流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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あけましておめでとうございます。
今年もどうぞ、この作品もろとも、よろしくお願いいたします。

相変わらずの投稿頻度ですが、お時間ある時に読んで頂けると幸いです。


54話 約束事

 

「毎回毎回遅いわね。もう少し早く出られないの?」

 

梅雨の時期にしては珍しく晴天に恵まれていたが、玄関先で待ち伏せていたルナによってスバルの心は曇りゆく。

 

スバル「頼んでないって毎回言ってるのに……いい加減ほっといてほしいんだけど」

ルナ「クラス委員長として見過ごせないんだから仕方ないじゃない」

スバル「どうせ点数稼ぎのくせに」

ルナ「ふぅん……言ってくれるじゃない」

 

曇るどころか雷雨に見舞われそうなのでは?

そう感じるほど険悪なムードのなか、ルナの後ろに控えていたゴン太とキザマロが前に出る。

 

 

キザマロ「今の言葉、訂正してください! 確かに点数稼ぎのためだとしても、委員長は根っから仲間思いなんですよ」

ゴン太「そうだぞ! 確かに委員長は強引だし当たりキツイけどよ、なんだかんだ心配してくれてんだぞ」

ルナ「アンタ達、褒めてるのか貶してるのかどっちかにしなさいよ……!」

 

男友達二人から上げて落とされるようなフォローをされて怒り心頭なルナだったが、

 

水希「朝からやけに騒がしいね」

あかね「本当、つい最近まで見れなかった光景よね」

 

様子見がてらスバルを見送ろうとする水希を見た瞬間、怒りが薄れながら頬に熱を帯びてしまう。

 

その変貌ぶりを見るより先に、スバルの視線は身内の方へ向いていた。

 

スバル「母さん、今日休んでいい?」

水希「せっかくみんなが来てくれてるのに薄情だねぇスバル」

スバル「だから頼んでないってば!」

 

声を荒らげて否定するスバルだが、級友と過ごす姿は身内からすれば微笑ましい光景に他ならない。

 

あかね「……ごめんね。いつも来てくれてるのに、うちの子がだらしなくて」

 

茶化す水希に猛反発するスバルを見て苦笑しつつ、訪問してまで気遣ってくれた三人に詫びを入れると、いつものことだと笑い飛ばした。

 

キザマロ「いえいえ、気にしないでください」

ゴン太「俺達がいるから寂しくないしな。だよな委員長?」

ルナ「……え? そ、そうね」

 

一瞬反応が遅れたルナに、今度はキザマロが尋ねる。

 

キザマロ「どうしたんですか委員長? 顔真っ赤じゃないですか」

ルナ「なんでもないわよ……ほら、早く行きましょう。遅れたら大変よ。おばさま、水希さん、行ってきます」

水希「うん、行ってらっしゃい。車には気をつけてね」

ルナ「は、はい!」

あかね「ほらスバルも、行ってきなさい」

スバル「はーい……」

 

ルナの心境はさておき、母に背中を押されたスバルも渋々、後を追うように登校していく。

 

 

 

登校する4人の姿が遠くなっても、二人は未だに立ち止まっていた。

 

水希「行っちゃったね」

あかね「そうね。……()()()()()とはいかないけど、少しずつでも、笑顔を取り戻してくれたらいいのにね」

 

再び登校してくれる姿を笑顔で見送るべきと分かっていても、どうしても欲を言ってしまうが、水希もあかねと同意見だった。

 

片や、不登校になる原因を作った事を抜きにしても寂しい青春時代を送って欲しくない、という心境から。

片や、幼き日の無邪気さを少しづつでも良いから取り戻して欲しい、という心境から。

 

再び心の底から笑ってくれる日が来ることを、何よりも望んでいた。

 

しかし、そうなるにはまだ時間が要るため、無理に急かさないことじゃないと理解しているからこそ、復学して間もない時期は心のリハビリと割り切るしかなかった。

 

水希「大丈夫だよ。スバルなら」

あかね「言わずもがな信じてるわよ。でもやっぱり、大吾さんが居てくれた方があの子も安心だし。帰ってくる日を信じて、この家を守るわ。それが母としての務めだから」

 

空を仰ぎ見ながら思いを綴るあかねに、水希も誠意を見せようとした。

 

水希「なら僕も、スバルが望むなら、一人前の戦士になれるよう助力するよ」

あかね「たったそれだけ?」

水希「もちろん、この先何が起ころうと、命に代えてでもスバルを守るよ。それが兄としての務めだから」

 

 

◆◆◆

 

 

リヴァイア「なかなか戻ってこねぇから、なんかあったのか?」

水希「ちょっとね。それより何飲んでんの?」

リヴァイア「ブラックコーヒー。前から気になってたんだけど……うぇッ、にげぇ」

あかね「そりゃあ砂糖を加えないんだから苦いわよ」

 

