流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

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皆様こんにちは。この作品の作者です。

前5話(53〜57話)の月曜日から時間が進みすぎて、待ちに待った日曜日。

デート当日の朝の様子を以下の順で、各視点でお送りします。 

【信武視点】
 ↓
【ミソラ(三人称視点)】
 ↓
【水希視点の星河家】



58話 デート当日の朝

「―――? ……あれ?」

 

たしか寝ていたはずだが……気づいたら俺は、仮住まいの寝室とはかけ離れた場所にいた。

 

身なりはなぜか礼服姿になっており、周囲にもタキシードやドレスを着飾った人達が多くいて、数々のテーブル席に座っているのが見受けられる。

 

会場の華やかさも加味して結婚式場にいるとは、夢にも思わない。

なぜなら誰の結婚式であるか、誰からの招待に応じて来たか。それすらも把握できていないのだから。

 

 

呆然とする俺を他所に談笑する人達の声は、やがて照明が暗くなるとともに止み、スポットライトが1箇所にあてられた瞬間。

 

「大変長らくお待たせしました。新郎新婦のご入場です」

 

アナウンスのあとにBGMが流れ始め、扉は開く。

 

程なくして、式の主役となる新郎新婦の入場に皆が一斉に拍手を送って迎え入れるなか……俺だけは、その主役二人を目にして膨れ上がる殺気を抑えられそうになかった。

 

信武「…………はぁ?

 

それもこれも……白いウェディングドレスに身を包む水希の横に立っているのは、言わずもがな白のウェディングスーツを身につけた恋敵なのだから。

 

(は?何で水希が花嫁でクソ蛇が花婿(むこ)なんだよふざけんなじゃあ俺はどうなるんだよ――――許すまじ恋敵ユルスマジコイガタキユルスマジコイガタキィッッ!!!)

 

ギリギリと歯軋りして怒りを顕にした顔にも、血で滲みそうなほどに握る拳にも、至る所まで青筋が浮かんでいるのがわかる。

 

 

水希「……信武」

リヴァイア「……青二才」

 

信武「誰が青二才だコラァ!」(<○><○>#)

 

キレ散らかす俺に対して二人は言った。

 

「「僕たち(俺たち)、幸せになるから」」

 

信武「ど、どうしてだよ……?!」

 

「「だって(そりゃあ)()にとって最高の婚約者(パートナー)だもん(だしな)」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信武「……………(#¤д¤)んなことあってたまるかぁああああぁぁァァァァァァァァァァッッ!!―――あ? 夢?………ぅっ、よかっだぁぁぁ(T〜T)………」

 

とんだ悪夢を見せられて心底不愉快だが、どうか願わくば、正夢でありませんように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月の第2日曜。時刻は7時を過ぎている。

 

普段から早起きを習慣づけている身としては、いつもと変わらぬ朝だろうが、今日に限って話は別だ。

ようやく迎えた、約束の日だから。

 

信武「……よし、忘れ物はないな」

 

大学入ってから今なお愛用している、機能性に富んだトートバッグに必要なものを入れ、中身の再確認をしているところだ。

 

今わかる範囲で、ウェットティッシュ、キャッシュカードの入ったケース、家の鍵。

他にも色々あるが、そこは割愛させてくれ。

 

キャッシュカードは、バイト代の振込み用に口座開設した時の付属品だ。

電子マネーの残高が心許ない時に必須だから、持ってて損はないが盗難には気をつけねばならない。

無論、家の鍵も貴重品だしな。

 

ウェットティッシュは主に食事中に手が汚れた時、乾いたやつより拭き取りやすいからかな。

 

こういうちょっとした気遣いで、水希に「スパダリだぁ…!」とか言われて惚れ直されたいわけじゃないぞ。断じて他意はない。

 

信武「……ふ、ふふ、フヘヘヘヘ……」

『何をそんなへにゃっとした顔しとるんじゃ……』

信武「あ、いっけね」

 

