今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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17話『ステルス・オブ・デイズと未知なる脅威』中編

さて、守屋竜奈と言う女とは…まあ、あまり『スタンド使いらしくない』女であった。

 

 

例えばそう…何でも良い。

君がもし、何らかの力により異界に転生し、魔法に目覚めたとしよう。

或いは、道端で拾ったベルトやブレスレットを身に付けたら変身ヒーローになった、でもいい。

妖精が魔法や精霊の国を助けてと頼み魔法の杖を授けた?吸血鬼に噛まれ吸血鬼になったり未来から戦闘用ロボットが現れてパイロットとして登録されたでも、宇宙人に拐われたりして人体改造実験を受けた、でもいい…まあ兎に角も。

 

誰かより優れた超能力と言うものを持たされ、それが唯一無二の個性だとしたら。

人の取りうる行動など、恐らく2つに1つだろう。

身勝手な『正義』をかかげ他人を傷付ける様に我が物顔で超能力を暴力の様に振る舞うか、法的な社会的な『正義』を破ることを恐れ引きこもってしまうか。

…守屋はどちらでもなかった、『ステルス・オブ・デイズ』と言うスタンドを持っていたとしてもだ。

 

1つは、単純に心が折れたからでもある。

中学生の1年生か2年生ごろ、自身のスタンドが剣であると言う事から剣道部になんとなく顔をだしてみた事はあったのだが…まあ、体験入部と言う時期のゆるい練習だろうとしても基礎体力作りの為の素振りやらマラソンやらなにやらで吐いて以降トラウマと化した上に、体育会系の世界自体があんまり性に合わなかったと言う部分がある。

穏やかで内向的過ぎる彼女にとって、ああいう世界は尊敬こそすれど棲む水も違うのだ…と。

 

恐らく、『闘争の才能が無い』のだ。

自分でそう見切りをつけてから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もともと目覚めて以降でもほとんど使った事もなかった彼女のスタンドは完全にほぼ封印する事に決めたのだ。

植物の様に穏やかに生きようと、彼女はそう決めて、以来は彼女からケンカをしたり言い争う事すらしなかった。

 

しかして、実際問題で言えば()()()()使()()()()()()()使()()()()()()()()の経験則の通り、スタンド使いに絡まれた事は…まあ無くはない、5回ほど有る。

だが、それら全て遣り過ごして逃げて来た。それが『ステルス・オブ・デイズ』の真骨頂、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そのハズだった、だが…

 

 

 

 

 

Case17『ステルス・オブ・デイズと未知なる脅威』中編

 

 

 

 

 

さて、そういう過去話は関係はしてくるが、まあこの辺りで切り上げよう

話は、彼女の父親の見舞いに母娘で病院にいく途中から回想を語り直そう。

 

 

「なんで、わざわざウチの制服で見舞いに行くのよ。今からでも着替えてきたら?」

 

守屋の母、守屋千恵(もりや・ちえ)が呆れた様にじとっとした目を向けながら娘の格好に口出しする。

ふつう見舞いに行くと言うとスーツや紋付き袴は大袈裟過ぎるにしろ…まあ、かっちりした服と言うチョイスと言う一点に置いては別に何らかの制服で行くのは変ではないが、ウェイトレスの格好は流石に場違いではある。

 

「…いいの、()()()()()()()

 

だが、守屋からしたら…父親が一番喜んでくれそうな服と言うと、これしか思い付かなかった。

一度目の就職先があんまりにもブラックかつ成果主義過ぎて現場に馴染めず出戻りして塞ぎこんだ時期、黙って立ち上がれるまで応援してくれた両親への恩を返そうと実家の喫茶店を継ぐために一から勉強すると宣言し、その制服に袖を通した時に父はどれだけ嬉しそうな顔をしたか…守屋は今でも思い出せる。

それ以上に喜んでくれた服は成人式の時に着た祖母の形見の晴れ着だろうか、そんなものは余計場違いだ。

 

そもそも、スタンド事件に巻き込まれたせいでの不可抗力とはいってもあんな危険なスタンドで父親を全力でぶん殴ってしまった負い目もある。

サプライズと言うかなんと言うか、兎に角も自分のせいで入院が長引いてしまったのなら自分で父親を喜ばせたいと言う思いからの行動であった。

 

と、そんな問答をグダグダとしているとあっさりと到着した柚木町一番の医院『GY総合病院』。

整形外科や脳外科の先生すらいる大型病院ともあり、他の市や町からも交通事故や火災などの生存者が真っ先に運ばれる事もたまに有るほどだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…確か4階だっけ、ママ」

 

入り口で軽く受け付けを済ますなり、エレベーターをポチポチと守屋が操作する。

彼女の母親もそれに頷くと、12号室だと聞いたと返し…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と述懐しよう。

しかして、彼女が12号室の四人部屋のうちの一角にたどり着いた時に父親が一番に口を開いた際に出た言葉は()()()()()()()()()()

 

 

「お前達…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

え…と、守屋は母親ともども父親が発した言葉に面食らう。

時が凍り付いた様な空気が一瞬流れ、あわてて母親の方がおどけた口調でこう返す。

あなた、冗談にしてはセンスが無いわよ、と。

 

だが、彼女の父親は本気だ。

()()()()調()()()()()()()()()()()

まるで見ず知らずの宇宙人かなにかを見るように、怯えまじりなきょとんとした表情で完全に娘と妻を交互に見渡すのだ。

その様子を見て…守屋はピンときた、父親に何が起きたのかを。

その確認作業の為に、1つ質問してみることにした。

 

「…うちの店の名前、わかる?」

 

