今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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42話『ゴー!ウエスト!』その⑤

背中側の扉の隙間から煙が現れモクモクと上がりながら広がり、何かしら焦げた匂いが充満しだす。

エルはそのような場面に直面し…そして、思考を加速させる。

 

(火の回り…熱、そういったものは感じられない。

『火を付けた』と一瞬思ったけれども、その手のトラップとはどうも違うッ…!?)

 

と、頭を冷やしながら結論を付ける。

 

(おそらくは発煙筒の類い、或いはガス管の類いなのでしょう。

火の手で焼き殺すという手段より、けむりで充満させていぶり殺す算段なのかも知れない。

焼ける匂いをつけ相手を慌てさせながら、実は『毒ガス』で毒殺したり、酸素濃度を下げて窒息死あたりを狙う。

ブービートラップとしては『いかにも』というネタねぇ…

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

そうアタリをつけるなり、エルは自らのスタンドを盾の様に正面に召喚して構え廊下のトビラを開け突撃すると、一直線に走り『出口』になるガラス戸へと向かう。

どんな罠でも気にせず一直線に迷わずに…と、その姿はまるで疾風の様だ。

そして、バン!と勢いよく出口になるガラス戸をスライドさせたその瞬間。

 

ドカァァァンという轟音が数発鳴り響き、文字通り地雷として仕掛けられた小型爆弾が爆発したのである…

 

 

 

Case42 『ゴー!ウエスト!』その⑤

 

 

(思ったより呆気なかったな)

 

リーは『隠れ場』から、内心でごちりながらこう続ける。

 

(ガラス戸に仕掛けられたセンサー型地雷、安全装備を外したあれはガラス戸に一定の振動が加われば即座に起爆する仕組みになっている。

こっちがスイッチを押すまでもない、開いたり蹴破ろうとすれば爆破の餌食になる)

 

と、爆音を聞いたリーはさらに言葉を内心で紡いでいく。

 

(もちろん俺が巻き込まれない様に設定してるものだ、その地雷の威力はそうでも無いからそれで即死はおそらくは無い。

だが、あの分ならば手足の一つや二つは吹き飛んでおかしく無いだろう。

あとは毒ガスに捲かれて死ぬならそれで良し、万一死に損なって居るならば俺の『ゴー!ウエスト!』で介錯すればそれはそれで良し。

何れにせよ、今は慌てる必要はない…) 

 

そうじっくりと構えながら自らのスタンドを展開し装着する。

 

 

さて、ここで少し話が飛んで申し訳無いのだが。

『運命』というものに、それ自体がエネルギーをもつ物ならばそれはどれだけのシロモノなのだろうか。

例えば風水や占術という一見したら胡散臭いものではなく、もっとプリミティブで根本的な話だ。

 

運命とは即ち、『時の流れ』とも言い換えていい。

そしてモノの本によれば、時間とは実は短く誰にも認識できない瞬間瞬間が連続して繋がっているだけのものなのだそうだ。

逆に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

或いは『ゴー!ウエスト!』はそれをごく限定的に恣意的に歪める能力と、そう考えてもいい。

 

ならばこそ、それを操る彼のスタンドは実は『探知』に使うことも出来る。

これは立花はおろかJにすら明かしていないスタンドの秘密にして切り札だ。

 

人間の持つ寿命、すなわち『運命のエネルギー』。

それを探知して死角にいる人間を探し出す、彼のスタンドは戦闘能力を極限まで犠牲にした事と引き換えに暗殺能力を極限まで引き出したスタンドなのだ。

その探知範囲は3メートル程でしかないが、室内という空間に於いてのみならば絶対的なアドバンテージとして機能するだろう。

 

 

そんな彼は『隠れ場』からサーチすると…すぐに把握した。

自分からみて2時の方向、だいたい2メートル半先。

ガラス戸の近くで動こうとしない、そういう『運命のエネルギー』が固まっている。

 

(おそらくは、爆破に巻き込まれて動けなくなったか…蹲ってるようだ、骨でも折れたか足でも吹き飛んだみたいだな。

カワイソーだとは思うが、悪く思うな。

今すぐにでも、俺の『ゴー!ウエスト!』で楽にしてやる!)

