お気に入り数が60を超えました。ありがとうございます!
本編についてですが、最初に言います。
今回の主人公……かなりエグいことをします。正直こんなの見るに耐えられないという方は見なくても結構です。
それにしても………評価、欲しいなー(独り言)
読者一号「だったらもっと面白い内容書けや! 調子乗ってんじゃねえぞゴラァ!?」
ヒィッ! き、聞かれた!?
す、すみません〜〜〜!
そんなこんなで本編、スタートです。
ハジメやゲンの南雲兄妹が最弱の役立たずと認定されてから二週間経った。最も、この噂話をシスコン兄が聞いたら黙っているはずもなく、噂を流した連中を一人残らず血の海に溺死させること間違いないだろうから秘密裏に話している。そして、バレないようにゲンの前ではハジメを丁重に扱っていた。
そんな話題の張本人の一人であるハジメは現在、訓練の休憩時間を利用して王立図書館で調べ物をしていた。女の子特有の華奢な手で持っているのは『北大陸魔物大図鑑』という、そのままの題名の図鑑。この二週間の訓練で成長するどころか役立たずと自覚してから、力がない分を知識や知恵でカバーしようと、訓練の合間に図鑑を漁って勉強しているのだ。これを聞いたゲンは「ハジメた〜〜〜ん!! そんな勉強熱心になるなんてお兄ちゃんはとても感激だよ〜〜〜!!」と、熱血教官タイプのメルドがドン引きするほど号泣しながら喜びの舞を踊っていたのだが、ハジメは他人の振りをしてその場を忍者が仰天する素早さで退散した。
そんなわけで、ハジメはしばし図鑑に目を通していたのだが、日々周囲から向けられる非難や侮蔑の視線にまいってしまい溜息を吐きながら机の上に図鑑を放り投げた。その時発生したドスン!! という重い音に、偶然通りかかった司書が物凄い形相でハジメを睨む。
ビクッとなり慌てて頭を下げるが、司書は何も言ってこなかった。恐る恐る頭を上げて前方を見る。
そこには……人喰い魔物と対峙したように顔を青褪めながら壁際に追い詰められた司書と、対面して「俺の妹に何か文句あるんかい、ワレェ?」とギャング顔負けの濃厚かつ過激な睨みを効かせた兄(バカ)がいた。
耳元でゲンに何かしらの小言を聞かされた司書は首を何度も縦に振り、ハジメを見るなり「調子に乗ってすみませんでした! 次からは気を付けて下さいぃ!」と無言の謝罪をすると小動物より素早くその場から逃げた。大方ゲンから「次はねえぞ、ハゲェ!」と見逃してもらったのだろう。
そもそも原因はハジメにあるというのに、立場を逆転させた兄を見てハジメは申し訳ない感を溜め込みながらステータスプレートを取り出す。
南雲ハジメ 17歳 女 レベル:2
天職:錬成師
筋力:12
体力:12
耐性:12
敏捷:12
魔力:12
魔耐:12
技能:錬成[+精密錬成]・言語理解
ハジメが寝る間も惜しんで訓練を詰んだ結果である。要らぬ世話だったかもしれないゲンのサポートもあり、新たに[+精密錬成]という派生技能を手に入れたことでより精密な錬成を行えることができ、掌サイズの石ころで細かい彫刻を彫ることができた。このことを知って「ハ・ジ・メた〜〜ん! やったね〜〜〜!!」と号泣しながらダイブしたゲンを華麗に避けたのは、ハジメの中で新しい記憶である。
因みに光輝はと言うと……
天之河光輝 17歳 男 レベル:10
筋力:200
体力:200
耐性:200
敏捷:200
魔力;200
魔耐:200
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
ざっとハジメの成長速度の約五倍。このことにハジメは泣きたくなった。その際、ハジメを泣かせたと勘違いしたゲンが「もうちょっと成長速度を落とせや!」と
この数日間で、南雲兄妹には魔法耐性がないことが分かった(ゲンに関してはそもそもステータス表示がアレなので使えるのかどうかも不明)。
