今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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44話 『戦いの”終わり”』

エルは「あなたと同じ」と言った。

そのリーに語った真意…それはとてもシンプルな事であった。

 

彼女は掻い摘んでではあるが、自分の過去を話した。

両親を殺人事件のせいで失った事。

そして、追い打ちの様に悪い大人たちに目を付けられ、財産すら奪われかけた事。

そのエルの財産を奪おうとした連中の中に、立花の両親がいた事。

 

 

「な…なんだと…!?」

 

リーはそんな彼女の告白を聞いて、思わず声を上げる。

そんな馬鹿な…あの少女は悪い女でこんな話は出鱈目のはずだ…、リーは頭ではそう思う事にしても更なる思考がそれを上書きしてしまう。

 

()()()()()()()

 

確かにこんなどこにでもいる女の子が、なぜ立花の両親から財産を奪う真似をしたのか。

 

なにせ、この二人に直接的な関係性がない。

点と点が繋がらない…というべきか、出身地が県二つ以上離れていてそれも大した規模じゃない中小以下の製鉄工場から強盗して、何がしたいというのか。

単純に小銭目当てならもっと小さい規模のコンビニなり個人店なりを狙って奪えばいい。

逆に、大金を狙うならもっと大きな屋敷にでも忍び込めばいい。

いかにもやる事に対し対象が中途半端すぎる、頭の回るタイプのエルのやり口にしては目的が分からない。

 

であれば、怨恨の線と言われたら…しかも、先に手を出したのは立花の家族と言われたら、一気に筋が通ってしまうのだ。

 

言われてみたらしょうもなさすぎる…しかも、ちゃんと捜査すればわかるような手口での財産目当ての詐欺や横領ともいうのも失礼なレベルの卑怯な横取り劇。

しかし、財産系の犯罪というものは言ってしまえば奪われた本人がしっかり管理していないと発覚がしにくい。

ましてや、両親を奪られ本人も深く傷ついたタイミングで第三者の代理人主導でやられたとしたら、まして当時10歳かそこらだとしたらまともな手段でそれを指摘し回収する手段なんてある訳がない。

マトモな手段で…それこそ、警察なりに訴えたところで、子供の戯言と下手したら門前払いさせる可能性すら有るだろう。

仮に聞いてもらえたところで、散財され奪われた金を『支払い能力がない』とでも相手に主張されれば実質踏み倒される公算だって低くはない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

人としての尊厳、それを取り戻すには。

 

 

それを理解したリーを尻目に、エルは話を続けた。

 

「…私のやった事に、後悔はないわぁ。家族を奪われただけじゃなく、遺された物すら奪われて納得なんて出来ない。

それは貴方も同じじゃなくて?アナちゃんやリサさんの事もあるのだから」

 

そう告げたエルに、リーは思わず激高とも驚愕ともつかない声を上げた。

オレの家族の事が何の関係がある!?と。

エルは大ありよと返し、さらにこう話す。

 

「貴方が、立花さんが、家族を大事にしてる様に…私も、大事なのよぉ。

だから、私はどんな理由があれど私から奪った全てを許さなかった。手段を選べるほど人間も出来てなかったわぁ。

だけどねぇ、あの子はそうじゃなかった。私を、許してくれた。

それがどれだけ強い事か…想像も出来ない」

 

そこで一区切りした後、エルは最後にこう付け加えたのだ。

 

「だけどその強さを、()()()()()()()()()()()()()

貴方は、リサさんやアナちゃんだけじゃない…『お父さん』なのでしょう?立花さんの。その言葉にしなくても、もうとっくにぃ。

Jさんはさしずめ、お兄さんかしらねぇ。

それは兎も角ね、私を許せないと言うなら、貴方の意思に従いたいのよぉ…

悪友みたいな警官に『逃げるな』って説教されたばっかだから、私自身にも向き合うために、立花さんの家族の気持ちにも逃げないために私の事を知って欲しかったのよぉ」

 

 

そう言って目を閉じて言葉を閉じるエルに対し…リーは、絶句する。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

スタンド使いのバトルでの鉄則で、伝わる格言は一つある。

『公正さこそ、強さ』だと。

スタンドの強さや正確さは精神の強さに比例する、然らば後ろめたいものにスタンドが100%制御できるものか。

…まあ、口でそういうだけのスタンド使いなぞ、大概にして卑怯ものなわけだが。

 

