碧色のライバル   作:妖魔夜行@

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レポート:8『ミュウツー』

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つづきからはじめる  ┃

┃ さいしょからはじめる ┃

┃ せっていを かえる  ┃

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┃しゅじんこう グリーン  ┃

┃もっているバッジ  8 こ┃

┃ポケモンずかん 130ひき┃

┃プレイじかん  41:25┃

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 レッドがグリーンを倒し、新チャンピオンとなった次の日のことだった。

 レッドに負けたグリーンは己を見つめ直し、ポケモン達を鍛え直すという名目である場所へ向かった。その場所とは『ななしのどうくつ』。ハナダシティにある大きな洞窟だ。同時に危険な洞窟でもある。まず一般人が入ることは出来ない。入れるとしたら各ジムのジムリーダーか、四天王、チャンピオン。もしくは前者で上げた人物たちと同等の力を持つ、バッジを8個集めた者のみだ。

 

 だが『ななしのどうくつ』に入るにはもうひとつ必要なものがある。それはハナダジムのジムリーダーであるカスミの許可だ。

 グリーンはハナダシティに到着するとカスミに会いに行き、事情を話した。

 

「なるほど、そういうことね。なら分かったわ、許可を出しておくわね。本来なら本当に実力があるか私とバトルしてもらうんだけど……チャンピオンになったことがある人にそれは不要よね?」

 

 悪戯っぽく笑うカスミに、グリーンは苦笑で返した。

 その後、許可証を発行してもらったグリーンは洞窟へ向かった。手持ちは通常の6体編成ではなく、七つめのボールを腰にかけていた。

 

 そして最深部の1歩手前のところで、グリーンは修行を始めた。

 

 ゴルバットを初めとしたどくタイプのアーボック、クサイハナ、モルフォン達やスリーパー、ユンゲラーといったエスパータイプ、レアコイルやライチュウのようなでんきタイプのポケモンに、ゴローンやサイドンといったいわタイプのポケモン達、ラッキー、プクリンなどといった珍しいポケモン達もいた。そしてどのポケモンにも共通しているのが、強いということだった。

 まず普通の野生ではありえない強さを持つのが『ななしのどうくつ』のポケモン達だ。グリーンの手持ちは負けたとはいえポケモンリーグを勝ち抜きチャンピオンになっていた時の手持ち、そのポケモン達が瀕死になりかける程の強さを持つポケモンがゴロゴロいるのだ。

 

 もうすっかり薄れている前知識がなければ、とっくの昔に全滅していただろうと胸を撫で下ろす。

 

 図鑑を開いて手持ちポケモンのレベルを確認する。最高レベルはカメックスの83で、最も低かったのは51レベルの█████だった。█████は手持ちに加わってからの時間が短いのでレベルが上がるのが遅くて仕方ないのだが、未だに進化しないのは何故なのか。疑問ばかりつのる。

 

 グリーンが頭を捻って考えても分からない。こういうのは祖父であるオーキド博士くらいでもなければ解明できないはずだ。

 

 まあ、それはまた今度でいい。それよりも、そろそろ挑みにいくか。

 

 ミュウツーに。

 

 

◇◇◇

 

 

 ミュウツーとは、最強のポケモンである。

 

 グレンタウンのポケモンやしきに残っていた研究日誌には、そう書かれていた。

 

 そのポケモンを、ミュウツーさえ手に入れれば、今度こそ勝てるはずだ。レッドに、勝てるはずなのだ。

 

 そのためにここまで来たんだ。

 

 最深部に降りると妙な威圧感を感じた。前方に目を向けると薄紫色の肌と紫色の尻尾を持つ細い人型のポケモン、ミュウツーがいた。

 

 ミュウツーはグリーンを視界に捉えると咆哮を上げ、襲いかかってきた。

 

 いけっ、フーディン!ナッシー!

 

 グリーンは2体のポケモンを繰り出す。これは公式戦でもトレーナーとの勝負でもなく、野生のポケモンとの戦闘なのでルールは存在しない。しかも相手はミュウツーなのだ、全力で行かなければ此方がやられてしまう。

 

 フーディン、ナッシー、『サイコキネシス』で動きを止めろ!!

 

「ムゥン!」

「ゲケケ!」

 

 2体の念動力でミュウツーの動きが止まる。しかし、ミュウツーが一度吼えると念力は打ち消されてしまった。

 

 なに!?