一応ハジメは頑張って落とし穴、出っ張りの類を地面に錬成することができるようになったし、その大きさも少しずつ拡大しつつあるが……それ行う場合、毎回敵の前にしゃがみ込んで地面に手を突くという一歩間違えれば自殺行為をしなくてはならないリスクが附属する。
ゲンの方はというと、そもそも攻撃手段が素手のみなので……
ステップ1:まず敵の懐に乗り込みます。
ステップ2:握り拳を鳩尾にめり込ませます。
ステップ3:後方に下がって態勢を整えます。
……の繰り返しである。
皆まで言わずとも分かるが、ファンタジー要素が一切ない。ある意味、クラスメイトの中で喧嘩という名の実戦に慣れ親しんでいる戦闘スタイル。これが異世界の魔物や魔人相手に通じるか不明だが。
結局のところ、二人は戦闘では役に立たないのは変わりない。周囲はそう認識して侮蔑の視線を向けている。
そのことを悩んでいたハジメはその日、ゲンに打ち明けたら、
「他の奴のことなんか気にすんな! ほら、俺なんか文字だぜ? 俺と比べたらハジメはまだマシな方だ。だから、レッツ・プラス思考、プラス思考!」
ニカッ! と笑いながら自信満々に答えた。そのままゲンは頼んでもないのに「それじゃ景気付けにハジメの好きそうな甘いものをもらってくる! もし不審な人がいたら全力で大声を上げて助けを呼びなさい! 怪しい人に着いて行っちゃいけませんからね!?」と過保護なお母さんのように言い残して颯爽と去った。勝手にいなくなるくせに、ハジメが好んでいるベストなものをチョイスしてくるから文句が言えないのだった……
———◆———
大勢のクラスメイト達が集まっている訓練施設に到着するも、男女問わず生徒達のボソボソ聞こえた非難の声にハジメは憂鬱になる。もちろん言うまでもなく、ゲンが不在の時だから皆は呟くのが。
居心地が悪くなった訓練場から離れて、ハジメはトイレへの近道として訓練場の裏側を通い、ゲンが帰ってくるのを待っていた。すると、唐突に背後から衝撃を受けてハジメはたたらを踏む。転倒は免れたものの、顔をしかめながら背後を振り返った。
「よぉ、無能じゃ〜ん? こんなところで何してんだよぉ?」
「お、ホントだ。無能ちゃ〜ん、こんなところで何してんだぁ? お兄たんのお守りは大丈夫でちゅか〜?」
「おいおい、もしかして訓練しに来たとか? 止めとけって、無能ちゃんと『不明』なお前の兄貴じゃするだけ無駄だって〜」
「ちょ、それ言いすぎ! いくら本当だとしてもさ〜、ギャハハハハ!」
うるさい羽虫の如くバカみたいに騒ぎ立てる連中、小悪党臭がプンプンする檜山一派にハジメは心底うんざりした表情になる。
このトータスに飛ばされて以来、連中のいじめが活発になりだしたのだ。しかし、強大な力を得たとしても相変わらずゲンが恐ろしいらしく、ゲンがいない今を狙ってハジメにちょっかい出すチキンなのは変わりない。ハジメLOVEなゲンが恐いなら、ハジメをいじめるのを止めた方が良いっていい加減に学習しろやホント。
しかし、所詮いじめだ。ハジメは聞こえない振りしてその場から離れようとする。
いじめっ子達は、相手が面白い反応するからいじめるのだ。裏を返せば何の反応も示さない者をいじめても面白味の欠片もない。昔からいじめられ体質のハジメは慣れっこであり、この程度のことは問題なかった。そのまま無反応を貫き通していれば檜山達も飽きていなくなるだろうと、徹底的な無視を決め込んで、無言のままその場から去ろうと離れる。
しかし次の瞬間、
「おいおい、何無視してんだよ……無能の分際でよぉ!」
「うッ!」
背後から逆上した檜山に乱暴に蹴られて、ハジメは吹き飛ばされて地面を転がる。受け身を取って重症を負わなかったものの、服が砂埃で汚れてしまった。
以前の檜山なら嫌味が詰まった言葉攻め程度だったが、人を十分に死に至らしめる魔法を使うことに躊躇しなくなったようだ。
