今にも堕ちてくる空の、奇妙な街で ~ジョジョの奇妙な冒険、異伝~   作:たんぺい

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8話 『A・C』前編

能力と言うものには、必ず穴がある。

才能と言うものには、必ず欠陥がある。

 

万象全てにおいて()()()()()()()()()は、あり得ない。

だからこそ、すべての人は一度は『それ』を目指してしまうだろう。

しかして、ひとつ…この宇宙にだっていつか『死』は訪れる。

地球に限って言えば太陽の寿命は後50億年で地球を呑みこみ膨らみ白色矮星になるならば当然どうあがいてもそれに連動して滅びが訪れる事も逃れられないし、或いはもっと早く、隕石の激突や地核の変動によりその滅びは訪れるかも知れない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ、ならば、その地球に住まう小さな小さな生き物たちに完全も無欠もあったりするものか。

 

当然、人間だって例に漏れずいかなる天才もいかなる奇策も、必ずしも『完全』と言う事は起こらない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

大切な事は、そのバグを無くす事よりも、その躓いた後の想定や躓く事のパターンの想定なのだから…

 

 

 

Case8 『A・C』 前編

 

 

 

(…どうしてこうなったのよぉ)

 

エルは、自分の屋敷にある無駄にでかい台所のコンロをフル稼働させて調理している。

 

鍋で作っている軽く塩をふって生のみじん切りにした玉ねぎと豚挽き肉を臭いけし用の少量のみじん切りの生姜と共に炒めたそれに、軽く水きりしたホールトマト缶と赤ワインで煮込んで、コンソメの顆粒を適量味を整える為に入れつつ、隠し味の粉チーズをパラリとかけて輪切りの唐辛子を少しだけ加えながら中弱火程度で放置しつつ水分が飛んだらトマトソースの仕込みは完了。

 

一方、フライパンで先に低温でじっくり炒めた細かく刻んだベーコンから出た油を、適当なサイズに刻んだエリンギとシメジに一気に火力を上げて纏わせるように炒めた後は塩コショウをしっかりかけ下味をつけ、最後に新鮮な生クリームと溶けるチーズを加え沸騰させもろもろにならないよう気を付けながら火力を下げつつ此方は丁寧に煮詰めていく。

 

最後に、二つ目のフライパンに火をかけるや否や、低温で多目にしいたレギュラー使用のオリーブオイルに細かく刻んだ大蒜と唐辛子に火をかけて、においを移しながら唐辛子の色がかわり大蒜がきつね色に代わったら油ごと一旦全部小皿に取り上げつつ、大きめに切ったベーコンをじっくり焼きパリパリに仕上げていく。

 

…と、そんな感じでパスタが茹で上がった様だ。エルはコップ一杯ぶんだけ茹で汁を回収しつつ、残りはざるに上げて水分をしっかり切る。

 

ここから先はスピード勝負、まずはベーコンだけ焼いているフライパンに舞茸と適当なサイズに細かくちぎったキャベツの葉を塩コショウをしながら火力を中~中強火程度に一気に炒め、野菜に火が通ったらパスタの3ぶんの1程度をざっと一緒に炒めつつ茹で汁を適量ずつ入れながら解していく。

全体に馴染んだらお皿に上げて、仕上げに刻んだ万能ネギとバジルを軽く散らし、それに小皿に先に取り上げだ大蒜と唐辛子が踊るオリーブオイル大蒜等と一緒にをパスタにかけ回してあげたらキノコのペペロンチーノの完成。

 

次に、皿に取り出し、茹で汁で『だま』をちょっと解して上げたパスタに最初に仕込んだトマトソースを上からかけて乾燥パセリを軽くふってやればアラビアータ風トマトソースパスタの完成。

 

最後は、いい感じに煮詰まったチーズクリームソースは火をしっかり止め、30秒か40秒ほど放置しさましつつ卵の卵黄だけをそのチーズクリームソースに加えながらパスタと一緒に絡めて底の深いお皿に取り上げる。

黒胡椒をこれでもか、とふってそれでカルボナーラもだいたい出来上がり。

 

 

と、なんかこう…エルが無駄に凝ったパスタを作っているのはなんでかと言うと。

 

「増田は無駄に料理が上手いからな!今日は…パスタか、楽しみだ!」

 

などと言いながらリビングでわくわくした表情の有栖川と…

 