翻って、今のエルはどうだろうか。

ただ、自分の事情を伝える…そのうえで、立花を盾にして命乞いすらしない。

状況そのものは、エルが圧倒的に有利だ、毒ガスが残っている発煙筒をリーに投げ入れれば少なくとも相打ちにはもっていけるハズだ。

そういった攻撃をする素振りすらない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その為にだけ、ただそれだけの理由で危険なリーの前に立ちはだかったのだ。

 

 

 

「フゥー…アホだな、そんな理由で俺を相手にしたのか。

本当に、アホだ…青臭くてアホ臭い、俺は買いかぶってたな、増田エルの事を」

 

リーは一度エルに向けて悪態をつくが…そのシニカルな悪態は、その矛先はすぐに変わる、リー自身へとだ。

 

「…だが、俺はもっとアホだ。

この世で最も愚かな人間だ…そうだろう?

もうこの世にありもしない自分の娘の事を勝手にしずくちゃんに投影して、押し付けて…

そして、キミの事だってちゃんと事情を調べれば、キミにもしずくちゃんにも迷惑をかけずに済んだはずだ…

Jに至っては苦労をかけっぱなしだ、大方…オレとしずくちゃんの気持ちを考えて、キミの過去を隠すよううに仕向けたって所だろうな。

アイツは付き合いが長いからわかるよ、どうしようもなくJは優しいんだ。

そんなこと少し考えたら分かることなんだ。

だけどしずくちゃんが、その何百倍も俺が『真実』から目を逸らして、キミを悪魔化して、自分を正当化して…どこまでも俺は愚かだ」

 

とりとめもなく、自責の念で自分を責めるリーは、最後にこう閉める。

 

「窓ガラス、キミの家を壊して本当に悪かった…

だが、俺はキミに許してもらう資格すら、ない…」

 

 

そう謝るリーに対し、エルはいたずらっぽくあえて作り笑いを見せながらこう返すだけだった。

あんたの通帳から修繕費ぼったくり価格でふんだくってやるから、それで許してあげるわよぉ…と。

 

 

そうして、和解に何とか成功した二人はと言うと。

家に残されたトラップの完全解除を条件にリーは投降し、家の外に出ると待っていたのは立花やJの他に守屋や木藤に優姫の他にもう一人だけ人が増えていた。

 

「随分派手にやったようだな、貴様ら」

 

そう言って、『のっそりと』と例えるべきぐらいの無遠慮さで偉そうに凛と通る声で語るのは…

 

「有栖川さん!?やっぱり来てたのぉ!?」

 

そうエルがリアクションを取るように、いつもの婦警のこの女であった。

 

 

「俺…じゃなくて、おいちゃんがやったんだ。住宅物及び器物損壊に住居不法侵入、そこのデカいのはともかく女の子は無理やりおいちゃんに突き合わされただけさ」

 

そんな、火々里より明らかに階級が上だろう有栖川を見るなりシームレスにリーはこう話す。

それに口裏を合わせるかのように、Jは続ける。

 

「そ、そうだ。こ、この子は、おでたちの人質に、ま、巻き込まれただけ…」

 

そう言って、なんとか立花を巻き込まない様に大人二人が猿芝居気味とはいえ罪には問われない様に出任せを言うと、立花はくちばしを挟む。

この二人こそ自分が逆恨みに巻き込んだだけで悪くない…と。

 

そうして三人はやんややんやと喧嘩気味に罪を被ろうとしていたが、有栖川は一瞥してこう返す。

 

「…貴様らを『ザ・ポリス』で締め上げるのは容易いが、どうでもいい。

あらかたの事情はそこの部下から聞いているからな、貴様らの嘘八百なぞいくらでも黙らせられる。

だいたい、私の『ターゲット』は、貴様らではない。

()()()()()()()()()()()()()()()…」

 

 

そう言って、有栖川は自らの腰のホルスターに手をかけると、ニューナンブで『ターゲット』をクイックドロウの要領で撃ち抜くのだ。

 

 

 

「え…有栖川さん…??」

「お前を『終わらせられる』のはただ一人、私だ…増田エル」

 

 

長年の相棒、増田エルのそのはらわたを…

 

 

 

 

 

 

CASE44『戦いの「終わり」』

 

 

 

 

to be continued

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