今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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34話『カーペンターズ』その③

さて、Jが脳内でそうこう考える内に…エルは精神的な部分で、だいぶ立ち直っていた。

 

良くも悪くも、元々優しい人間だ。

自(・)分(・)に(・)も(・)優(・)し(・)い(・)、(・)し(・)か(・)し(・)そ(・)れ(・)以(・)上(・)に(・)他(・)人(・)に(・)優(・)し(・)い(・)。

増田エルという少女の本質はそこにある。

 

それ故に悩んでいた、エルの行動が結果論として立花しずくの母親を奪った事に対する負い目があるのだから。

直接的に、例えば首を締めたとか毒を飲ませたとかではない。立(・)花(・)の(・)親(・)を(・)奪(・)っ(・)た(・)の(・)は(・)結(・)果(・)論(・)だ。

それはそうなのだが、それでも立花の苦しみや悲しみは理解出来ないわけではない。

少なくとも、自分に向けた復讐心は決して逆恨みとは言い切れない。

しかし、では何も言わずに『討たれる』討たれる事は正しいことなのか。

そう優姫や守屋に問い詰められて、確かにそれも正しくないと悟る…としても、自分自身だけでは、どうしようもない。

 

エ(・)ル(・)は(・)人(・)の(・)顔(・)色(・)を(・)伺(・)う(・)の(・)が(・)得(・)意(・)だ(・)。

長年のあいだ推理力と観察力を高いレベルで欲求され続けた自分のスタンド能力『レディオ・スター』を操る中で後天的に身に付けた、強い人や媚びを売るべき相手の表情を知る能力をフル回転させながら様子を伺う。

そして、Jという強面の青年だけは、どうにもやる気が薄いと…直感的に悟る。

 

エルからしたら、彼が悩んでいる理由はわからない。

だが、少なくとも、切り崩しにかかるならソコからいくしかない。

とはいえ、言葉を交わしてそれが説得となりうる事に繋がるのか、と言うと…きっと『否』なのであろう。

良くも悪くも自分や木藤そっくりな、根が情の人故に板挟みになると苦しみ、そして情や本心と言う部分の類いより使命感や約束を優先してしまうタイプの人間だとエルは直感的には理解していた。

 

 

で、あるならば。

交(・)わ(・)す(・)の(・)は(・)言(・)葉(・)で(・)は(・)な(・)く(・)精(・)神(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)、ぶつけるべきは、スタンド。

エルはそう思い、スタンド『レディオ・スター』を展開するのだ……

 

 

 

Case34『カーペンターズ』その③

 

 

 

 

「ス、スタンドを、だ、出したか…ま、増田エル」

 

Jは見たままにエルの背中を守るように浮かぶそれの姿を仰ぎながら呟きつつ、完全にスタンドと同化して変身したその右手をそのスタンドに向けてかざす。

 

『カーペンターズ』

まるで漆黒の焼けた鋼で出来たようなビルドアップされた元々のJのボディを、さらに金属質で出来た様なスーパーロボットの様に屈強な姿に変身させるが如く皮膚や筋肉と同化するシルエットのスタンドではあるが…スピードは大して強化はされない。

ただし、自身のスタンド能力ではある『空気を固める能力』は1立方m、つまり1mの3乗の体積までであれば自在にその姿形を直方体または立方体の形として調整できる。

形(・)成(・)す(・)る(・)直(・)方(・)体(・)の(・)一(・)辺(・)は(・)必(・)ず(・)2(・)0(・)c(・)m(・)よ(・)り(・)長(・)く(・)な(・)い(・)と(・)い(・)け(・)な(・)い(・)と言う縛りはあるので、その能力の射程距離は面で絞れる面積が20cm×20cmとして最長25メートルまでしかないが、少(・)な(・)く(・)と(・)も(・)今(・)の(・)増(・)田(・)エ(・)ル(・)の(・)身(・)に(・)届(・)く(・)距(・)離(・)ではある。

それを一瞬で形成し、つっかい棒のようにぶつけ…本体かスタンドの方かどちらでも構わないが、額でも頸でも好きな急所にぶつけたら、エルも再起不能は免れない。

 

心を鎮め、その手をエルに向けて狙いを定めようとして…Jは、否、リーも驚愕していた。

 

 

 

「なっ…!?あの婦警のスタンドに、乗り合いタクシー引っ掻けるみたいに増田エルのスタンドが乗ったッ!!?」

 

リーが代弁するかのように声をあげた様に、エルの『レディオ・スター』が何故か優姫のスタンド『スリラー』の上に乗る…と言うよりは、正確に言うならば米俵を担ぐように肩口に乗せられていた。

