今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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15話『守屋竜奈』

さて、見ず知らずのメイドをバイクに背負って自宅に直帰…

 

文章に箇条書きにしたらほんとに良くわからない状況ではあるが、兎に角もエルが謎のメイドを保護して自宅のソファに引きずるなりそこに寝かせ、手近な毛布を上から被せて形だけでも楽な体制をとらした所から話を進めよう。

 

兎に角にも、メイド服の女の状態と言う部分においては幸いにも緊急性自体は薄い、エルは経(・)験(・)則(・)か(・)ら(・)そ(・)う(・)判(・)断(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

本当に重篤な栄養失調なり脱水状態なりで特に危険な状態だと言うならば、それこそ、彼女の希望を無視してでも病室に叩き込んで点滴でも与えねばなるまいが…どちらかと言うと、気絶した直接的な理由と言う部分はそれ以上に精神的な疲労の方が大きいだろうと言うのはスタンド使い同士だからこそわかる。

 

呼吸も安定しており、ソファに横になった瞬間に寝顔が柔らかくなったのを見るに眠り自体は浅く意識を取り戻す事自体は容易だ…と、まあ、自分もそうだし有栖川も何度かやらかしているがスタンド使い同士でのバトルでのスタンドを無理に動かしすぎての精神的疲労が祟っての入院だのダウンだの、そうしたや(・)ら(・)か(・)し(・)の後と彼女は全く同じような症状だ。

病気、或いはそれに近い症状なら、もっとえげつないダメージになっている事に変わりはないだろう。

 

 

とはいえ、水分不足も栄養失調も見立て自体は間違っては無さそうでもある。お腹が空いているだろうし、喉だって砂漠の砂のようにカラカラに乾いている事も相違無いとは思ったエルは…とりあえず、メイドの女が目覚める迄にいろいろ入り用なものを買い込む事にした…

 

 

 

Case15『守屋竜奈』

 

 

 

それから、しばらくして。

近くの量販店を兼ねたドラッグストアから医薬品なりスポーツドリンクなりと適当に見繕って帰宅した時まで話を進めよう。

 

ソファに寝かせていたそのメイド服の女は、上半身を上げて首をキョロキョロしている。

横になってある程度体力、或いは気力の類いが少しは回復したのだろうか。おそらくはエルが帰宅する前後のタイミングで彼女が目が覚めたと言う感じだろう。

そして、メイド服の女からしたら、気が付くといきなり見知らぬ場所にいた…まあ、ひたすら悪い言い方したらエルが弱ってる女を拉致してきたとも言える状況なのだから、彼女の視点で見たら恐怖と戸惑いを隠せないのも無理はない。

 

とはいっても現(・)状(・)、(・)エ(・)ル(・)に(・)は(・)ま(・)る(・)で(・)害(・)意(・)は(・)な(・)い(・)、単に病院に連れていくなと言われたからとりあえず休ませられる場所に連れていっただけ。

むしろこの状況に一番困っているのは実はエルの方なのだ。

 

 

…ややこしいことになったかしら。

 

エルは内心でそう無感情に吐き捨てながら、あえてわざとらしいおどけた口調になりながらメイド服の女へと口を開いた。

 

「あー…メイドさん、迷子のメイドさんや。私は、貴女を助けに来た正義の味方みたいなものよぉ。

ガソリンスタンドでぶっ倒れかけてるのに病(・)院(・)に(・)つ(・)れ(・)て(・)く(・)な(・)、(・)何(・)て(・)言(・)わ(・)れ(・)た(・)ら(・)、そらウチにつれてくしかなかったのよねぇ。

とりあえず落ち着いて…酒は無いけどお水やスポーツドリンクはあるからぁ、まずは飲みましょぉ?」

 

と、未開封なペットボトルを二本、水とスポドリの二択で渡しておく。

 

 

…未開封と言うのは意外と重要で、ペットボトルなり缶詰めなりと言うものはコップに入ったものに比べて格段に安全かつ安定はしている。

ぶっちゃけて言えば、エル自身が優しく、何よりも臆病者だからわかることだ。

勇(・)気(・)と(・)無(・)謀(・)は(・)違(・)う(・)、(・)ノ(・)ミ(・)と(・)は(・)人(・)間(・)は(・)同(・)類(・)で(・)は(・)な(・)い(・)からこそわかること。

 

これはエルの視点だけで言えば『倒れた女を助けただけの親切心』だが、メイド服の女から見たら『見ず知らずの女に拉致されたと思ったら、主犯から何か怪しいものを渡された』にしかならない。

 

その状況下で口の開いたコップに透明な水を渡されて…あるいは、スポドリと称して濁った液体を渡されて、それで飲めと言われて飲むヤツは多分どれだけも居まい。

怪しいと思い口を付けずに終わるか、「お前が飲め」と言われるか。或いは床にぶちまける短気なヤツも居るかもしれない。

何れにせよ飲んでくれない公算が高いのだ、脱(・)水(・)状(・)態(・)で(・)危(・)な(・)い(・)者(・)だ(・)と(・)言(・)う(・)の(・)に(・)。

そしてエ(・)ル(・)は(・)そ(・)の(・)手(・)の(・)思(・)考(・)実(・)験(・)は(・)得(・)意(・)な(・)方(・)だ(・)、『レディオ・スター』の能力が思考のトレースを必要とする能力なんだから尚更ではあるが。

 

 

