今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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20話『ファイナル・カウントダウン』中編

大事な相棒兼後見人であり…なにより、最愛かつ最も信頼している有栖川の容態の急変の報を聞いたエル。

 

 

目の間が真っ白になる、顔から血の気が一気になくなるーーーそのまま、身体の力が抜ける。

エルはそのまま、膝から垂直にストンと落ちかけるその瞬間…柔らかいものが彼女をポスンと受け止める。

 

それは、守屋である。

状況をエル以上に何も理解出来てないようだが、それでも恩(・)人(・)が(・)電(・)話(・)し(・)て(・)何(・)か(・)シ(・)ョ(・)ッ(・)ク(・)な(・)事(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)と言う事だけは理解したようだ。

それを慌てて支えようとしてキャッチに成功したその暖かさは、どうやらエルがギリギリのところで冷静さと正気を維持する気力の補填にはなんとか充分だったらしく…エルは守屋に内心で礼を言いながら。

とりあえず、気をしっかり入れ直したエルは優姫に電話で問い質す、有栖川の身に一体何があったのかと。

かえって来た言葉は、まずはこんな台詞である。

 

「とりあえず…外(・)傷(・)は(・)、(・)一(・)切(・)無(・)い(・)。そして命に別状は無いからエルさん、それは安心して」

 

第一のその報告にエルは安心しつつ、更に細やかに優姫は状況を解説してくれる。

 

「襲われた詳しい状況はまだ良くわからないけど、今日の夕方ぐらいに匿名の通報があったの、5時45分か50分くらいかな。

有栖川先輩の自宅前で非番の先輩が門前で倒れてるって内容で、通報受けてあわてて飛んでって私が現場に着いた時には救急隊の方も到着してくださってたから…通報と一緒に119もかけたのかも知れない。

警察の検分にも特に通報との矛盾は見当たらなかったわね。先輩と先輩の家族以外の他人の指紋や吉川線(殺人事件の被害者の遺体に遺された文字通りの『爪跡』、つまり引っ掻き傷の事)…って言ったら先輩生きてるから不謹慎か、兎に角、先輩の身体や先輩の家から証拠らしい証拠は出なかった。

でも、逆に証拠らしい証拠が『出なさすぎて』わかることは少なからず有るわ。

争った形跡とかも特になく先輩が倒れてたって事は、顔(・)見(・)知(・)り(・)の(・)犯(・)行(・)の(・)可(・)能(・)性(・)が(・)高(・)い(・)」

 

そう言って区切った後、優姫はトーンを少し落としてこう続ける。

 

 

「…正直、ね。私は『顔見知りの犯行』って聞いて、貴女の関与を考えた。

貴女は絶対に犯人じゃないとは知ってるとしても、顔見知りでって疑いのラインを探したら…まず、私の中で浮上したのが…」

「『それが…私、増田エルだった』なんて言わせないわよぉ、ばーか」

 

そして、その台詞を言い終わる前に、エルがおどけた口調で割り込みつつではあるが…

とうのエルはそれを補足するかのように、或いは訂正するかのように真面目な口調が切り替えながらこう応える。

 

 

「まあ、貴(・)女(・)が(・)私(・)に(・)連(・)絡(・)す(・)る(・)っ(・)て(・)事(・)は(・)、(・)私(・)が(・)共(・)犯(・)者(・)だ(・)っ(・)た(・)か(・)探(・)り(・)を(・)入(・)れ(・)て(・)る(・)だ(・)け(・)で(・)し(・)ょ(・)ぉ(・)。

…カマかけが下手ねぇ。下手過ぎる、ホームズに出てくるレストレード警部のがまだもっと上手くやるわよぉ。

最有力容疑者、貴女なら…それこそ有栖川さんから教えてもらってるハズ、そ(・)う(・)言(・)う(・)能(・)力(・)な(・)ん(・)だ(・)か(・)ら(・)私(・)の(・)能(・)力(・)と(・)は(・)別(・)に(・)木(・)藤(・)さ(・)ん(・)の(・)能(・)力(・)は(・)貴(・)女(・)が(・)知(・)っ(・)て(・)な(・)き(・)ゃ(・)お(・)か(・)し(・)い(・)、だから真っ先に私じゃなくて木藤さんに当たるハズなのに。

だけど、私にこういう形で連絡が来て『有栖川さんが襲われた、意識が混濁して戻らない』って話は、これ自体は嘘じゃないとしたら…そもそも複数犯の可能性は低くないわぁ。

し(・)か(・)し(・)不(・)意(・)討(・)ち(・)な(・)ら(・)単(・)独(・)犯(・)で(・)も(・)出(・)来(・)る(・)…現状、貴女達警察はどっちなのかわから無いってところかしらねぇ。

『ファイナル・カウントダウン』って、確かそんな『どちらもあり得る』能力だったでしょお」

 

そう言って、今度は優姫が絶句するのを無視してこう続ける。

 

「って火々里さん…そこで絶句しちゃったらそれが答えでしょーがぁ!

