流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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味気ないサブタイトルですんません


55話 午後に取調べ のちに敵襲

とても不謹慎なことを言うが、今こうして()()()()()一日を過ごせていることに実感がなかった。

 

これでもまだ子供だけど、平和ボケしすぎるのって良くないんだな〜って悟りを開くとは夢にも思わなかったし、立て続けに大事(おおごと)が起こったせいでもある。まだ学校に復帰して一ヶ月も過ぎてないのに……。

 

特に兄ちゃんの場合、他二件と比べ物にならないくらい大変だった。

 

リンドヴルムの封印が解けて能力(ちから)を暴走させた時は肝が冷えたし、入院中も合わせて10日も眠った時なんか本当に死ぬんじゃないかと思って、まともに眠れなかったからね……。

 

だからといって過ぎたことを蒸し返すのも難だけど、せめて一日、ズル休みしてでも兄ちゃんのそばにいたかった。

 

眠ったまま(うな)されていた兄ちゃんの手を取って、少しでも安心してもらうために。

 

……僕自身も、抑えきれず膨れていく不安を、少しでも和らげたいがために。

 

 

 

 

そう思うと余計に、平穏な日常を取り戻せたことが奇跡だと思えてしまうし、僕の手に負えなかった兄ちゃんを救ってくれた信武さんとレティさんには感謝してもしきれない。

 

それに……二度と失いたくないものだからこそ、もっと強くならなきゃという焦りが生まれ、余裕ないくせに余裕ぶっこいてる兄を一泡吹かせたいという闘争心も芽生えてくる。

 

そしてゆくゆくは、肩を並べられるように……。

 

 

 

 

複雑な感情を抱えながら今日一日の授業を終え、帰りの会も済んで放課後に差し掛かっていた頃だった。

 

育田「星河、少し話があるから来てくれないか」

 

帰り支度をする最中、担任の育田先生に呼ばれ、後に続いて教室から廊下の窓辺に移動すると質問をされた。

 

育田「あっという間に2週間過ぎたが、学校にはもう慣れたか?」

 

反応を伺おうとしてるけど、ひょっとして顔に出ちゃってたのかな。

 

正味ありがた迷惑な朝のお出迎えがくっっそ嫌なだけで、学校で過ごすこと自体はさほど問題じゃない。クラスメイトは皆優しいから居心地良いしね。

 

ただ問題はこの前の、学習電波暴走事件が解決した後の二週間なんだよね……本当に憂鬱極まりないって。

できればだが、こんな思いをするのは最初で最後であって欲しいよ。切実に。

 

スバル「ぼちぼちって感じですけど、まだ通えると思います」

育田「……そうか。それを聞けて安心だよ」

 

声に出かかった不満を引っ込めて無難な受け答えをするが、安堵を含んだ返事が返ってきた割に、先生の表情はあまり穏やかじゃなかった。

 

育田「それでだな、呼び出した理由なんだが……」

スバル「もしかして、この前の事件のことですか?」

 

言い当てられると予想していたのか、先生は驚くこともなくそのまま話を続ける。

 

育田「あぁ。実はその件で取り調べがあって……無理なら私だけでも行くが」

スバル「いや、大丈夫です。それに、あまり待たせない方がいいと思います」

 

 

 

 

 

 

育田「お待たせしてすみません」

 

先生に続いて放送室に入ると、見覚えのある面々を見て頭が痛くなりそうで仕方ない。

 

たしか、五陽田さんと……その隣にいるサテラポリスの制服着てるゴツい人。

名前忘れたけど、天地さんと一緒に家に来た……あの〜……!

 

「とんでもございません。むしろこちらから押しかけたようなものですから」

 

ええと、誰だったっけ? 忘れてるのバレたら怒られそう……。

 

「そんなしかめっ面しなくても大丈夫だよ、スバル君。会う機会が少なかったから覚えがなくて当然さ」

 

考えを見透かされてしまって焦ったけど、怖そうな見た目の割に口調は穏やかだから意外と優しい人なのかな?

まぁあの兄ちゃんとも付き合い長そうだし、あり得るな。うん。

 

育田「つかぬことを聞きますが、星河とは面識があるんですか?」

「えぇ。この子の父親とは古くからの付き合いでしたので」

育田「なるほど……どうりで」

 

2人の会話を遮るように、五陽田さんが咳払いをする。

 

五陽田「飯島警部。そろそろ本題に……」 

 

五陽田さんナ〜イスッ!!( ̄ー ̄)bグッ!

