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┃ せっていを かえる ┃
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┃しゅじんこう レッド ┃
┃もっているバッジ 8 こ┃
┃ポケモンずかん 149ひき┃
┃プレイじかん 61:00┃
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洞窟の中は、当然だが光が届かない。しかし『ななしのどうくつ』内部は明るかった。洞窟のあちらこちらに発光する石や、苔などが自生しているからだ。
レッドはラプラスに乗って水上を進む。視線上にはぼんやりと人の影が見え、岸が近づくにつれてその姿はハッキリとしたものになった。
岸に辿り着き、レッドはラプラスの背から飛び降りた。そしてラプラスをボールに戻して正面に座っている人物に話しかける。
「よおグリーン……久しぶりだな」
洞窟には不似合いな装飾が施された石造りの椅子。それに腰掛けたグリーンは口を開かずただ薄らと笑みを浮かべているだけだった。
「お前が連絡をよこさなくなってからこっちは色々と大変だったんだぞ?それにどうしたんだよその椅子、王様のつもりかー?」
冗談半分のつもりで笑いかけるが、グリーンの表情は変わらない。
いつまでも黙りなグリーンにレッドはムッとして少し声を荒らげる。
「おいグリーン!」
「オレは、グリーンじゃない」
「……はあ?」
やっと口を開いたと思ったら話す内容は自分はグリーンじゃない。一体どういう意味だとレッドが首を傾げるとグリーンは話を続けた。
「オレの名前は………ブルーだ」
「ブルーって…何言ってんだよグリーン。お前はグリーンだろ…?」
グリーン、いやブルーは腰掛けていた椅子から立ち上がると腰にかけられているボールを手に取る。様子がおかしい幼馴染や初めて見るボールにレッドは困惑した。
「おい、どうしたんだよグリーン!」
「その名前はもう捨てた。オレの名前はブルー……レッド、貴様のリーグチャンピオンの称号を賭けてバトルだ」
そう言って紫色のボールを投げるブルー。繰り出されたポケモンは───
「お前は!」
「そう。こいつは最強のポケモン……ミュウツー」
薄紫がかった白い身体に、腹から背に向かって生えている紫色の尾。放たれる
ミュウツーに対抗するため、自らを鼓舞する意味も含めてレッドもポケモンを繰り出す。
「いけっ!ピカチュウ!」
「ピッカァ!!」
繰り出されたのはピカチュウ。頬の電気袋から電撃を出してミュウツーを威嚇する。しかしこれはピカチュウが少しでも自身の恐れを誤魔化そうと強がっているにすぎない。ミュウツーとは、旅立ち前からリーグ優勝以降も戦い続けてきた最古参であるピカチュウですら恐れる程のポケモンなのだ。
そんなピカチュウの虚勢を見抜いてか、ブルーが提案する。
「レッド、ピカチュウ以外のポケモンも出していいんだぜ」
「何?」
「こいつはタダのポケモンじゃあない。伝説の、最強のポケモンだ。
その言葉にレッドは沈黙する。そんなレッドを叱るようにピカチュウが鳴く。
「ビィカ!!」
「ピカチュウ………そうだよな、最初から負けるつもりで挑む戦いなんてないよな」
「ピカピ!」
恐れを堪えて笑みを浮かべる。力強く見据えた先にはブルーが親の仇でも見るかのようにレッドを睨みつけていた。
「また…そうやってお前は……いつもいつも…」
「ぐ、グリーン…?」
ブルーの言葉の節々には怒気が纏われている。怨嗟、嫉妬、憤怒、これでもかと言うほどのマイナスの感情が込められていた。
「その名前で───呼ぶんじゃねえよ!!!ミュウツー、『サイコキネシス』!!」
「バオォ」
気だるげな鳴き声、けれども放たれた念動力はレッドを巻き込みかねない程の威力で地面を抉るものだった。すんでのところでピカチュウに助けられたが、先程まで自分が立っていた場所が削れているのを見て心臓の鼓動が早くなる。
顔を青白くしたレッドを見てブルーは底冷えするような声のトーンで言葉を吐く。
「なんだ…?オレがお前を殺すのに躊躇するとでも思ったか?」
