流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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お待たせしました
やっと5話(後編)が完成です!

この次でようやく本編に入れます。

…今更ですが僕の書いた小説で流ロクのイメージがゲシュタルト崩壊(って言うんですかね?間違ってたらすいません)しそうで我ながら益々不安になってきました。



5話 リスタート

水希side

 

 

リヴァイアが過去を打ち明けて2週間後。

 

この二週間はいつもと変わらず。リヴァイアと共に船内を巡回をし、ウイルスを見つけてはデリートを繰り返す日々だった。

 

そして今日。

 

キズナ号の最上層に位置する、第二実験モジュールの観測室にて、ブラザーバンドの交信による、他の知的生命体とのコンタクトが始まろうとしていた。

 

観測室の構造はシンプルで、部屋の中央に円盤状の大きなアンテナがあり、それを囲うように十数台のデスクと、その上にモニターとタッチパネル式のキーボードが設置されていた。

 

アンテナの真上には、数学で習うはずの【二進数】ってやつかな……[0]と[1]の数字のみが表記されていて、実際にFM星人と交信をするために必要不可欠な、飛距離と座標などといったデータの集合体らしい。

それらが一箇所に密集され、淡く光り、大きく円球を描くように行き交っている。

 

……彼らの仕事を見守っている身としては、そうとしか例えようがなかった。

 

クルー1「…チェックC2(ツー)。A40に誤差補正……A40に補正終了。――続いてC3(スリー)。フェイズ B・C、共に27…――」

 

観測室で作業をしていた十数人のクルーと大吾さんは、最後の調整に取りかかっていた。

 

水希「上手く行くといいね!」

リヴァイア『そうだな!』

 

そして僕とリヴァイアは、邪魔にならない程度の声量で成功を待ち望んでいた。

 

 

 

 

 

しばらくして光が強まり、円球がフラフープ状の大きな輪に変化した瞬間、アンテナから無数の細い光線が現れ、植物のように枝分かれしながら昇っていく。

 

大吾「……今までの俺達の頑張りは、無駄じゃなかったんだ!」

 

……どうやらブラザーバンドの接続(リンク)に成功したらしく、観測室内は歓喜で溢れていた。

僕は飛び付く勢いで大吾さんの元へ駆け寄り、互いに肩を組みながら空いた手でガッツポーズを取った。

 

水希「すごい!やったね大吾さん!!」

大吾「あぁ!!」

 

計画は順調、後は相手からの返事を待つのみ。……そう思ったのも束の間。

予想と相反して断続的にサイレンが鳴り響き赤灯も点滅することで、一気に静まり返ってしまい……。

 

クルー2「大変です!!」

大吾「何が起こった!?」

クルー2「ブラザーバンドが逆流しています!!」

 

その一言で場の空気は一気に凍りつく。

そんな時、突然トランサーから飛び出てきたリヴァイアが、何かを確信するように言った。

 

リヴァイア「……やっぱり、FM星人の仕業か」

水希「嘘でしょ!? 何でアイツらが……」

 

リヴァイアは苦い表情のまま、何かを思い出したように語った。

前にも聞いたが…本来、FM星は好戦的で気性が荒い輩が多い惑星だ。

尤も、友好的である漁村の村人達を除いての話だが……。

 

リヴァイア「そりゃ、俺の故郷を滅ぼすほどの連中だからな…。何でこうなったか解らないが、恐らく俺達のやっていること(ブラザーバンドの交信)が敵対行動と見なされたかもしれない…」

水希「そんな…!」

大吾「クソッ!…通りでこんなことになった訳か……」

 

僕はただ呆然とし、大吾さんは怒りをぶつけるようにデスクを叩いた。

 

ここにいる人達は全員、危険を伴うと理解した上で参加している。だからこそ、今回の計画ではFM星以外の知的生命体とコンタクトを取ろうとしたが、あともう少しの所でこのザマだ。