「お、おい檜山。流石に手を出したら不味いんじゃッ?」
「うるせえ! お前らも手伝えよ! このクソアマをいたぶって、あのクズ男に立場ってものを分からせてやるんだよ!」
「お、おう。それもそうだな……!」
「俺達は南雲の野郎より強くなったんだからな! アイツにもう負けねえよ!!」
「……そんなに自信あるなら、お兄ちゃんを倒しに行った方が手取り早いんじゃないの? もしかしなくても、まだ怖いからできないとか?」
『うるせえよッ!!?』
ハジメの冷静な指摘に檜山一派は一斉に逆ギレの言葉を荒げるだけで制止する気配はなかった。檜山が唱えた『クズ男』とはゲンのことであるが、無抵抗な女の子に集団で手を出す時点でお前らの方が人間性としても男としてもクズ人間、と言うよりクズチキンだろうに。
コイツ精神大丈夫か? と言われそうな情緒不安定な檜山が声を荒げる様子に何も言えなくなったのか、そもそも止めようとしなかったのか、その場にいる男は揃って一方的な暴力に加担するようになった。風属性魔法の塊に殴られ、火属性魔法の火球で痛みと火傷を負わせられる。どの魔法も下級クラスではあるが、それでも威力はプロボクサーの殴打並だ。
普通の女の子なら泣いて謝って嗚咽を漏らしながら弱音を撒き散らすだろう。これ程ドス黒い人間の悪意を受け、その対象になっているのだから。しかし、ハジメは違った。普段から
ハジメはそんな風に思いながら檜山達を見上げる。その目が、檜山達にとって相性が良くなかったようだ。
「な……何だよ、その目は!?」
「な、生意気なんだよぉ! オタクの雑魚の役立たずのくせによぉ!!」
その目が気に食わないと神経を逆撫でられ、横暴すぎる逆ギレでこの男達から『加減』と言う文字が消え去る。下手すれば殺人未遂の罪に咎められるというのに。
メルド団長から人に向けて魔法を放ってはならないと教わっておるのに、その忠告と良心を捨て去り、大勢で囲んで一人の女の子に稽古と名ばかりの暴力行為を繰り出している。
この光景を見た誰もが、傷だらけの女の子を庇い、暴力行為を行っていた数人の男達を激しく非難するだろう。しかし、この男達にはそれすら生温い。むしろ、その方が幸せであろう……少なくとも、あの男の本気の逆鱗に触れることになるのだから。
「————おい、何やってんだ?」
そう………
全身が凍えるような、凄まじい殺気と冷徹さが孕んだ声が檜山達の耳に入る。途端に檜山達は暴力行為を直ちに止めて、顔を青褪めながら声がした方へ振り返った。
そこにいたのは、普段見せる変態的なシスコンじゃない。妹に暴力を振るった檜山達を『人』と見ない男が鋭い眼光で睨んでいた。彼の手には、ハジメのために用意した甘いもの——紅茶類の飲み物が入ったペットボトルがあったが、クシャッ! と握り潰して中身を床へぶちまける。
恐る恐る近づきながらゲンに最も近い位置にいた男、近藤がみっともない愛想笑いを浮かべながら嘘丸出しの弁明を呟く。
「い、いや、勘違いしないで欲しいんだけど、俺達、お前の妹の特訓に付き合っていただけで、これは——」
「———アァ?」
一切聞き入れようとしない様子で発現を遮られ、彼の視線から感じる濃厚な殺気に檜山達は呼吸すら忘れるほど口を閉ざしてしまう。もし本物の殺戮者や死神がいるのなら多分このような感覚なのだと、檜山は汗を大量に流しながら狼狽える。
結論から言って、ゲンは完全にキレていた。仲の良いクラスメイト、学園の女神と称される香織や雫が説得しても、今のゲンを止めることはできないだろう。
「もう良い、大体分かった…取り敢えずお前ら全員………ブチ殺ス」
死の宣告が告げられる。瞬間、近藤の視界からゲンの姿が消え去った。
「へ? ———ごべぇッ!!?」
