流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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51話 戻ってきた日常

夕暮れ時になって、車を走らせること数十分。

 

都市から外れた郊外のコダマタウンに差し掛かり、同乗者である水希君とリヴァイアが住んでいる家、もとい大吾の持ち家に辿り着く。

 

飯島「忘れ物はねぇか?」

水希「うん、大丈夫。ありがとね、家の前まで送ってくれて……リヴァイア? どうしたの?」

 

ハザードランプを点滅させてすぐ路肩に停め、バックミラー越しに水希君と視線を合わせたら笑顔で礼を言ってくれたのだが……リヴァイアに目が行った途端に脈絡のない質問を投げたので、続けて後ろを振り返った瞬間、呆けた顔の彼が返答しだした。

 

リヴァイア「……俺思ったんだけどさ、車を運転できるようになれば、デートも兼ねてドライブに連れて行けるんじゃねぇかと思って……」

水希「……ふ、ふふ……なんか意外」

飯島「お熱いねぇ。お前らいつの間にそういう関係になったんだ?」

 

元々宇宙人である彼の言葉にますます人間味を感じて、これには水希君も笑いが込み上げてしまった様子。

 

まぁ俺としては、同性愛への理解はあれど抵抗は無く無いが、この二人の親密度から何となく予感し、“そう”だと知った所でおちょくり甲斐があるもんだ。

 

リヴァイア「なんだよ二人して! そんなに可笑しいことなのか?!」

 

小っ恥ずかしく感じたのか頬を赤らめながら訊ねるリヴァイアに対して、水希君は「ううん、違うの」と否定して続けた。

 

水希「むしろ逆。もしそうなったらって思うと楽しみで仕方ないよ」

リヴァイア「ほんとか!?」

飯島「あぁ、その……盛り上がってる所すまんが……教習を受ける以前にさ、住民票とか戸籍はどうするつもりなんだ?」

水希「あ…」

リヴァイア「………あぁ、そうだよね……いくら見た目が人間だろうとそうは問屋が卸さないもんね。知ってたよ? うん、知ってた………」

 

二人の会話に水を差すようで申し訳ないが、後々(のちのち)知って後悔されるより先に現実を突きつけると、テンションだだ下がりになって苦し紛れの嘘をつく始末なのだが。

 

水希「まぁまぁ、移動手段なんて他にもあるんだし。デート自体が楽しければいいんだから。……ね?」

リヴァイア「ッ、水希ぃ……!」

 

落ち込んだかと思いきや嬉し泣きかよ。忙しい奴だなぁおい。

 

水希「そろそろ戻るね、お姉ちゃんやスバルも心配するだろうし」

飯島「あぁ。二人にもよろしく伝えといて。困ったことがあればいつでも相談してくれって。……無論、君達もね」

水希「うん! その時はお願い」

 

長い会話を経て二人はようやく車から降り、「じゃあね!」と手を振ってくれる水希君に手を振り返した。

 

 

 

 

飯島「――――」

 

……すぐ車を発進させればいいものを。

 

しかし視線は、手を繋ぎ合って帰宅する二人へと行ってしまい、いっそのこと玄関にたどり着くまで見届けようとしていた。

 

……本当に、人生って不思議なもんだな。

 

宇宙人である彼と交流を持ったあの子が、まさか戦場に立てるほどの力を得るようになって、数々の挫折と後悔がありながらもドン底から這い上がろうとする。

 

そのような姿勢に影響されていった大人達が、何人もいるなんて……。その内の一人でもある俺ですら、当時はこれっぽっちも思わなかっただろうしな。

 

ただ……天地から聞いた話によると、信武君を相手に負け続きで自信を失くしたそうだが……その敗北を知ったからこそ、持ち前の負けん気があれば成長の余地はあるだろうし、今に至るまでの経験は、決して無駄じゃないはずだと確信を得ているのだ。

 

無様だろうと、泥臭かろうと、強くなるための努力を惜しまなかった彼だからこそ、報われるべきだと思っているから。

 

 

 

 

過去を思い返しながら二人を見送っているうちに、ふと笑みがこぼれてしまっていた。

日に日に増して闇を感じさせるような表情が一変して、綻ぶように笑う水希君の横顔が見えたから。

 

 

そうだ……それで良いんだよ。

 

 

愛されることに喜びを抱いて

 

不条理な現実に怒りを覚えて

 

報われぬたびに哀しみに暮れて

 

そんな日々でも楽しい思い出を作れただろ?

