ありふれた女魔王と宇宙戦士(フォーゼ)   作:福宮タツヒサ

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深夜のテンションに身を任せて、連続投稿しちゃいます!


14.吸血・姫・加・入!!

本来この封印部屋を守るガーディアンとして扉の前に配備されていたサイクロプス達だったが、まさか何百年の歳月を経て形成された落とし穴を伝って直接内部に侵入者が入り込むなど予想しなかっただろう。

しかし、奈落の底の更に下層とも呼べる地に訪れる生物など命知らずのモンスターぐらいだ。役目を果たす絶好の機会だと一体のサイクロプスは嬉々としながら侵入者の一人、ハジメに視線を向ける。

狙いを定められた当の本人は、目の前の敵が巨大な大剣を振り上げる暇など与えず引き金を引いた。銃口から耳を激しく打つ発砲音と同時に飛び出されたタウル鉱石の弾丸は電磁加速されたままサイクロプスの一つ目に突き刺さり、脳をかき回し破壊した挙句、後頭部の外皮を爆ぜさせて貫通し、背面の壁の一部を粉砕した。

撃たれたサイクロプスは何が起こったのか分からず痙攣しながら倒れ込んで絶命する。隣で見ていたもう一体も同じく、何が起きたか理解できずキョトンとした。

 

「悪いけど、お前達に付き合っていられるほど私は暇じゃないの」

 

明らかに厄介なサソリ擬きだけでも手一杯だというのに、お約束の展開を迎える余裕など持ち合わせてない。経験してきた境遇を考えれば無理もないが……早々にモンスターを始末したい最大の理由は、現在進行形で兄貴(ゲン)に付き纏っている害虫(チビ女)を殺——もとい事情聴取したいからだった。

ドパンッ! という銃声が再び部屋中を駆け巡り、残った一体のサイクロプスの眼球を貫き頭部を粉砕する。ビクンビクンとしばらく痙攣した後、先ほど命を絶たれたサイクロプスの体と重なるように倒れ伏す。

“銃”という武器も知らず、ほぼ八つ当たり気味の容赦ないハジメの弾丸に撃沈されたサイクロプス達は憐れとしか言いようがないだろう。

ゲンの背中で、ユエは驚愕の連続である。いきなり姿が変わったゲンにも度肝を抜かれたが、ハジメの持つそれは見たことがない、魔法陣や詠唱も使用せず、閃光のような攻撃を放つ武器だ。驚くなと言う方が無理な話だった。

 

「流石ハジメたん! 兄貴の手なんか借りずに一人で倒すとは! 宝箱を守る門番モンスターでお馴染みのサイクロプス先輩を同時に二体倒すなんて、しかも倒し方が八九三寄りの倒し方ぁ! でも、そこに痺れる憧れるゥ!!」

 

『キシャァアアアアアアア!!』

 

テンションが上がっているゲンに対し、こっちを無視すんな! と訴えるかのように、ギチギチギチッ、と節足動物特有の足音を軋めかせながらサソリ擬きが先手を打った。

サソリ擬きの尻尾の針先から溶解液が勢いよく噴出される。目にも止まらぬ速さで射出された液を、ゲンはそれを上回る素早さで飛び退いて躱す。

着弾した液がジュワァ〜と音を立てながら床を溶かす様を横目にゲンは「ふぅ〜、危ねぇ危ねぇ。セーフ」と警戒心を高める。背中にはユエがしがみ付いているのだ、下手に動けばユエに被害が及んでしまう。

 

「しっかり掴まってろよ、ユエ! 一瞬でも手の力を緩めたら死ぬと思え!!」

 

「……ん。でも、ゲンは真面目に戦いに集中して」

 

「…………すんませんでした」

 

小さい風貌の少女に正論を言われたゲンは落ち込みつつ、真面目にサソリ擬き討伐に集中する。

 

《Rocket On》

 

右腕にロケットモジュールを出現させ、噴射の速度を緩めることなく宙を駆け抜ける。

頭上でウロチョロされて鬱陶しかったサソリ擬きはもう一方の尻尾の先端を肥大化させ、凄まじい速度で散弾針を撃ち出す。

瞬時に見抜いたゲンはロケットを方向転換させ、急速にバーニアを噴出させて散弾針の攻撃範囲から脱する。

 

『キシャァアアアアアアアア!!』

 

