流星のロックマン 水希リスタート   作:アリア・ナイトハルト

87 / 87
62話 不器用であるが故に

信じてると言ったものの、不安が付き纏ってしまう。

 

……けど、どのみち足止め食らってる暇はないわけだし、先のことも見据えていた信武の判断は正しいと信じたい。

 

水希「あとはルナちゃんを見つけるだけだけど、問題はこの後だよね」

 

一足遅れてようやくジャングル展に入り込んだが、どこもかしこも蛇だらけなこの空間に気が滅入ってしまう。

展示させるにしても強化ガラスなどの隔たりが全然ないし……これでもしトラブったらどうすんのよ。

さっきの狼男のせいで逃げてきた人もいるだろうに。

 

水希「ねぇリヴァイア、今でも透視(ビジブル)を使えそうなら、この会場内の人数確認ってできる?」

 

リヴァイア「……少し時間をくれ」

 

そう言って瞼を閉じ、体中に巡るエネルギーを目に集中させながら開眼すると、周辺を見渡すリヴァイアの瞳に輝きが増す。

 

この前は使う機会がなかったから変身したあとに試してみるか。

 

そう考えてる間にリヴァイアは透視(ビジブル)を解いた。

 

リヴァイア「ぱっと見で40人くらいだな。さっきの騒動で逃げ込んでる人もいるだろうし……それよりもここの展示物、暴れられたらヤベェな」

 

水希「いつでも変身できるように心の準備しておこっか」

 

リヴァイア「出遅れんなよ?」

 

水希「そっちこそ」

 

不安要素だらけなイベントの運営に悪態つきたい気分を堪えたまま捜索を続行するのだが、見つかるまでにそう時間はかからなかった。

 

パシンと乾いた音が、嫌でも耳に届いてしまったから。

 

 

◆◆◆

 

 

今朝テレビでやっていた星座占いに『思わぬハプニングの連続に心が折れるかも?!』……なんて言われたけど、正直言って当たってほしくなかった。

 

「そこで何しているんだ? ルナ」

 

「引っ越しの準備は終わったの? 明日にでも出発しなきゃいけないのだから遊んでる暇はないでしょう?」

 

両親がここにいるのも、この103デパートのオーナーとして、会場の見回りをしている最中だったのだろう。

 

だけど、こういう時に限って鉢合わせるなんて冗談じゃない。

 

ルナ「あ……その……」

 

ナルオ「黙ってても分からんぞ。なんとか言ったらどうなんだ」

 

パパに詰められていたら別の方向から足音が聞こえた。

 

「あれ、委員長?」

 

まさか、星河くんまでここに来てたなんて……隣にいる女の子って、もしかして響ミソラ……?

 

ユリコ「ルナ。この子達は誰? 知り合いなの?」

 

ルナ「……彼は、私と同じクラスの、星河くん」

 

いつもと変わらず冷淡な口調で尋ねてくるママに対して、絞り出すように答えるので精一杯だった。

 

ユリコ「じゃあ、その隣にいる子は誰?」

 

「スバルくんの友達やってます、響ミソラです!」

 

……ねぇ、星河くん。引退してるとは言えつい先日まではアイドルなのよ、彼女。

ついこないだまで引きこもりだったアナタが、どうして? 彼女とお友達に? しかもいい感じになってるのかしら?

……なぁに汗垂らしながら目ぇそらしてんのよ。ちゃんと目合わせなさいよ。ねぇ。

 

ユリコ「……そう。自己紹介してくれて申し訳ないけれど、ルナは明日から転校することになってるの」

 

よりにもよって、一番知られたくなかった彼にその事実を知られてしまい、なおさら居心地が悪い。

 

スバル「転校、明日って……どうしてそんな」

ユリコ「どうしてですって?」

 

呆れ気味なママの声に怒りが滲み出てるせいか、寒気すら感じてしまう。

 

ユリコ「コダマ小学校だけじゃなく、あの町で物騒なニュースが後を絶たないなかで、わざわざ通わせる理由があるとでも?」

 

スバル「それは……」

 

……あるとは言い切れないでしょうね。

実際、コダマ小学校も含めて不可解な事件が起こったり、それに私自身も巻き込まれているのが確かな証拠だから。

 

何も言い返せずにいる星河くんの隣で、なぜか思い詰めた顔をしながら時折心配げに横顔を見やる響ミソラの様子も伺えた。

 

その二人に対してママは呆れ気味にため息をこぼし、続けて尋ねた。

 

ユリコ「アナタ達が将来、もし誰かと結婚して家族ができたとしましょう。そして自分の子供が事件に巻き込まれたと知ったら、アナタ達はどう思い、どう動くのかしら?」

 

ミソラ「こ、こども、って……!?」

 

