今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
苦手な方はご容赦ください。
―――嘲笑っている、か。
エルは、立花と言う少女の放つ罵倒が突き刺さっている。
心の奥底に、エルのプライドのさらに深い深い部分に。
立花と言う少女に対して、嘲笑うべき部分は誓って全く無いと先に書かせて貰おう。
エルは、抱えている部分を言語化するとしたら「罪悪感」だの「責任」だの、立花へ向けた感情はそんな類いだ。
…エルは、許されざる過ちを犯したのだから。
仮に「財産を渡せ」と言われたら、立花相手ならそうするつもりだったのだろう。
だが彼女は「やっつける」と言う以上、死ぬか好きなだけ殴られるか、
それ以外、『償う』術はない。
(私は、謝ったりしない。『ごめんなさい』だけは殺されても言わない)
エルは内心でこうごちる。
そう、エルは2つの意味で謝罪だけはしないと決めている。
1つは、エル自身が間違った行動をした結果ではないと思っているからだ。
客観的に見て
少なくとも、彼女だけが謝ると言う事はそれはそれで『筋』が通らない。
筋が通らない事に謝罪しろ、と言われたところで双方納得出来るのか、根幹はそこにある。
それに、エル自身が仮に謝罪したところで、更に言えば事情説明したところで覆水は盆に還らない。
それは、誰にも抱えている感傷だ…エルのような情が深いタイプなら尚更そうだろう。
『納得は全てに優先する』、人の心理だ。
納得出来ない事は永続きしない、そして復讐は善悪問わず納得する為のシンプルな手段の1つだろうか。
そうで有るならば、まだまだ小さな子供でしかない立花の納得の為に、エル自身が言い訳する訳には行かない。
高校生なりの老婆心のようなモノだ、自分がどうするべきかを納得したなりの結論でもある。
「おい、聞いてるのか…なんとか言えよ!増田エル!!」
そう感傷に浸っているうちに、立花の叱責が飛ぶ。
イライラしている様だ…まあ、無理もない。エルはそんな下らない感傷を込めた溜め息を吐き出すと、立花に向けてこう返した。
「そうねぇ、聞いてるのかって言われたら聞いてるわよぉ。
ふふふ、まぁ、ねぇ…
そう、ねめつけるかのような視線を立花に向けると、それに怒りを込めて返すかのように立花は私だ、と返すと
Case31『鋼の玉、鋼の剣』
…さて、本編から少し本題から離れてしまうのだがご容赦頂きたい。
世界中、アジアからアフリカ、北米から南米のアメリカ大陸にヨーロッパ諸国にミクロネシア連邦やカリブ海の諸島国家に至るまで、『国家』とは興隆の歴史であると共に滅亡の歴史でもある。
イタリア半島にも、『かつて存在した国家』である滅亡した国も幾つか存在しており、そこの中に『ネアポリス』と言う小さな王国があった事はご存知であろうか。
イタリアと言う巨大な国家に統合されるまで、その国はある種の決闘裁判や貴族主義が横行する中世の様な価値観が色濃く残っていた地方国家では
そこでは、若者だった女がある日突然老婆になったと言う。
左半身が、一時的に消滅したと言う。
様々な職業の者達が操る『それ』は、多種多様な不可思議な効果を見せつけていく。
科学者でも錬金術師も魔術師も解明不可能なその『技術』、それを人はそのままに『鉄球』と読んでいた。
だが、武装や護衛手段としてはより扱いの習熟が簡単な銃器の発達による射程距離と威力の進化の影に隠れていく。
処刑手段としては、世界一の奇人であり偉人の一人であるトーマス・エジソンがニコラ・テスラへのカウンターたる交流電流へのネガティブ・キャンペーンとして発表した電気椅子をはじめとして、絞首台やガス室など形は様々だが
しかし、そもそも『鉄球』とはなんなのか。
それは『超人』…つまりは『スタンド使い』の力を技術で擬似的に再現し、そしてスタンド使いに近付き或いは超えるための純粋な意思こそが根幹にあり、司法だの決闘だので人を殺すだのどうだのは本来的には余分に過ぎないハズだ。
で、あるならば
それに、例えば漁師が魚を取り、仲買業者が漁師から魚を買い取り、そして仲買業者からコックが魚を買い取る事で漸くレストランの皿に魚が上がるように…果たして、鉄球の技術とは、と言うよりは『鉄球を製作し、市場へ卸す技術者』の存在は果たして存在しなかったのであろうか。
