今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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43話『リーの過去、リーの想い』

「そうねぇ…先ずは、話に間違いが無いか、確認の為にも()()()()()()()()()()()()()()()()

 

エルはそう眼前のリーに向け、こう語り出す。

それは、リサ・アマーシアというリーの最愛の女の物語とリー自身の事だ…

 

 

 

 

 

 

CASE43『リーの過去、リーの想い』

 

 

 

 

 

 

リサ・アマーシア。

彼女は、ティーンエイジャーの頃は『ド派手』な女であった。

趣味は夜遊びと化粧と男漁り、処女なぞローティーンの頃に既に捨てた。

それに対して特に悲しい動機なぞ無い、ただ当時はいわゆるジョック(アメリカのスクールカースト最上位の事)でも人気者のアメフト部のラインバッカーだった男に誘われたから寝ただけ。

それ以降その手の経験なぞ十数回はある。

そんな、普通の中流家庭に生まれ育った人より顔が良いだけの尻の軽い女。

彼女を一言で著すなら、そうとしか言えないだろう。

 

リサが役者の道を選んだのも何となくだ、友達が勝手に出したハガキがタレント事務所の目に留まった。

それがきっかけでズルズルとそちらの道に入り、そして『そういう世界ならば金持ちやイケメンが山ほど寄ってくるだろう』という打算が八割ぐらいのモチベーションでキャリアを積み始めた不純な女だ。

当然、そんな動機で始めても真面目にやっているもの達からしたら見透かされて、その態度を怒られてもバカにされてもヘラヘラしている…役者を舐めたろくでなしのクズ女、それでしかなかった。

付き合う肝心の男とも中身の薄っぺらさからか長続きしない、若さを切り売りしてるだけの生活に溺れていたのだろう。

 

そんな彼女の転機になったのは二十歳になってすぐぐらいか、いきなり警察が自宅の家宅捜索に入りリサも勾留されてしまったというとんでもないスキャンダルが発覚してからだ。

罪状は『違法なヘロインやLSDの所持』、つまり麻薬捜査の一環。

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しかしリサは全く身に覚えがない。

人より男遊びは派手だったが悪いことなぞ神に誓ってそれぐらいだ。

彼女は肝臓がかなり弱く薬物やアルコールに対して強いアレルギーが有るのに、麻薬の使用なぞ出来るわけがない彼女が持つ意味が全く無い。

売人だとしても肝心の売りさばく先を知らない、つまり『麻薬を持てない者が阿片窟が如く麻薬の大量所持者となっていた』という奇妙な事件が彼女を襲ったのだ。

 

…と、言ってもからくりなんて単純なものである。

麻薬の売人であり所持者だったのはリサの当時の彼氏だったバンドマンを名乗る男、正体はメキシコから侵出してきた中南米系マフィアのランキッズ・ファミリーと呼ばれる者たちのアメリカで麻薬密売のパイプ作りと総まとめをしていた幹部。

彼は適当な『セキュリティの強い家の持ち主の独身女』…曲がりなりに役者なのでセキュリティだけはきっちりしてる家に住んでいた彼女に目をつけコナをかけ、時に数千ドルは下らないバッグや服を貢ぎ信頼させ、彼氏として信頼させて合鍵を貰う。

つまり『セキュリティがしっかりしていることを逆手に取った強固な密室の出入りの権利を得る』事に成功した彼は、リサが食事などに出掛けている間やロケ中のスキを見計らい侵入して彼女の家を警察から麻薬を隠す金庫代わりにしたり、或いは時にジャンキーとの麻薬の取引先や仕入れた麻薬の中継地として利用するため間借りしていた…こういう事だ。

 

リサはマフィアに良いように利用された一般人でしか無かったのだ。

当然すぐ尿検査や前述の薬の診断書から無実で有ることが明白な為に釈放されて、逮捕された当時はさがない論調で非難していた週刊紙やニュースキャスターも事件が明らかになれば彼女に同情する他は無かっただろう。

 

 

しかし、そんな体験は彼女の軽くてチープな人生観を変えるには十分すぎる衝撃だ。

いきなりピストルを突きつけた警察が乗り込んできて家宅捜査に入る恐怖。

身に覚えがない罪に問われ、数日に渡り尋問され周りから白い目で見られる恐怖。

そして、何より軽い気持ちで付き合った男がマフィアの大悪党だと知った恐怖。

 

そんな目にあった彼女は、真面目に生きようと硬く決意する。

つまらないレッスンも、仮に端役であろうと与えられた役も、そして何より私生活も。

ティーンエイジャーだった頃とは売って変わり、貞淑かつ真摯な態度で取り組んだ。

寝る間も惜しみ仕事に励み必死で自分を売り込み、派手な男遊びもそれを機にきっぱりやめた、単純に遊び人の様な人種が怖かったからだ。

周りからの評価も当初は底値だったろうが、文字通り『生まれ変わった』彼女をみるにつれ評価を改め…そして、ある推理もののテレビドラマのレギュラー獲得を機に女優としても認知され出した。