 

……いけないいけない。少々取り乱したがようやく名前が分かって一安心だ。

 

飯島「失礼。脱線しました」

 

雰囲気がガラリと変わって緊張するなか、ようやく本題に入った。

 

飯島「ここに呼んだのは、例の事件でもう一度確かめたいことがあったからなんだ」

スバル「確かめたいこと、ですか」

飯島「あぁ。暴走した直後はろくに身動き取れなかったはずが、君と双葉くんだけが難を逃れた。そのことに間違いないね?」

スバル「はい……途中まで頭痛が酷かったのは覚えてます」

 

その辺りは包み隠すこともないため、飯島さんの質問には難なく答えられた。

 

五陽田「そして、育田さん。貴方は前校長に脅迫を受けた末に装置を起動をしたそうですが、暴走する事態は予測できなかったそうですね?」

育田「えぇ。不幸中の幸いにも、全員後遺症は残りませんでしたが子供達に危害を加えた事実がある以上、尚の事教育者として失格です……」

スバル「先生……」

 

嘆かわしいことに、取り憑こうとした FM星人(リブラ)のせいでもあるし、あの腹黒教頭の指示で悪者扱いされただけなのに。

当事者であるがゆえに、そう簡単に罪悪感を拭えないのか……。

 

五陽田「心中お察しします。ですが今から話すことは、スバル君や貴方にも関わりがあるかもしれない話なんです」

育田「私にも……それは一体?」

飯島「コダマタウンでトラックが暴走する事案と他ニ件が、先日起きた事件と共通点がありまして。我々で調査した結果、解決後の数日間にわたって事件現場から残留Z波が検知されました」

 

……ひょっとして、五陽田さんの捜査メモに書かれたこと……トラックの暴走を阻止した時やミソラちゃんや宇田海さんを止めようとした後のことだったりするのかな?*1

 

にしても残留Z波か……長い間地球にいるリヴァイアも無関係とは言いがたいよな。

 

飯島「そもそもZ波とは、言うなれば放射能と同じぐらい厄介でして、浴び続けると病気になる――ということはありませんが、人体に影響を及ぼすほど悪質な電磁波なんです。

その発生源となる宇宙人達の悪巧みによって被害を受けた可能性が、先程お伝えした共通点の一つです」

育田「とてもユニークな発想をされてますが……そう裏付ける根拠があると?」

 

不吉なことを真顔で言い放つものだから、冷や汗を垂らしつつもカマをかける先生の反応は何ら不思議なことではない。

 

……ただ、先生の記憶に残らなかっただけで、残念ながらすべて真実に過ぎないわけだが。

 

飯島「どうせフィクションだろうと(うたぐ)るのも無理ありませんが、実際はあまり公表されていないだけで15年前にも前例があったんですよ」

育田「そんなに前から?!」

飯島「無論。私もその一部始終を目撃しておりましたので、証拠として挙げるには充分あり得るのです」

 

やっぱり。思ってた通りだ。

ロックと出会うこともないまま何も知らなければ、未だに半信半疑な先生と同じ反応をしたが、僕が生まれる前の話だから間違いなく兄ちゃんとリヴァイアのことだろう。

 

先生が操られていた時と、リンドヴルムの力を暴走させた時が被ってるわけだから……下手すればみんな浴びてしまっているってこと……?

 

五陽田「その前例を元に、宇宙人は皆、孤独に苛まれ弱り果てた人間に取り憑き、暴力的にさせ悪事を働かせるよう(そそのか)す。そう記述された過去のデータと、もう一つの共通点が噛み合うんです。

……それは、図らずして装置の出力を上げてしまった貴方と、難を逃れたスバル君と双葉君が、すでに宇宙人に憑かれてしまっていたという可能性があることだ」

育田「それこそあり得ませんよ! 確かに私自身、途中からおかしくなった記憶はありましたけど、それが宇宙人と関わりがあるだなんて」

スバル「――なら、これでどう?」

 

声を荒げる先生を差し置いて変身をすると、先生と五陽田さんは言わずもがな驚くが、その一方で飯島さんは……さすがに何度も見慣れているのか無反応だ。

 

ウォーロック「バカ野郎、何してんだスバル!?」

スバル「正直もう話を長引かせたくなかったし。それに、誰かさんが殴ってくれたから正気でいられたって証明できるんじゃないの?」

ウォーロック「オレのお陰で頭痛に悩まされずに済んだんだし別に良ぐぇっ!?

