今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~ 作:たんぺい
コツン…と、人差し指で粕谷に軽く触れる謎の人物。
その人物は、実におもはゆい様な表情をみせながら、一言こう告げる。
「私の能力は、別に最強でも何でもない。スタンドバトル…『闘争』では全く役に立たない、ただ『裁定する能力』だ」
そうのたまうのは…有栖川警部補その人だ。
スタンド『ザ・ポリス』、それの本体。
エルが最も畏れる人物、優姫が最も『正義』を感じる人物…
「くそ…はな…!?な、何だ!何が起きてる!?
…そして、コツンと触れただけで、粕谷をあっさり無力化して
Case7『警察官の後始末』後編
…さて、『有栖川』と言う仰々しい名字の女性エリート警官である彼女。
彼女自身のルーツは、その名字のものものしさに見合うように江戸時代にまで遡れる。
所謂『士族』と言うものだ、家系図だけで言ってしまえば15代まではさかのぼる事もできる家系に誕生する。
そして、代々、奉行所…要するに当時の裁判所に仕える司法関係者が余多連なる、そんな家系に育っている。
それの『呪い』のデザインは、能力発動中は例外なく『身体と一体化した気色の悪いギョロ目が肉体の一部に出現する』。その能力は身体の末端部…指先や肘、頭頂部や爪先などその能力が発現するまではわからないが、とにかくも代々そういう箇所に発現し、有栖川の場合も例外ではない。
彼女の場合は右手の人差し指に出現し、本人と一体化している。
その能力はごく単純明快かつシンプルな能力に帰結する。
『能力が現れた特定の箇所』に触れた『犯罪者』を『違法行為を行う事を禁止する』。
…それだけの能力だ。
その能力を有栖川はスタンドと定義して、己の就いた職業そのままに『ザ・ポリス』と名付けてはいるが。
その力はそもそもが有栖川の家に流れる『スタンドに似て非なる、生体エネルギー由来のスタンド使いに近づく技術』の無自覚な継承者であり、厳密な意味ではスタンド使いとは異なるのかも知れない。
あるいは真のこのスタンド能力の本体は『法律』と言う概念その物で、有栖川の一族はそれのスタンド攻撃の影響を受けた被害者なのかも知れない。
…とまあ、有栖川の能力の脇道はともかくも。
ただ『法律』を守らせる、それだけ。
それ以上の拘束力や強制力はなく、『裁判で無罪になる』または『刑確定し、刑務所なり少年院なりで刑期を終える』と能力自体が解ける。
『ザ・ポリス』はそれ以上の能力にはならない能力であろう。
余談だが、例えば、足が発動トリガーだったかつての先祖は蹴り飛ばし、舌が発動トリガーだったかつての先祖は無理やり唇を奪う…等と言う真似を平気で行っていたらしいから、有栖川が一見して通報されたり犯罪になりうる危険が少ないだろう『人差し指』がトリガーになったのは、スタンドの都合遵法意識の強い彼女からしたら至極僥倖だったのだろうとは追記で置いておく。
「…そうか、有栖川先輩が捜査に参加した時点で、顔と名前か犯人の位置を特定して
しかしながら、それだけの拘束力のスタンドを、そう優姫が放心しながら語るように。
『ザ・ポリス』と言う能力は『犯罪者』が相手なら『能力』が発動したその瞬間勝負が決まる。
どんな犯罪者か立証・立件が不可能とスタンドが判断したらいかなる凶悪犯だろうが効力を発揮しない欠陥こそあるが、逆に言えばそれをクリアしたら最強にして絶対の拘束力になる。
…改めて言うまでもない事では有るのだが、
これは大前提ではあるが、逆に言えば
警察をなめてはいけない、スタンド能力を裁く事はできないがスタンド使いを裁く方法なぞいくらでもある。
例えば、今回のケースで言えば…罪状としては、『住居不法侵入』。
粕谷は黒須家一家連続殺人の際に『髪の毛』を落としてしまっている、つまり
つまり、最初に捜査を開始しだいたいの所在を『レディオ・スター』で掴んだ時点で、スタンドの詳細自体はわからずとも粕谷の能力が『射程が長くなく効果範囲に制限がある』事自体は、エルはあの忌ま忌ましい殺人現場を中継してリアルタイムで把握してしまい推察可能だった時点である程度…