…と言う事を、エルはそれこそ自分のスタンド能力以外の事すべてをメ(・)イ(・)ド(・)服(・)の(・)女(・)に(・)向(・)け(・)て(・)包(・)み(・)隠(・)さ(・)ず(・)話(・)し(・)た(・)。

 

あえて、だ。

わざわざ自分で言うと胡散臭くなってしまう事を承知で、あえて包み隠さずエルは語った。

 

と言うのも、エルからしたらメイド服の女こそ胡散臭い事には変わり無いのだ。

何かしらの犯罪者なのかも知れない、逆に何かしらの犯罪者から逃げた被害者かも知れない。或いは何れでもないかもしれない。

…どのみち、その女が犯罪者なり怪しい宗教か何かならそれこそ医薬品なり水なりを引っ込めて有栖川にでも取り次ぎ『ザ・ポリス』で無力化してから警察病院にぶちこめば済むことで、それこそエルが損するのは無駄に買い込んだ医薬品の代金だけで済む。

 

逃げ出すつもりなら『レディオ・スター』で追っ掛けられる。

こんな病み上がりの女を取り逃す状況は考慮しにくいが、相手もスタンド能力があるから万一と言う場合がある…そして、レディオ・スターはその『万一』を潰す能力でもあるからだ。

 

つまりは多少怪しまれようが多少警戒されようがこの状況下ならばエルが優位なことはほぼ変わり無いのだから、ぶっちゃけそこはどうでもいい。

 

そもそも、胡散臭く無い様に喋ろうと思えば幾らでも喋れるだろう。

だが、下手に誠実性を重視した対応をしても…むしろそうした方が一手でも対応や会話内容で地雷ふんだり応対のNGなミスでもしたら、緊張と恐怖からいきなり『裏切られた』『だまされた』とでも相手に誤解されてスタンド攻撃される危険性もある。

ましてや『レディオ・スター』は強力だが読みが要る上に癖が強い、持久戦には強いが感(・)情(・)に(・)あ(・)か(・)せ(・)て(・)い(・)き(・)な(・)り(・)パ(・)ニ(・)ッ(・)ク(・)状(・)態(・)で(・)殴(・)ら(・)れ(・)た(・)ら(・)無(・)力(・)と言う弱点を常に抱えている。

 

誠実性は、マナーに則った硬い対応はすべからく対人の初対面の応対にベストではある、だが裏(・)切(・)れ(・)ず(・)吐(・)い(・)た(・)唾(・)を(・)呑(・)み(・)込(・)め(・)ず(・)矛(・)盾(・)を(・)許(・)さ(・)れ(・)ぬ(・)、(・)言(・)わ(・)ば(・)此(・)方(・)か(・)ら(・)の(・)リ(・)ス(・)ク(・)管(・)理(・)で(・)言(・)え(・)ば(・)ハ(・)イ(・)リ(・)ス(・)ク(・)・(・)ハ(・)イ(・)リ(・)タ(・)ー(・)ン(・)で(・)も(・)あ(・)る(・)。それならば、多少胡散臭くてもフランクかつ此方からペラペラしゃべった方が変(・)に(・)萎(・)縮(・)さ(・)れ(・)て(・)口(・)を(・)つ(・)ぐ(・)ま(・)れ(・)る(・)よ(・)り(・)、(・)警(・)戒(・)さ(・)れ(・)よ(・)う(・)が(・)口(・)を(・)開(・)い(・)て(・)も(・)ら(・)わ(・)な(・)い(・)と(・)情(・)報(・)が(・)抜(・)け(・)な(・)い(・)。

 

そういう判断は、早い方だった。

 

 

「…そう、ありがとう、ございます」

 

まあ、メイド服の女はそういって、エルの話術に引っ張られるように勧められるままスポドリに恐る恐る口をつけたメイド服の女は体は正直だったのには違いなく。

カラカラの体を一気に潤す様に一瞬でぐっとペットボトルを飲み干すと…えづいた、凄い勢いでむせた。

…気管に入ったらしい。

 

血相を変えて慌てたのはエルの方で、まさかそうなるとは予想外だったらしく背中を擦りながら捲し立てる様に素の口調で心配する言葉を紡ぎたてる。

まあ…エルは根本的な部分の素がこっちである。計算高いしある程度自分も他人もコントロールするタイプのクズだが、それはそれとして根がどうしても善性が抜けないし人の不幸を見過ごしたくないタイプでもある。

弱っている誰かをそもそもほっとけないのだ。

 

 

「…優しい」

 

ポロっと、そのメイド服の女は漏らす。

そのまま…ポロポロと、いろいろ限界だったのかエルにすがり付くと声も上げずにえぐえぐとぐずりだすのだ。

 

これには流石に予想外だったエルだが、まあ…気持ちは理解出来なくはない。

気持ちは身体と密接に繋がるとは誰が言ったのかは知らないが、少なくとも精神が弱っていると身体は本能のまま動いてしまう事はエル自身も覚えがある。

心が弱りきった時に手を差しのべてくれた有栖川に、自分も恥も外聞もなくすがり付き泣いた記憶があるからだ。

 

…あの時の有栖川さんには、もしかして悪いことをしたのかしら。

 

どうでもいいことに内心でつぶやき頭を捻りながら、エルはそのメイド服の女に一言だけ質問した。

 

「…名前、貴女の名前はなんて言うのかしらぁ?」

 

そう設問したエルに、涙声ながら彼女はこう返したのである。

 

 

守屋竜奈(もりや・るな)です…と。

 

 

 

To be continued

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