 

自重してくれなかったので拳一発で許してあげることにした。

ただ石頭なせいか、こちらもダメージを負ってプラマイゼロになってしまった。

 

飯島「……成程。要するにショック療法で難を逃れたのか。確かにそれでも辻褄(つじつま)が合うな」

五陽田「何をそんなに落ち着いていられるんですか警部殿?! コイツがコダマタウンで起きた事の発端ならば、ただちに身柄を拘束すべきでしょう!」

飯島「それこそ不可能ですよ。事の発端どころか、むしろスバル君は数々の暴動を食い止めようと動いてくれた。

貴方が単に知らないだけで、上層部にも知れ渡っている事実です」

 

五陽田さんは慌てて手錠を用意するが、その手を止めた飯島さんは至って冷静だった。

 

飯島「それとですね、スバル君を味方だと明言した人物は、貴方が独自調査で要注意人物と見なしていた子なんですよ?」

五陽田「何!? では彼がサテラポリスに従事したという噂も……?」

飯島「仰る通り、先程の前例がほとんどあの子にまつわる話ですので。宇宙人との協力があってこそ、学習電波の悪影響から逃れることも、事件の解決に勤しむことも可能でしょうね」

 

他ならぬ飯島さんが、兄ちゃんという前例を知っているからこそ、一概にも僕を犯人だと決めつけずに話を進めてくれると信じて行動に移した。その結果誤解が解けて何よりだが……忘れてもらっては困る。

 

僕の場合誰かさんに殴られたんですけどねっ!!

 

大事なことだから2回言ってやりたい気分を押し留めながら変身を解き、現状を受け止め切れずにいる先生に言葉をかけた。

 

スバル「先生……覚えてないかもしれないけど、先生が宇宙人に取り憑かれたことは、この目で見たから本当なんだよ。

だからといって生徒を傷つけたことへの罪悪感は消えないと思うけど、そんなに自分を責め過ぎないで」

育田「星河……」

飯島「悪事を働く宇宙人に対抗できるのも、スバル君や彼のような存在しか見当たらない。そう踏んだからには、上層部もある程度黙認しているんです。

……無論。度を越すような事態が起これば、その限りではありませんがね」

五陽田「ですが警部殿、今回の件は……」

飯島「死者が出ていない以上不問にせざるを得ません。何しろ既に片付いた後ですからね」

 

まだ納得が行かない様子の五陽田さんにこれ以上の言及はするなと促して、飯島さんは先生に敬礼しながら言った。

 

飯島「我々はこれで失礼します。それと、スバル君が変身できることについては、くれぐれも口外なさらぬようお願いします」

育田「……わかりました」

飯島「スバル君も、下手に正体を明かさないよう気を配ってくれ。さっきみたいに誤解を解くためであってもね」

スバル「……はい。気をつけます」

 

当然、飯島さんのように理解のある人以外の前では決して、断じて、自ら進んで身バレする気はこれっぽっちもない。

 

 

 

……とはいえ、どうにも胸騒ぎしてしまうのは、気のせいだろうか……。

 

 

 

 

育田「そういえば、Z波だったか? それを浴びてしまった時の悪影響がどんなものか、聞いてなかったな」

ウォーロック『俺で良ければ説明するぜ』

育田「是非。よろしく頼む」

 

放送室は大抵、用がなければ誰も立ち入らないし場所だから、ロックが堂々と声を出すには申し分なく、先生も決して気分の良い話ではないと知った上で聞こうとした。

 

ウォーロック『結論から言うが、Z波を浴び過ぎた場合、良くても電波化――幽霊のような体へ変化するだけだが、浴びる量次第では最悪死ぬ。サテラポリスの連中が危険視する理由の一つだ』

育田「……他にもあるというのか?」

ウォーロック『あぁ。それ以上にマズいのが、俺と同じFM星人が人間に取り憑いた後なんだ。寄生虫がゆっくりと確実に宿主の体内を食い荒らすように、奴らは人間(やどぬし)の同意もなしに精神を乗っ取とろうとする。手遅れになる前に助かる方法はたった一つ。FM星人と協力して電波変換した姿の時でしか、太刀打ちできない』

 

寄生虫のくだりから青ざめてしまう辺り、事の深刻さを理解した様子がうかがえる。

 

