今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
「あー…うー、お財布が…ほんとにいいの?」
優姫が、珍しくなんとも言えない表情で守屋を上目遣いで見ている。
と言うのも、衣類系のショッピング…でも、守屋なりの『礼』と言う形で私服を選んであげる都合、優姫への服やスカートなんかは守屋持ちでお金を全額出していた。
レディース用の衣類とは基本的に青天井の世界だろう。
もちろん衣類を安く仕入れるなら一着1500円ぐらいからまあ量販店回れば探せばいくらでもある、クオリティを気にしないなら800円ぐらいのシャツなんかもザラだろうが…逆に、一着5万前後以上と言うものも材質や種類を問わずいくらでもある。
スーツなんかに至ってはフルオーダーは10万以上…まあ、適当に見積もっても25万~40万からと言うものも手縫いならあり得る世界だ。着物の類いなら宝石や金の延べ棒をいくら積んで釣り合うかと言う世界になりかねず最早想像もつかない。
有栖川なら、きっと後者の青天井の高級品を悪気無く勧めてしまうだろう。
木藤なら逆に量販店を巡りダサくても1円でも安いものを大量購入するかも知れない…が、守屋はどちらでも無く、そして
一着約2万の若草色と白を基調とした爽やかな色合いのワンピース。
そしてわりとふわふわした感じのクリーム色のこじゃれたシャツと淡いピンクとブラウンのタータンチェック柄のスカートのセット…これも、上下合わせて約1万と4千円。
合わせて3万以上、「社会人ならギリギリ手が出なくはないが普段使いには先ず出さない」と言う絶妙なラインの値段のモノを気前よくプレゼントしたのだ。
これに関してははたから見ていたエルも驚いていた。
まあせいぜい、一着4000円するかしないか程度のもう少し妥協したラインの服程度の品だと思ってはいたからである。
ファッションとかに関しては、どうせ優姫は素人だからと言う部分は見ただけでわかるからだ。
しかし、守屋は言う。
そして、こう返す。
「…貴女は、『本物』を知らないで過ごしてるってのは私もわかるよ、それにまだ未成年でしょ火々里さん。
…おしゃれやお化粧に限らず、多分、貴女は視野が狭いんだと思う。…だから、これはプレゼントだけじゃなくて貴女の人生への実地研修も兼ねてるわ。
…本物の、しっかりしたものも知らず安物で妥協すると、人生いざと言うとき色々扱いに困るの。
…ことわざなら『弘法は筆を選ばず』だっけ、それは
そう言って、気にやむなら昼飯代はおごれ、と冗談っぽい口調に切り替わる守屋は…エルや優姫には、ちょっとならずかっこよく見えた。
大人の背中と言うか…彼女なりの、人生の先駆者としてのアドバイスなのだろう。
…そうだとしても、否、『そうだからこそ』と言うならば、それはそれで二人には眩しく見えたのだ。
「うーん…じゃあ、私と火々里さんで半分ずつだすわぁ、何が良いかしらぁ?」
エルがそんな守屋の言葉に感銘を受けたのか、昼飯代と言う話をうけてやや興奮ぎみな口調で守屋に切り出す。
そして、少し思案げな顔をした後に…こう続けるのである。
「…黒霧島のお湯割りと、たこわさと冷やっこに…後、鮭とば」
「「深夜の居酒屋か!!」」
…守屋は、どうも意外と昼からガッツリ呑むぐらい酒豪らしい上に酒の趣味は若干おっさん臭いようだった。
Case24『三人娘と三人組』中編
「…いや、その…コーヒーとか紅茶の香りがするお店って商売仇だし、あんまり行こうと思わないと言うかウチと比べちゃって…じゃあ、趣味の呑み方かなぁって」
そう、未成年二人にハモるように突っ込まれて守屋はしどろもどろになる。
まあ、喫茶店店員兼店長の一人娘と言う立場らしいと言えばそれはそんな気はする話では有るが…と、エルは前置きした上で、こう呆れるように返した。
「ああ、うん、わかるわぁ…なんやかんや言ってわかる気はするわぁ。
結局、美味しい呑み方って一周回って日本酒に浅漬けとか焼酎にたこわさとかそんなんだけどぉ、こう…
お昼だしこの時間帯多分居酒屋さんもあんま空いてないからぁ、もうちょいおしゃれなお店とまで言わなくても、アルコールは抜きな方向でぇ…」
そう、なんとも言えない呆れた目をして諌めるエルに対し…背後から、なんか殺気が忍び寄る。
それを察知したエルは急に飛び退くと、その殺気の正体は『スリラー』を展開していた優姫であるのだが、それに対して思わず何の真似だと語気を強くして聞く。
そう言ったエルに対し、優姫は無表情なまま
「なぜ、エルさんは
さて…改めて言うのもなんだが、増田エルと言うこの話の主人公、まあ、善か悪かと言うと行動規範や本質的には優しい故に善人寄りかも知れないが根本的にクズな小悪党である。
少なくとも、遵法意識はちょっと薄い。そして趣味かつ特技の料理とかの研究の過程で…まあ、色々舐めたり試飲したりする過程で『覚える』訳である。
まあ、
「やれ、スリラー!」
「痛い痛い痛い痛い!!?ごめ、ごめんなさぁい!?」
…とは言っても、少なくとも現職の警官の前で暴露するべき話題では無いわけで。
流石に本気でやるとスリラーのパワーなら頭蓋骨だろうがトマトみたいにクラッシュ出来てしまうので相当手加減はしているが、スリラーでお仕置きの為にアイアンクローでギリギリと捕まれている様だ。
どうも、この主人公…最近、警官が絡めばダメな様である。
「…話題振った私も悪いけど、増田さんはまだお酒はダメよ?」
「いってないで助けてぇ!?いったい!?これ超いったいってぇ!!?」
…守屋も、まあこれに関しては全面的にエルに非があるので助けてはあげないらしく、まあこんな感じのエルを眺めているだけと言う状況ではあるのだが。
しかし、
と言うのも、優姫があるものを発見したからだ。
警官として…まあ、未成年で飲酒癖があると発覚したダメ人間への警官としての友人への仕置きも大事と言えば大事だが、正直そんなものは何時でもできる。
「Jさん…リーさん…何処だよぉ…」
それは、『迷子』である。
人の良い優姫は、そんなものは見過ごせなかった様だが…
「頭痛かったよぉ…うぇ…守屋さぁん…」
「…よしよし、痛かったね、頑張ったね。
…でも飲酒はまだダメよ?…メッだからね、昼間から呑むとか言い出した私があんまり言えた義理じゃ無いけど、反省してね?」
…と言うか、知るとか知らなかったと言う以前の話の問題で、その時はエルは手近にいた守屋に膝枕されながら泣き付いていたそうな…
To be continued