アイツらに感づかれた以上、避けて通ることはできないだろう……。

 

水希「やっと、ここまで来たっていうのに。……ん?」

 

突然トランサーから電話の着信音が鳴り、タッチパネルに表示された通話ボタンを押す。

電話の相手は、キズナ号のクルーを率いる船長だ。

 

水希「……水希です。どうされましたか?」

船長『理由は後で話す。今すぐ発電モジュールまで来てくれ!』

水希「了解。すぐに向かいます」

 

通話を切り「ごめん、ちょっと行ってくる」と言い残し、後のことは大吾さんに任せることにした。

 

大吾「気を付けろよ!」

水希「わかってる!」

 

僕とリヴァイアはそのまま観測室を出て、発電モジュールへと向かった。

 

 

 

 

 

数分後。

船長は、発電モジュールに併設された重力制御装置(ニュートライザー)の前で待っていた。

 

 

 

水希「船長ー!」

船長「……来たか」

 

急いで来たため、息を切らしながら「いったい…何があったんですか?」と船長から今の状況を確認する。

 

船長「昨日…ニュートライザーの点検で電脳に異常が無いか調べてる最中に、ウイルスが数体ほど紛れ込んでいるのを発見したんだ。…その時は俺一人でデリートして、念のために"防壁"を張った。…けど……」

リヴァイア「……けど?」

 

船長は眉間に皺を寄せた…。

 

船長「…気になって様子を見たら、昨日以上にウイルスが大量発生していたんだ…」

水希「っ!?」

 

毎日巡回してたとはいえ…ウイルスと遭遇することが滅多にない環境下だったため、流石に驚きを隠せなかった。

……もし電脳からウイルス達が分散し、キズナ号にある全ての機器を攻撃されてしまうとどうなるか……容易に想像がつく。

 

水希「大体のところは把握しました! 今から電脳に行って、状況を確認してきます!」

リヴァイア「その間に船長は、他の電子機器に異常が無いか確認してくれ!」

船長「こっちは任せろ!…お前達も気をつけるんだぞ!!」

水希&リヴァイア「「はい!」」

 

上着の胸ポケットから変身用のカードフォースを取り出し、それをスキャナーに差し込む。

 

水希「電波変換!星河水希、オン・エア!! ……よし、行こう!」

リヴァイア「応!」

 

数秒で換装し終え、リヴァイアと共にそのまま電脳世界へとウェーブインした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球にある野球場みたく、広く平らなニュートライザーの電脳世界にたどり着く。……が

 

 

水希「……っ!?、…何……これ…」

リヴァイア「体が……重てぇ…」

 

来て早々、未だ体験したことのない重圧がのしかかり、少し息苦しくなった。

そんな矢先、数えて200を超すウイルスの大軍が目の前に現れ、苦笑いを溢すも気力を振り絞って立ち上がる。

 

水希「……こりゃもう…出し惜しみする必要無いかもね。……リヴァイア、バックアップよろしく!」

リヴァイア「あぁ、遠慮は要らねぇ!お互いとことんぶつけてやろうぜ!!」

 

常に気を張っている僕達と比べ……ウイルス達は不気味な程に平然としており、今か今かと狩る気満々の獰猛さが滲み出ている。

 

しかし幸いなことに、制御装置の周辺には緊急時に使われる防壁が張られていた。

僕ら二人の攻撃も通さないほど超強力なので、本気で戦うには申し分ない配慮に今日ほど感謝したことはないかもしれない。

 

水希「そっちがその気なら………こっちも本気で叩きのめすまでだ!!」

 

その言葉を合図に、ウイルス達が襲いかかる!