……なぁに赤くなってるのかしら。

別にアナタと星河くんが夫婦になるわけでもないのに、なに本気になってんのかしら。

 

ユリコ「何よりも、自分の子の安全を優先する。その為ならお金をかけてでも安全そうなところへ行かせる。それが、私達が親として選んだ答えなの」

 

ナルオ「……その通りだ。ルナはいずれエリートの道を歩む。その歩みの末に幸せを掴んでくれるのなら、惜しむ理由もないということだ」

 

ママの意見に賛同するように、パパもそう答えた。

 

 

……ただ、親として私の将来を案じてくれていたとしても、やっぱりまだ、この人たちは亡き兄に縛られているんだと言葉の節々から感じ取れた。

 

 

 

 

 

 

ならもう、どうにでもなれ……

 

 

 

 

 

ルナ「……そんなこと、頼んでない」

 

ナルオ「なに?」

 

ルナ「たしかに事件に巻き込まれて怖い思いもした。だけど、それ以上に、クラスのみんなと離れ離れになる方が……思い出のまま終わる方がもっと怖いわよ!」

 

普段は口答えなんてもってのほかだけど、溜まりに溜まった鬱憤を吐き出したせいか、両親(ふたり)が普段見せない表情で、驚いた様子で私を見下ろしている。

 

ナルオ「何を言い出すかと思えば……我儘(わがまま)も大概にしろ。友達なら新しい学校で――」

 

ルナ「そうじゃない! 私はまだ、あの学校に通って、クラスのみんなと卒業するまで一緒にいたかった……。そんな気持ちも知らないのに、なんで勝手に私の幸せを二人だけで決めつけるの……?」

 

転校する直前になってワガママを言い出して、二人を困らせてるのは自分でもよくわかってる。

だけど、後悔と罪悪感がある以上に、込み上げてくる怒りに支配されて収まりがつかなくなっていた。

 

ユリコ「……ルナ。私達はただ、貴女に不自由な暮らしをさせないように――」

 

ルナ「生まれた時からずっと兄様の生き写しにされてる時点で自由なワケないじゃない!!」

 

終いには、言ってはいけないことまで言い放ってしまっていた。

 

その直後にパシンと、乾いた音と痛みが頬に響いた。

 

ユリコ「ちょっと、あなた……!」

 

ナルオ「黙れ。……恨むなら好きなだけ恨めばいい。だがな――」

 

ルナ「もうたくさんよ! わたしは、アナタ達の人形じゃない!!!」

 

 

◆◆◆

 

 

「待ちなさい、ルナ!」と呼び止める声もしたが、足音からして僕達が来た方向とは別の方へ走り去っていったようだ。

 

水希「不憫なもんだね。片や自己主張もままならないで、片やいまだに現実と向き合えずにいて……」

 

二人して顔を強張らせながら振り向いてくるが無理はない。

ルナちゃんとは違って二人には記憶処理を施してないから、僕が現れた途端に嫌な思い出がよみがえってそうだしね。

 

水希「……転校のこと、ルナちゃんから聞かせてもらったよ。

それを辞さないのも無理はないし、アンタらの選択を(とが)める権利はないと思ってる。

不自由ない人生を送ってほしいっていう願いも、あらゆる危険から遠ざけて守りたいっていう気持ちも。スバルの面倒を見てきたからこそ理解できるしね。……ただ」

 

ひと呼吸入れ、二人に告げる。

 

水希「警告はしておくよ。このままだとあの子、歯止め効かなくなっちゃうよ」

 

そうして再び歩みを進めて、二人の間を横切ろうとした時

 

ユリコ「それでも……それでも、私達は……」

 

水希「それ以上言うのはやめてね。親として最善を尽くした。なんて言い訳をしようものなら……

 

 

すぐにでも、息子さんに逢わせてあげたくなっちゃうから

 

いつまで経っても不器用な親共に殺気立ってしまったが、近くにいたスバルやミソラちゃんにまで怯えさせてしまったのは軽く後悔してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――ミノル! ミノルなのね!?』

 

『お願い、ルナをっ、あなたの妹を、助けて頂戴……! あなたが死んでから、もうあの子だけが最後の希望なの……だから、たすけてちょうだい………』

 

 

 

『……ルナ。白金、ルナよ。金の髪を2つに結わえてる子が、私の娘……あなたの妹よ』

 

『了解。……確実に生きてるという保証がなくても、連れ戻せばいい?』

 

『おい!』

 

『……それでもいいわ。私の娘を、ルナを、お願い……!』

 

『……わかった。さっきは酷い質問しちゃったけど、最善を尽くすよ。約束する』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水希「……心配なのはわかるけどさ、アンタらにとって最後の希望なら、少しでもあの子自身の意思を尊重して寄り添ってあげなよ。手遅れになる前に」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。