 

そんな彼女が惚れ込んだのが、リーである。

決して顔は良くないし手先も不器用で頭も良くはない。

だが、誠実で明るく真面目に働き、人を喜ばす事に生き甲斐を覚える朴訥な異邦人。

今までリサが付き合っては捨てられた様な男たちとは真逆の人格。

聞けば、元々役者志望ながらも身体を壊し引退、それでも映画やドラマの世界に生きようと必死になっている…彼女からプロポーズされた時は、それこそリーを含めた周囲はどれだけ驚いた事か。

 

それから10年近い年月は、彼女とリーの幸せの絶頂だったのだろう。

一人娘のアナもリーの間に設け、彼女の人生は幸せであった。

 

 

しかしそれを許さぬ者もいたのだ。

かつてのリサの恋人の所属していたマフィアのボスであり、彼の叔父でもあるランキッズ・ファミリー三代目党首アゴン・ランキッズ。

この男がリサの全てを奪い去った。

 

 

アゴンの甥は薬物や銃器の違法売買のみならず、捜査の結果として殺人やその教唆も多数行っていた事が発覚し…彼は死刑判決を受け電気椅子で処刑された。

それで終わったハズなのだ、少なくとも警官にしっぽをつかまされるマフィアなぞそいつが間抜けなだけ。

ましてやシマの外で起きた事件で、それもわざわざアメリカのCIA等と事を構えるほど、()()()()()()()()()()()メンツもクソもない事は出来ない。

そもそも醜態を晒した者を相手を捕まえた原因や相手に恨みを持ち続けるほど馬鹿馬鹿しい話もない。

 

しかし、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…そして、あなたの娘さんの9歳になった誕生日に、事件は起きたのよねぇ…」

 

エルは、沈痛な面持ちになりながら、一度話を区切ってしまうが。

そして、Jから聞かされた話の続きを語るのだ。

 

 

その日、アナの誕生日であり日曜日ということもあり、リサもリーも張り切っていた。

自分の仕事場の仲間や近所のアナの友人たちも呼んだ、誕生日会も兼ねたバーベキューやゲーム大会も催した大宴会。

アナの誕生を祝うため皆の笑顔が舞い、庭にうまい飯と楽しい時間が流れる…そんなささやかな幸せが続くはずだったのだ。

 

それをかき消したのは、一瞬にして何十発もの音が鳴り響く銃声。

マシンガンの硝煙。

悲鳴を上げる暇もなく5人の命が消し飛び、その中にはリサも居た。

何のドラマも無く遺言すら残す間もなく、訳も分からぬまま胸をマシンガンで空けられ全身を吹き飛ばされたリサは命を落としたのだ。

 

 

「…ハッ、ざまあねえな」

 

そしてその実行犯、アゴンは吐き捨てるように吠えた。

そう、このアゴンと言う男は悪質で陰湿である。

それ故に、甥の復讐のために如何にダメージを与えるか、それだけを胸に甥が死んでから考え続けてきた。

 

その対象はよりにもよってリサであった。

逆恨みも甚だしいが、要は甥が逮捕されるきっかけを作った相手を許せなかったのだ。

そして、彼はリサに娘が居ることを知り、その誕生日にすべてを滅茶苦茶にしてやろうと画策していた。

 

ランキッズ・ファミリーは後継に譲る事を宣言した後、その娘が最も苦しむ様に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()まとめて殺す計画を立てたのだ。

 

 

パーティ会場は、最早アゴン一人の手によって地獄絵図と化す。

悲鳴と怒号が、周辺住民の叫喚やサイレンの音が鳴り響く中…リーは、呆然とする他になかった。

まるで悪夢だ…だが、自分の足に貫通した弾丸の痛みが、これはフィクションではないと教えてくれる。

そして娘はおろか、仲間たちや近所の住人がどうなったかすら分からない。

血と肉と硝煙の匂いが充満し、悲鳴すらとうに聞こえなくなっているからだ。

 

生き残ってるものなど…否、リーがたまたま柱の近くにいた事が幸いし遮蔽になってただ一人死にそこなっているだけで、壁も繁みもない場所に居た十数人の人間はもはや人としての形が残っているかも怪しい何かになり果てている。

たった二分もない時間で、そこまでの地獄が完成されていた。

 

「…チッ、このアゴン様も歳だな。一匹うち漏らししちまったか」

 

そして、アゴンもマフィアとしての衰えを自嘲しながら、弾切れになったマシンガンをマガジンを補充しながらゆっくりとリーに近づく。

 

リーは、腰が抜けているは足は痛いわで恐慌状態になりながらも悲鳴すら上げることが出来ず『死』そのものに怯え覚悟せざるをえない…そんな、瞬間であった。

 

「お…おおおおおおおお!!!?」

 