 

僕らは一旦距離を取り、リヴァイアは即座に前屈みになって長い首を左へと捻らせた。

 

リヴァイア「ブレス・オブ・コキュートス!!」

 

ありったけの空気を吸い込むと、ウイルス達に向けて猛吹雪の咆哮を右へ凪ぎ払うように放つ。

 

本人より多少威力は劣るが、僕も特訓により技を扱えるようになった。

 

眼前の雑魚ウイルスは瞬く間にデリートされるが、空中を飛翔するクロッカー(鳥型ウイルス)達は即座に軌道を変えたため攻撃は届かない。

更に、敵の後方から強力な個体のG(ジャイアント)ウイルスが進軍してくるが、真上に大きく飛び回避すると同時に両手を広げた。

 

水希「さっきので終わりだと思うなよ!!」

 

周囲に冷気を漂わせると無数の氷塊が形成され、やがて一つ一つが大粒の雹に変化する。

 

水希「クリスタルバレット!!」

 

両手を真下に降り下ろした瞬間、弾幕の雨と化した雹はウイルス達の頭上に降り注ぎ、蹴散らしていった。

 

腕輪のパネルを操作し、バトルカードの項目から一枚を選択……具現化され、スキャナーに差しデータを読み込ませると、上空に雨雲が現れた。

 

水希「バトルカード、ネバーレイン!!」

 

一枚目に選んだのは、広範囲に雨を降らせる効果を持つ水属性のバトルカード。元の攻撃力に「+50」と表示されているので、威力は高い。

怯んでいる隙に追い討ちをかけ、ウェーブロードに着地した。

 

水希「…これで半分は削れたはず…って、あぶなっ?!」

 

雨がやむと同時に、複数のクロッカーがあらゆる方向から突進してくることに気付く。

先程放った攻撃を辛うじて避けたのだろう。

重い体を必死に動かし、焦りつつ紙一重で回避するが……

 

リヴァイア「水希!後ろだー!!」

水希「!――がぁっ?!」

 

背後からの攻撃に気付けず、そのままもろに食らい数メートルほど吹き飛ばされた。

しばらく倒れ伏すが、背中の痛みに耐えながらゆっくりと体を起こす。

 

リヴァイア「……まだ油断すんなよ?」

水希「…ったく、やってくれんじゃん」

 

すかさず二枚目を具現化させ、スキャナーに差す。

 

水希「バトルカード、レーダーミサイル!!」

 

周囲に、小型ミサイルが次々と出現する。

使っているうちに分かったが、このカードの効果は、ウイルスが無属性だと頭上に〇印が現れ、逆に火・水・電気・木のどれか一つでも属性があれば、必ず×印が現れる。

 

クロッカー達に目を配ると、頭上に〇印が現れ

こちらに向かって来るのと同時に狙いを定めた。

 

水希「……行け!!」

 

と言った瞬間ミサイルが放たれ――全弾命中。次々と一網打尽にしていった。

偶然にもカウンターを取ることに成功し、具現化した赤いカードをスキャナーに差した。

 

リヴァイア「一気にケリをつけるぞ!」

水希「おっけー!!」

 

僕とリヴァイアは手元に水をかき集め、それをウイルス達の足元に向けて放つ。

 

水希&リヴァイア「「ディザスター……クローールッ!!!!」」

 

水は大きな渦潮に変化し残党達を囲った。渦に呑まれ、中心へたどり着く頃には皆…粒子化し霧散していく。

そして数分後。完全にデリートした瞬間、水は干上がった。

……思った以上に体力の消耗が激しく、肩で息をする。

 

リヴァイア「いやぁ、流石にキツいわ~…これ」

水希「はぁ、やっと終わった…」

 

重圧は既に消え去っており、ようやく制御装置に張られた防壁が解除された。

攻撃された形跡は無く安堵するが、僕ら二人は先程起こった謎の重圧に対し、疑問に思った。

 

リヴァイア「しっかし、さっきの重苦しさは何だったんだ?」

水希「さぁ?……防壁は張られてたから、ニュートライザーが誤作動を起こしたとは思えないけど…」

 

原因が解らず、頭を抱えていたその瞬間…。

 

 

 

 

ジジジジジジジジ…

 

 

