今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
「うーん、6年ぶりだけど日本は良いのね。安心して屋台で飯が食える」
そう言って、彼はもぐもぐと舟形の紙箱に湯気が立ち上るたこ焼きを頬張る。
それに追随するような口調で、筋骨粒々な男が相づちを打つ。
「たし、確かに…にほ、日本の屋台は、やす、安くても腹壊さない。
ベト、ベトナムで、くっ、食った安いパインミー…
あれ、あれはダメだった。げ、下痢が止まらなかったよな」
そう言って、筋骨粒々な男はそちらはたこ焼きを売っていた同じ屋台で買ってきた鯛焼きをかぶり…別な国での屋台でのやらかしを思いだした一方で相方に飯食ってる時にそんな話すんなと、ドロップキックを食らう。
そうして、座っていたベンチから叩き落とされた筋骨粒々な男は倒れながら、しかし鯛焼きは死守しつつ話を続ける。
「だけ、だけど…おで、ちょ、ちょっとこれ気に入らない。
たい、鯛焼きって言うのに、さか、魚が何匹食っても入って無い。ふし、不思議」
「『あんこ』と『カスタード』入りって書いてあったでしょーが!」
…と、外人らしい勘違いを、相方がもう一回ドロップキックをかましながらツッコミをしつつ訂正されるが。
それはそうと、と『不思議』はまだあるんだ、とのたまいながらこう続けるのである。
「しず、しずくちゃん、おま、お前見てないか?」
え…と、ドロップキックからシャイニングウィザードからの四の字足に流れる様に移行してそろそろ相方に本格的にプロレス技を極め始めた中年が、そんな言葉を聞いて真顔になり…そして、真っ青になる。
「しずくちゃん、迷子になっちゃってるぅぅううう!!??」
そして、いい加減相方にプロレス技かけられてるのに筋骨粒々な男にキレられて四の字をひっくり返され逆に蠍硬めに極められながら、そんな細身の中年男性はママーあのおっちゃん達なにやってんのー?と通りすがりの子供に指差されながらも絶叫するのである…
…一方、そんな『しずくちゃん』なる少女はと言うと…
「リーさんとJさん、どこ行ったのよぉ!!」
尚どこ行ったのよと言っているが、どっか行ったのはこの少女一人の方ではあるが…とにかく、ソフトクリーム片手に彼女は迷子になっていた。
「だ、大丈夫だ、おいちゃん大丈夫だぁぁぁ!落ち着けぇ、とにかく落ち着け…!しずくちゃんにはGPSつき携帯が…」
「…あい、相棒、あれ、あれがそうじゃねえか?」
「アアアアアァァァァァァァァァ!!?しずくちゃぁぁぁん!!!?」
…間の悪い事に、携帯とかも落っことしながら…
Case23『三人娘と三人組』前編
さて、そんな事件があるとは露知らぬ…優姫にちょっと、今回はスポットをあてよう。
火々里優姫は、その日は珍しく日曜日で非番でフリーであり…
金次郎広場、この町の商店街の入り口にブロンズ製の二宮金次郎像が鎮座している事からアダ名がついただけで本来は別な名前があるそうだが…それは兎も角も。
元々城外小学校と言う小学校の分校が建ってたらしいのだが、土地開発の区画整理と市町村合併の学区変更でその校舎こそ廃校になり高度経済成長期すぐぐらいに解体されたのたが、なぜか二宮金次郎像だけ残ってしまった挙げ句延々区画整理の度に残り続ける事になり今では広場の噴水を守るように佇んでいる。
その為、噴水など新しく建てられたモニュメントよりはよほどこの年季の入った二宮金次郎が妙に目立つ為、デートスポットや待ち合わせによく目印がわりに利用されているのだが。
件の金次郎広場に呼びつけられたのは優姫もであり、彼女を呼びつけたと言う相手はと言うと…
「うにゃぁ…これすきぃ…優しいナデナデ気持ちいいよぉ…」
「…よしよし、ぎゅーってされるの、癖になっちゃったねーかわいいねー」
なんか、巨乳の眼鏡美人のお姉さんにハグされながら、デッサン崩れたような全力でとろけた笑顔で頭をお姉さんにナデナデされていた。
「あの…エルさん、私帰っていい?」
そんなぽけぽけしたエルの姿に微妙に引いて…優姫のこの反応も当然かも知れないが、とにかくも。
なんか人を呼びつけて起きながらなんか私服姿の守屋に甘やかされふにゃふにゃしてるのにも訳…と言うか、まあいろいろ有る。
元々は守屋の提案ではある、優姫を呼びつけると言う話は。
守屋はあの騒ぎで直接的にいろいろあった木藤や有栖川とは仲良くはなっていたが、直接的な面識の無い優姫はそうではない。
とは言うものの、基本的に性格が善良なスタンド使い同士であり、優姫と守屋では性格的にどう考えても喧嘩したり衝突しそうな組み合わせではない。
また事件解決のためにいろいろ奔走していた一人でもある優姫へとお礼をかねていろいろ挨拶したい、と言う話が出ていた。
そこで双方に面識のあるエルが場を繋いだ、ついでに着いてきた…と言う話ではあるのだが。
なんと言うか、『ファイナル・カウントダウン』騒ぎの時に守屋となんか話の流れでハグしまくった結果、エルが彼女を見たら反射的に抱き付く癖がついてしまったらしく…その上、二人とも根っこがさみしがりで他人を求める甘えん坊だ。