 

「バァウ!!」

 

 繰り出されるは闇色の光弾、禍々しさから考えて『シャドーボール』だろう。二つの『シャドーボール』がフーディンとナッシーに迫る。2匹は念力で壁を作り防ごうとする、が───

 

「ムゥウン!?」

「ゲキャアアア!?」

 

 フーディン!ナッシー!?まさか、一撃だと……!?

 

 ミュウツーの『シャドーボール』は壁をいとも簡単に突き破り2匹に直撃した。それだけでなく、2匹はその一撃だけで戦闘不能となってしまった。

 ありえない、驚愕と困惑が交わり今起こった出来事を理解出来ないでいた。しかしミュウツーは待ってくれない。再び闇色の光弾を作り出し、両手から射出する。

 

 くっ!戻れお前達!!いけっ!サイドン!ウインディ!!

 

「グオオオ!!」

「ガルルゥゥ!!」

 

 サイドン!『まもる』!!

 

「グオオ!ガオアッ!?」

 

 サイドンとウインディを繰り出し、『シャドーボール』を防ぐためにサイドンに『まもる』を指示する。が、ミュウツーの技は障壁ごとサイドンを吹っ飛ばした。ダメージは受けてないようだが強い衝撃を受けたのだろう、巨体を支える足が震えていた。

 

 ウインディ!『りゅうのいかり』!!

 

「グルォオ!!」

 

 龍を模した藍色のエネルギーが口を開いてミュウツーに襲いかかる。

 どれだけ防御力が高かろうが固定ダメージを与える『りゅうのいかり』なら通じるはずだ。

 

 しかし、そんな甘い考えは一瞬で打ち砕かれた。ミュウツーは『サイコキネシス』で『りゅうのいかり』を打ち消すと念力の刃を生み出して放つ。高速で放たれたそれはウインディの急所を撃ち抜き、ウインディの体を壁に叩きつけた。

 もちろんウインディは戦闘不能だ。すぐにボールに戻し、サイドンも呼び戻そうとしたが、5発の『シャドーボール』がサイドンに撃ち放たれ、サイドンも戦闘不能になってしまった。

 

 サイドン…ウインディ…!!

 

 残りの手持ちは三体、だが最高レベルのカメックスでも敵わないかもしれないミュウツー相手にたった51レベルの█████を出すわけにはいかない。

 

 頼んだ!カメックス、ピジョット!

 

「ガメ!」

「クワァ!!」

 

 カメックス、『ハイドロポンプ』!

 

「ガメェ!!」

 

 水の砲撃が撃たれミュウツーに降り注ぐ。カメックスの攻撃は他の奴らとは違うと感じたのか、ミュウツーも防御耐性を取った。可視化出来るほどの分厚い壁、おそらく『バリアー』だろう。『バリアー』を『ハイドロポンプ』の射線上に配置し、攻撃を防ぎきられた。 

 今度はこちらの番とばかりにミュウツーは星を象ったエネルギー弾を生み出す。『スピードスター』だ。

 

 カメックスが再び砲撃を撃つ、ミュウツーはそれを『バリアー』で防ぎながら接近する。『スピードスター』を維持した状態でだ。

 射程圏内に入ったのかミュウツーが『スピードスター』を放つ。『スピードスター』はノーマルタイプの技の中でも威力は高くない技だ。『まもる』を使わせるほどではない。

 

 カメックス、『スピードスター』を耐えて『れいとうビーム』を喰らわせろ!

 

「ガメ!」

「バァアアウ!!」

 

 なっ、持ち上げただと!?

 

 砲身に冷気を充填しているところを念力で持ち上げられる。身動きが取れないカメックスに星のエネルギー弾が直撃した。着弾した箇所から煙が上がるがカメックスは何とか意識を保っている。ミュウツーがカメックスに意識を向けている間にピジョットに指示を出す。

 

 ピジョット!『ブレイブバード』!!

 

 翼を折りたたんで低空飛行をしながらミュウツーに接近する。己のポテンシャルを全て出した速さだ。ミュウツーが気づく頃には既にピジョットが激突していた。

 

 『ブレイブバード』を喰らったミュウツーは吹き飛ばされる。初めてまともに当たった攻撃に与えたダメージだ。このチャンスを逃してはいけない。カメックスを縛っていた念力も無くなり、解放されている。

 

 カメックス、『ハイドロポンプ』!!

