黒猫と死神    作:雪宮春夏

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 今月はパラパラと投稿を続けています、雪宮春夏です。
 今の処は書きかけを仕上げているという形ですがどこまで行けるかな?と言うところです。

 それではどうぞ。
 ご覧下さい。



2 雨

 再び見え始めた、白い仮面の化け物達。

 周囲の人々にある、おかしな記憶の欠落。

 そろそろ目を逸らすことは、限界なのかも知れない。

 それでも俺は、出来ることなら、目を瞑ったまま、知らない振りをしておきたかったんだ。

 

 

 5月のゴールデンウィークが終わったら、全国で僅かなズレはあるものの、運動系の部活においては、夏のインターハイに向けた地区予選が始まる。

 大学生となり、サークルにも入っていない俺には直接は関係無いものではあるが、それでも高校までに培ってきた人との関わりは早々消えるものではなく、情報はわりかしすぐに入ってきた。

 俺達の母校である音駒高校も、「ゴミ捨て場の決戦」と呼ばれる因縁を持つ、ライバル校、宮城の烏野高校も、どちらも地区予選で敗退した。

 彼らの夏の結果は、これで全てだ。

 

 

「と言うわけで! 残念会やろうぜ!!」

「何がというわけだ? 傷口に塩塗り込むような真似しようとすんじゃねぇよ!」

 携帯越しの溌剌とした、最後にあった3月の頃と変わらない元気すぎるミミズクの声に、俺は溜息をついた。

「……だいたいテメェの所の梟谷は、予選突破しただろうが。下手したら嫌みにとられるじゃねぇか」

 三年であるあの面々はもしかしたら気にせずに礼を述べるかもしれないが、二、一年の精神がどう捕らえるのかは分からない。

 特に入ったばかりの一年は彼の本質を知らないのだから尚更だ。

「じゃあ黒尾達ならいいのか? でも海と夜久って都合つくの?」

「まずそう言うのは、身内で細々とやるもんだろうが。OBが手を出すもんじゃねぇよ」

 嘘っと、驚愕を露わにする声が思った以上に大きく、心なしか携帯と耳朶との距離を離す。

 この容赦の無い大声は、時折一般常識を欠如させる相手が良くも悪くもどんなときも全力投球な為に、注意したところで治らない癖だ。

 指摘するのも諦めて等しい。

 電話越しの相手に溜息をついていると、こちらの心情など意に返さない明るい声は、こちらの近況を問いかけてくる。

 プロのバレーボール選手を目指し、未だ本気のバレーを続ける男とこちらでは、生活習慣もまるで違っているだろうに、お構いなしとはこの事だろう。

(……おおらかと言うか考え無しと言うか……どっちだろうな)

 ギャーギャーと高校の頃と変わらない喧しい彼の声をBGMよろしく聞き流していたら、彼の話は予想外の方向に飛び火していた。

 曰く、夏休み前に一度会おうと。

「ちょっと待てぇ! 夏にはテメェも大会あるだろ!? って言うか、大学には単位ってもんあんの、自覚してんだよなぁ!? おい!!」

 なんせこの男、高校三年になって「悩み」と言う漢字が書けないと言われていたほど頭の出来が残念な男なのだ。

 高校時代は同期の血の滲むような努力と一学年下の世話焼き体質のセッター兼、副部長の献身で何とか部活と学業を両立してきた男なのだ。

 じゃあ楽しみにしてるなー等と言い置いて早々に電話を切ってしまった相手は絶対にこちらの言い分を聞いていないに違いない。

 断言したっていい。

「スポーツ推薦でも、プロから声かけられても、必要最低限の単位は取得しねぇと卒業できねぇって、あいつ分かってんだよなぁ?」

 肩を落として溜息をつく俺は、やはり甘いのだろうが、元々の性格上、治るものでも無いのだろう。

「……不安しかねぇ」

 一人呟いて肩を落とす。

 その部屋の向こうには、パラパラと雨が降っていた。

 

 

 

「もしもーし。……とりあえず黒尾にはアポとったけど、そこまで気にすることなのか?」

 パラパラと落ちる雨を窓越しに眺めながら、その男は携帯の向こうの人物へと唇を尖らせる。

「現に「その中にいる奴」って、今までずっと、黒尾の中で大人しくしているんだろう?……今更黒尾に何かするとは思えないんだけどよぉ」

 彼の不満の声に、携帯の向こうから放たれる声は答えているのだろう。やや間を置いて彼の表情は呆れの混ざったものに変わる。

「だから、気にしすぎだって! 重霊地って言っても、あいつの大学からは二駅ぐらい離れてんだろ?……あのサトリ君だって見張りについてんだし……あー、もうっ!」

 ガリガリと特徴的な逆立った髪をぐしゃぐしゃと崩す男は、元々気が長い方では無いのだろう。

 フーッと自らの気を落ちつかせるために息を吐き出して、分かったと頷いて決断を下す。

「確かめに行くから良いだろ! それで、もしも本当にヤバそうならそこで手を打つ!! なんならお前も来ればいいからっ!!」

 良いよなと、最後は言い逃げるようにぷつりと切る。

 そのまま衝動的に携帯を投げそうになるが、流石に床に向けて投げたら壊れるかなと一瞬働いた理性によって、投擲場所はふかふかな寝床の上で、次いで己もダイブしていた。

「はぁ…………」

 ゴロリと、仰向けになって、見上げたのは見慣れた天井だが、思い出すのは話題にしていた彼と過ごした今までの月日だ。

「……秘密とかそう言うの、柄じゃねぇんだけどなぁ」

 自嘲を混ぜた独り言を漏らして、男……木兎光太郎は空を眺める。

 雨はまだまだ、止みそうに無かった。

 

 




 今回もBLEACHのキャラクターはほとんど出てきません(苦笑)
 そして何やら不吉な展開が……。

 そこまでしっかりと書けるように頑張ります!

それではまた、機会があればよろしくお願いします。
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