もう…全くもう、ホームズどころかワトソンにもなれなそうな刑事さぁん、私、マジで確かめなきゃいけない事ができたっぽいわぁ。

どうせ木藤さんの足取りなんざ掴んでるんでしょお、全(・)部(・)言(・)わ(・)な(・)く(・)て(・)い(・)い(・)か(・)ら(・)、(・)木(・)藤(・)さ(・)ん(・)の(・)通(・)勤(・)ル(・)ー(・)ト(・)で(・)使(・)っ(・)て(・)る(・)電(・)車(・)の(・)路(・)線(・)だ(・)け(・)教(・)え(・)な(・)さ(・)い(・)な(・)ぁ(・)」

 

そう、エルが言った際、優姫は一瞬思考がフリーズするものの…なるほどそう言うシナリオが、と合点がいった彼女はこう返した。

 

「うん、なるほど…『全部』言っちゃうと捜査情報漏らしちゃうようなもんだから、下手したら私に責任の引責問題が出るかも知れない。退職になるかも知れない。

だからギリギリ言い訳出来そうな部分だけポロっと漏らした体にして、後は自分で推理するから私に情報漏洩の責任は無い…みたいなラインで教えなさい、って事か。

…私の事は気にしなくて良いのに、ごめんね」

 

そう言って、一言だけかるく断りを入れつつ言われた通りの事を正直に答えた優姫に対し、エルの方も無理させてごめんなさいと返して電話を切り…一気に力が抜ける。

そのまま、ドスンと脱力感のままに守屋に体重を預けたエルは…一言、こう告げた。

 

 

「ごめんなさい、守屋さん…疲れた…ごめんなさぁい…で(・)も(・)、(・)こ(・)れ(・)か(・)ら(・)も(・)う(・)何(・)倍(・)も(・)疲(・)れ(・)る(・)…(・)

だから、い…まは…今だけは…もうちょっとだけ、ちょっとだけぇ…」

 

そう言って、大事な人が倒れたショックを隠すように警官相手に丁々発止のやり取りをした直後で、有栖川の無事と犯人の足取りの手掛かりを同時に手にした成果と引き換えに緊張の糸がプツンと切れたエルを慰めるように、守屋は背中からハグしながら優しく語りかける。

 

「…大丈夫、私…まるで、猫を目の前にしたノネズミよりも臆病な自覚はあるけど、今は、勇気と元気が掘り当てたばかりの油田みたいにぐんぐん涌き出てるの。

…貴女のおかげ、貴女の優しさが、肥料を追肥された植物よりもイキイキとした力を与えてくれたの。

…だから、今、貴女が疲れてるってなら私がトイチより高い利子つけて元気を返してあげる!ぎゅっとしたら、あったかくなる…あったかくなるのは、ぎゅっとするのGはガッツのGだから!」

 

そう言って、さらに腕に力を守屋は込め…エルはなんかもう、身体を預けた守屋が全身柔らかいし物理的にあったかいわなんか甘くて優しいにおいがするわ声や吐息も甘くて柔らかいわと、さっきまでの蒼白ながらも緊張感溢れる顔をしていたとは思えないぐらいなふにゃふにゃした顔でその守屋のハグを享受していたそうな…

まあ、エル自身が言っていた通りこ(・)れ(・)か(・)ら(・)の(・)事(・)を(・)考(・)慮(・)し(・)た(・)ら(・)長(・)く(・)は(・)そ(・)ん(・)な(・)事(・)は(・)出(・)来(・)な(・)い(・)為、まあせいぜい5分弱の話ではあるのだが。

 

 

 

 

Case20『ファイナル・カウントダウン』中編

 

 

 

 

さて、一方の木藤に視点を移して…だいたい40分ぐらい後まで話を進めよう。

 

 

(…やってもうた、スマン、有栖川…)

 

木藤は、心底後悔していた。

木藤叡花と言う女医は、有栖川とはだいたい同世代のスタンド使い同士、彼女とは仲が良かったのに…それを裏切った、友情と言うダイヤモンドですら売り買いできない大事なものを利用して有栖川の信頼を踏みにじってしまった。

