今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
…さて。
そのメイド服の女こと、守屋と言う女性が名を明かしてからのエルの動きはと言うと、案外にマイペースなモノである。
感極まりえぐえぐと赤子の様にぐずる守屋を適当に宥めすかした後、リビングからキッチンに向かって守屋が食べれそうな何かを適当にさくっと作る事にした彼女はと言うと。
いちいち昆布だしをひくのをめんどくさがってか、一人用の土鍋に鰹風味の顆粒だしを溶かした茶碗一杯ぶんの冷やごはんに対し湯を1.5カップ程度の割当で沸かし、後はザルにあげて流水で洗った冷やごはんを入れて適当に沸かすだけ。
米の形がある程度柔らかい状態までふやかすぐらい炊けたら、火を止めて溶き卵を円を描くようにさっと入れた後で小口切りにしたネギ、エルの趣味でクコの実や金ゴマを飾りにちらして蓋をして3分弱蒸らす。
…まあ、本来は生米からやるのが本式なのに冷やごはん使う以上『なんちゃって』ではあるが、要はおじや寄りのお雑炊だ。
病人食と言う事でうどんにするべきか少し悩んだとかなんとかだが、兎に角も、空きっ腹が極まりすぎている今の守屋にいきなり重いモノは食わせられないと言う判断からのチョイスではある。
「…美味しそう」
涎を垂らしそうな勢いで土鍋に釘付けの守屋では有るが、それを制止したのは
曰く、タダではやれない、交換条件つきだ…と。
「…そんなぁ!今の私は、冬で何も備蓄しなかったと言うアリとキリギリスのキリギリスみたいな、素寒貧なの…お金も、何も…」
そう言って焦る彼女を更に制止し、エルは条件をこう突き付けたのである。
「私はねぇ、守屋…さん?だったかしらぁ、貴女の事は何も知らないの。
それが料理を提供する条件だ、と言うエルに対し、守屋はにべもなくうなずいたのであった…
Case16『ステルス・オブ・デイズと未知なる脅威』 前編
「…どこから、語るべきかしら」
そうモグモグと雑炊を平らげた守屋は、最初にこう前置きした上で…いきなり、スタンドを展開する。
そのスタンド像は、例えばそれは戦士だったり動物だったりと言うモノではない。
西洋の騎士なんかが使いそうな、いわゆるブロード・ソード。資料によったらツヴァイハンダーとも表記されそうな、刀身の長さが1メートル半ぐらいは有りそうな大剣だ。
宝石や彫刻の様な装飾らしい装飾と言うものは見当たらず、強いて言えば柄の所にだけ生々しい瞳や口ががギロリとのぞく異様な生物感が、逆に無骨な剣全体のデザインからしたら妙に目立つだろう。
「目と口がついただけの剣」。
それこそが守屋のスタンド『ステルス・オブ・デイズ』である。
いきなりスタンドを見せられて、うぉっと言う感じの女性らしさの欠片もない悲鳴をあげて尻餅をついたエルでは、あったが…すぐ冷静沈着な表情に戻るとこう切り出した。
いきなりスタンドを出して
その答えには、別に危害を加える気は無くて説明に必要だったから見せた、とだけ返して話を切り出した。
守屋がスタンドに目覚めたのは、本当にいつの頃だったかは定かではない。
まあ本人曰く小学生3年生かその辺り、10歳の頃には発現したそうだが…兎に角、『親にも見えない超能力の剣を産み出せる』と言う直感だけはその時期に手にいれていたそうだ。
そして
そのスタンドのステルス・オブ・デイズの能力は…一言で言えば、『光学迷彩』だ。
可視光線、つまりは紫外線から赤外線迄に存在する七色の光のスペクトラムを操る。
例えば山に居るなら山の風景を、街に居るなら街の風景を、夜景なら夜空とネオンの光の渦を
柄を握っている間は誰にも見付からないしわからない、監視カメラの映像すら潜り抜けられる。
その能力を使って、まあ窃盗の類いは幾らでもやろうと思えば出来てしまうだろう。
暗殺、スパイ…まあ、ほぼ同じ様にそれらの適正もある。
しかして、
「耳がいたいわぁ…」
尚、そういう部分を聞かされたエルは残念ながら目先の利益優先でスタンド能力を遠慮なくカンニングとかに使うクズではある点で、そこら辺は雲泥の差ではあるが…そこはともかくも。
それはそうと、そのステルス能力を表面的には隠したまま大人になり…実際にはスタンド使い同士の戦いに巻き込まれた事は数度あるが、『やり過ごす』事で対処してから十数年。
近場の中学高校を卒業し、大学こそ短大のキャンパスが東京にあったので都会に出たが就活があまりうまくいかず、肌に合わなかった保険会社を一年たたず辞めて地元に出戻り。