エルの場合は、まあ…今まで深く交流する相手が警官かそれに関わる後始末に関わる人達な上に金勘定が絡むビジネスライクな緊張感みたいなのもあって理性的な性格がクールに発露していたのだが、守屋に関してはエルにしてみたら相手が単なる好きなだけ甘やかしてくれる喫茶店の看板娘のお姉さんでしかないので、彼女を見たらこんなゆるゆるふにゃふにゃした感じに素直な感じに子供帰りしてしまうらしい。
そして、基本守屋もあんまりこの手の事に羞恥心が無いのと、守屋にしてみたらしっかりものの妹みたいなモノでかわいい相手だからか互いに歯止めが効かず…まあ、優姫よりちょっと早く待ち合わせ場所についた二人がなんかこんな感じでイチャイチャしてた様である。
「うん…友達の見ちゃいけない部分を見ちゃった気分だけど…まあ、気にしてないから今更三角座りでちっちゃくなられても、エルさんの評価とか変えるつもり無いから」
「見ないでぇ…あんな私見ないでぇ…」
尚、エルがこんな姿を見せるのは歳の近い優姫にはちょっと恥ずかしかったらしく…我にかえった主人公は、恥ずかしさのあまりこんな感じで半泣きで顔真っ赤にして縮こまっていた。
どうにも、変なところでプライドが高いらしくいろいろめんどくさく拗らせている様である。
「…ふふ、ちょっとかわいい、羞恥ぷれい…だっけ、ああいうのに弱いんだ。
…こうやったら、増田さんのかわいい一面もう少し見られるのかな?」
…後、守屋は守屋で性癖なちょっとならずドSらしい。
なんかイケない瞳でエルを見ていたが、そこつっこむと多分死ぬほどややこしくなると直感的に理解した優姫はあえてスルーしつつではあるがそれはそうと。
半泣きで顔真っ赤にして俯きながらエルは話を無理やり切り替える様にして、こう叫んだ。
なんとも、自分を糾弾される事には今回身に覚えが無い優姫は、憮然とした表情でこう返した。
「うーん、私、今日のエルさんより変とは思いたくないし言われたくないけど、なにか変なの?」
「有るわぁ!
…そう、エルがつっこみ入れたのは優姫の私服のセンスについてである。
校章の刺繍がもうボロボロになってくたびれている、いわゆる高校ジャージを買い物や遊びに行く時に着てきてしまうポンコツなセンス。
と言うか、優姫は基本的におしゃれに興味がなく、化粧も適当散髪も1000円カットで私服はほとんど一切持っておらず高校ジャージ三着を着まわしと就活の時に拵えた安い吊しのスーツ一着と言う恐ろしい有り様であり…まあ、元をただしたら虐待から逃げ出すように遠縁の親戚の家に世話になり、以来私物を持つ習慣やぜいたく品を衣類やお洒落につぎ込む習慣がなくなったと言うシリアスな理由ではあるが、いくらなんでも19歳の身空でそれは侘しすぎる。
着飾ってもダメと本人は思い込んでいる節はあるが、優姫は客観的に見て磨けば光る存在だ。
エルは少なくともそう感じており、しかしてエル自身のセンスだけでコーチする勇気はなかった。
飾らないと言うかモノトーンや紺を軸にシルバー系のアクセサリーを目立たない様に散らす感じのおとなしい組み合わせが好きなエルの趣味に影響されると、なんか絶妙に尖ったと言うか…
慣れてる人やお洒落に強い人がするならフォーマルもアウトドアもカジュアルも場所を問わぬ飾らない感じに無難に纏まるカラーセンスが、変に疎い人がダイレクトに影響受けたらシックな感じと言うよりガイアが俺にもっと輝けと叫びそうな遅咲きのイタいパンキッシュな方向に成りそうで、しかも、多分だがそれはそれで変に元が美人なだけに似合っちゃうせいで止められる人が居なさそうだからその方向で私服の趣味が固定されちゃうと、公務員で警官の私服としてはなんとも如何なもんだ…と、なんか親目線みたいな感じでエルは悩んではおり…
しかし、有栖川が基本的にこういう方向では金持ち特有のセンスに慣れすぎていてなんか優姫が手に届きそうもないブランドの服や小物を平気で勧める上に相手が高校ジャージでもアルマーニのスーツでも気にしない豪快な人だからそちらはそちらで全く役に立たないし、木藤は医師としてフリーな時間と言う部分が分かりにくい上に趣味と言うか服の選ぶ基準は似合うかより安いかを重視しがちでそれはそれで目的からしたら役に立たない。
と言う訳で、私服のセンスが華やかでかつフリーの時間を一緒にスケジュールを合わせやすい守屋に白羽の矢が立った…まあ、そういう話ではある。
「…そんな訳で、竜奈お姉さんが人肌ぬいだ訳なのだ!」
と、ふんすっと鼻息あらく優姫に向かってふんぞり返る守屋の姿には…さいですかとしか返し様の無かった訳であるが。
しかし、優姫はそういう事も含めて楽しみであった事は事実だ。
スタンド使いと言うものは得てして孤独で人見知りが激しく…友人が少ない人が多い、そこはエルも優姫も有栖川も木藤もそんな感じだ。
人見知りしやすくても、好戦的ではないだけに人と交流するのが嫌いではない守屋の方がわりと例外ではある。
スタンドとは才能…孤独の象徴とも言える『それ』を見えるか見えざるか、と言う部分はどうしても心の交流には関わってしまいがちであり、またスタンド使い同士でトラブルは些細な事から良く起こるので
だからこそ、優姫にとってはエルや守屋と遊びに行く事が楽しみだった、そう…『だった』のだ。
どうしても、スタンド使いが集まれば本人の意思と関係無くトラブルが起こりがちだ。
そう…
「二人とも!自分を置いてどこ行っちゃったんだよぉぉぉお!?」
To be continued