今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
さて…ここで、改めて『スタンド』と言う概念について説明する。
と言ってもごく単純かつ簡易な解説にはなることは先に容赦して欲しい…と注釈させていただくのだが。
スタンドとは、半物質に近いぐらいのエネルギーを秘めたヴィジョンを持つ精神の形、となる。
例えばそれは人型だったり鮫や鳥の様な生き物を模した様なヴィジョンだったりする事が多いが、錠前やスプレー缶の様な日用品や拳銃の様な手頃なサイズの武器を模したスタンドも当然存在する。
また、エネルギー態ではなく、その辺にある無機物や自分の体の一部と同化するタイプのスタンドも存在する。
この場合は出現させる条件にスタンドエネルギーにのみに頼らない為、スタンド使いと言う精神エネルギーが噛み合う様にひかれあい共鳴する様な素養のある者以外の一般人でも知覚が可能と言う特性がある。
しかして、全体的に言える事として基本的にスタンドは『精神力』その物と言う特性があり、スタンドと言うものは差異は千差万別なれど
個人差はあれど、『遠くまで動かせる代わりにパワーが弱い』と言う遠距離型も『パワーが強いが遠くまで使えず持久力もない』と言う近距離型スタンドも、細かい能力の差異を抜きにしたおおざっぱな違いとかエネルギーとエンジン部分にあたる『スタンドを操る精神力』に関しては…まあ、例えるなら電池の並列繋ぎと直列繋ぎの違いの様なもの。
並列繋ぎのパワーの無い代わりに持久力があるもの、直列繋ぎのパワーは倍加する代わりに持久力がかけていると言う特性も、電池の本数が同じなら
敵が『人間を越えた何か』でも有るまいなら、まあ、前提条件になる『エネルギー』の総量…さっきの例えで言えば『電池の本数』と言う推量の条件自体もそんなに変わることも無いだろう。
それを踏まえて、統括すると。
スタンド能力の射程距離を把握したら『だいたいのスタンド自体のパワーとスタンドの基本的戦術』と言う対策なり戦法は理解し、
だが、そこに『例外』だって存在する…
Case9『A・C』中編
『自動操縦』。
頭に『遠距離』とか『遠隔』とつく事も珍しくなく、あるいは『自動追跡型』とも称されるそのスタンドは、
…と言っても、有栖川の能力が射程距離以外がもろにこれに当てはまるいわば『零距離自動操縦』みたいな能力なのでなんとも言えないが。
自動操縦型のスタンドと言うものは、基本的には『条件』を満たしたものを勝手に追いかけたり無差別に攻撃して、『発動条件自体がまるごとが無くなる』か『対象が発動条件を満たさなくなる』まで行動する…と言う能力にあたる。
それこそ、『ザ・ポリス』が『犯罪者』と言う条件で起動して、『犯罪者』と言う『条件設定の消失』までスタンド能力が続く…と言うものに近い。
『ザ・ポリス』の場合射程が短いのと本体の意思でほぼ起動の条件や発動対象自体を任意で選べるので有栖川の場合は半自動操縦と言う形になるが、大概の自動操縦型のスタンドの場合はそのレベルの融通すら効かず下手したら『本体』も例外なく巻き込まれるレベルに無差別である事は珍しくはない。
それぐらいに、あくまでも『自動』なので、解除条件の推理はしやすいし前提条件をでっち上げて偽物のターゲットを半永久的に襲わせる等の逃走の確保はわりとやりやすい類いではあるのだが。
とにかく『発動条件』を満たしたら半永久的に動くロボットの様な単純明快な動きしかしないスタンドと言う『操縦』を放棄した関係か、パワーやえげつない能力のわりに射程距離や持久力も凄まじいスタンド…と言うのが『自動操縦』と言うスタンド能力なのだ。
そして、『自動操縦』と言う強みであり弱味でもある『操縦を放棄した』と言う部分…ここが何より『レディオ・スター』と致命的に相性が悪い。
この『自動操縦』と言うスタンド能力、基本的に『操縦しない』からか
有り体に言えば、『スタンド』が消滅するレベルのダメージを与えても肝心の『本体に跳ね返るフィードバック』が皆無だったりする為に、本体とは『視界や感覚も繋がりがほとんど無い』レベルのスタンドとかも珍しくない。
なにせ本体は自分でスタンドが何をして何が起きてるのかさっぱりわからない、