育田「つまり、君達のように協力できさえすれば、人間にはなんの害もないってことで合ってるか?」

ウォーロック「そうだ。矛盾してるけどな」

育田「――――」

 

ロックの話を一通り聞いてなお信じ難そうな反応をするが、しばし考え込むような仕草をしながら言った。

 

育田「まやかしかと思ったが、宇宙人が絡んでいたというのは本当だったんだな」

スバル「はい。ただ、先生と違って、取り憑かれた後の記憶が残った人も、いたんです……」

育田「そうか。そんな状況下で、星河は巻き込まれた人を助けようとしたんだな」

 

先生の時だけ、本当は助ける間もなく敵に仕留められたけど、記憶に無ければ必要以上に語るべきじゃないと判断して、先生の質問には首肯するだけに留めた。

 

育田「星河。今はありがとうとだけ言わせてくれ。それでもし、今後困ったことがあれば遠慮なく相談してくれ。力になれるかはともかく、な?」

 

サテラポリスの二人が去ってからしばらく気まずかったが、緊張が解かれたおかげかようやく先生の表情が柔らかくなった。

 

スバル「ありがとうございます。先生」

 

先生の厚意をありがたく受け取って放送室を出たその時。つんざくような悲鳴が響き渡り、胸騒ぎの正体がまさかのね……次から次へと事件現場にされるのはごめんだっての……。

 

育田「今の声……白金か!?」

スバル「先生はここで隠れてて。僕が何とかする」

育田「無茶はしないでくれよ?」

スバル「もちろん!」

 

本日二度目の変身をして、委員長がいると思われる教室へ駆けつけ勢いのまま扉を開けると、教室の隅にまで追いやられ怯える委員長の眼前に、影のように真っ黒な人型が二体。――心なしか、知り合いの面影がある気がしなくもないが。

 

そいつらが両手を上げたことにより、攻撃を仕掛ける動作だと理解したからには、

 

スバル「バトルカード、〈ロングソード〉」

 

その手が振り降ろされる寸前に立ちはだかり、剣を横薙ぎに振るうと、人型は音も立てずに後退る。

 

ルナ「ロックマン様?! 助けに来てくれたのね!」

スバル「話は後! 一旦ここから離れよう!」

ルナ「はい♡」

 

まったくもう……飯島さんと約束したばかりなのに、早くも言いつけを破ることになるとは……つくづく厄日だ。

 

内心愚痴りながらも、委員長の手を引いて教室から脱け出した。

 

 

 

 

 

 

その後。奴らの視線を掻い潜って、どうにか1階の正面玄関まで来れたものの……もう一体が待ち伏せていたので、ひとまず下級生が使う教室に身を潜めて一息ついているところだ。

 

けど、何時間も立て篭もるばかりでもいられず、事情を確かめる為に委員長から説明してもらうことが先決だった。

 

スバル「――なるほど、さっきの黒い影みたいなのが君の友達だったんだね」

ルナ「そうなんです。正直信じられないですけど……」

 

ショックな出来事を目の当たりにして、それも被害者が自分の親友(ブラザー)となると……辛さは計り知れない。

 

だが一つだけ、気がかりな部分がある。

 

育田先生以外の教師がまだ残ってるはずなのに、正面玄関の近くに職員室だってあるにもかかわらず()()()()()()()()()()ことだ。

……考えたくはないけど、ゴン太やキザマロと同じ目に遭ってるとすれば、職員室は今頃危険区域と化している

だからといって日和ってちゃあ、兄ちゃんに一泡吹かせるどころか一生足元にも及ばないからなぁ。

 

スバル「委員長、お願いがあるんだ。しばらくはここで隠れてて。二人は僕がなんとかする」

ルナ「なんとかって……どうやって?」

 

具体策がなければ、消去法でも元凶を倒して解決(お決まりのパターン)で行くしかない。

 

スバル「少し乱暴になると思うけど、できる限り早く終わらせるから」

ルナ「待ってくださいロックマン、さま……行っちゃった」

 

 

 

 

 

 

 

 

来た道を引き返すように5-Aの教室へと足を運び、引き戸の小窓越しに覗き見ると、さっきの影二体がまだ教室内をうろついていた。

 

スバル「アレについて心当たりある、ロック?」

ウォーロック「……正直言って、アレを見るのは初めてだ」

スバル「やっぱりか」

ウォーロック「ただ分かるのは、あんな得体の知れねぇのを生み出した親玉がまだ近くにいるくらいだろうな。教室に入ってまで相手するより親玉を倒した方が手っ取り早そうだぜ」

