レミリア・スカーレットは百合百合暮らしたい   作:名無しのメイド

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パチュリー・ノーレッジは賢人でありたい

「パチェ。今いいかしら?」

 

 読書中の私──パチュリー・ノーレッジに話しかけてきたのは、この紅魔館の当主であるレミィことレミリアである。

 

「あら、レミィ。ええ、かまわないわよ」

 

 というより、本来ならこの館の住人がレミィの言葉を断る権限などないのだが。レミィに話しかけられたら何をしている最中でも応対しなければならない。私にこう聞いてくれるのは私がレミィの親友という立場であり形式的には対等だからだ。

 

「最近、酷く退屈でね。日常に変化が欲しいと思っていたの」

「それには同意するわ」

 

 いい加減、私も代行者の襲撃に煩わされながら本を読むのは飽き飽きしていたところだ。

 

「そうでしょう。退屈は我々長命種を殺す猛毒。だからここで一つ変化を求めて新天地へと旅立ちましょう」

「新天地?」

「幻想郷。忘れられた者たちの楽園よ」

 

 ああ、そういえばレミィの祖父の兄の娘のいとこの叔父の息子に当たる吸血鬼が侵略に行くとか言っていたわね。

返り討ちにあったようだけど。

 

「というわけで、パチェには紅魔館ごと幻想郷へ移住する為の転移魔術をお願いしたい」

「転移魔術ね。了解よ」

「頼むわね」

 

 レミィはそう言って図書館を後にした。さて、転移魔術ね……転移魔術……

 

「こぁー! こあぁー!! ヘルプミー!!」

 

 私が大声で叫ぶと、いかにも悪魔らしい容姿をした私の使い魔──こぁが現れる。

 

「お呼びですか、パチュリー様」

「こぁ! お願いがあるの!!」

「おや、先ほど命じられた本の整理がまだ終わっていませんが?」

 

 慇懃無礼にそう言ってくるが、彼女は大体わかっていてこういう受け答えをしてくるのだ。

 

「そんなの後でいいから! 手伝って!」

「かしこまりました。それで、何をお手伝いすればよろしいので?」

「レミィに幻想郷への転移を頼まれたのよ。だから転移術式を組んで頂戴」

「おや、私のような使い魔如きの手を借りずとも、パチュリー様の()()()魔力でどうにかできるのでは?」

 

 こ、こいつはもう……!

 

「こぁ、あなたわかってて言ってるでしょう!?」

「そんなの当たり前じゃないですか。ぷっくっく……」

 

 口元に手を当てながら嘲笑する悪魔がいた。ちくしょう。 

 

「全く、賢人と呼ばれる頭脳と馬鹿げた魔力を兼ね備えておきながら、なぜ術式ぐらい組めないんですか」

「仕方ないでしょ!! わからないんだから!!」

 

 そう。実は私、大魔女と呼ばれるほどの魔力がありながら術式が組めない。正確には組み方がわからない。術式に落とし込めるような魔術なんて使った事がないからだ。

 

「いつも感覚だけで魔術を使ってるからですよ。基本は論理派のくせになんで魔力制御は力任せなんですか」

「しょうがないじゃない。生まれつき『ググっとしてバーン』って感じで魔術が使えたんだもの。それが染み着いてるから今さら細かい魔力制御とか覚えられないのよ」

 

 何度か覚えようとはしたが、全くできる気がしなかった。そう言うと目の前の悪魔はやれやれと言わんばかりに肩を竦める。

 

「私もとんでもない主に召喚されたものです。まぁ退屈はしませんがね」

「そう。わかったら術式の構築を手伝って。主からの命令(オーダー)よ」

了解、我が主(イエス、マイマスター)

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「レミィ、転移魔術が完成したわ。いつでも発動可能よ」

「さすがパチェ、仕事が早いわね」

「これくらい朝飯前よ」

 

 やれやれ、どの口が言うのだか。まぁ、使い魔の手柄は主の手柄。別に文句はありませんがね。

 

 それに実は転移魔術ぐらいお嬢様も使える。だから正直にパチュリー様が「できません」と告白すればお嬢様がやるはずなのだ。

 なのにパチュリー様が私の力を借りてまで自分でやるのは親友であるお嬢様に見栄を張りたいからだ。なかなか可愛げがあるじゃないですか。

 

「じゃあ、近日中に発動させて幻想郷に転移しましょう。パチェ、今回はありがとうね」

「お礼なんていいわ。レミィこそもっと私を頼っていいのよ」

 

 パチュリー様、それはまた後日私に泣きつくフラグですよ?

 と、お嬢様が部屋を出て行く去り際、私──小悪魔に対してウインクが飛んできた。おっと……?

 

「どうしたの、こぁ? 含み笑いなんかして」

「いえいえ、なんでもございません」

 

 私はそうパチュリー様に返答し、また笑みを深めるのだった。

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