今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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閑話 『死の風』

…さて。

ここに、一人の男が居る。

彼は、結論から言えば…「何者にもなれる」運命の星に生まれている。

 

才覚は誰よりもある、これは誰しもがきっとそう答えるにちがいない。

金銭、そして血統も高貴なるものというに差し支えなかろう。

 

頭脳明晰五体満足、そして誰もがうらやむ血の重さ。

人に生まれたならば親兄弟を売るかも知れぬぐらいに、誰しもが喉から手が出るほどの全てを手にしていた…産まれてから、今までずっと。

 

きっと、例えば彼はサッカーに打ち込めばセリエAの一流クラブで花形のストライカーになれる素養は有るだろう。

或いは、勉強に打ち込めば医師や学者にだって、それこそ世界的な権威になれるぐらいの頭は有るだろう。

はたまた、家の立場や恵まれたルックスを活用したならば、ハリウッドに煌めく赤いカーペットを我が物顔で歩くスーパースターになれたかもしれない。

そして、そういう努力を…おのが目的の為ならば欠かしたり軽んじる男では無いだろう。

 

 

そして、その才覚は天才性だけではなく、人格にも及んでいる。

 

誰しもを傷付けたいと思う様な人間だろうなら、或いは世界をいくらでも不幸にする事も容易なハズだ。

()()()()()()()()()()()()()()だ。

冗談抜きで、下手したら世界を滅ぼす事もできるのかも知れない。

力があるとかスピードがあるとかそんなちゃちなモノでは断じてなく、それは自分が一番よくわかっている。

彼の前に、どんな敗北もあり得ないのだ。

 

だが、その才覚に慢心する事もなく、人格は油断なく健全で…しかも他人に優しい。

まさに非の打ち所の無い『好漢』、神話の主人公の様な順風満帆な人生にも見えるだろう。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

過信…油断…慢心…

まあ、どんな言葉で例えるかは他人に任せよう、恐らくその手の罵倒は全て正しい。

 

その男は、厳密に言えば全く異なるモノではあるのだが、ごく簡潔な結論から言えば、自分の『スタンド』能力を2つ持っている。

スタンドは一人一つ、と言う原則に真っ向逆らうようで()()()()()()()()()()()()()()()…とにかく、そのスタンド能力の片方が出力不足に陥って居たのだ。

…柚木町は、そのスタンド能力に巻き込まれる形になってしまったのだろう。

 

その結果、結論から先に言えば冗談抜きで『月1ぐらいのペースでアトランダムに町人の誰かをスタンド使いにする』レベルにスタンド使いを自然発生させる様な、それぐらいの量産体制になるカオスな状況を産み出してしまった。

優姫もエルも、根本的にはスタンド使いに目覚めたのは半分はこの男の暴走のせいだ。

この失敗は…時期的に言えば約18年半前と言うあたりからだから、そんなに時期的には矛盾しない。

 

そして、その状況は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う。

 

 

男はこう考えている。

月1や月2ぐらいに偶発的に才能ある人間がスタンド使いになるレベルではまだ足りない、そんなレベルでは不完全なのだ…あまりにも、不完全で中途半端だ。

やるならやるで、きちんと街一つまるごと呑み込むレベルに徹底的にやらないとダメだ、と。

 

 

少なくとも、15年半前とは違う。きっちり準備してきた。

この『能力』は、そもそもほとんど発動だけは任意とはいえ、発動したが最後独り歩きに近い。

前回はそれで出力不足に気付かず失敗してしまったが、今回は大丈夫なハズだ…と、確信している。

 

それに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

近い話題で言えば、高校生による連続放火殺人や謎のレイプ未遂…わかるやつが見たら、誰でも『スタンド使いの仕業』と言う大小様々なスタンドによる事件や事故が偶発的に連続しておこる。

そのせいで、街自体がもはや目眩ましの煙幕かなにかだ。何をする訳で無くても誰でも潜みながら調べる事は出きるのだ。

 

『目的』のモノはまだ見付からないが、別に急ぐモノでは無い。

15年前は知らなかったが、その『目的』さえ果たしたら…きっと、上手くいく。

それさえ見付けたら、きっと世界も良くなるだろう。

誰しもが、幸福になる。

…男は、そう考えながら、その日はグラスをカタリと傾けながら秘蔵のウィスキーの封蝋を空けるのだ…

 

 

 

しかし、全てその男が思うように街は回らない。

 

街は、生き物だ。

見知らぬ誰かが出ていき、見知らぬ誰かが街の一員になる

街は何者に支配される訳ではないのだから、流れを止めるモノでは無いのだから。

時に、優秀ななにかが、或いは時には無能ななにかが流入するのだろう。

そして、その『なにか』を起爆剤として『物語』はくるくると回転する…

 

そして、なにかは必ず歯車となり…

 

 

「…嫌な風が吹く、な」

 

『黄金』とは真逆な『死』の風となり、その『なにか』は一人の『誰か』として街に現れる…

 

 

to be continued

 

 


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