枕元にある携帯端末、トランサーのスピーカー越しから、俺の相棒ことクラウンに気味悪がられて我に返る。

 

信武「実はさ、剣道の試合で勝って水希に褒められるたびに、家でいつもこんな顔してたんだぜ。そういや親にも気味悪がられてたんだよなぁ」

クラウン『あっそ』

 

素っ気ない返事も気にならないほど浮かれつつ、持ち物の確認を続ける。

 

 

 

 

先週の月曜、河川敷で鍛え直している最中だった水希と約束を交わしてから、今日に至るまでずっと、俺の胸は高鳴っていた。

 

いつか再会したら、二人でどこかへ遊びに行くという……なかなか果たせずにいた約束が念願叶うのだ。これが浮かれずにいられるかってんだ。

 

 

欲を言えばもっと早く実現したかったけど、何も知り得なかった頃の俺は何度も水希に騙され続けて、約束を果たすどころの話じゃ無かったからな。

 

深祐から話を聞き、すべてを知ってから悲しさやもどかしさで胸が苦しかったけど……今思えば俺も、水希と立場が逆なら間違いなくそうするだろうと確信している。

 

駅のホームでの別れ際、『たとえ互いに遠く離れるとしても、他の誰かと笑顔で居続けてくれたら……』と願ったはずだ。それが外面(そとづら)を良くするための仮初めの笑顔だとしても。

 

何も成せないまま仲間を失い、自責の念に駆られたまま自分を死亡扱いして一方的に突き放したはずだ。親友として立つ瀬がないからな。

【騙すことの後ろめたさ】と【友を捨てる覚悟】を天秤にかけても後者が(まさ)るからこそ、自分の気持ちさえもフタをして、平気なフリをして騙し続けたと思う。

 

水希の日記に書き記された心境を顧みれば、それが間違った選択だと理解していながら、それが正しい選択だと言い聞かせ続けて、苦しんできたと思うから。

あとは水希が好きすぎて超ツラいと書き記すほどに拗らせたと思うから。

 

信武「……ごめん、なんか日記見られて取り乱した水希の顔思い出してお腹痛くなってきたわww」

クラウン『いや怖ぇて……』

 

だが何にせよ、今日この日をもって、水希と楽しい時間を過ごせるのなら文句はない。

青春の再来。とでも言えば聞こえは良いだろうか。

 

クラウン『しかし、本当に良かったのか? 水希と二人きりじゃのうて』

信武「……嫌に決まってるさ。でも有事の際にあの()()()がいなきゃ水希は戦えねぇし。何よりこの前の取引の話を聞いた以上、下手に引き離す方が酷だしな」

 

悔しいけど、水希はリヴァイア(クソ蛇)がいなきゃダメになるほど、俺よりもアイツに依存(しんらい)し縋っていた。

今までそれを知らないままずっと、俺は水希の期待に応えたいというのは建前であって、己の承認欲求を満たすためにお為ごかしをし続けた。

するだけ虚しいとわかっていながら、水希にとっての俺の存在価値を示す方法が他に考えつかなかった。

 

考える余裕すらなかったんだろうけどな。

何でも器用にこなせるクセに、こと恋愛には……いいや、愛する人の前だと、とことん不器用だったから。

 

 

 

……それでも水希は、俺に会えなかったら何も変われなかったと言ってくれた。

 

『僕も、好きだよ……。卑屈だった僕にいつも笑顔をくれた。太陽みたいに温かく包んで、寄り添ってくれた信武が―――誰よりも大好きだった!』

 

水希には不器用だとか言ったけど、負けず劣らずな俺を何年も恋い慕ってくれたことが判って、胸の痛みが取れたような気がして報われた。

 

嫌われるくらいなら突き放せばいいと思い立って、自らを死者扱いしたのは褒めがたい行動だけど、そんな水希を赦そうと思えるようになった。

 

俺だって水希に会えなきゃ変われなかったし、最早いてくれなきゃダメになるくらいに依存してるからな。

 