答えは『否』である。
鉄を自在に加工して、パトロンたる貴族へと鉄球を卸す技術者は確かにいたのだ。
しかし、例えばマイセンの白磁を初めて造った技術者は一生を城に幽閉され軟禁を余儀無くされた様に、本来的には彼等もまた表に出る事はなかったのであろう。
だが、肝心要なネアポリスと言う貴族を担保していた国家そのものが崩壊したのならば、その技術者だったとて世界に散らばってしまったとしてもおかしくはない。
紐づけされていたネアポリス自体がなくなったと言うならば、或いはアジアの極東に、日本に…そういった末裔がそこにいておかしい理由こそ何処にあるだろう。
立花しずく、彼女もその一人だ。
ネアポリスの死刑執行人達が一人前になるまでの練習用の『無限の回転のスケール』が描かれたインゴット、そして鉄球そのもの。
それを受け継いだ少女であり…しかし、所詮は本来的な死刑執行人ではなく技術屋の方の成れの果てでしかない。
かつての死刑執行人達は、例えば空に舞う蝶や鳥、道端に咲く草花、降りしきる涙雨や雲の形を見てその回転を容易に発動し…その無限の不可思議を以て様々な奇跡を見せたと言う。
そんな話を、彼女はひいじいさんやひいばあさんが生きていた頃に何度か聞かされていた。
だが、立花と言う少女が出来る事など『無限もどき』、バックルを必死に観察し回して投げたところで大したことは出来ない。
ましてや、子供である事以上に、立花自身に大した鉄球使いとしての才覚はないのだ。
如何にスタンド使いに近付いたところで、結局は、視る事すら出来ずスタンドを感じとるのが関の山。
『近づく才能』すら欠けている、回せるだけで奇跡の様なモノだ。
…復讐と言う執念が、それを実らせたと言う話でも有るのだが。
それでも、『回転させて投げつけるだけ』ですら相応の破壊力はある。
大型拳銃程度の貫通力や殺傷力は確かに有るのだ。
少なくとも、急所に…はらわたにでも投げ付ければ、即死は難しくともきっと致命傷は免れない。
(…あの女は、何故か避けるつもりがない)
立花は、否、Jやリーですら全く同じようにエルを観察しながらこう感じている。
(それでも、それならそれで構わない……)
立花の右手の鉄球はいつしか十二分に回転力をあげ唸りをあげて空気を震わせていく。
「くたばれッッ!!」
立花は年齢的にはまるで小学生程度の少女とは思えないぐらいに憎しみと怒りがこもった怒号を上げながらその右手を振り下ろす。
そして、放たれた時速150キロ以上は出ているのではないかと言うその鋼の豪速球。
当たれば、それは致命傷は免れないだろう。
ましてや、エルがかわしたり防御するそぶりは全く見受けられなかったのだから。
…だが、それがエルの体を貫通する事は、決してなかった。
「…今度は、私だって貴女の力になれるから。だから、死なせはしないッ!」
見えざる剣、守屋竜奈がいきなり姿を現し、エルに飛んできた鉄球を打ち返したからである…
To be continued
『鉄球』
破壊力:C
射程距離:C
スピード:C
精密動作性:D
持続力:E
成長性:E
(A:超スゴい、B:スゴい、C:普通、D:苦手、E:超苦手)
スタンドではなく『スタンドに近付く為の技術』の1つ。亡国ネアポリスでかつて栄えた技術。
技術の使用者ではなく鉄球を製作していた人間の末裔が、才能が無いなりに必死に再現した技術でしかないので劣化に劣化が重なり『模型のスケールが書かれたインゴットを見ながら回転させて投げつけるだけ』の単なる投擲武器でしかなくなっている。
本来的な技術であれば、例えば鉄球による無限のエネルギーを応用する事で肉体を若返らせたり老化させたり、高質化させたり活性化させたりとまさに人間を変幻自在に操り「苦しみ無く処刑する」事に特化させた鉄球の技術であったらしい。
だが、才覚はない立花はそういった事はできないし、あくまでもそれは処刑人が継承する秘密でしかないので彼女はこれからもそういった不可思議の高みに辿り着く事も…ひいてはスタンド使いになることもこれ以上近づく事すらも無いだろう。