24歳になった今は両親の営む喫茶店でウェイトレスとして働く実家暮らし、料理の専門学校に通いながら調理師などの免許を取得する為に勉強中なのだそうだ。
と、本当に何処に居てもおかしくはない感じの、スタンド能力を除けば普通に居そうな喫茶店の娘さんだ。
何か特別なドラマが有るわけではない、まるで植物の様に穏やかな人生とまで言わずとも、社会に良くも悪くも影響しなさそうな感じの生き方ではあるのだろう。
強いて言えば、少女趣味な母親の趣味で制服がヴィクトリア時代のイギリスのメイド服じみたものなのをよろこんで着てる所は他人に比べて少し変わっているか。
他人より明らかに優れてそうな箇所なぞ、それこそ良く良く見たらテレビや映画に出てきても違和感ないぐらいに顔立ちは大人っぽくて美人な顔立ちの眼鏡美女と言う具合か。
余談だが、彼女の実家の喫茶店『Extra Light』は守屋目当てのお客さんはわりと多いらしい。
と、脱線したが…兎に角も。
まあ、別に面白い人生を送ってきた訳ではない、普遍的な正義感程度はあるがことさら知恵や勇気があるとかでは無い。
仮にいつか
しかし、本人がそう言う人畜無害な存在でも周りがそうではないパターンと言う事は往々にしてある。
悪意に振り回されたり、トラブルに巻き込まれたり…
今回のケースのそもそもの発端はその立地が問題で、単刀直入に言えば『A・C』騒ぎに巻き込まれてしまった被害者の一人だった。
「う…げ、貴女もアレに…」
優姫とあのスタンド騒ぎに巻き込まれて解決したエルは渋い顔をするが、それは尻目に守屋はこう続けた、
「…あの時は、たまたま店先に置いてあるパンジーのプランターに水をあげてたパパが、ね。とりあえず私のスタンドを鈍器みたいにして殴って気絶させたら大人しくなったし…私はスタンド使いの悪ふざけだってわかってたけど、みんなわからないからとりあえず『入院』する算段になったの」
と、人知れず神木による暴走事件の被害者として父親は巻き込まれて、また娘も巻き込まれ…まあ、結局の所、その父親は入院させられた訳であるが。
幸か不幸か、仕方ない上に緊急事態だったため守屋を責める訳には行かないのだが、脳天にこぶができるぐらいの勢いでスタンドで殴られた後、そのままに受け身が取れないまま後頭部から倒れたせいで入院が長引いたらしく。
とりあえず検査が長引いたのだが…父親の退院許可がついに下りたと聞いた守屋は、慌てて病院に見舞いに行く事にした。
ひとつは、守屋や彼女の母親は免許を持って居なかったため、自動車やバイクは使えなかった事。
もうひとつは、病院が歩いて10分ぐらいの目と鼻の先に有るため
最後に、守屋とその母親はうっかり屋で金銭をバッグやポケットに入れ忘れてしまい…
しかし、運命の歯車は、時に予想外な悪い結末を…
その病院で何が起きたのか、それは次回に語るとしよう。
To be continued
『ステルス・オブ・デイズ』
破壊力:A
スピード:測定不能(本体の剣術の腕前そのもの)
精密動作性:測定不能(本体の剣術の腕前そのもの)
射程距離:E
持続力:B
成長性:E
(A超スゴい、Bスゴい、C普通、D苦手、E超苦手)
わりと珍しい無生物がモデルのスタンドではあり、要するに剣。
攻撃に使うには本体が柄を握り振り回す必要があるが、その切れ味は鉄柱をバターの様に切り裂くぐらいの切れ味はあり、柄を使って殴るだけでも一般人なら不意打ちならば気絶させるぐらいの重さはある。
本体の守屋が好戦的ではなく運動自体は苦手なので精密動作性やスピードはDからCの間だが、実質的に本体の剣術=その技量や速度なのでスタンド自体の評価が不可能だった為に便宜的にそのように表記した。
また、その能力は一言で言えば『光学迷彩』であり、本領はそちら。
可視光線を自由自在に操り、背景と同化する事で高いステルス能力を発揮する。
弱点はあると言うと沢山有るのだが、この能力と抜群の破壊力を組み合わせたその暗殺の才能はハマればシンプルかつ強力無比故に凄まじいの一言であろう。
ちなみに、エルの『レディオ・スター』とは相互に弱点であり天敵と言う組み合わせ。
あくまでも『相手から見えない』だけで守屋の視界は開いている為に『視界のジャック』は天敵だが、エルの能力自体が不意打ちに滅法弱く急襲されたらどうしようもない為に、要は先にスタンド能力を決めた方が勝つ。
また、近距離型のわりにスタンドの操作が特殊な代わりか能力の持続力は高いが、まるまる1日とかは流石に持たない様だ。
名前の元ネタはジェンセン・スポータグのアルバム『ステルス・オブ・デイズ』より