レミリア・スカーレットは百合百合暮らしたい 作:名無しのメイド
紅魔館当主、レミリアの朝は遅い。元々が夜行性であるし、執務中に寝てしまうことも多々ある。今まさに彼女は微睡みの中にいた。
「Zzz……」
気持ちよく眠っていたレミリアであるが、突如として外から爆音が響く。それは彼女を夢の世界から現実に引き戻すのに十分だった。
「騒々しい(うっさいなぁ)」
せっかくの安眠を唐突な爆音により目覚めさせられたレミリアが文句を溢す間にも外からは断続的に爆発音が響いていた。
「誰かしら、この私の神聖な眠りを妨げるのは(もー、誰よ私のお昼寝タイムを邪魔するのは)」
レミリアは爆発音の原因を確認すべく、しぶしぶ自室を出るのだった。
◇ ◇ ◇
妖怪、紅美鈴は紅魔館の守護者である。主人であるレミリアにより、彼女は紅魔館の門番として館の警備の全権を与えられている。
そんな彼女の仕事は単なる番兵に留まらない。館の周囲を取り囲む花壇の管理も彼女の役目であった。
「うんうん、みんな元気に育ってますね」
ヒガンバナ、フクジュソウ、ドクダミ、スズラン、マンドレイク、トリカブト、ジギタリス、ベラドンナ……花壇に植えられた様々な花を眺めて、美鈴はうんうんと頷いた。
「環境が変わったせいで枯れたら一大事ですからね」
花にとって環境の変化は大きな要因であるので、状態には常に気を配らねばならない。最も、紅魔館の花々は当主であるレミリアにより魔力を与えられている故、通常の花よりタフであるが。
「…………」
と、美鈴が花の様子を見ている最中、館の上空を飛んでいた低級な鳥の妖怪が突如として館の敷地内に侵入し──
「────!!」
──花に食われた。
比喩ではない。文字通り、花壇の花が鳥妖怪を食べたのだ。
「あっ、もー駄目ですよ! 変なもの食べたら」
めっ! っと鳥を食べた花を叱りつける美鈴。花は口を大きく開けて美鈴に返答した。
……紅魔館の花のいくつかは、レミリアの妖気に当てられた結果、得体の知れない食人植物と化していた。館をぐるりと取り囲むように設置された花壇には、
「ふあぁ……」
ふと、美鈴が大きくあくびをする。彼女はそのまま、門に寄りかかると直ぐに寝息を立ててしまうのだった。
◇ ◇ ◇
それから暫し経ち、美鈴が気持ちよく惰眠を貪っている中、そこに先の鳥妖怪の同族が接近していた。
「Zzz……」
すっかり夢の住人と化している美鈴の横を鳥妖怪は素通り──
「────ふっ!」
──できずに、美鈴の正拳により叩き潰されあっけなく絶命した。不届き者を排除した美鈴は大きくあくびをする。
「もう……目が覚めちゃったじゃないですか」
快眠を妨害された美鈴は腕を組んで愚痴った。拳法家として『気』を極めた彼女は、自身に接近する気配を無意識でも感知してしまうのだ。それは睡眠中でも例外ではない。よって、寝ていても怪しい気配が自身の側を通ろうとすれば攻撃の為に目覚めてしまう。
見知った気配ならば安心して寝ていられるのだが……と、美鈴がふと気配を感じて空を見上げると、先の鳥妖怪が集団となって紅魔館に迫っていた。
「なっ! なんですかこれは!?」
美鈴は知らなかったが、この鳥妖怪たちは低級であるが群れで行動し、一度定めた目標に対して死をも厭わず突撃していくという低俗だが極めて面倒な存在であった。
そんな事を知る由もない美鈴に鳥妖怪の集団が突撃を開始する。
「数が多ければ突破できるなんて舐めた考えをしてんじゃないですよ!!」
美鈴は向かってくる鳥妖怪の集団を気功によって迎撃する。時折撃ち漏らしが出るが、それらは花壇の食人花に食われていた。
本気ならば代行者もねじ伏せられる美鈴にとって、この程度の低級妖怪は雑魚同然であった。が、いくら倒しても一行に数が減らない。段々と美鈴は苛立ってきた。
「あああああ!! もう面倒です!!」
ストレスが頂点に達した美鈴は、鳥妖怪たちより更に上空に飛び上がり、一気に気を集中させる。
「消し飛びなさいっ!!」
某漫画を彷彿とさせる巨大な気功弾により、夥しい鳥妖怪の集団は肉片の一片も残さずこの世から消滅した。
「はぁ……全く、散々手こずらせてくれましたね」
ようやく事態が片付き、やれやれ、と息をつく美鈴の目に入ってきたのは、美味そうに鳥妖怪を貪る食人花。そして──
「これでゆっくり休めます……ね……?」
──自身の気功弾により、滅茶苦茶になった紅魔館の中庭であった。
「し、しまったああああぁ!?」
──絶叫する美鈴のところに、戦闘音により安眠妨害されたレミリアがやって来るまで、あと五秒。