サソリ擬きは怒号と読み取れる絶叫を上げながら八本の脚を荒々と動かし、ゲンを逃さないように囲い込む。四本の巨大な鋏が大砲のように伸び、ゲン達に迫る。

一、二本目の大鋏をロケットの操作で躱し、三本目を逆上がりの応用で、体を捻らせて躱す。残った四本目の大鋏が風を突っ切りながらゲンに迫る。

 

《Drill On》

 

咄嗟にドリルのスイッチを入れ、左足にドリルモジュールを装着させる。ゲン所望の“漢の魂が宿った”形のドリルで迫ってくる大鋏を蹴飛ばし、腕ごとサソリ擬きの大鋏を地面に叩き落とす。

 

「ん〜、流石ハジメたんだpart.2。俺好みの格好良いドリル。強度もバッチリだし、病みつきになりそうだぜぇ……! と、大丈夫かユエ?」

 

「うぅ……何、とか」

 

空中戦の激しい動きに付いてこれず唸っていたが、何とか堪えているようだ。

無事を確認したゲンは、ロケットの噴出を最大限に上げ、サソリ擬きの背中部分までの距離を詰め寄る。そのままロケットの出力を上げたままの勢いでドリルの先端を向け、外殻にドリルを打ちつけた。

ドドドドドドッ!! と岩盤を削るような掘削音が響き渡り、背中を蹴り落とされた衝撃でサソリ擬きの胴体が地面に叩きつけられる。

だが、ハジメ曰く、必要な素材が足りなかった未完成のドリルモジュールでは岩よりも硬い外殻に穴を空けることは愚か、ドリルの先端も侵入することは難しかった。

サソリ擬きは鬱憤を撒き散らすように二本の尻尾を背中に向け、溶解液と散弾針を撃ち出す。

危険を察知したゲンはロケットを噴出させ離脱を図り、溶解液と散弾針の攻撃から逃れることができたが、運の悪いことに、逃げた場所がサソリ擬きの巨大鋏で囲まれた空間だった。

再度、四本の大鋏がゲンに襲いかかる——寸前で、サソリ擬きの眼前に強烈な閃光が迸る。

ハジメが咄嗟に放った“閃光手榴弾”だった。爆発と同時にモンスターですら眩い閃光を炸裂する手榴弾はサソリ擬きの視界を遮り、ゲン達が逃げる時間を稼ぐのに十分過ぎた。流石ハジメたんpart.3!

 

「兄貴! 今の兄貴じゃコイツに勝てないから下がって! それと、その女も邪魔だから余計なことしないように見張っていて!!」

 

ハジメはドンナーを構えながら叫び、“空力”を用いて跳躍を繰り返し、サソリ擬きとの距離を詰め寄る。何か弱点部分がないか探しているようだった。

スイッチを切って着地しながら“勝てない”と言われて歯痒い気持ちになるゲン。その背中にいるユエは、ハジメの「邪魔」と言う指摘にムッとする。

ゲンの愛して止まない妹だろうが、行く行くは義姉と認めてもらう未来の義妹だろうが関係ない。あの女だけには負けたくなかった。

華麗にユエはゲンの背中から降りる。

 

「ん? どうした? 急に俺の指を掴んだりして」

 

「ゲン……お願い、信じて」

 

そう言ってユエは、ゲンの指を咥えた。そして、噛み付いた。

ゲンは指先に二本の針で刺されたような痛みを感じ、体からスゥーと力が抜き取られるような違和感を覚えた。ユエが自分は先祖返りの吸血鬼だと名乗っていたことを思い出し、これが吸血行為なのだと理解する。

先程の”信じて“と言った理由も納得したゲンは特に気にせず、そのままゆっくり飲ませ続ける……一方、

 

「あのクソ女が、何私の兄貴の指を咥えているの? しかもあれ、ワザと私に見せつけるよね? 今すぐ首を狩りに行っても良い? あの腐れ寄生虫をこの世から滅殺しても良いよね? 答えなんて聞かないけど、誰か勝手に“No”なんて答えたら殺すけど」

 

襲いかかるサソリ擬きの他に、もう一つの大問題が発生中。

このようにラブシーンに見えなくもないゲンとユエの姿に、地獄に住まうベテラン獄卒も裸足で逃げ出すぐらい恐ろしい形相になり、触れるだけで肌が爛れると錯覚するほどの禍々しいオーラを全身から放出するハジメがいた。殺意をユエに一直線に向けながら。