耳に障るような雑音が響く。

 

リヴァイア「……何の音だ?」

水希「……リヴァイア、あれ!!」

リヴァイア「…なっ!?」

 

視線の先にあったのは……深緑色の靄。雑音を放ちながら暗雲の如く浮かんでいた。

靄が小さく分裂した途端、赤黒い球体に変わり、音は止んだ。そして…球体はそのままゆっくりと上昇し、電脳世界から消え去った。

 

リヴァイア「何だったんだ、いったい……」

水希「…戻ろう。大吾さん達が危ない」

リヴァイア「…そうだな」

 

 

僕たち二人は現実世界へウェーブアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

大吾side

 

 

時は遡り、水希とリヴァイアが観測室を出て数分後のこと…

 

 

 

 

 

??「……貴様らか?…余の星に攻撃を仕掛けた愚か者共は…」

大吾「何者だ!?」

 

天井を見上げた先には、人間(俺達)に近い容姿で緑色の体を持つ電波体が宙に浮いていた。

体は、黒の装甲に赤のマントで覆われ、頭には、金を三つの棘状にあしらった王冠を被っていた。

身なりから察するに王族だろう…。

 

ビジライザーを掛けなくても見えるため、一目で『リヴァイアと同様、実体化している』と気づいた。

 

??「……余はケフェウス。FM星を統べる王だ…」

大吾「…まさか、ブラザーバンドを逆流させたのは…」

 

俺は目の前にいる男に問うが、一向に否定しない。

リヴァイアやAM三賢者から話は聞いたが「ここまで拒絶をするか…?」と冷や汗を流しながら、そう思っていた。

 

ケフェウス「……そうだ。『何者かがこの星に、攻撃を仕掛けに来ている』と、側近のジェミニから報告があったのでな…」

大吾「待ってくれ!! 俺達はただ、友好関係を結ぼうとしてるだけで…」

ケフェウス「黙れっ!!」

 

突然の激昂に、俺達は気圧される。

モニターの画面が砂嵐のように荒れだした。

 

ケフェウス「理由はどうであれ、余に害を成す存在である以上……貴様らには処罰を下さねばならぬ。………まずは…」

 

男は扉の方向へと指を差す。

この時、微かに悪寒が走った。

 

ケフェウス「こちらに向かっている……余の星の住人だった奴と、その宿主に制裁を下そう…」

大吾「なんだと!?」

 

室内に稲妻が迸った途端、…扉の開く音がした。

 

水希「大吾さーん」

全員「「「!!?」」」

リヴァイア「そっちは大丈夫かー?」

 

扉の方へ振り向くと、リヴァイア・コキュートスに変身したままの水希と現実世界に実体化しているリヴァイアがこちらに向かってきた。

 

大吾「ダメだっ!来るなぁぁぁぁ!!!!!」

水希「…えっ?」

 

 

ケフェウス「…………やれ」

 

轟音と共に、稲妻が水希達の頭上へと落ちていく。

回避は間に合わず、直撃した。

 

水希&リヴァイア「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」」

 

大吾「水希ぃぃぃぃ!!!、リヴァイアぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

稲妻により、体を貫かれた衝撃で電波変換が解けてしまった。

俺はすぐさま、床に倒れた水希達の方へ慌てて駆け寄った。

 

大吾「おいっ!、おい大丈夫かっ!? しっかりしろ水希っ!!、リヴァイアッ!!…頼む、目を開けてくれっ!!」

水希「う…ぁっ………だ…いご……さん。…リヴァイアは?……みんな…だいじょぅ…ぶ?」

 

生身の方は見た感じ…外傷は無いが、電波変換が解けるほんの僅かな時間に気絶していたのは事実。……少しは自分の心配もしてほしいくらいだ。

リヴァイアも目を覚まし、体を起こす。

 

リヴァイア「……俺は……なんとか無事だ。電波変換してたとはいえ、ダメージは水希の方がデカいだろ…?」

 