それだけではない。

そのエルの姿を見届けるや否や、何(・)故(・)か(・)守(・)屋(・)が(・)思(・)い(・)切(・)り(・)鯖(・)折(・)り(・)か(・)で(・)も(・)エ(・)ル(・)に(・)極(・)め(・)る(・)か(・)の(・)様(・)に(・)力(・)い(・)っ(・)ぱ(・)い(・)抱(・)き(・)つ(・)い(・)た(・)のだ。 

そんな奇妙な連携…わざわざリーが声をあげてわざとらしいリアクションで驚いたのは、実はそれ自体は立花の為だ。

 

リー本人は驚きこそすれ、ス(・)タ(・)ン(・)ド(・)使(・)い(・)が(・)奇(・)妙(・)な(・)行(・)動(・)や(・)奇(・)妙(・)な(・)連(・)携(・)を(・)い(・)き(・)な(・)り(・)し(・)だ(・)す(・)ぐらいの事でまるでお化け屋敷に初めて入った子供の様に心底腰を抜かすとか、まるで肩口がぶつかっただけで煮えたぎる油に火を着けたがごとく烈火の様に怒りだすなんて三下臭いリアクションなぞ取るわけがない。

が、それはそれとしてだ。見(・)え(・)な(・)い(・)相(・)手(・)に(・)状(・)況(・)を(・)伝(・)え(・)る(・)に(・)は(・)『(・)ボ(・)デ(・)ィ(・)・(・)ラ(・)ン(・)ゲ(・)ー(・)ジ(・)』(・)か(・)『(・)言(・)葉(・)』(・)に(・)よ(・)る(・)リ(・)ア(・)ク(・)シ(・)ョ(・)ン(・)が必要となる。

 

特に緊急性の高い事案は、より驚いた人物のリアクションを見ると自分はかえって冷静になりどうしたらいいか分かりやすくなる、要は岡目八目とでも言うべきか。

そういう頭の回転はリーは早い、要は役者なのだ。

そんな彼の意図を汲んでか、立花も冷静に鉄球を構え様子を見る……そんな最中の事、だ。

今度は次の一手でリ(・)ー(・)た(・)ち(・)は(・)心(・)底(・)の(・)意(・)味(・)で(・)驚(・)愕(・)せ(・)ざ(・)る(・)を(・)得(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)た(・)のである。

 

 

「ふふ…準備完了よぉ?」

 

エルは、優姫の顔をちらりと見て小声で呟くと、優姫は無言でうなづくなり『(・)ス(・)リ(・)ラ(・)ー(・)』(・)で(・)『(・)レ(・)デ(・)ィ(・)オ(・)・(・)ス(・)タ(・)ー(・)』(・)を(・)リ(・)ー(・)や(・)J(・)た(・)ち(・)に(・)向(・)け(・)て(・)投(・)げ(・)た(・)のである。

 

 

…さて、以前にも書いた様に近接パワー型による『投擲』は基本中の基本だ。

それこそ大質量の煉瓦や瓦礫でも、まるでメジャーリーガーの火の玉ストレートがごときスピードで投げる、と言う事もできる。

しかし、では、仮(・)に(・)質(・)量(・)の(・)無(・)い(・)も(・)の(・)を投げる事は出来ないのかと言うとそれは当然ながら『否』だ。

スタンド、質量を持たぬエネルギーの塊、それ自体の投擲。

それは当然シャーペンの芯を子供の力でへし折るぐらいに易々と『可能』であり、そ(・)し(・)て(・)『(・)ス(・)タ(・)ン(・)ド(・)』(・)と(・)『(・)本(・)体(・)』(・)は(・)付(・)随(・)す(・)る(・)関(・)係(・)が(・)あ(・)る(・)。

 

言い換えれば、『スタンド』を投げつけられたら『スタンド使いたる本体』も付随して吹っ飛ばされる。

視点を変えたら、それ即ち『スタンドを利用する高速移動』を擬似的に行えるのだ。

 

 

と、要はスタンドと本体の不可逆な位置や射程距離の概念を悪用して逆手にとった高機動。

ビュンと、風切り音がなるようにスタンドごと突撃してきたエルとついでに守屋の姿に…対するリーやJはあっけにとられるが、そこで意外な人物が瞬時に対応する。

それは、立花だ。

 

(…なんか良くわからないけど、鉄球を喰らえッ!喰らってスイカ割りのスイカみたいに真っ赤な臓物ごと爆ぜろ増田エルッ!)