ついでにスタンドによる暴行や殺人未遂、器物損壊あたりは立証不可能だろうが、スタンド能力で破壊したコンクリート塀の破片による投擲での殺人未遂は…
そして勝利した後も、それは有栖川の『職業』と『法律』が、安全を担保してくれる。
勤務中の警察官相手なら『公務執行妨害』、そうでなくても『決闘罪』『暴行罪』『傷害罪』…それらを『違反』する事ができない相手は有栖川に『抵抗』する手段が一切なくなってしまう。
そうでなくても『詐欺罪』や『偽証罪』に引っかかるなら…嘘も吐けない、黙秘権は認められているので黙る事ぐらいは出来ても『侮辱罪』や『名誉毀損罪』などにも引っかかるなら捨て台詞すら許されない。
『量刑』が裁判なりで確定し刑期を終え『贖罪』が成立するまで、あらゆる反抗手段がなくなってしまう。
…なお、余談ながら清く正しく生きてる優姫は引っ掛かる事は一切無いので『ザ・ポリス』はまず発動すらしないだろうが、エルは普通に引っ掛かる。
覗きの常習者であり平時から嘘つくのを躊躇わない性格なので、スタンド能力にデバイス噛まさないと機能しない都合『プライバシー保護法』なりの違反なり詐欺なりでの証拠を本気で調べられたら…まあ、そうなる。
まあ、とにかくも話を本題に戻せば『ザ・ポリス』により完全に沈黙した粕谷など最早眼中にないかのような状況下。
そのままエルは、優姫に対して相手は歳上だろうと言うのに、ましてや学生の分際で警察官相手に説教をする。
こんこんと、声をあらげる事はなく、客観的な事情を告げながら。
その思い上がりと…法律では取り締まれない『無知の罪』に。
「『ザ・ポリス』は
だから『調査』の一点にだけ長けた私と組まないと、どんな能力を持ちどんな場所をテリトリーにしてるかわからなくて、具体的な『敵スタンド能力使いの犯罪者の調査』ができない…ましてや『どんな犯罪者か具体的に知るか』すら出来ない、だから私が居ないと『ザ・ポリス』が持ち腐れなんて事は良くある事よぉ」
そう、まず改めて有栖川の弱点を先に上げながら、己がタブレットを掲げつつ『レディオ・スター』の特性も交えて話を進めていく。
「私の『レディオ・スター』は…要するに、ラジオで言えば『電波塔』。送信できる視覚情報をリアルタイムで共有できる『対象の人物』は1人までだけど、
だから、私は捜査対象だけはっきりさせたら基本的に有栖川さんのスマホにも同期させて能力を起動するのよ…
視覚をジャックして捜査の手間を過程ごとすっ飛ばす様なエル、捜査完了後には最早誰にも抵抗させられない有栖川。
実質、エルのスタンド能力の関係で冤罪すら起こり得ない…と、文面だけ上げたら鬼の様な噛み合わせのコンビだが…当然ながら、穴はある。
ただただ、『それ』を優姫に告げる。
「…ただ、私達は二人とも『制圧手段』が欠けているわぁ。『レディオ・スター』も直接攻撃力は無いし有栖川さんにいたってはスタンドで攻撃も防御すら出来ないから直接『暴力』でまっすぐ暴れられると止める算段は無くてねぇ。
まあ、敵の視覚をジャックして『何処』を狙い『何処』にいるか、スタンド使いならスタンドの視覚も平行してリアルタイムで共有できるから、私は逃げに徹したら…まぁ、この街ならなんとか、何度も何度も死にかけたりしたけど生きてこれたし、いくらでも奇襲に転じて勝っていたけどぉ…そこに貴女が現れた」
そして…そこで台詞を一旦切るや否や、口調こそ変わらないが、突然、エルの優姫を見る瞳は冷たくなる。
まるで、明日お肉になって並ぶ養豚場の豚でも見るかの様な、あるいは…ストレートに、『期待外れだ』とでも言いたげな様に。
「『近接パワー型』…しかも『スタンドを喰らうスタンド』なんて私達スタンド使いの天敵なんて、私達の穴を埋めるには理想の…もしかしたらぁ、有栖川さんの『ザ・ポリス』には私のスタンドより相性が良いかも知れないわぁ。だからこそ…今の貴女は『許さない』し『許されない』。
なぜあの時、そこの犯人に
そう、怒りを込めて。何故、『ホット・スタッフ』にそもそも立ち向かったのか?