 

し(・)か(・)し(・)て(・)、(・)最(・)早(・)後(・)戻(・)り(・)は(・)出(・)来(・)な(・)い(・)。

チキンゲームを始めた車と同じだ、ストップも破滅も有り得てもバックだけは有り得ないように…自分も、止まるか破滅は有り得ても後戻りは出来ない、逃げると言う選択肢は無い。

何故なら、それが医者としての使命なのだと確信しているからだ。

 

 

『誰かを救う為ならば、何を犠牲に出来るのか』

…いわゆる、ネットで流れたトロッコ問題や列車問題の様な一時期流行った下らない思考実験であれば、なるほど好き勝手綺麗事を言えるのかも知れない。

旧くはカルネアデスの板とも言うか、この辺りは法律の基礎にも関わる大事な話ではあるが、まあだからこそ全くの『正解』こそ無い思考実験と言う見解自体はだいたい共通する意見だろう。

 

しかして、医師と言う生き物は、ひいては薬学や医療や福祉にかかわる全ての職業の職員達はそれに対し哲(・)学(・)者(・)達(・)の(・)思(・)考(・)実(・)験(・)や(・)ネ(・)ッ(・)ト(・)の(・)戯(・)れ(・)言(・)で(・)は(・)な(・)く(・)現(・)実(・)で(・)常に向き合い続けなければならない。

人を一人生かす薬一包を処方するために何万のモルモットやサルの死体が積み重なり、人一人の手術や臨床の成果を得るのにどれだけの人間の死と血がそこに関わっているか…そもそもそう言う過酷な世界だ。

 

木藤も、そこに関しての覚悟は同じだ。

…実は木藤自身は一度それから逃げてしまった人間だ、だからこそ、尚の事かも知れない。

 

 

(うちの名誉なんざどうでもええ…兄貴達や父さん母さんにゃ悪いことするんが、ホンマ心残りなんやけど、他に手段はなかった…

いや、それすらも『言い訳』、か…自分が自分で情けなぁなるで、他人にはえらそにしときながら自分は何一つ立派にはならん…)

 

そう、内心でとりとめなく続く自分の失態と自分のやらかした悪事への自罰の念で潰れそうにはなるものの、それでもや(・)り(・)残(・)し(・)た(・)事(・)を(・)完(・)遂(・)す(・)る(・)為(・)に(・)は(・)歩(・)み(・)を(・)止(・)め(・)る(・)つ(・)も(・)り(・)も(・)な(・)い(・)。

それだけ、それだけを胸に細い路地をうろうろしていると…突然、コロコロと空のペットボトルが転がって来た。

 

マナーが悪いこと極まると言うか…ポイ捨ての類いだろうか、と木藤は見咎める。

或いは、確かにこの目と鼻の先には近くに自販機があり、それに付随して缶ビン用以外にペットボトル用の専用ゴミ箱が有るし『投げ入れた』つもりが目測を誤った結果だろうか。

何れにせよこの手のマナーの悪い下らない事は便所に吐かれたタンカスにも劣るような諸行だと感じたからか、わりにこの手の事が大嫌いな木藤はゴミ箱に改めて捨てようと拾おうとしたその刹那、『違和感』に気付く。

 

異様に膨らんだ上にカタカタと急にひとりでに動き出すペットボトルを前に、瞬間、何が起きるのか本(・)能(・)的(・)に(・)察(・)知(・)し(・)た(・)。

 

「『ファイナル・カウントダウン』!うちを守れェェェェエエエ!!!!」

 

そう言って自分のスタンドを召喚してガードするのとほぼ全く同じタイミングで…そのペットボトルはいきなり大爆発を起こし…

 

 

「もらったァァァァア!!!」

 

そしてい(・)き(・)な(・)り(・)木(・)藤(・)の(・)背(・)後(・)か(・)ら(・)現(・)れ(・)た(・)エ(・)ル(・)が(・)、(・)ペ(・)ッ(・)ト(・)ボ(・)ト(・)ル(・)の(・)大(・)爆(・)発(・)と(・)同(・)時(・)に(・)『(・)レ(・)デ(・)ィ(・)オ(・)・(・)ス(・)タ(・)ー(・)』(・)と(・)飛(・)び(・)出(・)す(・)の(・)も(・)全(・)く(・)の(・)同(・)時(・)の(・)タ(・)イ(・)ミ(・)ン(・)グ(・)で(・)あ(・)っ(・)た(・)…!

 

To be continued

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