近藤は間抜けな声を上げながら訳も分からず顔面を殴打される。一瞬で距離を詰め寄ったゲンの頭突きは近藤の鼻を無惨にひしゃげ、無様な顔面にさせながら顔ごと壁にめり込ませる。二、三回ピクピク痙攣を起こした後、そのまま気絶して動かなくなる。
「な、なッ……!?」
「う、嘘だろっ……!?」
檜山達は目の前の光景が信じられない。この二週間の訓練で、戦闘系の天職である檜山達は更に強くなった。そう、自分達の畏怖の対象であり憎悪の対象である男を超えたはず……と、勝手に思い込んでいた。その成果すらかき乱すようにゲンは一人を戦闘不能に追い込ませたのだ。
暗殺任務を遂行するロボットのように「まず一人……」と冷徹に呟きながら残りの檜山一派に視線を変えた。
「ざ、ざけんな!! 調子乗ってんじゃねえぞ!?」
「や、やっちまえ!!」
「死ねえ、南雲ぉおおおおお!!!」
剣を抜いて本気で殺しにかかるが、ヤクザや不良の太刀筋を見慣れているゲンにとって、たった数日の訓練で身に付けたクズガキ共の“剣捌き擬き”を裁くことなど造作ない。避けられる度に檜山一派の苛立ちは増していきますます雑になる。
「くそッ!! ここに風撃を望——ごぶッ!!?」
痺れを切らした斎藤が風属性魔法の風球を放とうと詠唱を唱える。その直前、ゲンは斎藤の顎を蹴り上げて舌を噛ませると同時に詠唱を強制的に中断させた。斎藤は「えぅッ〜〜〜!!?」と口から血を流しながら声にならない奇声を上げて涙目になる。だが、ゲンの“仕返し”はこんなもので終われない、終わらせない。
「し、死ねえ!! ここに焼撃を望む、火球!!」
目の前の光景が信じられず、中野は半ば狂ったように声を張り上げて詠唱を唱える。掌から放たれた火球はまっすぐゲンの方へ飛んでいくが、それを見越したゲンは地面に膝をついて悶絶している斎藤の頭を掴み上げて肉盾にした。
「ほらよ、仲間の魔法を味わえ」
「うぇ? ………ぼごぉあ!? あ、
火球は斎藤の元へ飛来し、ボシュッ!! と顔面に激突し爆散した。火花を散らしながらプロボクサー級の威力の爆発する殴打を顔面で受け止めてしまい、多大な火傷と激痛を負いながら発狂する。
その様子を見ていた中野は自身の魔法が仲間に傷を負わせたことを自覚できないまま「な、なッ……!?」と戸惑う。その瞬間をゲンは見逃さず、斎藤の頭を掴むと中野へ放り投げる。
「名も知らぬ屑野郎、アタック!!!」
「へ? ———ぶわぁ!!?」
予想外のことで対処できず、斎藤の投擲を正面から受けた中野は地面に倒れる。上に乗っかって気絶している斎藤を退かそうとするが、全体に火傷が広がって無残になった斎藤の顔面を見て「ヒィイイイ!?」と震え出す。
態勢を立て直そうと上を見上げると、頭上で“良い笑顔”をしながらゲンが片足を上げた状態で待ち構えていた。
「……お、お前はホントに何なんだよぉ!? 変態のくせに、いつも教室を騒がせるクズのくせに!! 俺達は訓練を積んでるっていうのに、何だってこんなに——がふッ!?」
「うるせえ、喋るな」
まだ何か喋っている中野の言葉を遮ってゲンは顔を踏み付ける。頭上に上げては瞬時に足を振り下ろす踵落としは一回程度に収まらない。二回、三回、四回……何回も踏み付ける。その度に中野の顔からバキッ! ベシャッ!! と骨が軋む音と肉が砕ける音が響いて血が飛び散るが、構わずゲンは踏み付ける作業を繰り返す。 踏む回数が二十に及んだところでゲンは足を退かすと、鼻が折れ曲がって歯がいくつか欠けていた血塗れ顔の中野が気絶していた。
確実に戦闘不能になったことを確認したゲンはゆらり、と進路を檜山の方へ向ける。
「ヒ、ヒィイイイッ!? ちょ、ちょっと待ってくれ! 悪気はなかったんだ、遊んでただけなんだ……だ、だから見逃してくれえ! お願いします! 何でもしますからぁ!!」
仲間達を死屍累々と言うべき姿に変えて「次はお前の番だ」と狙いを定める
一歩、また一歩と近寄る毎に檜山の顔は涙や鼻水でベトベトに汚れていく。