その為『レディオ・スター』で本体の視界を読みとっても自動操縦のスタンドの持ち主が何処で何してるのかわからないし、逆にスタンドの視界を見ても一度ターゲットを定めたら
要は『噛み合わない』のだ、だからエルは自動操縦系のスタンド全般を苦手としている。
ついでにいえば、有栖川に至っては『ザ・ポリス』の効果の関係で『刑事事件として立件しようがない』どころか下手したら『相手がスタンドの犯罪を理解していない』可能性が低くないので、最早戦術にも戦略にも何の役にも立たないとかざらであり…
まあ、このコンビの天敵と言っても良いだろう。
「…成る程、それで有栖川先輩はともかくもエルさんも苦い顔してたの」
と、優姫が二人とも嫌な顔していた事情を把握した際の事。
基本的に戦闘中じゃ直接は役に立たない場面もままある有栖川はともかく、初対面であれだけ頼れるスタンド使いだったエルがほんとに苦虫を噛み潰したようなしわしわ顔していた理由が気になって、それで聞いた際のコメントはこんな感じである。
そして、こう続けた。
「だとしても…大丈夫です。大丈夫、私が守るから!」
そう言って、優姫は…自分に言い聞かせるようでもあり、エルに宣言するような、静かな自信を纏わせながら話を続けていく。
「私は…『私の事』は、信じられなくても良いわ。あの時の私は、正しくなかった…間違ってた。
けど、『スリラー』は信じて、欲しい。『自動操縦』には…相性が良いの、滅法」
そう、恥ずかしそうな顔を見せながら、淡々と語る優姫を見てエルは思った事は最初にひとつ…『雰囲気違うくないか』?と。
不器用で感情的で余裕がなさそうな感じなのは相変わらずだが、なんと言うか、今日の優姫は普通に内向的で真面目そうなおとなしい人と言う印象だ…パスタ目の前にした時は、妙にテンション上がっていたが。
『敵』ではないと判断してくれたからだろうか、今日で直接会うのは『ホット・スタッフ』の連続殺人事件から数え2度目になるが、あの時に見せていた異様な敵愾心が嘘のように消えていた。
まずそこを、エルが軽く突っ込んだ所、口を挟んだ有栖川がばつの悪そうにしながらの事情説明曰く…
「…いや、すまんな増田!火々里には貴様の事は詳しい事情や付き合いを語る時間はなかったから、人となりや能力を聞かれたさいに『恐喝や窃盗もやった事もある、だけど刑事未成年だったり証拠不十分で娑婆にいる視界共有の能力持ちの情報収集特化のスタンド使い』とか言ったら火々里がブチ切れ暴走してな…」
「いやいや待ってぇぇ!!有栖川さんちょっとぉ!?火々里さんの暴走とかの8割ぐらいは、きっかけがあんたの説明のせいかぁ!!そりゃ警察官なら誰でも怒るし信用出来ないわよぉ!!」
とまぁ…エルの想定の斜め下すぎる、そら怒るだろと言う
「いや、有栖川先輩を責めないであげて欲しいかな…
私、貴女の過去を知らないままに、ただの犯罪者崩れだと勘違いしてて…それであんな事を…
ごめんなさい!失礼だし悪い事なのは承知してるから、恨むなら恨んでくれてかまわないけど!あれから、先輩から詳しく聞いたのよ。エルさんの過去を…おおざっぱだけど。
ご両親を殺人犯に理不尽に襲われ亡くされた後に財産まで理不尽に見知らぬ大人に奪われて、それで、誰にも頼れないままに奪い返した…そんな事知らずに、私『間違った』事ばかり…ひどい態度で、いろんな意味で警察官失格で…」
一方、優姫は…まあ、エルが彼女の事を有栖川から聞いた様に、彼女もまた有栖川からエルの過去を聞いたらしくこう言って半泣きで平謝りする始末を見て、エルは思う。
素は調子乗りやすく子供っぽい感じでまるで余裕ない短所と普遍的かつ真っ当な真面目な正義感を持つ長所は変わり無かろうが、本質的には気の弱く大人しい人で、しかしどうにも感情的になりやすく虫の居どころと間が悪すぎた状況下と言う部分があの時の精神状態だったのだろうと。
「…いや、うん、火々里巡査は謝らなくていいわぁ…過去を有栖川さんから聞いたのはお互い様みたいだしねぇ。
そもそもの根本的な非は、思い出したくないあの荒れてた頃の私に有るのは事実なのは変わりないし、今だって楽してずるして生きるのにスタンド悪用してるのは事実だからえらそうには言えないけどさぁ…