……本人が無事と言ったわりに、身体中焼け焦げた痕が数ヵ所あり、端から見りゃボロボロの状態だったが俺は軽く息を吐き安堵した。

 

大吾「とにかく…良かった。本当に……」

 

特に水希の場合、生身の状態で受けていたら………考えただけでも背筋がゾッとしてしまう。

最悪…水希の両親や、あかねに会わせる顔がないと思ってしまうほどに………

 

男は冷酷に、淡々と話を進めた。

 

ケフェウス「今のはほんの序の口だ。どちらにせよ…貴様らにも処罰を下す。

それまで精々、辞世の句を考えておくんだな…!」

 

そう言うと、男は姿を消した。

……いや、元の場所へ戻ったと言った方が正しい。

荒れていた電波も弱まり……何事も無かったかのように、静かになった。

 

水希「……だいご…さん」

大吾「……何も心配するな。今は体を…休ませておくんだ……」

水希「うん………」

 

水希は意識を手放した。

 

大吾「コイツを医務室に運ぶ。誰か担架を持ってきてくれ!!」

「「はい!!」」

 

数分後。

担架を持ってきた部下達が、水希を運ぶ際に「よく耐えた!」「もう大丈夫だよ!」など声かけをしていた。

一方…他の者は、計画を中断するための後始末をしていた。

 

 

大吾「……リヴァイア。後で実験室に来てくれ」

リヴァイア「………わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

水希side

 

 

 

 

??(…………水希…)

 

誰かが僕を呼んでいた…………夢だ。

重く閉じていた瞼を上げると、微かな光が差す。

そこで意識がハッキリとし、目を見開いた。

 

水希「?……あれ……寝てた?」

??「……目が覚めたか?」

 

顔を左に向けると椅子に座る大吾さんがおり、ゆっくりと起き上がり、向かい合うように座った。

 

水希「……大吾さん、みんなは?……僕はどのくらい寝てた?」

大吾「……ざっと一週間だ。……今はみんな無事だ」

水希「そっか。…………ごめん、大吾さん。……またヘマしちゃった」

 

みんなが無事だと知り安心するが、結果的に迷惑をかけてしまったことに変わりない。

 

前にも死にかけたことが一度だけあり、きっと怒るだろう………と内心思っていたが

大吾さんは自分の右手を、ポンと僕の頭に置き「…誰だって失敗はあるんだから、仕方ないさ…」と言った。

 

大吾「……まぁ、生身(いま)のお前も、電波変換(へんしん)したお前も、危なっかしい所はあったけどな…」

水希「…言えてる」

 

最後の一言にぐうの音も出ず苦笑いし、俯く。

 

水希「これから……どうなっちゃうんだろ……」

 

意識を失う前、あの男から「処刑だ」という言葉が聞こえ、不安を拭いきれなかった。

 

大吾「心配すんな水希。たとえ何があっても、お前だけは守ってやる!」

 

一瞬だけ目を見開くが、すぐにジト目になった。

 

水希「………それ」

大吾「『僕が言う台詞じゃん』って思ったな?……でも、たまには誰かに言われるのも悪くないだろ?」

水希「フフッ…そうだね!」

 

大吾「………水希。今から話したいことがある。場所を変えたいんだが、…歩けるか?」

水希「うん。…もう大丈夫」

 

ベッドから立ち上がり、医務室を出た。

 

 

 

◆◆◆

 

大吾side

 

 

俺達二人は今、とある場所へ向かっていた。

ようやく着いたそこは、緊急用の脱出モジュールだ。

 

水希「ねぇ、大吾さん。ここって…」

 

右隣にいた水希は、何故ここに?と困惑している。無理もない。

なぜなら…緊急の時以外マスターキーを使わない限り、扉は開かないように設定されているからだ。

 

 

 

……俺は構わず、ある人物にメールを送った後、一時の別れを告げた。

 