 

 

そういった人としての感情(人として大事なもの)を持ってるお前が、人形(ニセモノ)なわけねぇんだから。

 

……だから、

 

飯島「もう二度と、手放そうとすんなよ」

 

そう呟いて、彼の早い復帰を願いながらその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

一方、その頃。

 

信武「……なにか、ものすごく妬ましいことが起きそうな気がする……」

 

居候先で借りている部屋の窓辺から夕焼け空を眺めながら、誰かさんのことで胸騒ぎを感じたがゆえに独りごちる信武だが。

クラウンは内心『どうせ色恋沙汰じゃろうが……』と、思い当たる節しかなかったが聞かぬフリをするのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

スバル「お帰り兄ちゃん。リヴァイア」

あかね「遅かったわね。どこか寄り道でもしてたの?」

 

玄関に入った矢先、お姉ちゃんとスバルの二人が出迎えてくれたことに驚きはしたが、ただいまと挨拶を返すより先に説明する。

 

水希「古い友人に会いに行っただけ。一応仲直りはしたけど、完全に和解できるまでにやることが増えちゃったみたい」

あかね「……そう。頑張れとしか言えないけど、せめて悔いのないようにね」

水希「うん。頑張るよ。……というか、ずっとここで待ってたの?」

 

湿っぽい話から一転して呆れ気味に問うたが、二人してニコニコと笑うだけで返答はなく、その様子に訝しんでいたのだが。

 

『―――おいおい、忘れてもらっちゃ困るぜ』

 

スバルの腕にあるトランサーから声がしたと同時に、居候してるウォーロックが出現するもんだから……リヴァイアも僕と同様に身体が強張ったことだろう。

 

ウォーロック「お前らが帰ってくるだろうと気配で感じてな。そのことを二人に教えてやって、ここで待ち構えてたんだよ」

リヴァイア「いや………お前出てきて大丈夫なん?」

 

それ、言おうと思ってた……。

なんの躊躇もなしに出てこられても反応に困るってのに。

 

だが、焦りと驚きを禁じ得なかった僕らとは裏腹に、お姉ちゃんに至ってはまったく動揺せず、苦笑するスバルですら現状を受け止めてる様子が窺えた。

 

あかね「アンタらがいない間に色々あってね。まぁ何しろ、リヴァイア君の存在を知っていれば、今更一人増えても驚きはしないわよ」

ウォーロック「そういうこった。これでもう心置きなく出てこられるってわけだ」

スバル「僕としては、バレたらマズいなぁとは思ってたけどね……」

 

……ですって。心配して損したわ。

 

 

(まぁ何はともあれ、隠れてコソコソする必要も無いならそれに越したことはないけど、ただなぁ……戦場に立つと知ったからには、お姉ちゃんにとって不安の種にもなり得るんだよなぁ……)

 

……なんてことを内心考えていた最中、ウォーロックが訝しげな視線と質問をリヴァイアに投げかけようとした。

 

ウォーロック「つーかオメェ……本当にリヴァイアなのかよ? つい先日まで如何にも宇宙人な見てくれだったってのによ……」

リヴァイア「クフフ……ごめんな兄弟。俺、生まれ変わったんだ」

ウォーロック「ホント何に対しての謝罪なんだよ……」

 

満面の笑顔で意味不明な返しをされて、こればかりはウォーロックも呆れ全開であった。

 

でもまぁ、色んな人にイケメンって言われて浮かれない方が無理なのかもしれない。

実際自分も、同じ男でありながら見惚れてしまうほどだからね。

 

水希「そういえばさ、スバル。この青髪のイケメンがリヴァイアだって判ってた?」

スバル「いいや、その辺はまだ全然理解が追いついてない」

水希「あぁ、そっちか……見舞いに来てくれた時、妙に大人しかったから気になってたんだよね」

スバル「だってさ……おじいちゃんと会って早々に本性を知ってショックなんだよ? 逆に他のこと気にしてられると思う?」

水希「うん。絶対無理」

あかね「はいはい、ここで長話するのもなんだし。とりあえず夕飯にしましょう?」

 

姉の言葉に従って、靴を脱いでダイニングに向かう。

 

 

 

……そうして、夕食は、先日の約束通りにハンバーグが出されたが、3人分しか作られなかったので僕の分を二つに分け、それを口に運んだら、

 

リヴァイア「……ッ!!!―――俺……生きてて良かった」

あかね「大袈裟ねぇ。そんなに喜んでくれるならもっと作れば良かったわ」

 

たしかに、いつか自分で言ってたもんな。

あかねさん(お姉ちゃん)の手料理を食べてみたい』って。

 

その念願が叶ったからこそ、感動しているリヴァイアを見てお姉ちゃんも満更じゃない笑みを浮かべており。

僕自身も弟として誇らしく思うと同時に、腕が劣るとしてもお姉ちゃんには負けられないと思ってもいた。

 

いつかリヴァイアと信武、そしてレティの口から「美味しい」って言葉をもらえるように頑張んなきゃ…!