 

ロックの提案に乗り、真上にあるウェーブロードに飛び移って親玉を見つけだそうとするが、そう時間はかからなかった。

 

壁をすり抜けて教室に入ったその瞬間。

退屈げな顔から薄気味悪い笑みへと変えたジャミンガーと睨み合う。

 

「ようやくお出ましか、ロックマン」

 

違和感があるとすれば、配色がモノクロなだけでなく、兄ちゃんや信武さんのような強者(つわもの)のオーラが感じ取れてしまうが……兄ちゃんと比べたら怖気づく程じゃない。

 

あの無表情で放たれる殺気と比べたら、全然マシな方だ。

 

スバル「ゴン太とキザマロをあんな風にしたのはお前の仕業か?」

「いかにも。丁度いい実験体がいたものだからな。それに、アイツらをただの人質として利用するだけじゃつまらないだろ?」

スバル「ふざけるな! 早く二人を元に戻せ!」

「もちろんそうしてやるつもりだが……その前に取引と行こうか」

ウォーロック「取引だと……?」

 

この期に及んで悪どいことをしてくれるものだ。

 

「単刀直入に言おう。人質の解放条件はアンドロメダの鍵を渡すことだ」

 

話の途中で指を鳴らした瞬間。

真下にいる二体の影が動きを止め、身体中に電流が走りながらも声を出せずに苦しむ様を目の当たりにする。

 

「断る気なら、人質の命はないと思え」

 

冗談キツいっての。大人しく渡したところで解放してもらえないのは見え透いてんだよ。

 

すぐに終わらせるから、もう少し耐えてて、ゴン太、キザマロ……!

 

奴の提案を蹴って、間合いを詰めて切り掛かるが、

 

「それが答えか。なら精々後悔するんだな!」

スバル「しま――っ!?」

「――〈ショックノート〉!!」

 

気づけば背後を取られてしまい、顔面に銃口を突き付けられて撃たれると思ったその時、ギュイーン!とギターを弾く音に伴って、音符弾の雨が振り注がれる。

 

どうやら間一髪の所で、ハープ・ノートに変身したミソラちゃんが助けに来てくれて、とても頼もしく思う。

 

しかし、ジャミンガーは並外れた反射神経を以て全弾回避しており、これには流石に目を奪われる。

 

ミソラ「スバルくん! 大丈……ひっ!?」

 

怯えるように息を詰まらせ、僕もつられて背筋が震えだす。

 

教室中に漂う殺気は、言わずもがな兄ちゃんが放ったものだ。

 

水希「捕縛せよ

 

回避後の着地を狙ったかのように、足元を照らす魔法陣から氷の鎖を射出。ジャミンガーの四肢を拘束……というよりギチキチと鈍い音がしてるから、引きちぎりそうな気がしなくもない。

 

無論それだけで終わらず、手の平サイズの魔法陣を数十枚展開して、立体の円を描くようにジャミンガーを囲った次の瞬間。

 

水希「死ね

 

鋭くとがった氷柱(つらら)によって串刺しにされた……はずだったが。

その寸前、赤黒い光粒子がジャミンガーの全身に絡みつき、絶対防御の鎧となって直撃を拒んだ。

 

「予定より早いけど種明かしと行こうかしら」

 

次の瞬間。氷柱や氷の鎖、魔法陣に至るまで侵蝕され、剥がれ落ちる鎧ごと砕けて虚空へ還っていくと、聞き馴染みのある声の正体が発覚した。

 

水希「ヘルプシグナルを頼りに来てみれば……いったいどういうつもりだよ、レティ」

レティ「何も言わずに独断でやったことは謝るわ。けど今回のことは、今のスバルには必要なことだったのよ」

 

鋭い眼光を向ける兄ちゃんに臆すことなく、レティさんは言葉を放った。

どういった意図があって必要だと判断したかは判りかねたが、すぐに理由を話してくれた。

 

レティ「今回の模擬訓練において、人質がいる状況下で、なおかつ一人でも冷静に対処できるかを試そうとしたの。

もちろん人質って言っても、私の分身が姿変えただけで、弟くんのクラスメイトは今頃お勉強中だから無事よ。その証拠に、ほら」

 

促されるままに下を見ると、苦しんでたはずの人型が()()()()()()()()()()姿()へと変わり、なんなら笑顔でこちらに手を振ってくる。

 