 

 体勢を建て直したカメックスに指示を出す。カメックスは二度頭を振り標的を睨みつけると、2発の水の砲撃をミュウツーに放った。

 

「グオオ……バォオオオウ!!!」

 

 攻撃を受けたことでか、ミュウツーの咆哮には怒気が含まれている。両手には漆黒のエネルギーが球体となり収縮されており、ミュウツーが腕を振るうとそれ(・・)は手から射出され砲撃とぶつかり、相殺される。

 

 本命はこっちだ!『うずしお』!

 

「ガァア!!」

 

 砲身から吹き出した水がミュウツーを中真に渦を巻き、その身体を捕らえる。これで少しは時間が稼げるだろう。その隙にグリーンはピジョットに掴まりミュウツーに接近する。

 

「バオオ……!」

 

 大人しくしてくれ、ほらよ!

 

 バックから取り出したハイパーボールを拡大させてミュウツーに投げる。ボールの開閉スイッチがミュウツーに当たり、吸い込まれる。

 地面に落ちたボールは一度揺れる。二度揺れた直後、爆発して砕け散った。どうやらまだまだミュウツーの力は有り余っているようだ。

 加えてミュウツーの体が若葉色の光に包まれる。光が消えるとピジョットが付けたはずの傷が癒えていた。

 

 『じこさいせい』も覚えてたのか……!

 

 ミュウツーは体力を回復させると此方を睨みつけ、咆哮と共に念動力で持ち上げた岩石を飛ばす。

 

 撃ち落とせ!『ふぶき』!

 

「ガァアメ!!」

 

 砲身から水ではなく激しい吹雪を吹き付ける。攻撃範囲が広いこの技を防ぐのは難しかったのか、みるみるうちにミュウツーの身体は凍りついていきあっという間に氷像と化した。

 

 『ハイドロポンプ』!

 

「メェッ!!」

 

 水の砲撃が再び撃たれる。『こおり』状態になっている今のミュウツーには避けることも防ぐことも出来ないはず。

 そう考えていたのだがミュウツーを覆っていた氷に亀裂が生まれ、どんどん剥がれ落ちていく。『ハイドロポンプ』が着弾する頃には既に『バリアー』を張られていた。

 

 ちっ…中々ダメージが稼げない。それにボールを投げても捕まえられる気がしない…これが伝説のポケモンか……!

 

 グリーンは伝説の強さに打ちひしがれるどころか、改めて確認したミュウツーの強さに震えていた。

 

 だからこそ、必ず手に入れたい。戻れカメックス!

 

 カメックスをボールに戻して空中で待機していたピジョットを自分の元へ呼び戻す。そしてピジョットの背に飛び乗るとミュウツーに指を突きつけた。

 

 今回は一旦退く、が!次は必ずお前を───

 

 その続きを言い終わる前にこの階層から脱出した。

 

 

◇◇◇

 

 

 洞窟から出たグリーンは、ハナダジムに行きカスミに「危険なポケモンが生息していた」と伝えた。するとカスミは直ぐに各ジムのジムリーダーに応援を頼もうとしたが、グリーンがそれを制す。「あのポケモンは俺が何とかするから安心してくれ」、「これも修行の一環なんだ」と言って説得するとグリーンの熱意が伝わったのか、カスミは渋々頷いた。

 

 ミュウツーの存在を他の奴らに知られたりでもしたら、俺がミュウツーを捕まえられなくなっちまう。

 

 グリーンがそんなことを考えているとは露知らず、カスミはグリーン以外の人物が『ななしのどうくつ』に入らないようにするために警備員をつけると告げた。

 

 それは好都合だ、と表情には出さずにほくそ笑む。グリーンは話を切り上げてポケモンセンターに向かい、そこでポケモンの体力を回復させた後、ピジョットの『そらをとぶ』でシルフカンパニーまで飛んだ。

 

 

◇◇◇

 

 

 マスターボールがない?

 

「はい。開発してたマスターボールは、以前ロケット団に襲撃された時に試作品、設計図ともに紛失してしまい……」

 

 正面のソファに座るシルフカンパニーの社長がハンカチで額の汗を拭いながら話す。

 ここに来ればマスターボールが手に入ると思ったのだが、どうやら宛が外れたみたいだ。

 

「ロケット団の残党か、もしくは行方をくらましたボスにでも会えれば何か分かるかもしれませんが……」

 

 ボス……ッ!社長さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

「いえいえ、力になれずすみません。ああ、そうだ。代わりにと言ってはなんですが、秘書クン。例のものを」

「はい」

 

 社長が脇に待機していた秘書の女性に声をかけると、秘書が部屋の奥に置いてある金庫を開けて中からアタッシュケースを取り出してきた。

 テーブルの上にアタッシュケースを置き、ゆっくりと解錠する。

 

 これは……?