そろそろサソリ擬きも“閃光手榴弾”のショックから回復した頃のはずだが、度を超えた兄への病ンデレの瘴気に当てられ、怯えて動けないように見えた。お陰で十分な時間を稼げたので結果オーライとも言える。

 

「……ごちそうさま」

 

ゲンから離れると、ユエは立ち上がりサソリ擬きに向けて片手を掲げた。同時に、華奢な体からは想像もできない莫大な魔力が噴き上がり、部屋中の暗闇に黄金の光が差し込む。

魔力の色と同じ神秘的な黄金の髪を靡かせながら、たった一言、呟く。

 

「……”蒼天“」

 

刹那、サソリ擬きの頭上に直径六、七メートルはある青白い炎の球体が形成される。

一瞬で危険を察知したサソリ擬きは急いで戦線離脱を図るが、奈落の底の封印から解放された吸血姫は見逃さない。指揮者のように指を伸ばし、青白い炎の球体を自身の手足のように操作し、逃げ惑うサソリ擬きの頭上に直撃する。

 

『グゥギィヤァアアアアアアアアアアアアア!?』

 

苦悶の絶叫がサソリ擬きから響き渡る。サソリ擬きの背中から鋼鉄が熱せられた製鉄所の臭いが漂う。

 

「よっしゃあ! でかした、ユエ!」

 

傷一つ付かなったサソリ擬きの外殻表面がドロリと溶けているのを目にしたゲンは、勝機を逃さず、ロケットとドリルを瞬時に装着してサソリ擬きのところへ飛ぶ。

先程よりも距離があり、なおかつロケットの噴出の勢いも強めるが、それだけでは足りないと直感で感じた。

 

「まだまだァッ!! こんな威力じゃあ、アイツを貫けない!」

 

右腰部のレバーを押し、右腕と左足に装着した二つのモジュールの力を高める。

 

《Rocket・Drill Limit Break》

 

機械的な音声が流れ、ロケットのブースターが火を吹くほど推進力を上げ、ドリルが猛回転を始めて貫通力が増す。

体全体が弾丸になったように勢いを上げ、ドリルの先端をサソリ擬きの背中に向けた。

 

「必殺! ロケットドリル、キィイイイッックゥウウーーーーー!!」

 

ベルトに備わる限界突破の機能でロケットの推進力とドリルの回転力が向上し、ゲンの備わっている馬鹿力である蹴りの威力が上乗せされた。

ガリガリガリガリガリガリガリガリッ!! —————ガギンッ!!!

やがて耐久力が限界を迎え、金属が大きく罅割れた感触が先端のドリル越しに伝わる。

 

『キシュアアアアアアアアアアアアア!!?』

 

この世の終わりを垣間見たような絶叫を上げたと同時に、ゲンの飛び蹴りがサソリ擬きの胴体に大きな穴を空けた。生命活動を停止された巨大な蠍型モンスターは地響きを立てながら転倒する。

 

「スッゲーな! ユエってば、あんなスッゴイ炎を出すことができるのかよ! サソリ擬きもノックアウトだぜ! な、ハジメも見ただろ!?」

 

少年の心を忘れないゲンは間近で見た巨大な魔法に興奮を覚え、ヲタク兄妹のハジメにも同意を求める。

ハジメはと言うと、人智を超えた驚異的な光景に呆然としながらも、一番の強敵を撃破する決定打を横取りされたことに不服だった。もっと兄貴(ゲン)に褒められたかったのでは断じてない、と自分に言い聞かせながら。

 

「……ん。二人の初めての共同作業」

 

「ん? ああ、そうだな」

 

どことなく嬉しそうな表情をしたユエが、何やら状況をよく呑み込めないでいるゲンに相槌を打つ。

ふとハジメに視線を向け、ユエは口パクで「……お前の助けなど要らない」と告げる。

分かりやすい挑発を受けたハジメはドンナーを構え、口パクで「調子に乗るなよ」と、少女の形をした次なる獲物に視線(さつい)を向け続けた。

 

