今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
さて、そうして話がまとまった後で…
話は、少し時間を進め、エルと優姫の二人が駅前に移動した場面へと移るとする。
実は、あれからエルは…事件解決の為に協力すると決めてから現場に移動する中で、優姫と会話していたなかでひとつ疑問をぶつけていた。
…とまあ、要するに
自動操縦タイプは基本的には融通が利かない。
特に今回は、件のレイプ魔騒ぎで暴れてるスタンドは任意で発動するとかも出来ないタイプらしい…となると、そもそも現場に出張っても何も起こらない。
そこを突っ込んだ結果、帰ってきた答えとしては男性の『協力者』なるものがいるとのことで…しかして、彼は『スタンド使い』では無いらしいから守護らねばならない、と。
(…『スタンド』も使えない、しかも警官じゃない一般人を、ねぇ…)
エルはなんとも言い難い、苦い顔と言うか渋い顔で単純に状況を噛み締めながら思う。
協力者とは以下なる人なりや…それを知るのは。
「…ど、どうもっス。あと、え…と。お世話かけた婦警さん」
そう、朴訥とした印象の口調をした、しかし見た目はハデな生え際は黒まじりの金髪の荒れたボサボサな短髪の背の高い、腕にタトゥーの様な紋様が浮かぶサングラスをした20代ぐらいの黒いタンクトップの青年である。
Case10『A・C』中編2
さて、この青年…名前を、陸部東司(りくべ・とうじ)と言う彼は、21歳。
二浪して滑り止めの三流大学へ入学した、叔父の家に居候じみた下宿しながら生活している心理学を学ぶごく普通の大学2回生だ
人と違うところと言っても…所謂、この歳にしては他人よりはるかに『カッコいいもの』に憧れる心が強い、まあそれぐらいだ。
雑誌で良く見る心理テストとかのざっくりしたイメージからなんとなくカッコいいと思ったから、経済学部とか文学部とか教育学部ではなく心理学部と言うニッチな学課を目指し、しかし実態としての地味かつ専門的な心理学部の勉強にうだるような気分にさせられる毎日で。
なんとなく、好きなインディーズのバンドマンがカッコいいから真似して1~2週間ぐらいしたら落ちるタイプのタトゥーシールを張って金髪に染めたりしたら、周りからは急に遅咲きの不良と化したなどと揶揄され不評で本当に刺青入れたと勘違いされて叔父夫婦やバイト先の店長に怒られて。
ここ最近の話だけでも、まあこの手の憧れと挫折や失敗による空回りのネタには事欠かない青年ではある。
一方、根が真面目でどうにも垢抜けない好青年ではある。
飲み会やコンパになんとなく誘われたりする事も多く、妙に真面目に勉強してとったノートを友人に貸して遷してあげたりとかはしょっちゅうな貧乏くじ体質でもある。
バイト先でも『今どき真面目な青年』と言う評価をもらって昇給する程度には勤怠も遅刻無しとして評価されている、そんな具合だろう。
総括したら軽いお調子者で考え無しの若者、しかし純朴で取っ付きやすい…そんな具合だろうか。
彼は、決して…決して悪人ではないのだ。
「…だけど、あの時はどうかしてたんス。急に、急に女の人を襲う事しか目に入らなくなって…俺、
後から聞いた話なんスけど、俺が豹変したら店長の影山さんが止めようと割って入ったら…影山さんも俺の『病気』がうつって人が変わった様になったとか言われて、もう母さんや叔父さんにも、学校やバイト先のみんなにも顔向けできねえし襲われたあの奥さんなんかメチャクチャ怖かっただろうに。
なのに、俺が正気に戻って…何にも覚えてなくて、自分が自分じゃなくなったみたいになったってワケわからない話を、この婦警さんや有栖川って偉い婦警のお姉さんが俺の話も全部信じてくれて…あまつさえ、俺が『犯罪者』にならないように庇ってくれたらしくて…」
こう、ポツポツとここまで語るなり嗚咽をもらす陸部の顔は、良い大人が本当にポロポロ泣き出して顔をぐしゃぐしゃにしている。
彼は、自分が起こした犯罪による自責の念と、自分が自分でなくなったような感覚を思い出した恐怖にうちひしがれていた。
「貴方が…そっかぁ、最初に『事件』に巻き込まれたぁ」
エルが彼の身の上話を聞いて理解した。
連続レイプ事件の最初のスタンド騒ぎの被害を受けて、レイプ魔に
話には聞いていたが、件のバイトの青年とはこうした人だったのか、と。
「『巻き込まれた』じゃねえっス!俺が『巻き込んだ』んスよ!?俺が…変な病気に巻き込まれて、俺のせいでいっぱい、それもメチャクチャに人が傷付いたんス!」
一方、陸部は『巻き込まれた』と言う『スタンド使い』だからこそ理解している事情ありきで出た台詞に噛みつきあわてて訂正させる、俺が全部悪いのだ…と。
その姿を見て、どう説明したら良いのやら…とエルが慌てるなか、優姫は割って入った。許せないでしょう?と。
そして、彼女はこう続ける。
「…許せないでしょうよ、こんな…こんな人を、
もちろん…貴女は貴女の立場の正義で協力してくれているんでしょうね、私は警官としての正義として止めたい、ただそれだけの違いは有るんでしょうけれどそれはどうでもいい話。
兎に角、この件に関しての…彼自身の意思や願いでもある『事件解決』の為の協力者として、私達の為に前に出てくれた『男手』ってわけね」
そう言って、口を真一文字に結ぶ優姫を見てエルは思う。
なるほど…要するに、悪い言い方したら
見方によれば、この状況は事件に巻き込まれて状況をまだ把握出来てない無辜の民を、半ば騙すように良心に漬け込んで更に自分の都合の良いような利用をする…と言う方向が近いかも知れない。
少なくとも、この陸部と言う青年が、全ての状況を把握できた上で『協力』しに来た訳ではない。
しかし…恐らくではあるが
と言うか、多分ではあるがあの二人には一般人を『巻き込む』と言う発想が出てこない。
同じ警官相手ならともかくも、一般人の…それもスタンド被害を受けた青年を、と言う発想には至らないだろう。
「…俺には、あの婦警さんの言う『スタンド』がどうのってのは正直今でも本格的にはわかんねっス、その…ソイツが『病気』をばら蒔いてる悪いヤツってことぐらいしか。
でも、ソイツほっといたらウチのバイト先が永遠に平和にならねえって、
だから、俺は、『手伝いたい』んス…てか、やらにゃならねえんス!!『男』が必要ってんなら、俺がやる…『きっかけ』は俺だから!」
…『そういう事』、らしい。
要はほっといたら勝手に善意が暴走して先走りそうなのだが、スタンド能力の無い彼が出張ろうがどのみちミイラとりがミイラになるだけだろう。
そんな訳で、宥めるついでに優姫が監視を込めて『協力』の方向をコントロールしてやりたい…しかし、優姫じゃ陸部と一緒に暴走しかねない訳で。
どうにも、情に厚く悪く言えば短絡的な二人じゃ、ストッパーが居ないのは見たらわかる。
エルのやるべき事と立場は決まった、らしい。
「はぁ…うん、めんどくさい。めんどくさいのよねぇ、『正義の味方』ってぇ」
ボソッと、小さい声で悪態をつくが…まあ、それが必要ならそうするべき、程度の理性はある。
胃痛に悩みながら、いい人たちには違いないが力の無いチャラい青年と頑固で内向的な新米婦警を引き連れて、『現場』にとぼとぼと向かっていく…
そして、そんな3人が封鎖されている現場まで到着した瞬間…
to be continued