 

 白いビー玉のようだが、中に青と茶色で構成された不思議な紋様がある。どこかで見た覚えがあるのだが、思い出せない。

 

「地下深くから発掘された石です。特殊な素材で出来ているのか、何をしても傷つかず、壊れません。我が社の研究員に確認させてみたところ恐らくポケモンの道具ではないかと……」

 

 なるほど……。

 

 マジマジと石を見つめて、記憶と照らし合わせる。

 

「これをぜひグリーンさんにお譲りしたいのです」

 

 記憶がふっとんだ。

 

 お、俺に!?そんな大事なもの、頂けませんって!!

 

 まさかの答えに驚き、手を突き出して断りの意思を表明する。しかし社長は首を横に振りアタッシュケースから石を取り出し、グリーンに差し出した。

 

「研究員総出で調べて殆ど成果がなかったのです。グリーンさんのようなトレーナーの方に持っていてほしい。ポケモンの道具なら尚更です。もしかしたら、バトル中に何か起こるかもしれませんしね」

 

 社長の意志が固いことに気づき、グリーンが折れた。石を受け取り光に照らしてみるが、何も起こらない。とりあえず今はバッグの中に閉まっておく。

 

 今日はありがとうございました。

 

 ソファから立ち上がり礼を述べる。

 

「いえいえ。では秘書クン、お見送りを」

「はい。グリーン様、どうぞこちらへ」

 

 秘書に連れられて会社の入口まで案内される。

 

「ではグリーン様、お気をつけて」

 

 はい。見送りありがとうございました。ピジョット、『そらをとぶ』!

 

「クワァ!」

 

 

◇◇◇

 

 

「それで、私の元へ来たというわけか……」

 

 ああ、あるんだろ?マスターボール。 ロケット団、元首領『サカキ』さんよぉ。

 

 ピジョットに捕まって空を飛んだ先はトキワジムだった。今グリーンはトキワジムのジムリーダー専用の部屋でサカキと対面している。

 

 グリーンの言葉を聞いて、高価そうな椅子に腰掛けているサカキは表情を変えずに話す。

 

「確かにマスターボールはあの時奪った。が、設計図はデータ諸共存在しない」

 

 あ?なんでだよ。

 

「あの小僧と約束したからな。もう悪事はしない、と」

 

 思い返すように顔を上げて微笑む彼は元マフィアのボスとは思えないほど穏やかな表情をしていた。

 

 てことはアンタはレッドに言われたから設計図を破棄したんだな?

 

「ああ」

 

 ……あんの大バカ野郎。

 

 原因が幼馴染である少年だと気づいたグリーンは頭を抱える。その様子が気になったのかサカキが首を傾げる。

 

「何故そうまでしてマスターボールを欲しがる?お前ほどのトレーナーなら大抵のポケモンは手に入れることが出来るだろう。伝説の三鳥だろうが弱らすことが出来ればハイパーボールで事足りるはずだ」

 

 ……ただの伝説じゃないんだよアイツは。知ってるだろ?アンタなら…ミュウツーの強さを。

 

 『ミュウツー』の単語を聞いてサカキの眉が動く。そして背もたれに深くもたれて息を吐いた。

 

「成程な。そうか…やつならば確かに、捕獲するのは難しい。そもそも弱らせることも出来るかどうか……」

 

 だからマスターボールが欲しかったんだ。けど、まあ、無いなら仕方がない。どうにかするさ。

 

 そう言ってみせるがミュウツーを捕まえる算段など全くついていない。ただの強がりである。

 これからどうするか、グリーンが思案していると突然サカキが立ち上がった。

 

「ついてこい」

 

 そう言って部屋の隅へ向かう。その先は行き止まりのはずだろうとグリーンが困惑していると、サカキが壁のタイルの一つをスライドさせた。するとハイテクな機械が現れた。

 その機械にサカキが数秒手を当てるとジム内に巨大な歯車が動くような音が響き、サカキが手を当てていた部分の壁が縦に裂けた。すると地下へ続く階段が出現した。

 

 な、なんつー仕掛けだよ……。

 

 思わず頬を引き攣らせた笑みが浮かぶ。そんなグリーンを後目にサカキは階段を降りながら淡々と説明する。

 

「この通路は以前私が緊急用に造らせたものでな。何かあった時にはここを通じて地上へ脱出することが出来る」

 

 ……そんなこと俺に話してもいいのか?