大吾「水希。お前は充分、役目を果たしてくれた。……お前には悪いが、もうここにいる必要はない…」

水希「え?…何言ってんの、大吾さ…?!」

 

突如、水希を包むように灰色のバリアが張られた。…勿論、そうしたのはリヴァイアだ。

右手を見ると、指の第二関節から先が消えかけていた。……電波化が始まったのだ。

 

水希「…何してんだよ……リヴァイア!」

リヴァイア「……悪い、水希。……今はこうするしかないんだ……」

水希「…電波変換っ!!……うそっ、なんで!?」

 

変身用のカードを差すが、あらかじめ細工を施しているため何も起こらず、水希は混乱していた。

 

こうしてる間にも、水希の体は電波化していく。

 

 

 

 

 

 

 

**

 

 

一週間前。研究室にて

 

 

 

以前…俺はNAXAで、電波生命体について研究をしていた。

研究を進めるうちに、リヴァイア改め…電波体から放たれる強力なゼット波は、触れたものの周波数を変化させ『物質に限らず人をも電波化させる』ことが可能だと知った…。

その能力を、水希を地球へ送り返す時に使って欲しいと頼んだが、当の本人はまだ納得がいかなかった。

 

リヴァイア「なぁ、本当にそれで良いのか?」

大吾「あぁ。俺はそうした方が良いと思っている。今のままじゃ、きっとダメなんだ……」

リヴァイア「……最後の最後で、何もできないとか悔しいよ。…こうするしか方法がないなんて…!」

 

体を震わせ、悔し涙を流すリヴァイアの頭を撫で、抱擁した。

 

大吾「…俺達は必ず帰る。それまでの間でいい、あかねとスバルを……頼む」

リヴァイア「ごめん…、大吾さん…」

大吾「いいんだ。…これくらい、何てことない……」

 

何てことない。

 

そう言ったが、正直…大事な家族に会えなくなるのは辛いし、何より水希とリヴァイアに酷な選択をさせて申し訳ないと思っていた。

 

リヴァイア「…みんな、きっと悲しむと思うぞ?」

大吾「…そうかもな」

 

 

 

 

 

**

 

 

 

……過去を思い返していた矢先、水希は既に電波体となったので、俺はビジライザーをかけた。

 

大吾「水希、ごめんな。お前にウイルス退治を任せっきりにしてた分、少しでも良いところ見せようと思ったのに……結局、何もかも無駄になっちまった。

…今の俺らに、地球へ帰る資格なんて無い。だから俺らは残ってアイツらと…「バトルカード!、ブレイクサーベル!!」

 

…諦めの悪い水希はバトルカードを差し、具現化した剣を手に取り、バリアを叩き切ろうとした……。

 

水希「…僕だって、頭ん中じゃ『自分の意見と価値観を、他人に押し付けてまで同行する必要はない』って分かってたよ!

でもあの時…大吾さんや局長がワガママを聞き入れてくれたから、その分恥じないようにと頑張れたんだ!…だから最後まで役目果たさせてよ!!

今更置いて帰るわけないっ!! お願いだからバカな真似はやめてよ!! 大吾さん! 大吾さんってばぁ!!」

 

水希は必死にバリアを壊そうとするが、頑丈に作られているためビクともしない。…いくら戦えるとはいえ、リヴァイアがいなければ電波が見えるだけの一般人だ。

何せ水希は、本来ここに居られる立場ではない。

だからこそ……こんな所で死ぬより、今以上に強くなって、地球にいる人達を脅威から守ってくれればいい。…そう願っていた。

 

すると突然、剣にヒビが入った。

最後の一振りで脆く崩れ去り、もう一度バトルカードを差そうとしたが、俺は首を横に振り…手を止めさせた。

そして……

 

大吾「…二人のこと、頼んだぞ……水希」

水希「っ、……いやだ………やだよ………大吾さん…!」

 

水希を包むバリアが浮くと、少しずつ上昇し……

 