 

そう内心で吠えたリーは、慎重に気配を殺しながら敵を射程距離内に収めようと近づいていく。

5センチ…10センチ…と刻みながら慎重に、まるで獲物を捉えたカマキリの様な歩調で近づいていき…

 

(勝った…!死ねぇ!増田エル!

恨みは無いが、これで終わりだァッッ!!)

 

リーはそう、内心で勝ち誇った…まさに、その瞬間だった。

 

 

「勝利を確信した時、人間って『敗北』しているものよぉ。

煙で燻そうとした瞬間に把握したわぁ、貴方は十中八九()()()()()()()()()()()()

 

と、エルの声…否、スタンドの声がリーの眼前に響くと、瓦礫のようなものを持った『レディオ・スター』がガツンと彼の側頭部を殴りつけていく。

いかに『レディオ・スター』がパワーの無いスタンドであろうと石で殴られてはたまったものではなく…つい、たまらず『隠れ場』から顔を出してしまった、その瞬間であった。

 

「チャーオ!亀さんもついに根を上げた、そんなとこねぇ。

ま、だいたいハナから予想だけはしてたわぁ、()()()()()()()()()()()()()()

『私の位置は常に把握しないといけない』、『トラップに巻き込まれてはいけない』、『万一バレたとしても逃げられる位置に居ないといけない』…その条件を考えると、2点しかない。

一番上か下に陣取る事、つまり天井か…『軒下』」 

 

と、エルは勝ち誇った様な表情で語りながら、こう続けていく。

 

「煙だけが『モクモク広がった』時点で『天井』も除外したわぁ。

おそらく、発煙装置かガス機器から放たれたガスがモクモクと拡散して上を向いて広がるという事は、その煙は空気より軽いガスが正体って事。つまり逆説的に()()()()()

仮に安全装置を持ち込んだとして、例えば後先考えず火をつけたり何らかの故障でマスクなんかが機能しなかったリスクを考えると天井にじっと潜むのは自殺行為過ぎるもの。

それに煙を炊いてトラップハウスに侵入したら自分の罠で自滅するリスクもあるものねぇ」

 

そう、推理を披露するなり、最後にこう付け加えて〆た。

つまり軒下に潜んでいる事は確定でわかっていた以上、ガラス戸さえあけて庭にさえ出れたなら私の勝ち。

そしてそこに罠があるのは目に見えていた以上、スタンドにあけてもらったら流石にダメージは受けたが本体は爆破に巻き込まれず済んだ…と。

 

「…勝ち誇るのはまだ早いだろう!

おいちゃん…俺が…まだ何の策も尽きたとでも…」

 

対しリーは顔だけ軒下から出してる一見間抜けな姿ではあるが、そう睨めつけながら吠える。 

その腰にはサイレンサー付きのデリンジャーが構えられている。

一瞬でもスキを作りさえすれば、この体制からだって射殺だって出来る構えだ。  

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ええ、貴方が何かしらの罠を今でも張ってるのはわかってるわぁ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

と、『レディオ・スター』は手に持っていた瓦礫のようなもの…否、リーが用意した発煙装置を掲げると、エルはこう続けるのだ。

 

「もしかして、とは思ったわぁ…『あの装置は動力源は何だろう』って。

結構なガスの量が入る発生装置で、遠隔操作型のハズだから単純な構造じゃなくて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってねぇ。

スタンド向かわせたらビンゴだったわぁ、わかりやすく手動のオン・オフのスイッチがあった。

『レディオ・スター』は細かい作業はできないしパワーも無いけど、スイッチの切り替えぐらいは出来るもの。

そして、重量的に()()()()()()()()()()()()()()()()()…貴方のスタンド、呼吸の為の穴か何かはあるのでしょう?

その意味、わかるわよねぇ」

 

と、エルが言いたい事に気付いたリーは顔を青ざめさせながらエルに聞く、まさかガラス戸の手前で動かなかった理由は…と。

 

「そ、私のスタンドに時限装置を取りに行って貰うまでのただの時間稼ぎよぉ…

聞きたいことはそれで終わりかしらぁ。

そして貴方は次に、『やめろ、それだけは!』と言うわぁ」

「やめろ、それだけは!…ハッ!?」

 

そんな伝統文化の様なやり取りをリーと交わしたエルは、一言こう続けるのだ。

別に、やめてあげても良いわよぉ…と。

 

 

To be continued

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