アゴンは驚きと恐怖が混じった悲鳴を上げながら、突然リーの前でのたうち回り死亡してしまう。

『心臓発作』、後のアゴンの司法解剖の結果はこうであった。

そう…『ゴー!ウエスト!』の能力は丁度そのタイミングで開花したのだ。

 

訳の分からない死、その体験をそのまま相手にも体験させ運命すら捻じ曲げるスタンド。

リーがそれに目覚めたのはその日であった…

 

 

「…それから、あなたは『死に場所』を探していた」

 

エルはそう付け加えながら、その後のリーについて触れる。

 

映画関係どころかあらゆる人間関係も、訳の分からない理不尽により家族もすべて喪ったリーは抜け殻の様になってしまった。

彼に残されたのは娘の写真が入ったロケットぐらいだ。

妻のリサはもちろんだがその娘ももう居ない、遺体は銃弾で滅茶苦茶になり顔も体も原型もない肉片になり果て悲鳴すら掻き消えたアナの死を実感すらさせてもらえぬまま、リーは一人になった。

生きる意味など、リーには残されていなかったのだ。

 

ギャングの抗争から紛争地域までふらふらと出没しては『ゴー!ウエスト!』で死を無差別にばらまく、彼は死に場所を求めそんな怪物に一時期はなり果てていた。

幸か不幸か、何度大けがをしても死にそこなってしまい、其の度に無茶をする…その繰り返しであったと言う。

 

そんな焼け鉢な生活の中でJと出会って二人で始末屋のような会社のような物を建てたのは、リーからしたら成り行きだ。

リーはただ死に場所を求め無茶できる大義名分が欲しかっただけだが、Jは逆に『生き場所』を探していた…それが、リーには面白い張り合いではあったのかもしれない。

 

そうして、リーはそんなJとつるんで大小問わずスタンドのトラブルを捌いているうちに、ミサイル婆の無差別テロ事件で死にかけてしまう。

ある意味で、リーは(ようやく望みを叶えられる…)という安堵もあったのかもしれない様な感覚に陥りながら、当の本人は穏やかに最期の時を待っていた。

少なくとも、鉄骨が腹に刺さっても、痛みはひどくても恐怖はなかったのだ。

 

だが…

 

「おっさん!死んだらだめだぞ!!自分が何とかしてやる!!」

 

そう言って、立花が一生懸命に不器用ながらも『ブードゥー・キングダム』で治療してる様を霞む目で見て、リーは驚愕する。

 

 

『娘が、アナが…帰ってきた』

 

そう、なんの偶然か、アナと立花は瓜二つの女の子であった。

アナの享年と立花の年齢もほぼ同じ。

そんな子が、あるいは妻以上に愛し妻との愛の結晶として残したかった自分の分身が、いま目の前にいる。

そんな子が、自分を助けてくれている。

 

 

これは、天国のリサが遣わしてくれた天使そのものなのだ。

或いは、アナがもう一度生まれなおしてくれたのだ。

そう言った、神から与えられた奇跡なのだ。

 

 

側から聞いたら噴飯物の身勝手な思い込みでも、リーにとって立花はそう言った女の子であろう事は想像に難くない。

『よりによって』とも、あえて言うが…立花は基本的に善良でクソ真面目で穏やかな子だ。

ある意味で、元は子を喪った親として子供に甘いリーからしたら、なおさら立花を神聖化する理由に拍車をかけてしまっていたのだ。

 

そして、聞けばその立花も親を亡くし異国の地で天涯孤独の身になり途方に暮れている事や、親の仇を何とかして取りたいという事を立花はリーたちに告げた際に、当のリーは決意した。

 

 

これは、試練なのだ。

その試練を与えたのは神か悪魔か仏かはどうでもいい、娘が形を変えて自分の前に生れなおして来てくれた。

リサがもう一度だけ生きる意味を与えてくれた。

リーはそう考えてしまった。

 

或いは立花は、きっと本当はアナと同一視するべきではない事は理性ではどこかで自覚していたとしても…

それでも、リーにとってはもう一人の娘も同然なのだ。

ならば、あの時すくんで動けなかった贖罪、そして復讐を成功させ過去を清算し、この子に生きる意味を与えることこそが正義なのではないか…と。

 

 

それからリーは、わざとおどける様に生きるようになった。

Jは良いやつだが無口で不器用でクソ真面目だ、立花とはうまくいかなくなったら拗れてしまうかもしれない。

だから、一人称も『俺』から『おいちゃん』に改め、二人の緩衝材の様な立場に収まったのだ。

そう演じることにしたのだ。

 

 

「…だとしたらッ!!なんだッ!!!」

 

全てをかなぐり捨てたリーは吠える。

最早なんの仮面のない一人の男として、目の前の『立花の仇』の女に。

 

その、とうのエルは苦笑いしながらこう返した。

()()()()()()()()()()()()()()と。

 

to be continud

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