水希「大吾さぁぁぁぁ――――…」

 

……壁の向こうをすり抜け、水希とリヴァイアはキズナ号を脱出した。

それを確認し終えた俺はビジライザーを外したが、しばらく立ち尽くしていた。

 

大吾「…すまない、…あかね、スバル。……今はまだ、帰れそうにない」

 

 

 

 

◆◆◆

 

水希side

 

 

 

 

 

水希「………ん……………」

 

いつの間に意識を失っていたのか…と思いつつ目を開き、体を起こした。

辺りを見渡すと、目に映るのは見慣れた場所。よく星を眺めに来る展望台だった。

時計を見なくても夜だとわかるほど空は暗い。

 

水希「……ここって、確か―――っ! 大吾さんっ!!」

 

 

いくら呼び掛けても大吾さんはいない。…解りきっていた。

リヴァイアはというと…脱出の際、出せる分の力を使い果たしたのか……トランサーの中で寝息を立てながら静かに眠っていた。

 

水希「……結局、戻ってきたんだ………地球に…」

 

仰向けに倒れ、苦笑混じりに自嘲する。

 

水希「……何が『恩返しできれば、それでいい』だよ。……あれだけ大口叩いておきながら、結局最後は何にもできなかったじゃないか。………なんのために……僕は………」

 

一人落胆していたその時。

 

「ねぇ、あそこにいるのって…」

「水希ぃーーーー!!!!」

 

こちらに向かってくる足音がした。

聞き覚えのある声………聞いた瞬間に誰なのか分かった。

 

スバル「大丈夫、水希兄ちゃん!?」

あかね「ケガは?…どこか痛い所はない!?」

 

……他にない、お姉ちゃんとスバルの声だ。

 

水希「……お姉ちゃん、スバル……僕は…大…丈夫……だよ……」

 

自分の不甲斐なさに涙が溢れ出た。

 

水希「…ごめん……お姉ちゃん、スバル。…やっぱり…ダメだった。……約束…したのに……結局……何一つ守れなくて……」

 

もっと強くなっていれば、みんなを守るための力があれば、こんなことにならなかったはず……

そう思うと、涙が止まらなくなった。

 

涙を流していたのは、二人も同じだった。

 

あかね「馬鹿っ!…あんたこんな時に何言ってるの!?…大吾さん達のために頑張ってたあんたのことを責める姉がどこにいるのよっ!?」

スバル「母さんの言う通りだよ…無事に帰ってきてくれて良かったのに、そんな悲しいこと言わないでよ!!」

水希「ごめん…二人とも………」

 

三人は抱き合うように泣いた。

どうしようもなく溢れ出る涙を抑えるのは…今の三人には無理な話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分ほど経ち、涙は止まり…だいぶ落ち着いた後、僕らは姉夫婦が住む自宅へ戻った。

僕はスバルを部屋に運び寝かしつけた後、リビングへ戻る。

時計を見ると、夜の10時を過ぎていた。

 

あかね「スバル…もう寝た?」

 

無言で頷く。

すると、お姉ちゃんは食卓にある椅子を引いた。

 

あかね「ねぇ、水希……こっちで話しましょう。立ったままじゃ辛いでしょ?」

水希「………うん」

 

お姉ちゃんと向かい合うように座り、顔を俯かせた。

 

あかね「……水希が帰ってくる前、大吾さんからメールが届いてたの。水希を地球へ送り帰すって………正直、驚いたわ。…本当に帰ってくるんだもの……」

水希「………」

あかね「……何があったのかは聞かない。でも、なんで地球(ここ)に戻ってきたのか……教えて…?」

 

お姉ちゃんは、多分…分かっていたんだと思う。

心を押し潰されそうになりながら、"最悪の事態に巻き込まれていたこと"を……察していたんだと思う。

 

僕は絶え絶えに事の説明をした。

 