「なッ……! い、いつの間に二人は意思疎通ができるほど仲良くなった!? 俺ですら時間がかかったというのに! 女子同士だからか!? やっぱり女子同士だから通じるものがあるのか!! 百合の花園が咲き誇れば俺達、男はいつだって外野でモブキャラ扱いにされるんだよ! でも、でもぉ!! だからって俺を放って勝手に会話を進めるのは良くないと思います! だから問おう!! 君達ィ、女子同士がそんなに良いのか——ひでぶぅうううッ!!?」

 

女同士の無言の修羅場を目にしたゲンは、百合が咲き誇ったと盛大に勘違いしまくって、見事にフラグを回収しまくった。案の定、ユエから“蒼天(極小)”を、ハジメから殺傷力を抑えた弾丸を、同時に頂戴したのは言うまでもない……

 

 

 

 

———◇———

 

 

 

 

サソリ擬きを撃破したゲン達は場所を移し、サソリ擬きとサイクロプスの素材や肉などをゲン達の拠点に持ち帰った。持ち運ぶのに苦労したのは当然だが、主にゲンが荷物運び役として大幅に負担してくれた成果もあり、何とか三人がかりで運び込むことができた。これで勝手に勘違いしまくった件はチャラにしてもらった、サソリ擬きと戦った時よりもボロボロの顔になりながら。

因みに、ユエの封印された部屋を拠点として使う手段もあったが、本人が断固拒否したため却下された。

消耗品を補充しながら、お互いのことを話し合っていた。

 

「つまり、そこにいる金髪女は元吸血鬼の姫で、少なくとも三百歳以上の歳上ってわけ? で、封印された部屋に兄貴が入り込んで、そんな間抜けな方法で助け出されたって?」

 

「……マナー違反。それに間抜けなのは私じゃない、あの装置」

 

ユエが非難を込めたジト目でハジメを見るが、まだ仲間だと認めていないハジメは知らん振りする。

話を聞く限り、血を摂取することで他種族より長生きする吸血鬼も二百年が限度らしく、十二歳の容姿のまま三百年も長生きするのは、吸血鬼の中でもユエが例外だそうだ。ユエは十二歳の頃に魔力の直接操作や“自動再生”の固有魔法に目覚め、歳を取らなくなったらしい。

 

「ほぉ〜、それじゃあ吸血鬼が一番の長寿の種族ってわけか」

 

「……ううん、そんなことはない。人間族は七十、魔人族は百二十歳が限度だけど、亜人族の森人族には何百年も生きている人もいる」

 

先祖返りで力に目覚めたユエは十七歳という若さで吸血鬼族の王位に就いたが、欲に目が眩んだ叔父がユエを有り余る力を持った怪物だと周囲に浸透させ、大義名分の元に殺害を図った。だが“自動再生”の固有魔法で殺しきれず、止む得なく封印したと言う。

“蒼天”のような強大な魔法をノータイムで撃てること、ほぼ不死身の肉体を備わったことから弁明もできず“怪物”と認定されてしまったのだろう。

当時ユエは、信頼していた民や叔父に裏切られたことにショックを受け、反撃する気力も湧かず流されるままに封印の術をかけられ、気が付けば封印部屋にいたらしい。

 

「……ゲンが来てくれなかったら、私は一生あの部屋にいた……それで、ゲンとハジメ、どうしてここにいる?」

 

今度はこちら側の情報を知りたがるユエ。ハジメが魔力を直接操れる理由、ハジメが固有魔法らしき魔法を複数扱える理由、ゲンのよく分からないスイッチとベルトに”変身“した姿の理由、魔物の肉を食べても平気な理由、ゲンの片腕片足が欠損した理由……キリがない質問の数々が、ユエの口から発せられる。

ゲン達は、クラスメイトと一緒にこの世界に召喚されたことから始まり、これまでの経緯を話した。

途中で、ユエが啜り泣いていることに気づく。

 

「どうした、ユエ? 腹が痛いのか?」

 

「……ぐす、違う……ゲンも、私も辛い………ついでにハジメも辛い」

 

「おい、私は“ついで”扱いか? さっきの仕返しのつもり?」

 

仲が悪い少女達を「まぁまぁ」と嗜め、ゲンは自身の服でユエの涙を拭き取ってやる。

 

「気にするなって。俺はハジメに怪我がなかっただけで幸せ者だ。それに今更なくなった腕や足を気にしても、前に進めないだろ? 故郷に帰るため、帰還方法を探して、今を生き伸びることに全力を注がねぇとな……ほら、泣いてばかりいるんじゃないの。可愛い女の子は笑顔が一番似合うのはどの世界も共通だろ?」

