今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
車、バイク、その他…まあ発動機のついた乗り物もろもろ。
それらは、燃料が無いと動きはしない。
当然、エルの愛機のおんぼろカブもそうであり、まあ…ここしばらくガソリンを入れてなくてガス欠寸前だった事に動かしてから気付いた彼女は、お気に入りのガソリンスタンドに向かう事にするのである。
それはエルの家から原付で8分、家の裏手側にある寂れた通りの通りのセルフガソリンスタンド。
駅前に続くメインストリート側は、まあかた田舎の類いにしてはそこそこ繁盛してチェーン店や大型量販店の類いも立ち並ぶと壮観ではあるかも知れないが、そこから2つ3つ車線を外すと道が狭苦しくなり人通りも一気に寂しくなる。
周辺にはだだっ広いだけでちゃんと管理されてるか怪しい公園がひとつ、潰れたパチンコ屋とシャッターが閉まりっぱなしでやってるかどうかすらが怪しい定食屋や呉服の卸売業の看板が錆びだらけでポツポツと並ぶ…と、陰と陽で言えば100%『陰』と言える町並みの中に、そのガソリンスタンドはある。
都会じゃ多分、聞いたことすら無さそうな企業の提供する、地元近辺でだけ展開されてるだろう淋しく建つガソリンスタンド…
そういう、何と言うか「誰にも見向きもされない」と言う感じの場所に、エルはなんだか自由な衝動を感じている。
…根本的に、彼女は人見知りな部分もあるから尚の事にもあるが、煩わしいと言う衝動にかられているからか独りと言う時間を一人だけの為に使いたいと言う感情を発散させるには、この寂しさと侘しさが余計丁度良い場所だろう。
Case14『エルが出会うもの』後編
「…あらぁ?」
エルがガソリンスタンドに立ち寄ったなり間抜けな声を上げたのは、仕方ないかも知れない。
セルフのガソリンスタンドの店内で女の子が寝ている…
客と言う事も考えづらいだろう、車やバイクの類いが自分のカブを除いて一台も無い。
…つまりは不法侵入者、と言う可能性が高い。
或いは、例えば彼女が農作業や工業の勤めでニッカポッカのような作業員のような服を身に纏うなら…まあ、状況はある程度推察可能かも知れない。
草刈り機や一部の発動機つきのマシンはガソリンを使って動かす類いがある。きょうび一斗缶やポリタンクに雑に詰め込んで…なんて真似したら警察沙汰なので業者の下、と言う事は大前提ではあるが、車輪の有無の関係なくガソリンスタンドに赴く人は居なくはない。
だが、彼女は
メイド喫茶…の類いにはエルは疎いので良くわからないが、なんでメイドがガソリンスタンドで寝てるのか、奇妙な状況に頭を抱える事になるのである。
…そして、よせば良いのに、人の良い部分が妙な方向に出てしまいエルはそのメイド服の彼女を起こす事にした。ほっとけば風邪引きそうだし通報されかねないからだ。
「あのぅ…メイドさん?起きてるぅ?」
エルがゆさゆさと軽く揺すると、ふぇ…?と、間の抜けた声を上げた彼女は…目を丸くすると、一言驚いたような口調になりこう告げるのだ。
え…、とエルは反射的にそのメイド服の女がスタンド使いだと察し警戒するが、それより先にまたそのメイド服の女ががくりと意識を落とす。
別な意味でメイド服の女の窮状に対し慌てたエルが彼女の顔や肌を良く見たら血色も悪く、化粧で分かりにくいが土気色。
しかし頬だけ赤く発熱してくしゃみや鼻水や目などの粘膜には異事があまり見当たらないとなると…恐らく、時期的に熱中症の可能性はほぼないならば栄養失調と脱水状態の症状の可能性が高い、要はつまりこのメイド服の女は丸1日から下手したら3日ほど飲まず食わずだった危険性がある。
恐らく、『寝ていた』と言うよりは『気絶寸前だった』可能性が高かったのだろう。
或いは、
そのメイド服の女を見過ごす訳にはいかぬエルは慌てて119にコールしようとするが、それを掠れたように…と言うか、うわごとかも知れないが「救急車は呼ばないで…」と言う声を耳にする。
…それで、なんとなくこの女の事情が把握できた、メイド服の意味はまだ一切わからないが『とりあえず病院で事件が起きたのだ』と言う事は。
つまり、要は「家に帰れないのに公的機関に頼る事ができなくなってしまった」。
わかる範囲で状況を整理した場合そうなる、下手したら財布やカードの類いも取りに戻れなくなってしまって食事も満足に出来なくなってしまった結果、奇妙な状況の出来上がりと言う事になったのだろう。
…やはり、そこまで推察してもなお、メイド服の意味は全く理解出来ないが。
兎に角も、状況が状況だ。
エルは今まで脳内でのんびり立てていた一人遊びの計画を全部頭からすっ飛ばし。
そのメイド服の女を保護する事にしたのだった…
To be continued