結局、有栖川さんへの恩は有るからってのは事実だけどぉ、
それに、説明下手な有栖川さんの無茶なオーダーとか説明不足のトラブルはいつもの事だし余計、ねぇ」
…とヘコむ優姫を逆に宥めつつ本来なら仲裁すべき状況下で…まあ、有栖川をフォローするなら、状況がわりと切羽詰まっていたのと対人関係下手と口下手故に
とまあ、それはとにもかくも…本題だが
遠距離型でも『発動条件』を満たしたら『自動で追跡条件を追っ掛ける』と言う特性から、要は本体の意思によるスタンドのオン・オフや細かい操作が出来ない。
機械の様にスイッチが入ったら勝手に無差別かつ追っ掛けると言う事は、逆に言えば
そして優姫のスリラーは『スタンドエネルギー』たるエネルギー源の生体エネルギーや精神エネルギーに対して滅法強いと言うか最早『天敵』と言うレベルで相性が良いので、如何に優姫や優姫の周囲が『発動条件』を踏んでスタンドにハマろうが
スピードとパワーも高い近接型ならなおのこと、『自動操縦型』から身を守る能力にかけては、そもそも一級品のスタンド使いである。
…と言うか、そもそもあの時も異常に苛立っていてかつ冷静でなかったから『ホット・スタッフ』に目覚めたての粕谷相手にも醜態を晒していたと言う部分が大きく、ほぼ『スタンド使いからの防衛』と『前提条件を無視した所見殺し』に特化していた以上、本来の実力なり経験差なら彼女は大概の近接型にも負けない程度の実力はあるのだが。
後述になるが、まあ、『自動操縦』のスタンドの対策が素の能力の時点で完璧なのでそこから逆にゆっくり推察すると言う事も造作もないのである。
…と、そこまで事情を聞いたエルはと言うと。
「…うん、自動操縦型に対する防御は理解したわぁ。
とりあえず事件解決したら有栖川さん一発殴らせて。そして、改めて事件概要を説明してくれたら助かるわぁ…」
と、火々里に話を聞くのである。
曰く、帰ってきた事件概要はだいたいこんな感じだった。
今から約2日ほど前の事、日時はだいたい10時と言う明るい時間。
駅前の商店街の大通り…と言う、そこそこ人通りがたくさんある場所で、突然『その事件』は起こった。
いわゆるレイプ未遂と言うべきか。
とある肉屋で客引きを兼ねた宣伝をしていたアルバイトの青年が突然、正気を失った様な表情を見せながらたまたま近くを通りかかっていた買い物にむかう主婦を白昼堂々襲おうとすると言う事件が起きた。
当然、それを止める人…豹変したバイトに驚きながらも怒りを見せながら、やめろバカと絶叫して羽交い締めにするガタイのいい店主が取り押さえ、
今度はいきなり
「「メス穴は…どこだぁ!ケツ穴でも良い!よこせえ!」」
そうして『元凶』の能力に引っ掛ってしまった『被害者』の店主とバイトの二人は、一様に同じことをいいながら手当たり次第近くの『女性』を襲う『加害者』と化す。
それを見て、状況がわからないがその
辺りは1日にして下手なエロ漫画も真っ青なパニックホラーじみた悪夢と化したと言う。
その辺にいる善良な少年だろうが厳格かつ公正な老人だろうが等しく、なにか突然に即レイプ魔への変貌し、しかもはたからみたら
…本当に、この事態においてはレイプ被害者が『未遂』に終わったのは、『奇跡』に等しかっただろう。
ひとつはその『豹変した』男性は一様に『日陰』…と言うか太陽の光がある場所以外に入る事ができず、まだ日の影が長くたまたま入りくんだ地形であり影や隠れる場所が多い『商店街』と言う状況下の為に、兎に角本能的に後退りしたり逃げ込もうとした先が『室内』なり『影』と言う『安全圏』が多い場所が多かった事。
次の要素としては、たまたま、その近くをパトカーで見回りに来ていた巡査の一人が優姫であり、連絡を受けて止めに入った際にたまたまパニックで荒ぶる街中で『元凶』が見えたこと。
最後の要素として、『元凶』である能力が女性には引っ掛からず、そしていかに数十人で襲おうが優姫は一般人相手には無敵であり気絶程度に押さえながら制圧できる事と、元凶…の自動操縦型のスタンドにも滅法相性が良かったこと、である。
…それでも、例えば自動操縦型であっても群体型とかだったら手も足も出なかったのだが…スタンドと言うものは、基本的に『スタンドを消滅させたら能力も消える』と言うルールがある。