「ぐ、グリーン……お前、本気で…!!」
「だからオレはもうグリーンじゃない。ブルーだと言っているだろ。おいピカチュウ、お前のトレーナーは随分と理解力がないらしいな」
「ビカァ!?」
主人を攻撃された怒りか、愛らしいその見た目からは想像出来ないほど低い唸り声を発する。それがどうしたと言わんばかりにグリーンは指示を出した。
「やれ、ミュウツー」
「オオ」
ミュウツーが腕を挙げると無数の禍々しい黒い闇が球体となりピカチュウに襲いかかる。ピカチュウはそれを跳んで、屈んで、弾き返すことで耐えていた。
「どうした!避けてばかりではミュウツーは倒せないぞ!」
そんなことは分かっている。だが考えなしに攻撃すれば返り討ちに合うのが目に見えている。だからレッドはピカチュウに指示を出せずにいた。
「ビィ、カッ!?」
「っ!ピカチュウ!!」
捉えきれなかった『シャドーボール』がピカチュウの身体を掠める。何とか体勢を立て直したが、このままではあっという間に体力とスタミナは尽きてしまうだろう。
「意地張ってる場合じゃないな…!いけっ、サンダー!!!」
「ギャーオ!」
刺々しい金色の羽根に、避雷針を彷彿させる鋭い嘴、雷を体現させた伝説の鳥ポケモン。
「サンダー、だと……!?」
「グリーン…お前だけが伝説のポケモンを持ってると思うなよ!サンダー、『かみなり』!!」
「ギャギャーオ!!」
バチバチと弾けるような音に合わせてサンダーの翼が金色に光る。徐々に激しさを増していき、胸元に集められた電撃がミュウツーに降り注がれる。その威力はまさに神鳴の怒槌、まともに受ければ伝説のポケモンであろうと無事では済まない一撃であった。
「うそ…だろ…?」
そう、
煙が晴れ、そこにいたのは傷一つ付いていないミュウツーだった。掌からは薄い壁、『バリアー』だろう。あれでサンダーの『かみなり』を防いだのだ。
「『シャドーボール』」
「ギャオ、オ……!」
「サンダー!?くそっ!」
六発の『シャドーボール』がサンダーの身体に炸裂し、戦闘不能になる。レッドはサンダーを
ボールに戻す。目を見開いて驚きを隠せずにいた。
「ハッ、なんだ。伝説って言っても大したことないな」
「……いくら『バリアー』でも完全に防ぎきれるわがない。その光、『じこさいさい』だな」
淡い緑色の光がミュウツーの体全体を覆っていた。『かみなり』を受けて出来たであろう裂傷も癒えている。
このままでは勝てないと考えたレッドはボールを3つ構えてポケモンを繰り出した。
「カビゴン、ラプラス、そしてファイヤーか……」
前者の二匹はリーグで優勝したことがあるレッドの手持ちで後者の一匹はかの伝説の三鳥の一羽、ファイヤーだと言う。
流石に四対一で勝てるかと言われれば幾らミュウツーでも断言できない。しかも相手は普通のトレーナーではなくあのレッドだ。
「残しといて正解だったな」
「なに?」
ブルーはそう言うとおもむろに腰に手を伸ばし二つのボールを取る。それを見てレッドの表情が厳しいものに変わる。
「まさか…!」
「そのまさかさ、いけ。カメックス、ピジョット」
ボールが開き二匹のポケモンが繰り出される。青い巨体に巨大な甲羅を背負い一対の砲身を持つカメックス、雄々しい鶏冠と翼を持つピジョット、どちらもこれまでの戦いやポケモンリーグで相対したことのあるポケモンだった。
ただひとつ違うとすれば、二匹の目に自分の意思が宿っていないという所だろう。
「グリーン……お前…そいつらに何をしたんだ!!」
「何をしたと言われてもな…ミュウツーに攻撃を仕掛けてきたから少し催眠で自我を封じ込めただけだ」
「なんだと…!お前、まさかライチュウやフーディン達にも!」
「そうさ。まあコイツらが邪魔したせいで逃げ出したがな。けど、敵を前に尾を丸めて逃げるような奴らに興味はない」
コイツらというのはカメックスとピジョットのことだろう。古参である二匹は最後までミュウツーの力に取り憑かれたグリーンの目を覚まそうとしたのだ。
……仲間を守りながら。
それを吐き捨てるように言い放ったブルーにレッドは激高した。レッドだけではなく、レッドのポケモン達もそれぞれ怒りを顕にしている。
「グリーン…!!