スバルの見送りを済ませ戻ってくると、食後の一服を嗜もうとするリヴァイアが予想通りに渋い顔をしていて、普段見ない間抜けっぷりに呆れながらも微笑ましいと感じた。

 

あかね「ていうか、しれっと洗い物を増やしてくれるわね」

リヴァイア「ッ!? ご、ごめんなさい……!」

あかね「いいわよ、別に叱ってる訳じゃないんだし。……そうよね水希?」

水希「――はいっ!!」

 

そうそう、反射的に詫びを入れるのは、お姉ちゃんが相手だとよくあることだから………申し訳ございませんどうかその素敵な笑みを向けないでください心覗こうとしないでください。

 

水希「ちょっと貸して」

リヴァイア「いやだって、もうこれ飲めそうにねぇし」

水希「せっかく淹れたのに捨てるの勿体無いじゃん」

 

失敗しても工夫次第でカバーできることを知ってもらおうと、中身が残ったカップを手に取り、冷蔵庫を開けて中を探る。

……お、ラッキー、牛乳まだ残ってるからカフェオレ作れそう。砂糖も入れて、っと。

 

水希「騙されたと思って飲んでみて」

 

出来上がったのを渡すと、不安げになりながらも一口飲んだ瞬間、眉が一瞬ピクッと上がった。

 

水希「ね、捨てなくて正解だったでしょ?」

 

得意げに言うと、リヴァイアは返事代わりにゴクゴクと飲み干して、満面の笑みを浮かべながら親指を立ててみせた。

よかった〜お気に召してくれて♪

 

あかね「ほんと妬けちゃうわねぇ」

水希「ごめんね〜惚気ちゃって」

あかね「はいはい。さっさとご飯食べちゃいなさい」

水希「はーい。あ、そうだ、言い忘れてたんだけど……レティに鍛え直してもらう間は留守になるから」

あかね「わかったわ。こっちの心配は要らないから、アンタはアンタでやるべき事に専念なさい」

水希「ありがとう。頑張るね」

 

 

 

 

 

 

朝のくだりから、数時間後。

リハビリも兼ねての修行場として活用するため、しばらくぶりだが河川敷へ足を運んでいた。

 

現に換装体の姿であり、全身を電波化*1させているため心置きなく集中できたものの、やはり懸念点はあった。

 

水希「思った以上に減っちゃってる……」

 

自ら生成するのとは逆に、川の水を手元に集めようとしていたが、その許容量が全盛期よりかなり劣っているから、当然ヘコんでしまうものだ。

 

以前なら、リンドヴルムを開放しない状態でも、その気になれば50mプールの水すべてを頭上に集められたけど、今では精々バランスボール並の大きさまでが精一杯なものだから、いつか訪れる決戦までに間に合うか不安だったけれど、

 

リヴァイア「昔と比べりゃ、ここまで出来るだけでも上々だけどな」

 

その不安も、励ましの言葉をかけてくれるおかげで気が楽になる。

 

水希「うん。後は集める時間をいかに縮められるか、今より集める量を増やせるかが課題だね」

リヴァイア「それも必要だけど、昨日の模擬戦みたいな戦い方を意識出来れば問題ねぇよ。あ、もしかしたらさ、やり様によって信武を倒せるんじゃね?」

水希「やだよ。もう信武とは敵同士じゃないんだし」

 

味方と認識すれば戦う気出ないってわかってるくせに。

リヴァイアにしては珍しく笑えない冗談を言ってくるが、気を取り直して修行を再開する。

 

川などの水辺から集められる許容量は知ったので、後は集めた水をどのように加工するか……というより、どの程度まで加工できるか試すべきか。それが終わったら言霊の陣を併用した修行も……

 

あれこれ考えているなか、リヴァイアが拗ねた顔をしながら隣に寄ってきた。

 

リヴァイア「なぁ、俺も一緒に修行していいか? 換装体(このすがた)での力量を知りたいし、何しろ動かないのは性に合わないしさ。……それに、俺だって戦えるんだからいい加減活躍させてくれよ。少なくともあんな青二才より頼り甲斐はあるだろ?」

水希「自分で言っちゃうの、それ」

 

頼れるのは否定しないけど、もしケガしたらって思うと怖いし。

 

リヴァイア「嫌って言っても聞かねぇから」

 

さすが、お見通しかよ。……反論の余地も無いみたいだから、せめてこれだけは言わせてもらおう。

 

水希「じゃあ、死なないって約束してくれる?」

リヴァイア「する! 最高のパートナーであり続けるために、お前を守れるよう強くなるし、自分の命も疎かにはしないと約束するから!」

 

即答だった。まったくブレないね。

 

「水希を守るのはお前だけの特権じゃねぇけどな」

 