水希「二人のこと、頼んだぞ。…って言われて………ここに帰って来た」

あかね「……そう、そうなのね……」

 

お姉ちゃんはとても苦しい顔をしながら聞いていた。

本当に無力だ………

 

あかね「……これからのことは明日考えましょ。今日はもう遅いから、泊まって行きなさい」

水希「うん……わかった。ありがとう、お姉ちゃん」

 

お姉ちゃんは椅子をずらし、立ち上がったと思ったら突然……

 

あかね「……ところで水希ぃ。前に大吾さんからもう一通送られたメールで、あんたが私のこと悪く言ったような内容が書かれてたんだけど。………どういうわけ?」

水希「…………え?」(○○;)

 

トランサー本体と腕に取り付けるバンドを外し、画面を僕の方へ向けた…。

内容を見た瞬間、顔が青ざめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつぞやのNGワード(禁句(以下略))についての密告文(メール)だった。

……おのれ大吾さんめぇ…許すまじ…!

 

 

水希「(うわあぁぁぁヤべェェェ!!バレたぁぁぁぁぁ!!!……つーか、このタイミングかよっ!?……クッソぉ、大吾さんめぇぇ!!!)

 

………………えっと~、その~……

 

 

 

 

 

 

 

…………ごめんね、お姉ちゃん!」☆(ゝ▽・)

 

 

 

……微かに拳を握る音がした。

 

 

あかね「やっぱり野宿の方がいいかしら?」(^▽^)

水希「嘘です!ごめんなさい申し訳ございませんお姉様!!ほんっとそれだけは勘弁してください!!お慈悲をくださいお姉様!!ホントはめっちゃ体痛いんです!!超眠いんです!!今冬で僕薄着なんでマジ寒過ぎて死にそうなんですぅぅ!!!」(超早口)

 

即座に死に物狂いで土下座した。

勝手に自爆しといてアレだが、全身に冷や汗がだらだらと流れている。

 

 

 

 

 

 

………実は前にも…姉が大事に持っていたお気に入りのCDをうっかり踏んでしまったことがあり、バレた時の凄まじさは今の比にならないくらいでした…。

 

 

 

普段は温厚で優しいお姉ちゃん……ですが、

本気で怒ったお姉様は……………滅茶苦茶怖いんです。(((・д・|||)))ガタガタガタガタgtgtgtgtgtgtgt……………………

 

 

あかね「まったく、何よ『裏の顔は般若』って。………軽く風評被害じゃない!」

水希「いや事実でしょ……

あかね「なんか言った?」(・_・)

水希「何でもないですっ!!」

 

あかね「はぁ~、もういいわ。…さっさと風呂入ってきなさい。部屋と布団は用意しとくから」

水希「ありがとうございますお姉様ぁ~」

あかね「………とりあえず、お姉様って呼ぶのやめて…」(;´д`)

 

 

 

 

 

 

その後空き部屋を借り、適当に布団を敷いた後、僕は窓を開け月を眺めていた。

 

そして……空を見上げ、月明かりに手を伸ばした。

 

水希「……いつか必ず、迎えに行くから。もう少しだけ待ってて……大吾さん」

 

僕はただ、今も宇宙をさまよい続けているであろう…大吾さんに向けて誓いを立てた。

 

 

たとえそれが長く辛い戦いでも、今の僕にとって再出発(リスタート)を切り出す一歩でもあるから。

 

窓を締め、布団に入る。

体が暖まった頃、ようやく眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今宵の満月

 

 

 

それはもう、酷く…美しく……輝いていた。

 

 

 




書いていくうちに思いましたが、…軽いノリで書くもんじゃないですね、これ(汗)

NGワードがバレた件はおまけ程度で書きましたが、「…正直、この話要らなくね?」と思われてるかもしれません。今後もなんかの気まぐれで、お姉様が再登場すると思います…多分(笑)



6話は早ければ新年辺りで完成させます。

では!( ̄▽ ̄)ノシ
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