クラウン『……で、本音はどうなんじゃ?』

信武「クソ蛇の監視に決まってんだろいい加減にしろ」

 

そう。何を隠そう、クソ蛇に同伴を促したのは俺だ。

 

クソ蛇からしたら、恋敵からまさかの提案をされて驚かない方が無理だし、それに当日になって水希と二人きりのはずが、コソコソと後を付けてくるだろうしな。

アイツのことだから彼氏面しながら張り切って『今日一日、水希のSPを務めるぞ〜』とか吐かしやがるだろうなぁ……あぁ胃が痛ぇ、マジ斬り殺してぇ……。

 

クラウン『ハッ、妬いてやんの』

信武「妬くに決まっとるわボケ。最高の婚約者(パートナー)だかなんだか知んねぇけどよ、俺だって水希と両想いな時点で幼馴染から恋人に進展してるだろ絶対!

だからこそ、男としても、あんなヘビ野郎ごときに負けられねぇんだよぉぉ……!!」

クラウン『朝から喧しい奴じゃのう。まったく……』

『―――信武くん、起きてる?』

信武「あ、はい! 起きてます!」

 

対抗心に火がつく最中、ノックの後にドア越しから呼びかける声に応じると、叔母の真希絵さんが入室してくる。

 

信武「お、おはようございます真希絵さん!」

 

どうしよう……鏡見なくてもわかるくらい引きつった笑み浮かべてるわ俺……。

 

真希絵「ええ、おはよう。またなにか騒がしかったようだけど、大丈夫?」

信武「えぇ、大丈夫です! ちょっと友達と電話をしてまして! ――すまんまた後でかけ直すわ!」

 

さながら大根役者並みにぎこちない演技だったが、真希絵さんにクラウンの存在がバレずに済んだか? いや済んでくれお願いします。

 

真希絵「……どうやら間が悪かったかしらね?」

 

反応から見るにセーフかな。

 

信武「いえいえお気になさらず! あの、そろそろ着替えようと思うんでドアを……」

真希絵「わかったわ。今日お友達とお出かけするんでしょ? しっかり楽しんでらっしゃいね」

信武「ありがとうございます。帰りが遅くなりそうな時はその都度連絡しますね」

真希絵「それも大事だけど……この前みたいにずぶ濡れで帰ることがないように、折り畳み傘も忘れずにね?」

信武「わかりました」

 

部屋を出た真希絵さんの足音が遠のくと、変に疲れが押し寄せ、ゼェ…ゼェ…と肩で息をしてしまう。

 

クラウン『……お主に友達呼ばわりされると震えが止まらんわい』

信武「誰も好き好んで呼んでねぇよ……くそったれが」

 

こんな調子ではデートも楽しめそうにないが、服のセンスが無いなりに無難そうな服に着替え、髪をセットしに洗面所へ向かった。

 

 

◆◆◆

 

 

――同時刻。ミソラの自宅にて……。

 

ミソラ「……」

 

ベッドサイドに置かれたカレンダーを見ては布団から出られず、うずくまっている。

しかし既に目は冴えているため、単に眠気によるものではない。

 

ハープ『――ミソラ。もうそろそろ起きないと、支度するための時間減っちゃうわよ?』

 

愛用品のギターのヘッド部分に小さなモニターがあり、そこからミソラの様子をうかがいながら、あまり悠長にしている暇はないぞとハープは指摘する。

 

ミソラ「わかってるけどさ……ハープ。スバルくんのような男の子とお出かけするの初めてだから、不安なの……」

ハープ『大丈夫よ。そういう時ほど、会ったら意外と吹っ切れちゃうものよ』

ミソラ「だといいんだけどなぁ……」

 

緊張と不安に苛まれながら布団に包まること数分。

いつまでもウジウジするヒマはないと内心喝を入れてようやく支度に取り掛かるのだった。

 

 

◆◆◆

 

