今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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30話 『因果集う時』

「…まあ、要は我々はアルダーと言う男に負けたのだ、精神的敗北と言うやつさ」

 

有栖川はあっけらかんと、己に降りかかった事案を優姫に告げるなりこうしめる。

それに対しての、優姫の表情も感情も…如何にも、冷静そのものだった。

 

()()()()()()()()、優姫からしたらそれ以上の感情が湧いてこない。

怒りでもなく悲しみでもなく、単純に、ああ仕事が始まるのだな…と言う機械的な感情と言うモノだろうか。

 

有栖川は警察として、言い換えればプロフェッショナルとして行動した末のアルダーによる…見方を変えたら脅迫に屈したとも見える依頼である。

前述の有栖川自身による『負けた』と言う言も、その辺の情けなさに対する自嘲も有るのだろう。

実質的には単に利害が一致しただけの話ではあるのだが、それだけでは済まされないと言うのもある種の大人の世界と言うか社会の枠組みのめんどくささでもある。

そして、肝心の自分は有栖川の部下でありこうした仕事が始まればこきつかわれる側、まあそんな所だ。

次に来る台詞など相場もたかが知れている、彼奴らを捕まえろだの探し出せだの、まあそんな所だ。

 

で、あれば、そもそもプライベートで手に届く範囲の事は無責任にもアマチュアの守屋に投げてしまった責任と言う部分は余計に感じている優姫からしたら、話を全て聞くまでもない。

それに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う状況下なら、まあ予定が少々変更する程度だ。

『目的に対し、子細影響は無し』と言う脳内の冷徹な命令が内心で響いた様な気はしながら、優姫は一言、電話越しにこう返したのである。

…とりあえず、落ち合いましょう、と。

 

 

 

Case30 『因果集う時』

 

 

 

さて…そんな二人の警察や、或いは木藤や守屋の思惑は露知らぬ主人公、増田エル。

視点を彼女に戻して、更に時を三日後…つまり『暗殺』の決行日の夜にまで時間を進めて話を再開しよう。

 

彼女は、あれから三日の間も学校も無断欠席を続け、ずっと家にこもりきりだった。

ほとんど食事もとらず、風呂もまともに入らず、ただ家の隅で震えるように縮こまっていた。

まるで怯える子犬の様だ、何時もの余裕ある冷静な彼女の姿では無い様に。

 

…本音で言えば、今すぐにだって逃げ出したい。

自分より明らかに強い、少なくとも鉄火場馴れしてるだろう二人の暗殺者に狙われるなんて怖いに決まっているし、自慢では無いが嫌なことから逃げ出す逃げ足の早さには自信がある。

冗談抜きで、『レディオ・スター』は他人の視界を共有する追跡調査特化だからこそ、逆に他人の視界から敵の現在地を逆算する事によりルートを構築する事が出来る以上、逃走や回避にだけ絞れば最強クラスの能力では有るのだからなおのことだ。

 

 

とはいえ、エルはそんな能力を使い逃げる気は一切しなかった。

 

 

…仕方ない事だ。

エルの心が、そう訴えている。

 

その答えは『復讐』だから、もっと言えば『カルマ』と言う方が正しいか。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

なぜならば、増田エルこそかつての立花しずくだったのだから、それは精神的スタンスが入れ替わり立ち替わりしてしまっただけの話であろう。

 

少なくとも、エルは立花と言う少女の復讐心を否定する事は出来ない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その時こそ自分は自分で自分の全てを殺すだろう…そう確信すらしている。

 

要は自分のプライドの様なモノだろうか、心の命を守るために、自分の身体の命を捨てようとしているだけ…端から聞いたら無責任極まる態度にも映るかも知れない。

だが、エルにはそう思われる事でも構わないと思っている。

 

…それに、今にも『死神』はやって来た。

自分のちっぽけなプライドの為に殺人鬼に身を投げ出すような、そんな愚かな諸行を思い直すには最早手遅れだ。

 

 

ヒタヒタと、完全に殺されたが故に逆に察知すら出来るような冷たい足音が三人ぶん、エルの邸宅に近付いてくるのが聞こえる。

…『死神』とはいえ、客だ。

せめてもの礼儀として、チャイムを鳴らすつもりも無さそうな彼等に父の遺産でもある実家を万一ドアでも壊されるのを恐れてでもあるが、エルは自分から出迎えてやるつもりで扉を開けた。

 

 

「鍵はぁ…ごめんなさいねぇ、あの時は『鍵は開けっ放しで待ってます』みたいな事いったけどありゃ嘘になっちゃった…三日の間は、流石にやっぱり開けっ放しには出来なかったわぁ。

このご時世だしねぇ、此方から開けてあげる、ぐらいで妥協してくれたら助かるわぁ」

 

そう、家から外開きの扉を開けた先には…

 

「あー、別においちゃんも本当に鍵開けっ放しでどうのとかは考えても無かったから気にしなくて良いけどね」

 

軽い口調で、しかし相変わらず目は笑っては無い笑顔ではあるが…どこか呆れた様な口調で本気な苦笑も交じっているリー。

 

「ほ、本当に、に、逃げなくて…おで、おでは…すま、すまねえ……」

 

一方で、根が義理堅いからだろうか。

逃げることもせず、わざわざ『殺す』と脅迫した上で、しかし誠実に出迎えて来たエルに対して何も言えなくなるJ。

 

…そして…

 

「…嘲笑っているのか?あんた、自分を嘲笑っているのかァッ!!」

 

唯一、感情を爆発させている…

 

「嬉しかったんだぞ!困っていた自分を助けてくれた時、凄く嬉しかったんだ!!

()()()()()()()使()()()()()()からぼんやり気配ぐらいしかわからないけど、それでもあの時はあんたが『スタンド使い』だってわかった時、そのスタンドを使って助けてくれた事は本当に嬉しかったんだぞ!

なのに…あんたの正体を聞かされて、自分はぁッ!!()()()()()()()()()()()

応えろ、増田エルッ!!!」

 

…立花しずく、その張本人が、であった…

 

 

To be continued

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