 

そう内心で吠えながら、全力で鉄球を投擲する立花。

まるで、小中学生程度の年代風情の子供が投げつけたとは思えないぐらいのスピードで投げつけられたその鉄球は…ギャンと言う高い金属音と共に空中で真っ二つに両断され飛散する。

 

それが何故か、立花だけは絶対に見えないそれは、守屋のスタンド能力『ステルス・オブ・デイズ』による一閃。

し(・)か(・)し(・)、(・)そ(・)れ(・)は(・)守(・)屋(・)の(・)迎(・)撃(・)で(・)は(・)な(・)い(・)、彼女のスタンドの他にない特性によるもの。

 

 

スタンド能力と言うと、それは千差万別であり、無機物や武器の様なデザインのスタンドは守屋のみならず確認されている。

日本刀や拳銃や釣竿、鉄塔と同化したものや漫画本やスプレー缶。

 

それらのほとんどに共有する特性として人型や動物型のスタンドには全く異なる性質がある。『他人に貸与可能』と言う一点だ。

スタンド能力は1人1人がそれぞれ持つは1能力、そこに例外は無い…が、あくまでも自分の能力、だ。

 

自分の能力を他人に貸す、或いは他人から借りる。

無機物型のスタンド能力は、そういうシェアの能力の特性すら秘めている。

その意味では闘争心が薄い守屋があんな殺傷力の塊みたいなスタンドに目覚めた理由と言うのも、逆に『らしい』とすら言えるかも知れないだろう。

『危険から身を隠す』だけでなく『他人に守る力を貸す』、そういう才能が元々あったとして全く違和感の無い優しい女性なのだから。

 

『ステルス・オブ・デイズ』はその能力をス(・)タ(・)ン(・)ド(・)自(・)身(・)に(・)の(・)み(・)向(・)け(・)て(・)透明化処理を施し、そのスタンドを『レディオ・スター』に持たせ、それを『スリラー』の馬鹿力で二つのスタンドごと投擲する。

エルのスタンドは射程距離が長い故に、実はエルのスタンドだけ投げてもエルは追随してくれない…が、スタンドの射程距離が1mも無い守屋は話が別だ。

最初から言った通り、スタンド能力は質量が無い故の二人まとめて吹っ飛ばす『裏技』の合体攻撃。

 

 

「お、おおおおおッ!!!?『カーペンターズ』、ば、バリアを張れぇぇぇ!!?」 

 

Jはそのヤバさに気付き、あわてて『スタンド』によるバリアを張るが…も(・)う(・)遅(・)い(・)。

 

守屋のスタンドは、その気になれば子供が軽く振り回すだけでも地面を数mは切り裂きコンクリートすらバターの様に切り裂ける能力だ。

それを仮(・)に(・)パ(・)ワ(・)ー(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)は(・)ベ(・)ニ(・)ヤ(・)板(・)を(・)割(・)る(・)の(・)が(・)関(・)の(・)山(・)な(・)パ(・)ワ(・)ー(・)で(・)も(・)時(・)速(・)6(・)0(・)キ(・)ロ(・)近(・)く(・)出(・)る(・)ス(・)ピ(・)ー(・)ド(・)で(・)振(・)り(・)下(・)ろ(・)さ(・)れ(・)た(・)ら(・)ど(・)う(・)な(・)る(・)か(・)。

 

少し脱線するが、Jの『カーペンターズ』は、文字通り『大工』と言う意味から付けたスタンドである。

それは空気、その中でも窒素をまるで鉄筋コンクリート並の強度に一瞬で固めて自由自在に形を整える様から名付けたスタンドだからだ。

逆に言えば、その窒素のバリアの強度は鉄筋コンクリート程度の固さしかない。

 

た(・)だ(・)接(・)近(・)戦(・)の(・)攻(・)防(・)を(・)す(・)る(・)な(・)ら(・)ば(・)、(・)そ(・)れ(・)で(・)も(・)充(・)分(・)な(・)強(・)度(・)の(・)壁(・)を(・)産(・)み(・)出(・)す(・)ス(・)タ(・)ン(・)ド(・)能(・)力(・)である。

だが…

 

「うォォォアアアアアラァァァア!!ぶった斬れ、『レディオ・スター』ァァァア!!」

 

エルの怒号と共に放たれた『レディオ・スター』に持たせた『ステルス・オブ・デイズ』による一閃と共に、Jはバリアを破られ深く袈裟斬りに切りつけられたのだ…

 

 

To be continued

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