「あ、謝る! 今までのこと全部詫びるからさ! だから許してくれよな!? ほら、俺達クラスメイトじゃないか! お互いに助け合わないと——」
そこから先、檜山の虚しい説得は続かなかった。厭らしく上下に開閉していた男の顎を、ゲンが鷲掴みして無理矢理黙らせたからである。
檜山にわざと表情を見せつけるように、ゲンは実に“良い笑顔”のまま口を開いた。
「俺のスイートエンジェルなハジメに手を出すレイプ魔もといゴミクズ害虫風情が何勝手に喋ってんだ? みっともない姿をハジメの視界に入れやがってピーチクパーチクうるせーな……あ、そっか。黙らせるにはこうすりゃ良っか♪」
檜山の顎を掴んでいた手に思いっきり握力を加えて下の方へ移動させる。するとゴキリ!! という鈍い音を立てて面白い具合に檜山の顎が外れた。嘗てない激痛で檜山は「〜〜〜ッ!?」と喋ることもできない声にならない奇声を上げるが、ゲンはその猶予すらも与えず追撃を開始する。
鼻を摘むと握力を込めて右に百八十度回して鼻をへし折った。ベリンッ! と骨格が捻じ切れた鈍い音が鳴り響き檜山の鼻穴から血がポタポタ流れ出す。その度重なる激痛に耐えられなくなった檜山は痙攣を起こしながら白目を向いて気絶する。
するとゲンは檜山の髪の毛を無造作に掴み上げると憤怒の形相で怒鳴った。
「な〜に勝手に寝てんだ? ハジメが受けた痛みはこの程度じゃないんだよ……とっとと起きろ、ボケ!!」
「———オガッ!!?」
格闘者も一発でKOされるような拳骨を後頭部に食らわせて檜山の意識を呼び覚ます。無理矢理起こされた檜山はゲンを見るなり声にならない悲鳴を上げる。顔が恐怖一色に染まっていた。その瞳から「もう止めてくれぇッ!!」と懇願してくるのが読み取れるが、ゲンは気づかない振りしながら、次はどうしたものかと思考を巡らす。二度とハジメに手を出さないようにするため、リンチ対象を一人に絞って徹底的に恐怖を植え付ける必要がある……流石に“男の象徴”を破壊するのは抵抗があるので本人もやりたくないが。
ならば鼓膜を破壊して聴覚を奪うか、顔面の皮膚を剥ぎ取って熱湯を浴びせるか、それとも指と爪の間に針を刺すか……
そうこう考えていると、横から“邪魔者”が割り込んで来た。
「いい加減にしろ、南雲!」
と、叫び声がした方へ振り向くと、先程叫んだ光輝、その後方に香織や雫、龍太郎が駆け寄る。
香織は隅の方で全身に傷を付けられたハジメを見るなり「ハジメちゃん!」と慌てて治療しに行ってくれた。それを見たゲンはひとまず安堵の息を漏らす。檜山を無造作にその辺に放り捨てるゲンの元に、事情を聞くべく雫が眼前に現れ、二人の男子がゲンを睨んでいた。
「それで? これをやったのはゲン君よね? どうしてこんなことをしたのか説明してもらえるでしょうね?」
「雫ちゃんか、簡単に言うと……そこのクズ変態ゴミ一派がハジメにリンチをかけた。だから俺が“仕返し”をした。以上」
本当に簡単かつコンパクトな説明に雫は頭を抑えて仕方ないみたいな表情をする。すると、光輝が激昂しながら会話に入ってきた。
「仕返しだと? ふざけるな! 幾ら何でもやり過ぎだろう! 檜山達をあんな姿にさせるまで追い込ませて、お前は何とも思わないのか!?」
「あぁ? 何寝惚けたこと言ってんだよ、クソ勇者(笑)。この程度の痛み、ハジメに比べればマシな方だ。本当はもっと制裁を加えたいところだけど、これ以上の描写はお茶の間の皆様の気分を悪くさせると見越して我慢してやったんだぜ?」
「何を言っているんだ、お前? ……って、だとしても、これは仕返しの範疇を過ぎているだろ! 聞けば南雲達は訓練をサボって図書館で読書していたらしいじゃないか! それを知った檜山達はそういうお前の妹の不真面目さをどうにかしようとしたんじゃないのか!?」