普通なら、即答えられるだろう。自分の働く店で、ましてや自分がオーナーだ。

誰かの『特別な光』になれるような暖かい店にしたい…そう思い名付けた、かつて守屋が子供の頃に父親から幾度となく聞かされた『Extra Light』の由来。

()()()()()()()()()()()()()()()()()…それなのに、かえって来た言葉はと言うと。

 

「わからない…なんだ、俺は?店?何かやってたの…か…?」

 

そう答えがかえって来た時に、母親はいやぁ!!?と悲鳴を絶叫しながらその場に崩れ守屋もパパ!と叫びながら父親に思わずすがり付く。

そう、彼女の父親に起きた事象にはその答えしかない。

『記憶喪失』、冗談みたいな話だが健忘と言う状況に陥っていた。

 

 

愛する父親と娘、夫と妻と紡いできた時間。

それら全てがすっぽり抜け落ちている。

トイレの使い方、食器の使い方、文字の読み方…それらは全て覚えていても、家族の事はおろか自分自身の事ですら全く思い出せないと言う。

 

彼女がひとつひとつ、血相こそ変えながらもゆっくり問いただす度に浮き彫りになる事実。

それらが明らかになるにつれ、母親は泣き崩れ父親は困惑は更に続き…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

…もしかしたら、私がパパを殴ったから…?

 

そう思い至ると、恐怖は自責の念にかられ、様々な不安が彼女を襲い来る。

 

()()()()()()()()()()()()()だが、あくまでも『つもり』だ。

『A・C』の効力によりレイプ魔に変貌させられた父親の姿は、確かに尋常ではなかった。

いかに峰打ちでぶん殴ったとしても、受け身の取れない条件下ならば脳に何かダメージを自身が与えてしまった可能性と言うものは低くはない。

 

…何時だったか、守屋がまだスタンドに目覚めてほんの数日後、小学生の中学年ぐらいの時期に使い方がわからずになんとなくオモチャの棒を振り回す感覚で地面に『ステルス・オブ・デイズ』を叩き付けたら公園の大地を5メートルぐらい両断してしまった事がある。

人がたまたまいなかったから良かったものの、誰かが居たら大惨事だったと今になって青くなる話だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…そういうスタンドだ。

 

ましてや、中学生になると冒頭の経緯から変に達観して戦闘用に使わずに人に向ける事がほとんどなかった守屋は、逆に実戦の経験が無さすぎて手加減の範疇を越えてしまったと言う可能性は0ではない。

 

とはいっても、じゃあ父親にレイプされたら良かったのか?と言う話ではなかったが、落ち着いて考えたら自身のスタンドで姿を隠して逃げたら良かったのだ…と冷静になると思う守屋はと言うと。

いかにパニクってしまったとはいっても父親へとなんて真似をしてしまったのだ、と後悔の念が強くのしかかる。

あんな姿、普段の父親のそれではなかったハズなのに、せめてもスタンドで殴るならばあんな優しい父をあんな風にした黒幕にぶつけるべきだったのに…と。

 

 

だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

その犯人はと言うと…

 

「ダァァァァ!?あのアホ、ウチに断りも入れんと余計な事しくさってからにィィ!?」

 

そう絶叫しながら、駆け足でヅカヅカと現れたのは関西弁でしゃべる白衣の30代ぐらいの女医だ。

身長はだいたい145cmほど、ボサボサの髪も整えずに、息を切らして…しかし、瞳は真っ直ぐに守屋たち母娘を見据えながら。

その女医は、誰に聞かれてもないのにこう話を切り出した。

 

「ウチのクランケ(患者の事)はまだ家族と面会禁止やっちゅーのに、ホンマ余計な事を…」

   

…どうやら、若干ならず要領を得ないががなりたてるその女医は守屋の父親の主治医らしい。

精神科か脳外科か状況が状況なので分かりにくいが、どうやら守屋の父親の担当医だったようだと気付いたのか、小柄な女医に向かって守屋の母親はあわててすがり付きながらこう告げる。

 

「ウチの主人は…主人はどうしたんですか!?何があったんですか!!」

 

そう半泣きで駆け寄ってきてはがっちりしがみつくその女を見定める様に、質問には一切答えずに落ち着いた口調にいきなり切り替わったその女医はこう告知するように話し出す。

 

「うーん…脈拍数と呼吸はガタガタやけど、瞳孔も安定しとるし肌艶も歳の割には綺麗…ええもん食うとる感じやね。まあ、これなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

え…と言う間もなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

バタンと、まるで回転力がなくなった独楽のように倒れた守屋の母親のその先に、なんと言う事だろうか。

 

その女医の背後を護衛するかのように、2メートル近くはある両手が鍵の様になったX-MENのサイクロップスの様な細いゴーグルをつけた大男のヴィジョンがズルりと現れ…フシュウウと不快な呼吸音を響かせながら周囲を見渡す様に首をキョロキョロ動かしている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…院長にどう説明したらええんやろうね。始末書やったらすまへんやろし、憂鬱やわ、ホンマ…」

 

一方、そんな状況も露知らずと言わんばかりの口調で、その女医はこうごちる。

 

 

 

それを見て、はたと守屋は気付いた。

 

父親に起きた事や、今まさに母親に起きた事。

自身にも何しようかと言う事、()()()()()()()()()()()()()…全て。

 

 

「…やるしかない」

 

あ…と言う間抜けな女医の声が、守屋の怒りの声に反応するや否や、ブンとその女医の首を飛ばさんとする勢いで『ステルス・オブ・デイズ』の剣閃が轟く。

だが、間一髪でかわされたそれから間合いを離したその女医は驚いた顔をして、こう呟いた。

 

「あんた…スタンド使いか!こりゃ、ややこしゅうなったな…!」

 

 

それが、守屋が初めて『自分の意思で戦う』スタンド戦だった…

 

Tobecontinued

 

 

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