今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
「一つ、謝らないといけないわ」
エルと立花が謝罪し合う中で、横から嘴を挟むのは優姫である。
彼女はこう続ける、『嘘をついてしまった』と。
木藤がそれに対して聞き返すと、優姫はそちらには目もくれず立花の方を見据えると…少し腰を落とし目線の高さをそろえつつこう答える。
「私は、貴女に『気持ちがわかる』…なんて言った。言ってしまった。
如何にキミを落ち着かせようと無意識に吐いたとはいえ、失態よ。
私だけは、キミに多重の意味でそれを告げる資格はないの」
そう言って一拍おくなり彼女なりに言葉を続ける。
曰く、こういう主張であった。
「一つは、私は警察だから。
そもそもきちんと私達、公僕が確りしていたら…エルさんがキレて憎しみのままに行動をする事はなかった、ひいては貴女のご両親を間接的とはいえエルさんが奪う事態にはならなかった。
当たり前って言えば当たり前なんだけどね、そもそもが責めるなら私達警察にだって『責められる筋』はある…
そして、それ以上に感情論。
そう言って…自らのトラウマに自ら触れ泣きそうにはなりつつも。
それは堪えながら、最後はこう〆る。
「私はね、元々はシングルマザーの子だった。
父親が別の女に惹かれて別れたとか会社の金に手を出してクビになって不仲になったとか色々母親から聞かされたけどね、真偽はわからないけど父親が原因で上手くいかなかったのは事実なんだと思う。
そして…
だけど、再婚を期に…私が、心底邪魔になったんでしょう。嫌いな男の面影が、私を見るたびに思い出させるわけなんだし再婚相手からしても血の繋がらない私を愛する義理も世話する意味も感じられなかったんだからね。
それで、胸糞悪い虐待が本格的に始まった。
学費も給食費すらも払わず学校に行かせてもらえないまま…生ゴミの入ったゴミ箱に顔を突っ込まれて汚物を食わされた事もある、火で炙った金属の棒かなんかで理不尽に背中を叩かれたアザもつけられた事も…
挙げ句、しまいにはエスカレートして眠ってるスキにビニール紐とガムテープでぐるぐる巻にされて押入れに突っ込まれて餓死か窒息死するように殺されかけたわ。
スタンドに目覚めなかったら、『スリラー』が居なくて有栖川さんに助けて貰えなかったら、私は死んでいた」
そう、優姫の余りにも凄惨かつ壮絶な過去をいきなり聞かされ…
周りの人間は目を背けたり視線を落としたり、感受性が強い守屋に至ると半泣きになりかけてはいたが…そんな自分語りをした優姫にあえてまっすぐな視線を向けながらエルは聞く。
結局、何が言いたいのかを、だ。
それに対し、優姫はこう返す。
「…結局、私は親に愛された訳ではないの。
そして私はあんな酷い親を一生許すつもりもない…だから、私はまだ親子の愛を心からは理解できない。
そんな私は『親子愛』を芯に一生懸命な立花さんを語るのは
公正さって、きっとそういう事だと思うから」
そう哀しそうな口調をしながら…しかし痛々しい笑顔でごまかす彼女に対し、そんな事はない!と強い声が響く。
それは、立花からであった。
「『侮辱』だ、なんて…そんな事はない!
だって、だって…
増田さんだって、婦警のお姉さんだって…私に寄り添って、考えてくれてる。それだけは伝わるんだもの!
それって本当に優しいって事じゃないか、すっごく、みんな…すっごく…
…自分は何も出来てなくて逆恨みしかしてなかったのに…なのに、なんでそんな悲しい事言うんだよお姉さんは…」
そう言いながらポロポロ泣き出してしまう立花を頭を撫でて慰めながら、優姫はこうぼやくように言う。
「…なんとなく、立花さんが可愛がられるのもわかる気がするよ、もう。
ほんと不器用というかクソ真面目で良い子というか…幸せになってほしいと冀う、というやつかなぁ。
ごめんね、余計なことして泣かせるつもりでもなかったのに」
と、そんな彼女たちの光景を見ながら…いきなり、低い声が響く。
それは、唯一の男であるJのものである。
そして、公正か、とつぶやくなり彼はこう語りだすのだ。
「か、隠し事は…こ、この際無しにしよう。
あ、相棒の、の、能力の話だ…お、おでが、おし、教える」
そういきなり言われた木藤がJに対して質問する。
どういう心境の変化であり、そして何を考えているのか、と。
それに対しての彼なりの返答は、曰く要約するとこういう事だ。
相棒ことリー・ファンはもともと『子供の頼み』だけは断れない。
プロフェッショナルらしからぬアキレス腱というか、そういう精神の根幹をなす感情に対して非常に頑なである…
そして、変に事前に伝えたらそれがブレては仕事はおろか私生活すら支障をきたしかねず『逆恨み』という事情をリーにもうまく言えなかった。
そして
最低な裏切り行為だとしても…この場にいる皆にも、そしてリーにも死んでほしくないからだ、と。
そう聞かされた守屋は単刀直入に聞く、どんな能力なのかを、だ、
Jはそれに、簡潔に答えた。
「こ、『殺す能力』だ。そ、それ以上でも、それ、それ以下でもない」
Case38 『ゴー!ウェスト!』その1
-同時刻、増田邸内-
「しっかしこら…立派な家だねぇ」
エルの宅邸に不法侵入して身を潜めるリーは、ふと全体を見渡しながらため息混じりにこうひとりごとを漏らすが、気合いを入れ直すようにふるふると頭を振るとこう内心で続ける。
(この立派な家をしずくちゃん家族の…いや、大勢の人たちの不幸で維持してるってんなら、それは許すわけにゃいかねぇ。
増田エル…なんか、聞いてたより全然悪い子じゃ無さそうだったのが気がかりだが、それでも相棒がやられたんなら俺がやるしかねぇんだ!)
そう内心で吠えるなり、ポケットに彼はおもむろに手を突っ込むとロケット式のペンダントを取り出す。
そこには2枚の写真がいつもあり、彼に無限大の勇気をくれる。
1枚はJとしずくと3人で映るように撮ったホームバーベキューの時の写真。
焼けた肉を慌てて頬張り火傷しそうになる間抜けな自分と立花と、そんな二人をやや呆れながらも楽しそうに素の表情で見つめるJ。
和やかな、『仲間』の写真。
そしてもう一枚…今度は釣りの写真。
自慢げな表情でアジだかサバだかを釣り上げる少女と、それを褒めるような表情で拍手する30代なかばぐらいの白人女性と20年ぐらい前の若い自分の姿の古ぼけた写真。
「『ゴー!ウェスト!』は絶対に勝つ!!」
To be continued