「……本当に、お前が死んでるって嘘を間に受けてから毎日、夜が明けるまで何度お前のおパンツで涙を拭いたことか……」
前言撤回。コイツがいる限り自重してくれないし収集つかないわ。
水希「拭くならせめてハンカチにしろよ! ……ねぇ、おかん! なんでコイツと離婚しないのさ!?」
ん〜とね、と顎に手を当てて思案顔をする母だが、
すみれ「ぶっちゃけ言うとね……収入面だけなら優良物件だから、お母さんダメになっちゃったのよ」
水希「もうヤダこの人達……。誰か親変えてよマジでさ……」
途端に悟りを開くような顔で
あかね「そう悲観しなくていいじゃない。お父さんが入院費全負担するらしいんだから」
誠俟「らしいって、俺何も聞いてないんだけど?!」
あかね「あら、水希相手に前科多犯が口出しできるとでも?」
誠俟「み、耳が痛いですなぁ……」
頭抱えてうなだれる僕を宥めた姉がわざわざおとんを連れて来たのも、今みたいに一泡吹かそうとしてのことだと思う。
でも正味な話、払って貰いたいのは全面的に同意見だし。それくらいの償いはしてもらわないとやられ損だしね。
誠俟「何にせよ無事で良かったよ。これから毎日お見舞いにきてやるから安心してくれ」
水希「むしろ不安だわ来んな黙れ死ね変態」
誠俟「黙ります」
…………はぁぁああ……子供がいる前でもお構い無しだから迷惑この上ないんですけど。
信武「水希、お前もお前で苦労が絶えなかったんだな……」
水希「ホント聞くに堪えない会話でごめんね。信武……」
顔を上げた途端に、信武に気遣われる始末であった……。
以上、初投稿から4年も経って久々のカオス回でした。
第1話以降から空気扱いされた水希のお父さん、『可愛いすぎて鼻血出そう』とか言う時点で変態キャラに格付けされて不本意でしょうけど、これから何かと登場されるかも。もちろんお母さんもね。
水希とあかねさんの両親のキャラ設定をここで書き記します。
【星河
ご覧頂いた通りの変態です。これに尽きます。
そうなった原因が、【若かりし頃にショタコンに目覚めていて、水希の誕生を境に溺愛度と変態度が増し増しになった】のです。
こんなアホ作者でごめんね、水希。
【星河すみれ】
性格面では(夫という名の
結婚後になって夫の奇行種ぶりを知って幻滅しつつも、下心あるせいで離婚できないから…せめてもの救いとして
ちなみに、あかねさんの美貌は母譲りということで、キレイな御方として描いております。
P.S.
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