 

 

その“いつか”が訪れるまでに何を作ろうかと悩み倒しつつ、ハンバーグを口に運び入れ、噛むたびに広がる肉汁を堪能した。

 

 

 

 

 

そうして夕食を済ませた後、借りている部屋のドアノブに手をかける直前だった。

 

スバル「ちょっといい? 話したいことがあるんだけど」

 

神妙な顔をするスバルに呼び止められ、何事か問う前にスバルの自室に来るよう促された。

 

水希「そんで、話って何?」

 

部屋に入って、適当な場所に座り込む僕とリヴァイアの真向かいに座り込むスバルが言葉を放った。

 

スバル「……この前、病院でさ、兄ちゃんに認めて貰えるように頑張るって言ったじゃん? ……でも具体的にどう頑張ればいいのか、まだわかんなくて……」

水希「要は、実力をつけるにはどうすべきかが悩みなの?」

 

その質問にスバルは首肯し、解決方法があれば知りたいと言わんばかりに僕の返事を求めているのが見て取れた。

 

水希「まぁ、端的に言うとね……ひたすら実践あるのみなんだよ。もちろん自分より強い人に稽古をつけてもらうことも大切だけど、そこで学んだことを実践で活かす方がよっぽど――って、大丈夫?」

リヴァイア「……説明の仕方が悪いんじゃねーのか?」

 

つい話に夢中で、スバルが目を伏せたまま困り顔になっていることに気づけず、相棒にも呆れ気味に指摘される始末だ。

 

スバル「ううん、大丈夫。兄ちゃんが話してることは何となくわかってるつもり。……だけどもっと、具体的に、どんな方法で強くなったのか……その話が聞きたいんだよ」

リヴァイア「そういうことなら、俺から話しても大丈夫か?」

スバル「お願いします」

 

説明が下手な上に早とちりしてしまう悪癖が出て、居心地悪いと感じていた所だが、畏まるように願い出るスバルに「了解」と返答をして、説明が始まった。

 

リヴァイア「まず、お前も知ってるように、俺達が何度も使ってきた水と氷を操る能力……それを用いた戦い方を極めたのが俺達の強みってわけだ」

水希「でも今じゃ、だいぶ弱体化してるからスバルにすら負けちゃいそうだけどね」

スバル「それは絶対あり得ないね。弱体化してるのが本当だとして、兄ちゃんそもそも本気出してくれなかったじゃん」

水希「切羽詰まる程じゃなきゃ本気出せないってだけ。それに弟をイジメて(よろこ)ぶほど落ちぶれちゃいないもん」

リヴァイア「脱線してる所悪いが続けるぞ。……今さっき言った強みについてだが、なにも、能力に限ったことじゃねぇんだ」

 

一拍置いて、続ける。

 

リヴァイア「例えばの話。変身してない生身の状態で体力作りしたり、水希が言ってたように、強い人から稽古をつけてもらうのも手段としてはアリなんだ。

そういった経験を積んでいけば、いざ実践となった時に役立つ時だってあるんだよ。

それこそ水希が、剣術に長けている信武と初めて戦った時だって……そうだろ?」

 

急に話を振られた所でリヴァイアとバトンタッチし、思い当たる節を語る。

 

水希「何度も負け続いてたけど、まったく手も足も出なかった訳じゃないの。

信武と剣を交えた時も、試合の時の動き方を観察したおかげで少しでもまともに打ち合えた。

だからこそ、相手の動きをよく見ることも、強くなる為に必要なことなんだよ」

 

対人戦経験が少ない分の穴埋めとして、能力の扱いについては言わずもがな。剣術は信武の動きを見様見真似で。体術は……お姉様直々に叩き込まれたおかげであって……。――その経験を活かそうと、街に潜む電波ウイルス相手に幾度も実践を重ねた。

……結果。信武との戦いを経て改善の余地があると気づき、もう二度と負けないよう鍛え直す必要性を見い出せたわけだ。

 

スバル「じゃあさ、もう一度戦ってよ」

 

そんな時。スバルの口からそんな言葉が出て驚きはしたものの……リハビリも兼ねてなら問題無いか。と、スバルの提案に乗ろうとした。

 

水希「模擬戦なら構わないけど……お手柔らかにね」

スバル「どの口が言うんだか」

 

苦笑交じりに悪態をつくスバルに続いて、僕も立ち上がり――

 

「「電波変換!」」

 

意気揚々と唱えた瞬間。青い光と水色の光が各々の身体を包み込んでいく。

 

 





ここまで読んでくださりありがとうございます。


次回から六章【ルナトゥルース】に突入致します。相変わらずの暗い&重い内容ではありますが、ご了承の上お読みくださいませ。
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