 

「……スン……うん……でも……」

 

丁寧に涙を拭いてくれるのが気持ち良い仕草をするユエが、故郷に帰るというゲンの言葉を聞き、再び沈んだ表情になる。

 

「……やっぱり、帰るの?」

 

「もちろん。帰りたいし、俺は約束したからな……例え姿が変わったとしても、両親が俺達のことを分かってくれなくても……ハジメと一緒に、家に帰るってな」

 

ゲンは迷わず本心を晒す。そのことを今ここで言えばユエの気持ちは暗くなることぐらい、ゲンでさえ知っているにも関わらず。

 

「私にはもう、帰る場所……ない……どうすれば、良い? 私はこれから……どこに行けば……?」

 

迷子のように、自分の行き先を決めることもできずにいた。三百年以上も孤独に縛られ続けたせいで、いざ”自由“を与えられても、自由の扱い方を思い出せない。

今のユエはゲンが新しい居場所だと認識しているため、彼がこの世界から去ることはユエからすれば再び居場所を失うことだと思い込んでいる。

そんな儚い姿のユエを見て、ゲンは頭を撫でながらユエの本心を促す。

 

「ユエ自身は、どうしたいって思ってるんだ? こんな魔物の巣窟に住みたいわけじゃないだろ?」

 

「え?」

 

言ったことに理解できないという表情を浮かべるユエに、ゲンは”もしも“の話を告げる。

 

「例えば、地上に出たユエはこの先、花畑に一軒家を建てて、のんびりと暮らしたいって言うなら、俺は尊重するぞ。もし、その花畑の近くに村があって、ユエが恐いから”出て行け“と言われたら……その時は俺を呼べ! そんな酷いことを言う輩は、俺が片っ端から殴り倒して黙らせてやる!」

 

「え、えと……別に私、花畑に住みたいわけじゃ……」

 

「とにかく! 俺が言いたいのは、これからユエがどう生きるかは、ユエが決めて良いことだってことだ! 人の都合とか考えないで、自分がどこにいたいか、誰といたいか、胸に手を当てて考えてみな。どんな無茶振りでも、俺は嫌がったりしないぞ?」

 

ゲンはニカッと笑い、ユエを全力で肯定した。

あまりのことに呆然としながら、やっと理解が追いついたユエは「良いの?」と遠慮がちに聞く。迷うことなくゲンは頷いた。

ユエと新たな名を貰った少女は、紅い瞳に涙を滲ませながら、初めて自分の願いを叫んだ。

 

「………私はっ……ゲンと、もっといたいっ……世界を超えてでも、ゲンとずっといたいっ……だから、私も一緒に連れてって……!!」

 

「よし、任せろ!! 父さんや母さんには俺の方から、バク転からの土下座を駆使してでも説得するさ! だから、嬉しい時は笑っとけ」

 

「うんっ…うん……!」

 

悲しみではなく、嬉しさから湧き起こる涙がポロポロ溢れ出るユエに、やはりゲンは迷いなどなく漢気を見せる。笑みを催促されたユエは涙が止まらないまま、今までの無表情が嘘のように、小さく綺麗な花が咲いたように精一杯微笑んだ。

一部始終見ていたハジメは「また女を……」と非常に深い溜息を吐きながら、しょうがないと諦める。

 

「兄貴は、人を見る目は確かだから、あんたを信用してやっても良い。だけど、裏切ったら即刻殺すから、そのつもりでいてよ? ()()

 

「……うん…ゲン、ありがとう……()()()も、ついでにありがとう」

 

「だから”ついで“って何なの!? 喧嘩売っているの?」

 

仲が悪いのは変わりないが、一応分かり合えたということで、ゲンも満足気になる。




ハジメちゃんとユエさんの百合妄想が止まらない馬鹿(ゲン)
しかし、この男が不在のまま、奈落の封印の地でユエとハジメ(女)の二人が出会っていれば、健全な百合物語になっていたかもしれません(笑)

そう考えるとニヤニヤが止まらな———ドパンッ! ゴォォォォ! ギャァアア⁉︎
(*ここから先は血で汚れていて読めない)

……わ、我が生涯に、一片の…悔いなし………ガクッ
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