何処をどう思ったらそういう結論に至るのだろうか? という臭い台詞。百歩譲ってもありえないことだが、仮に檜山達に悪意がなく光輝が言うような意図があってハジメを絡んだとしても、それで傷を負わせて良いという理由にならない。況してや、女の子に傷を付けたという行為は悪戯で治るわけがないのだ。そんな当たり前のことにすら気付かない見当違いな言葉に、香織や雫は苦笑するか溜息を吐いた。
そんな光輝の戯言を聞いたゲンは——
「———お前もクズ対象としてボコっても良いんだぞ?」
「……ッ!!?」
————当然、ぶちキレた。
本気の殺意。睨まれた光輝だけでなく、近くにいた龍太郎も大蛇に睨まれたかのような錯覚に囚われる。そして疑惑を覚えた、この男は本当に、妹関連の騒動で教室を騒がせていたハジメLOVEなシスコン、あの南雲ゲンなのか、と。
彼の本気の怒気に香織や雫もたじろぐ中、ハジメだけはその姿に見覚えがあった。何時だったか覚えてないが、過去に一度だけ大きな傷を負わせられた。その時、怒りの形相に染まったゲンが抹殺する勢いで相手に報復したのだった。
硬直して動けない光輝を見て殴る気も失せたのか、ゲンは溜息を吐きながら言う。
「そんな理由でハジメを虐めて良いってのか? だとしたら、お前はPTAに喧嘩を売れるある意味スゲェ勇者(笑)だな。その理屈で言うと、訓練という名目で香織ちゃんや雫ちゃんを動けなくなるまで暴力を振るっても良いってことになるぞ。それでも良いのか?」
「そ、それは……で、でも」
光輝は答えようとするが、できなかった。ゲンの言葉に肯定すれば光輝の言い分が間違っていることになり、否定すれば檜山達が悪いことになり結局光輝の言い分が間違っていることになる。
何も考えが出てこないが話を切り替えようと、無意識に誤魔化そうとするご都合主義の光輝の言葉を言わせる前に、ゲンが忠告とも言えることを叩きつけた。
「お前の意見なんか聞くつもりはないし興味もない。だから、二度と俺達にケチ入れるな……じゃねえと、その面をボコボコのブクブクに膨れ上がらせて不細工顔にさせるからな」
そう忠告してゲンは興味が失せたように視線を外して香織に治療されているハジメの方へ向かった。
「ハジメ! 大丈夫か!? もう怪我はない!? 意識が朦朧としてないか!? お兄ちゃんの言ってることが分かる!? ハジメたんの口から『貴方、誰……?』なんて言われた日にはショックで自殺してしまいますからね!!?」
態度や性格が豹変していつものシスコンチックなゲンに戻ってギャップに戸惑いながらハジメは慌てて静止の言葉をかける。
「だ、大丈夫! もう大丈夫だから落ち着いて、お兄ちゃん! 白崎さんのお陰で治ったんだから!」
ハジメの言う通り、
「ありがとう! 本当にありがとう香織ちゃん! 感謝感激! マジ香織女神を尊敬するっす!! グッジョブ!! センキューベリーハムニダム!!」
「そ、そんなことないよ、私は治癒師だから。怪我を治すのは私の仕事だよ」
眼前で最大の笑みを浮かべながら涙目な想い人と手を繋ぐという状況に加えて大感謝される香織は頰を染めながら嬉しそうに言う。
「それじゃ後始末は任せた、ツッコミ兼オカンポジションの雫ちゃん!」
「当たり前のように私に押し付けないでくれるかしら!? ま、まぁやるけど! 仕方ないからやるけども!!」
雫の心の叫びを頂戴し、ゲンはハジメを連れてその場から去った。
その後、そのままでは訓練にも支障をきたすというお情けで檜山一派も香織による治癒魔法を受けて回復したのだが、その際に香織から冷たい視線を浴びせられたまま治癒されて生きた心地がしなかった檜山達。幸い後遺症に至らなかったから二度としないという厳重注意を受けてお咎めなしになったゲンと檜山一派だが、寄ってたかって一人の無抵抗な女子生徒に手を出した事実がクラスメイト中に広まり、檜山一派は女子だけでなく国中から非難と軽蔑の視線を浴びせられることになる。