それを問いただし、怒りに満ちている顔のまま聞いたのだ、エルは。
優姫はそれにまっすぐ答える…警察官として、人として当然の責務だ、と。
犯人から逃げたら、どれだけの犠牲が悪の手に落ちるのか…と。
…だが、エルが求めている解答は『そう』ではない。
質問の前提条件がお互い噛み合ってないからであるが…それにエルは気付き、自分には無い普遍的かつ真っ当な正義感には好感は抱きつつも、まあそこは無視して。
質問を少し変えた、『犯人』の勝利条件とは何だと思う?と。
そこの答えに一瞬つまり、敵を倒し殺すことだ、と返した優姫の答えを聞き確信する。
要するに…
「貴女…うん、ニアピンだけど少し違う。『初手で襲撃に失敗した犯人』の勝利条件は、正確には『目撃者を消す事』よぉ。
何故なら、仮に顔を見られて無かろう状況下だろうと、
つまり、最初にいきなり襲った時は、多分警官が邪魔だったか面白半分のスタンドの試し切りかなんかだったのでしょうけど、『ホット・スタッフ』の初撃をかわして反撃した相手に認識が移った時点で、『殺す』事はあくまでも、『手段』であり『目的』からは移行しているわねぇ」
そこで、一旦区切りながら、解説を続ける。
「逆に言えば
スピードもある、パワーも互角以上…まあ、射程距離もだいたい同じぐらいの相手、しかも相手は警察官で調査能力が最上級な職業の人間が
真っ先に消さなければならない相手、仲間を呼ばれたり家を突き止められたらそれで詰んでしまうもの。
仮に…私が信用ならなくて、有栖川さんも今日この場に居なかったとしても、『無敵の連続殺人犯』が貴女を見失ったら犯人はもう単なる『毎日怯えて逃げ惑わなければならない』存在になるのよぉ。
つまり、貴女は警察官だからこそ、犯人から逃げなければならなかった…貴女の致命的な弱点も持つ『スリラー』がピーキーだから尚更ねぇ!」
そうエルに言われ…返す言葉が見つからない。
己の正義感が、信じていた『正しい道』こそが…間違っていると言われ、優姫は何も言い返せない。
感情論や保身ではなく、理路整然としたロジカルな指摘。
反論したい、そんなつもりは無かった、自分こそ正しい…と、頭ではぐるぐると巡っても、事実
自分の判断ミスと未熟さや青臭さで、下手したら凶悪犯を野放しにする所だったと…ただ単純に、それを突きつけられ呆然とする。
精神的な…優姫の、『完全敗北』であろう。
そんな呆然として泣く寸前の彼女をポンと肩を叩きながら、フォローする様な口調で横から口を挟む人物がいた。
有栖川である。
「まあ…そう気にするな火々里!アレの言うことは間違っては無いが…半分以上は結果論だ、凶悪犯に立ち向かう姿も姿勢も、立派だと私は思うぞ?増田と同じように間違っては居ないのだ、火々里も。それは私が担保する」
そう一拍置いてから、有栖川は言葉を続けていく。
「…お前の心は、例えるなら『ダイヤモンド』だ。気高く、美しく、何より硬い意思。
だが、硬いと言う事は、同時に『遊び』が無いし『脆い』のだ。違う立場での『正しさ』を受け入れ赦すと言う発想が出てこない…だからこそ、いつか致命的な敗北が目の前にしたらあっさり碎けてしまうのは目に見えていた…
増田には、性格的にキツいこと言うの苦手だろうが、嫌な役目を押し付けてしまったな。だが、
そう言ってペコリとエルに向かって頭を下げた有栖川に、いいって事よと一転し軽い口調で返すエルを、苦笑いの様な口調と顔を見せながら話を続ける。
「…まあ、私が貴様の能力を『ザ・ポリス』のブースターとしても見てる側面が有るように、貴様は貴様で我々警察を『金づる』としても見てるのは知っている。ああ…言われなくても危険手当含め捜査協力費は言い値で出す、小切手で良いな!
…話が逸れたな、まあ、アイツはああいう金目当ての類いヤツと言うか、もっと根本的に『欲望』に弱く『欲望』の味方だ…だから、自分には本当にドロドロに甘いし、だけど他人にもそれ以上に本質的に甘いし優しい、だからこそ
お前がダイヤモンドなら増田の心の特性は『卑金属』。鉄のような正しく強い心か、ただの水銀や鉛の様な甘くて柔らかい毒かは、私にはわからんがな」
そう言って、最後に、有栖川はこう付け加えたのだ。
まだ二人とも若く成長できる、そこの少年犯罪者に堕したコイツとは違う。
増田にはダイヤモンドに眠る気高さと美しさを、火々里には卑金属の中にうごめく優しさと共感性を学んで成長して欲しい、一人の大人として…と。
to be continued
-----粕谷弾:『ザ・ポリス』に囚われてスタンドが使用不可能に。裁判の結果次第だろうが、様々な意味でスタンド使いとしても人間としても再起不能。
『ザ・ポリス』
破壊力なし
スピードなし
射程距離E
持続力A
精密動作性なし
成長性なし
(A超スゴい、Bスゴい、C普通、D苦手、E超苦手)
有栖川の一族が代々その体に宿すとされているスタンド(と有栖川は認識しているが、その特異な性質から厳密にはスタンド使いに近付こうとしたり対抗しようとした技術由来によるスタンドではない可能性もある能力)。
効果は単純で、その能力の証したる『目』が現れた体の末端を触れた人間を『法律を遵守させ、その罪を償わせる』、ただそれだけの能力である。
犯罪者にのみ作動して、裁判等で量刑が確定して刑期を全うするor裁判で無罪となる時点で解放される。
そのため、持続力で言えば、視点を変えたら『地球上から法律と言う概念が無くなるまで』スタンドエネルギーやスタンド能力が続く、と言うハチャメチャな持続力を誇るだろう。
ただし、この能力自体は別に破壊を目的としたものでもなんでもないし、そもそも『犯罪者』…つまり、『犯罪』を立証するか立件して礼状をとれるようになるまで何の意味も無い。
また、対象への拘束力はあくまでも『法律を破る行動を自ら取れなくする』だけなので、何らかのアクシデントにより事故を起こしたり他人に騙されて犯罪と片棒を担がせる事を防ぐ…と言う使い方は出来ない。
名前の元ネタはイギリスのロックアーティストバンド、『ザ・ポリス』より