ただでさえ強いってだけじゃなくて分身まで……規格外過ぎて呆れてくる。

 

水希「え? ……じゃあひょっとしなくても、今回ばかりはお邪魔虫だったり?」

レティ「100%ね。まぁ必ずしも、一人で背負い込む必要性なんて微塵もないわけだけど……ただ、敵もそろそろ本気で鍵を奪い返しにくる頃だと思うのよ」

水希「そっか。必ずしも助太刀できるとは限らないから、レティなりにスバルを見定めようとしたんだ」

レティ「そういうこと」

 

得意げにウィンクするレティさんに「それなら前もって言ってよ」と悪態をつく一方で、ミソラちゃんはまだ困惑しきっていた。

 

ミソラ「……ハープ。わたしイマイチ話が掴めないんだけど、何かわかる?」

ハープ「ポロロン。どうやら、私たちの出る幕じゃなかったかもしれないわね」

スバル「そんなことないよ。むしろ来てくれて助かったよ」

 

助けに来てくれた二人を(ねぎら)うと、表情から見て取れるように安心してもらえた。

 

だが確かに、仮に一人で解決しなきゃダメな時が訪れるとして、今回の訓練はある意味いい機会になるはずだった。

 

でも、成長の機会を奪われたと思ってはいない。

むしろピンチの時に駆けつけてくれる人達へのありがたみが勝っているし、助けられるばかりじゃなく支え合える存在になるよう強くなるという目標を見いだせたから。

 

そのためにも、時間さえ取れれば信武さんに剣術の稽古をつけてもらってるわけだしね。

いざ実戦となった時に活かせるかどうかは自分次第だから。これからが大事なんだと思う。

 

水希「もうここに用はなさそうだから、先帰っとくね」

 

去り際にそう言って、兄ちゃんが教室を後にした直後。今度はミソラちゃんから話しかけられる。

 

ミソラ「ねぇ、スバルくん、話したいことがあるから展望台に来てほしいの。先に行って待ってるからね」

 

話したいことが何かを訊く前に展望台へ向かわれてしまったので、放送室で身を隠してる先生に「もう終わったよ」と報告して、残るは下級生の教室へ再び向かうだけだった。

 

 

スバル「――委員長、もう大丈夫だから鍵開けてくれる?」

 

ノックをして、声を少し張り上げながら呼びかけると、すぐさま扉が開いたのだが……

 

ルナ「流石ですわ、ロックマン、様じゃない……」

 

ご想像(おわかり)いただけただろうか。

愛しのロックマン様にだけ向ける笑顔が瞬時に消え失せてしまう委員長を。

 

なぜホラーチックに語るのかは置いといて。何せ今は変身を解いた普段の姿だから、ガッカリされる予感はあった。

 

スバル「落ち込んでる所悪いけど、ロックマンから伝言だよ。ゴン太とキザマロは家で勉強してたから無事だって」

ルナ「え? ……じゃあ、さっきのバケモノは、いったい?」

スバル「話を聞くにバケモノが二人になりすましてたみたい。どうしても心配なら確かめに行きなよ」

ルナ「だ、だれが心配なんか――」

スバル「二人のブラザーなんでしょ? なら尚更、(ないがし)ろにしちゃダメだよ」

 

お説教まがいなことを言う僕だって、今頃展望台で待ちぼうけているであろうミソラちゃんを蔑ろにできないしね。

 

 

 

 

 

 

……ちなみに、一足先に僕が学校を出た後のことだが、

 

ルナ「何よ、星河君のくせに偉そうにして……別に行かないなんて言ってないわよ……」

 

委員長の言葉から、根っからの親友思いな一面が垣間見えるのだった。

*1
詳しくはEX-1話を参照




Q.正体バラすにしては早すぎじゃね?
A.上層部には知れ渡っているし、理解者が増えるのならそれに越したことはないと信じて書いております。

Q.戦闘シーン短すぎじゃね?
A.レティとて本気でスバルを傷付ける気はなく、あくまで演技をしたまでです。
(撃たれても全くダメージがないように調整してましたし、またボツ案になりますが、マジックショーみたく銃口から花が飛び出るシーンも考えてはいたんですよ。場違い感半端ないけど)

Q.原作や他の作品では五陽田さんが再び教室に来てたシーンあったけど、ないの?
A.レティによって観測も検知もできないように根回しされてるので、大丈夫だ問題ない。いやなんもだいじょばねぇけど。
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