これを知ったゲンはこう唱えるだろう。「まだまだ生温しじゃああああ!!」と……
———◆———
「ごめんなさい……」
「んん!? ハジメた………どうしたんだ?」
香織達と別れて渡り廊下を歩いている時、不意にハジメはゲンの裾を掴んで謝った。その仕草を見た
「私のせいでお兄ちゃんに迷惑かけちゃって……思えば、いつもそうだよね。お兄ちゃんが暴れる理由って、いつも私のためにやってくれることだから、迷惑ばかりかけて……」
ハジメが申し訳なさそうに言ったのは、どうやら檜山達に虐められたことのようだ。自分が一人で対処できなかったばかりにゲンの手を煩わせてしまい、厳重注意をかけられる羽目になったと、ハジメはそう思い込んでいた。
異世界で何とか乗り越えると
そんな暗い表情をしているハジメを見たゲンは、ある行動に出た。
「それは違うぞ、ハジメ」
「え?」
「俺は迷惑なんて一度も思ったことないぜ? 命より大事な可愛い妹を守るなんて、不出来な兄貴にはこれ以上にない名誉なことなんだ。むしろな……迷惑をかけているっていうなら、俺の方だ。何せ、いつもお前を困らせているからな……」
「それは………うん、そうだね」
「あれれ〜!? そこは『そんなことないよ』って否定してくれないのかい!?」
「うん。だって迷惑なのは事実だもん」
「アイ・アム・ショーーーーーック!!?」
慰められている側が言うことではないだろうが、いつも
ゴキブリより
「俺ってバカだからさ、いつもハジメ達に迷惑ばっかりかけてしまう。そんな俺は身を呈してハジメのことを守ることぐらいしかできない……だからさ、やらせてくれよ。たった一つ、唯一の取り柄を」
「うん……ありがとう」
不器用ながらも妹を気遣う兄なりの言葉。それでもハジメは嬉しくなって、檜山に関することなど気にしなくなった。
「俺としては『お兄ちゃん大好き♡』って言ってもらえるとモチベーションが上がるんだけどな。言って〜……くれるかな?」
何処まで行っても、ハジメLOVEなシスコンであることには変わりない。その頼み込んでくる姿に呆れもあるが、それ以上の感情が溢れそうになる。
「んもぅ……お兄ちゃんの、バカ」
頰を真っ赤に染めながら照れるように呟いたハジメ。その恥じらいの姿を見たゲンはうわ言のように何かをパクパクし続け……
「ッ……ハ……ハ………!」
「お、お兄ちゃん……?」
「ハジメたん萌え、キターーーーーーーー!!!!」
——ドッガァアアアアアアアアン!!!
「…………、え?」
両腕をクロスさせたガッツポーズからの鼻血をロケット噴出させた大ジャンプ……打ち上げロケットと化したようなそれはもう凄まじい
これを見ている皆様も思うことでしょう。檜山達マジザマァ!!
そしてクソ勇者(笑)マジでクソ邪魔ァ!!
原作を読んで思ったんですけど、本当にあの勇者(笑)って初期の原作ハジメ(男)以上の無能ですよねー。web版では祖父が弁護士だから正義に憧れるらしいですけど、どれも中途半端な結果。そんな無様な結果しか出せないから幼馴染が離れていくんだよ。なのに幼馴染は自分のものだとか、離れていくのが許せないという理由で原作ハジメ(男)に八つ当たりするって、子供を通り越して
檜山達みたいないじめっ子は本当嫌いだけど、こういう何も知らないのに横からクドクド一丁前なことを言ってくる奴って本物の害悪な気がします。
……ちょっと過激すぎましたかね?
ゲン「まだまだ生温いわぁ!! あのテンプレ勇者(笑)の心が折れるくらいになるまでもっと言ってやれぇ!」
ちょっとシスコンが乱入してきたので、檜山一派&勇者(笑)への罵倒はここまでにしておきましょうね。
では皆様、熱中症にはホント気を付けて!
ゲン「読んでくれてありがとな! 更新遅くなるかもしれないけど、またな!!」
あ! 作者が言うべき台詞を!
で、では皆様、お達者で〜〜〜!