橋の方から声がして振り向くと、換装した姿の信武がこちらに向かって飛び降りてきた。

 

水希「あれ? まだ休学中だったっけ?」

リヴァイア「どうせアレだろ。寂しいから水希に構ってもらいたくて来たんだろ?」

信武「……なんでわかるんだよ」

リヴァイア「お前と立場が逆なら俺だってそうするさ。四六時中恋敵と一緒だと目が離せないしな」

信武「癪だけど納得行く説明どうも」

 

話に割って入れなかったけど、信武の反応を見るにどうやら図星みたい。そっちもまったくブレないね。

 

信武「それでさ、水希。話したいことが、あるにはあるんだけどさ……その、なんだ、帰ったらどこか遊びに行こうって約束、まだ果たせてないじゃん?」

水希「あぁ確かに、約束してたよね。もう無理かと思ってたけど……まだ間に合う?」

信武「それ、先に言おうと思ってた」

 

考えてることも一緒だと気づいた瞬間、互いに顔を真っ赤にしてしまっていたけど、ほんわかな雰囲気から一転。真顔になった信武がリヴァイアに尋ねる。

 

信武「どうせならお前も来るか?」

 

その言葉を聞いて、リヴァイアは目を真ん丸にさせた。

 

リヴァイア「……てっきり付いて来んなって言われるのかと思った」

 

不覚にも同感だ。リヴァイアと信武の関係って[水と油]すぎて喧嘩が絶えなそうだもん。

 

信武「嫌なら別に良いんだよ。二人っきりでも存分に楽しめるだろうし。お前が居なくたって水希を守るくらい余裕だしな」

クラウン『誰のおかげで力を得たか判っておるのか、信武』

信武「無論。奴等が襲撃する時には世話になるぜ、相棒」

クラウン『ふん、調子の良い奴め』

 

……久々に見たかもな。信武が、僕以外の誰かに気さくな笑顔を向けたのを。

覚えてる限りじゃ、信武の部活仲間やクラスメイトにも笑顔を向けていたから。

 

リヴァイア「そもそも遊びに行くとして、具体的にどこへ行くとか日時とか決まってんのかよ?」

信武「え?」

水希「……え?」

リヴァイア「……おい」

信武「実を言うとまだ全然決まってなかったんだよ。だから水希にも意見を貰おうかと思ってたり……あはは」

リヴァイア「あははじゃねぇだろお前……なら普通にメールとかでも良くね?」

信武「それこそ何でここに来たんだって話だろ」

 

信武の気持ちは考える間もなく理解できる。

立場が逆ならきっと、寂しさを埋めてほしいという衝動に駆られて会いに行く、そんな自分の姿が目に浮かぶからね。

 

ともあれ行き先と目的についてだが、一つ提案を思いついたので信武に訊ねてみた。

 

水希「じゃあさ、お願いがあるんだけど」

信武「おう、遠慮なく言ってくれ」

水希「二人で話し合いたいからこっち来て。リヴァイアはそこから動かないで」

リヴァイア「……?」

 

状況を掴めなさそうなリヴァイアから少し距離を置くと、信武から話を振ってきた。

 

信武「そんで、お願いって何なんだ?」

水希「……リヴァイアの服を買いに行きたいんだけど」

信武「え? お前じゃなくて?」

水希「うん。今は大吾さんの服を借りてるんだけど、ツナギ服だけじゃなくて、オシャレ着と普段着を買い揃えた方が良いかなって思ったの」

信武「……たしかに、最初に見たツナギ服がトレードマークって言えば、聞こえは良さげだろうけど。さすがに着る服が少ないと困るもんなぁ……」

 

話の途中で信武は後ろへ振り向いて、すぐさま視線を元に戻す。

 

信武「けどさ、俺だってそこまで服のセンスが良いって訳じゃねぇぞ」

水希「店員にお任せって手もあるじゃん」

信武「……それもそうか。じゃあ一つ、交換条件はどうだ?」

 

詳しいことは耳打ちで話してくれたが、その条件を断る理由を探るどころか秒でOKした。

 

リヴァイア「話はまとまったのか?」

信武「ヤシブタウンへ行って適当にぶらつくって感じだ。今度の日曜日、10時頃にバス停付近に集合ってことで。異論は?」

水希「特に予定なかったから大丈夫だよ」

リヴァイア「以下同文」

信武「決まりだな」

 

滞りなく予定を立てたところで、信武は去り際に「寝坊すんなよ」と一言残して行った。

*1
全身の周波数帯を変える事により、肉眼での視認は不可能となる。(簡単に言うと、生身の人間が幽霊を見ることも、さわることも出来ないのと同じ状態)




他作品と被らぬようにと頑張ったつもりが、冒頭の会話を見て「これ小学5年生の会話かよ」って自分でツッコむくらいに違和感しかないというww

次回はスバル視点でお送りします。
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