流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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第六章 ルナトゥルース
閑話 命日


梅雨明け間近の六月下旬。雲行きの怪しい、湿っぽい風が吹く日のことだった。

 

街外れに建てられた教会の離れにある、十字架連なる墓地へ、喪服を着る夫婦が花を手向けに訪れていた。

理由はおそらく、故人の命日だからだろう。

 

しばらく歩み進めていた足を止めた時。妻は抱え持っている供花の白いカーネーションの花束、そして故人が生前好いていた一輪の向日葵の花束を、それぞれ隣り合うよう供えた後に黙祷をする。

 

故人の死を悔やむように下唇を噛みながら……。

 

「……もう、11年も経つんだな……」

 

妻の一連の動作を眺める夫も立ったまま黙祷をするが、終えた途端にボソリと呟いた。

 

「そうね……正直、今も実感が湧かないわ……」

「私もだよ。ここまでショックが大きかったのは、ルナの誘拐事件の時と同じだったからな……」

 

夫婦そろって墓石に視線を投げ、英字で掘られた名前を見つめる。

 

――()()()()()。若くして生涯を閉じた者の名だ。

 

 

「だからこそ私達は、親失格よね……。ミノルが亡くなってからずっと、仕事を理由付けにしてまともに家に帰れないんだから」

「……そうだな。それこそきっと、ルナは私達を恨んでいるだろうな」

 

……話から察するに、ミノルとルナは、二人の間に出来た子供。そしてミノルの死に立ち直れずにいる。ということだろうか。

 

「ミノル。あなたさえ生きてくれれば……私達は、ちゃんとした親で在れたのかしらね……?」

 

問いに対して、返ってくる言葉などありはしないが、不甲斐なさを自覚してこそ確認をしたかったのだろう。

 

親として、子と接するに値するのかを。

 

「……ごめんなさい。こういう時こそしっかりすべきなのに……また貴方に愚痴を吐いちゃって」

 

妻の言動を眺める夫も、失くした痛みを知っているからこそ、戯言だのと口出しすることはなく。

ましてや、妻に続いて愚痴をこぼしそうな様子が覗える。

 

「でも、約束するわ。……貴方が生きている頃にしてやれなかった分、ルナがこれからも不自由なく生きられるように、立派な人間に育てるから。……だから、こんな不器用な生き様を、どうか見守ってて頂戴」

 

想いを伝えきったと同時に立ち上がり、夫婦はやがて、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰路につく道中のこと。

 

「ねぇ、あなた。ルナの進路についてなんだけど」

「転校させるかどうか、だったか?」

「えぇ」

 

相変わらずの曇り空のなか、車内の雰囲気や話題ですら、お世辞にも明るいとは言い難いものだった。

 

助手席で腕を組みながら物憂げに話す妻に、運転中の夫もハンドルを操作したまま悩ましげな顔を浮かべてしまう。

 

「今はあんな公立の学校に通わせているが、ここのところ事件が多発しているらしいしな。私もおおむね同意見だよ」

「もしまた何か起こりさえすれば……転校させるのは早い方が良さそうね」

「あぁ、そうだな。転校先の候補に関しては、お前に一存しても良いか?」

「問題ないわ。貴方が手を焼くまでもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すべては、あの子が将来、エリートとして不自由ない人生を歩めるように」

 

 

 

誰から見ても一方的で身勝手な願い。

 

その願い通りに動いてくれと子に求めた所で、吉と出るか凶と出るかは……誰も知り得ない。





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