 

「言っただろう。私はもうロケット団の首領ではなく、ただのジムリーダーだ、と。ならば隠す必要もない。さあ着いたぞ」

 

 階段を降りきり、正面にある堅固な扉を開く。中に入ると先程までグリーン達がいた部屋と変わらない広さの部屋があった。しかし上層の部屋とは打って変わり、無骨なデザインの机と椅子、その奥に巨大な金庫、その他必要最低限のものしか置いていない、いかにもそういう(・・・・)部屋だった。

 

 サカキはグリーンを中に招き入れると金庫に近づいて行き、また細かい操作を始める。1分か2分そこら経つと金庫からピッと音がなる。鍵が開いたようだ。

 金庫を開け、中から黒く塗装された頑強そうなケースを取り出しグリーンの元へ持ってきた。

 

 これは?

 

「中を開けてみろ」

 

 そう言われケースを渡される。ここまで厳重に保管しなければならないものとは一体なんなのだろうか。ゆっくりとケースを開き、中身を確認する。

 

 こ、れは……

 

 上部分は紫色に塗装され、捕獲したポケモンを逃がさないプログラムが詰まっている桃色の補助パーツがついている。そしてボタン開閉部の少し上の辺りに刻まれたMのマーク。

 紛れもない、これはまさしく───

 

 マスター…ボール…!

 

 そう理解するとケースを握りしめる力が自然と強くなる。が、直ぐにハッとなりサカキを問いつめる。

 

 これはどういうことだ?さっきお前は確かにマスターボールの設計図はないって言ったよな?

 

 そう言うとサカキは頷き、口を開いた。

 

「ああ。確かに言ったな」

 

 ならなんでここにあるんだよ。しかもこんな厳重に保管されてよ。

 

「思い出してみろ。私は確かにマスターボールの設計図は用紙、データともに破棄したと言った。が、誰もマスターボール自体を破棄したとは言っていないぞ」

 

 なんともまあ屁理屈のような答えだ。しかしモノがモノであるため、グリーンも強く言い返すことができない。それに今、自分はマスターボールを欲している。

 

「それに、予期せぬ出来事が起こった時に必要になると思っていたからな。それがまさに今、というわけだ」

 

 ……受け取っていいのか?

 

「お前が今、必要としているのなら持っていけばいい」

 

 目線で受け取れと言ってくるので恐る恐るマスターボールに手を伸ばす。触れてみるとボールの表面は冷たく、そして想像していたより軽かった。

 本当に貰っていいのだろうか、自分は私利私欲の為にこれを使おうとしているのに。その考えが頭から消えず、思わずサカキに聞き返す。

 

「くどいぞ。それはもうお前のもので、私の所有物ではない。それに私はもう、そのボールに興味が無い」

 

 「面倒なやつだな」と呆れた顔で言われる。むしろ何故そこまで関心を持たずにいられるのかグリーンには不思議でならなかった。

 

 会話をしている最中にもサカキは金庫を閉じる作業をしていた。それが漸く終わり、金庫が大きな音を立てて閉まる。

 

「ああ、言い忘れていたがそれは試作品で、在庫はない。ミュウツーを捕まえるのなら壊されないように気をつけるんだな」

 

 そう言うともう話すことはないのか、サカキが階段を登り始めた。もうここにいる理由もないのでグリーンもその後ろに着いて行った。

 

 ところでこのケースどうしたらいいんだ?

 

「そのまま持っていけばいい」

 

 いやいらねえよ……。

 

 

◇◇◇

 

 

 さて、と。

 

 サカキの協力の元、マスターボールを手に入れることが出来たグリーンは再び『ななしのどうくつ』へやって来ていた。

 ただし前回とは違い、パーティーが変わっている。今回は公式のバトルで使っている六匹だけではなく、今まで捕まえたポケモンの中でもよりすぐりのポケモンを追加した九匹で挑むつもりだ。

 

 今度は逃がさないぜ、ミュウツー……!!

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