お前ぇええええええええ!!!!!」
「だから、
その名前で
呼ぶんじゃねえっ
つってんだろうがぁあああ!!!」
二人の声に呼応して一斉に動き出すポケモン達。カビゴンはカメックスを、ラプラスはピジョットを、ピカチュウとファイヤーはミュウツーを相手にそれぞれ戦い始めた。
「カビゴン!『メガトンパンチ』!!」
「受け止めろ、カメックス。『ハイドロポンプ』」
「ゴオオン!!!」
岩をも粉砕する拳をカメックスは軽々と受け止めると砲身をカビゴンに向け、反撃する暇も与えずに吹き飛ばした。
「大丈夫かカビゴン!」
「グオオ……ゴオ!」
「休ませる暇を与えるなカメックス。続けて『ハイドロポンプ』だ」
「くっ、よけろカビゴン!カビゴン!?」
再び水流が放たれるがカビゴンは避けようとせずに身体で受け止めた。技の威力は凄まじく、カビゴンの巨体が仰け反るほどだった。
「なんで避けなかったんだ!」
「ゴォ……」
「お前、まさか俺を守るために……?」
『ハイドロポンプ』の射線上にレッドが重なっていたのだ。もしカビゴンが指示通り避けていたら今頃レッドの体はバラバラになっていただろう。
カビゴンの傷を癒すために、キズぐすりを使いきのみを持たせる。
「頼むぞカビゴン!」
「ゴオオ!!」
大声で吠えてカメックスに向かっていく。これでカビゴンは大丈夫だろう。レッドは他の戦いに目を向ける。
水上ではラプラスが空中を飛び回るピジョットに冷気を纏った光線を放っていた。
「それじゃダメだラプラス!ピジョットの動きは素早い、先読みして当てるんだ!」
「キュアー!」
ピジョットの動きは確かに素早い。しかしその動きはポケモンリーグで戦った時と違い、ロボットのようにどこか規則性のある飛行だ。
「それなら……!ラプラス、次にピジョットが旋回したらその数メートル前に向かって技を打つんだ」
「キュ!」
『ふぶき』を避けながら攻撃の体制を整え、ピジョットが旋回をした。
「今だ!『れいとうビーム』!!」
「アアァー!!」
光線に吸い込まれるように直撃し、ピジョットは白煙に包まれる。しかし白煙を切り裂いて飛行を再開させる。
「いいかラプラス、今みたいにパターンを読んで技を当てるんだ。頭のいいお前なら出来るはずだ」
「キュア!」
「よし、頼んだぞ!」
水上の戦いもこれで大丈夫だろう。残すはミュウツーと戦っているピカチュウ、ファイヤー達だ。
ファイヤーはピカチュウを背に乗せミュウツーの攻撃を撃ち落としている。ピカチュウは隙を見てミュウツーに電撃を放っているのだが中々攻勢に出れていないようだった。
「ピカチュウ!ファイヤー!」
「ピカ!」
「クワァ!!」
レッドが声をかけると二匹は嬉しそうに応える。再びブルーと相対することで拳に力が入るがゆっくりも息を吐いて緊張を解く。
「なあ、なんで、あんなことをしたんだ」
「何の話だ?」
「さっき言ってた……お前のポケモン達のことだ」
オーキド研究所に助けを求めにきたライチュウ、ポケモンセンターに運び込まれたフーディン、ウインディ、ナッシー、サイドン、ゲンガー、ストライク。
そして、操られたカメックスにピジョット。
レッドはグリーンがしたとは思えなかった。あんなにポケモンに一生懸命で、ポケモンを想っていたグリーンが、相棒とも呼べる自分の手持ちポケモンを痛めつけるなんて信じられなかった。
なにかの間違いなんじゃないか、そう淡い期待を持って話しかけた。
「言っただろ、ミュウツーの邪魔をしたからだ」
期待は、期待に過ぎなかった。淡々と吐き捨てるブルーを見て「信じられない」とレッドは顔を歪ませた。
「お前もそんな
「つまらないこと、だと……?」
「そうだろう?ミュウツーがいればどんな奴にも勝てるんだ。そう、最強なんだよこいつは。アイツらはそんなこいつの邪魔をしたんだ。あまつさえ倒そうとした」
「お前を助けようとしたとは考えなかったのかよ」
怒りを抑えきれず、震えた声で問いかける。
「ねえよ」
バッサリと、心底興味がないように言い切ったブルーを見て、レッドの中で何かが切れた。
「……ファイヤー、ミュウツーを取り囲め。『ほのおのうず』」
「グワァオ!」
ファイヤーがひとたび翼を羽ばたかせれば炎がミュウツーを燃やし尽くさんと取り込んだ。その火力はリーグ戦の時のリザードンとは比べ物にならず、流石は伝説と言った火力だった。
「熱っ…レッド、お前なにを───」
「───分からせてやる」
「なに?」
熱風で髪が焼き付くことも意に介さずレッドは炎の渦に囲まれたミュウツーの横を通り、ブルーの目の前に立つ。そして───
「ふんっっ!!」
「がふっ!?」
拳を握りしめ、
「こいつがどんなに強くても、俺達は負けないと、分からせてやる!!」
口元から流れる血を拭い、レッドを睨みつける。
「……やってみろよ
これが本当に、
最後の戦いだ」