そして
自動操縦だろうがそれは変わらない、と言うか防御も出来ないだろう。
その自動操縦である狐面を被った様な男性型の人型スタンドは、『スリラー』の爪に切り刻まれてもなお何の抵抗も見せず、ただぼんやりと突っ立っていたそれはガリガリと削られその場から消滅してしまっていた。
結果論かつ偶然ながら、優姫はスタンドの洗脳の能力の条件や攻撃の条件に引っ掛からないと言う好条件が重なり、兎に角も『スリラー』でそのエネルギーを食い付くしスタンドを制圧すると…とたんにどうだろう。
優姫に気絶させられた連中はもちろん、そうでない『条件を踏んでしまった』連中も正気に戻ったらしく、気を取り戻した人から順番に僕は何て事を…とか、俺は何でこんな事を…と後悔とか絶望にうちひしがれうながれたり頭を抱えたりする『被害者』で満ち溢れてしまったと言う。
特に何の非もない男性を見境の無いレイプ魔と言う再起不能なレッテルを張る被害、そして何の非もない女性をレイプ被害に逢わせると言う最低最悪な犯罪に巻き込むと言う二重の『被害』の被害者に…
「…最も、それでもあのスタンド…あれに引っ掛けられたら決まってその被害者は『ケツ穴』と『メス穴』としか言えないから英語読みを更に略してイニシャルで…仮に、『A・C』とするわ。
『A・C』の起動条件、『日中で太陽光が互いにあたる場所で、対面から男が女に声をかける』って条件を踏む度に無差別にその辺にいる善良な市民もだれかれ問わずレイプ魔となり襲う…こんなの、放置しても『正しくない』!!
今は無理やり加害者でもあるけど一番のスタンドの被害者である人たちは皆隔離した上で、『男性にのみかかる新種の人体の正気を失うウイルスの感染者』と言う形で説明して、あの通りは封鎖してあの一帯に住む人たちもパンデミックって形で無理やり避難させているけど…対処療法だし、長くは利かないわ。
今のところ、あの通りから『スタンド』は一歩も出ていないみたいだし…いつ何がどうなるかなんて誰にも予想出来ないし、いつでもどこでも発動しかねない条件が条件だから何がどうなるかなんて…次こそ『未遂』じゃ済まないから尚の事だもの!早く、解決しないと…
でも、私や有栖川先輩の能力は探知が利かないから、探知能力が長けてるスタンド使いで頼れるのが貴女しか居なくて…」
そう、悲痛な顔でえげつないスタンドの範囲と被害を聞いたエルは、なんとも言えない顔で…こう返したと言う。
「りょーかい。有栖川さん、成功報酬は弾んでよぉ?きっかりきっちり、ちゃんと始末つけるからぁ…!」
…そのエルの軽い口調とは裏腹に隠せない真剣な表情の裏には、『被害者が被害者を生む悲劇しか生まないスタンドへの怒り』。
付き合いの長い有栖川には、彼女はそう見えた…
to be continued
『A・C』
破壊力なし
スピードなし
射程距離A
持続力A
精密動作性E
成長性E
(A超スゴい、Bスゴい、C普通、D苦手、E超苦手)
『男と女が日中に向かい合う状態になる』。
『男の方から女へと声をかける』。
この二点を満たした場合出現する、上記の状況下を満たした男性が現れたらどこからともなく現れる自然現象の様なスタンド、完全な自立型の自動操縦のスタンドである。
日光に密接につながった能力でもあり、『夜』『暗闇』『影』を非常に苦手とする特性を持つ。
『ただそこにいる』。スタンド自体はそういうスタンドで何のスピードもパワーも無い害のないモノだが、上記の状況下を満たした男性を視界におさめると、その精神を歪ませ『セックスする事』だけしか頭に残らないケダモノを産んでしまうと言う。
このスタンド能力の解除条件は2つ、一度このスタンドを完全に消滅させて能力自体をリセットさせてしまうか、『日光』が当たらない場所にこのスタンドで精神を狂わされた人をたたきこむ事。
なお、射程距離の設定自体はとりあえず町の商店街に面する大通りひとつ…ではあるのだが、射程距離の厳密な設定は本当に選ばれた道自体は偶然だった事や、実は厳密な射程距離は不明かつ能力に密接に関係したものなので『射程距離A』は便宜上のものである。
元ネタはスラッシュゴアバンドの問題児チーム『A・C』こと『アナル・カント』から