水希「リヴァイア。スバル。準備はできた?」

リヴァイア「問題なーーし!」

スバル「……朝っぱらから何なの?」

 

午前8時半。星河家の朝は僕とリヴァイアを筆頭に賑やかだが、その一方でスバルは引き気味にこちらを見ている。

 

水希「良いから良いから。とりあえず合わせてよ――忘れ物はぁ?」

リヴァイア「なーし!」

スバル「……なーし」

水希「身だしなみはぁ?」

リヴァイア「良ーし!」

スバル「……良ーし」

 

気乗りしないスバルから『うわぁまた始まったよ急に変なテンションになるやつ〜……』って内心言われてる気がする〜。けどそこはあえてスルーしよう。

 

水希「ほらスバル、そんなつまんなそうな顔しないの。いつまでもそんなテンションじゃ楽しめるものも楽しめないでしょ?」

ウォーロック『よく言うぜ。お前だってこないだからずっと辛気臭ぇ顔してたくせによぉ……』

スバル「ホントね。それに、ちゃんとアラームもセットしたのに叩き起こしてさぁ。いい迷惑だよ」

水希「お客様がお望みならいつでも駆け――」

スバル「それ以上は怒られるからやめて!」

水希「自動目覚人形。コールの――」

スバルだからそれ止めろっつってんだろうがいい加減にしろッ!!

 

声を荒げるスバルに圧されたので自重します。

 

水希「ごめんて。……にしてもまさか、スバルもヤシブタウンでお出かけかぁ……」

リヴァイア「そうと知るまで俺達と行き先が被ると思わなかったもんな」

スバル「なに二人してニヨニヨしてんのさ……」

 

リヴァイアの言う通り。先週の月曜の昼頃と夕方で、それぞれ約束を取り付けてるって知って驚きだったんだよね。

 

水希「いやぁね、スバルにもやっと春が来たかと思うと……兄ちゃん感激でさ」

スバル「気持ち悪っ。なんか今の視線、おじいちゃんみたい……」

水希「いやアイツと一緒にしないで。反吐が出る」

ウォーロック『……いくら血を分けてるとはいえ、真顔でアイツ呼ばわりって……』

水希「もうその話は終わりにしてそろそろ出ようよ。バスに乗る時間も迫ってるだろうし」

スバル「言い出しっぺがよく言うよ……」

 

なんて悪態をつくスバルだけど、行き先もバスに乗る時間も同じだから、どの道一緒に行動することになる。

その直前。お姉ちゃんが見送りに来た。

 

あかね「水希、ちょっと耳貸して。――信武くんのこと、蔑ろにしちゃダメよ? リヴァイアくんに負けず劣らず、アンタを好いてくれる子なんだから

水希「言われるまでもないっての

あかね「ふふ……それじゃ、楽しんでらっしゃい。アンタたちの土産話、楽しみにしてるわね」

 

そう言う姉に、僕ら三人は「行ってきます」と答え、外に出る。

 

リヴァイア「にしても、あの青二才……何を思って俺も誘おうとしたんだろうな?」

水希「さぁね。―――ん?」

 

妙な視線を感じ、後ろを振り返るが……確かに気配はあるはずなのに、気のせい……?

 

スバル「どうしたの兄ちゃん、忘れ物あった?」

水希「いや、確認したから大丈夫……だけど」

 

不審に思うなか、リヴァイアが耳打ちするようにして訊いてきた。

 

リヴァイア「……もしかして、敵か?」

水希「わかんない。でもしばらくは様子見しよう」

リヴァイア「わかった。ま、いざとなりゃ俺が居るんだし大丈夫だろ」

 

視線の正体がわからない限り不安が絶えないけど、気さくに笑いかけてくれる相棒に「心強いね」と返して、バス停へと向かう。




信武視点のお話が長い割にミソラちゃんのは少なすぎる……いや本当にミソラファンの方には申し訳ないんですが引き出しが少なすぎました。(;n;)
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