「初めてこの家に伺いましたが、このにおい…わかります!『正しい』って!」

 

そんな有栖川に追随するような優姫…なんてメシをたかりにくる知り合いの警官二名のせいであるのだが。

 

 

(…まあ、火々里さんはともかくも有栖川さん材料費毎回立て替えてくれてるから、別に不満は無いっちゃ無いんだけどぉ…来るなら来るで、せめて二日前ぐらいに連絡してよぉ。当日になっていきなり『ちょっと火々里も交えて話あるから遊びに来ていいか』とか言われてもろくに用意出来てないってのにぃ…)

 

対するエルは内心こんな感じ。

なんやかんや、月1ぐらいで様子を見に来てくれる有栖川来訪自体はいつもの事であり…何より、友人の少ないエルにとっては、忌憚なく付き合ってくれる有栖川の来訪は嬉しいと言うと嬉しいのだが。

げに悲しいは宮仕え、特に治安維持組織の所属となると毎週決まって土日にしっかり休日とはならず、変なタイミングで代休が来たりと毎回急に連絡が来る。

事前になんか仕込んだりちゃんとしたものを振る舞えるならいいが、だいたい鉄板焼きや粉もの系のざっと当日になって作れるものばかりに『逃げ』を打つのは、エルは微妙に申し訳ない気持ちになって来る。

特に、有栖川は不規則な生活をしてる上に料理できない人でだいたい主食がカップ麺かレトルトの丼のもとをチンしたご飯にかけるだけとか言う有様らしいから、本当にジャンクっぽいものよりはちゃんとした煮物とか食べて欲しいのだ。

 

火々里優姫…彼女に対してもそんな感じの感情を抱いていた。

あれから…『ホット・スタッフ』の連続殺人の件で知り合って以降、事件解決直後にスタンドを制御できてるかもはたから見て怪しい優姫の妙に精神が不安定と言うか()()()()()()()()が気になって、それでエルも少し事情を聞いていたのだ。

優姫本人は、過去を話そうとした瞬間、もう急にわんわん泣くはスタンド出して暴れかけるはと宥めるのにヤバい事になったりしたので…有栖川経由と言う感じではあるが。

至極簡単に言えば、母親の離婚と再婚に起因する虐待により、ある種の精神的な成長が子供のままに止まっている事や自分を傷つける『敵』か自分を救ってくれる『味方』しか頭に無いと言う事。

そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事がきっかけで、それが起因する『正しさ』への偏執なのだろう、と。

 

それを聞いたエルは思った、()()()()()()()()()と。

すべてを理不尽に奪われ、頼れる味方が『レディオ・スター』しかいなかったころの私なのだ、と。

違う事は、エルのよるべは自分の才能である『スタンド』、優姫のよるべは他者への憧れと『正義』。

ただそれだけしか変わらない、昔の頑なだった自分だったのだ、と。

 

初対面で…平手打ちまでしてキツくあたって理由もわかった気がする、とエルは納得した。

偉そうに言いながら先走った優姫の醜態や有栖川のオーダーのせいでもあるが、要は昔の…優姫の言葉を借りたら『間違っている』自分を見せられて腹立ってしょうがなかったのだろう、と。

結局、優姫に偉そうに言いながらも最後に突き付けられたのは自分への卑小さ。

そう自覚したら自分が情けなくなり…自分が変われる気はしないが、それでも、あの新米巡査を自分よりもっと良い方向に導ける様になろう、と。

そうすれば、きっと…自分が今よりもっと少しだけ、好きになれる気がするから。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

 

「…とはいっても、ね。せめてテーブルクロス引けとまで言わないけど、フォークやコップぐらいは自分でちゃんと用意なさい社会人ども!」

 

…とまあ、エルはそう決めたとは言うもののしめる所はきっちりしめると言う事で。

本当に座って待ってるだけとかいう小学生男子でももうちょい手伝ってくれるシチュエーションでこのマイペースさである、しかもメシ完全にたかりに来てるとか言う状況で。

おかんみたいな事を言いながら、『レディオ・スター』で思い切り、とりあえず公僕二名の後頭部を殴っておいた。

 

「「地味に痛いッ!?」」

 

…殴られた二人の悲鳴がハモるが、まあ、精密性はないしパワーもエアガンレベルだろうが、逆にそれぐらいのパワーや精密性の方が()()()()()()()()() 役に立つらしい。

 

 

と、そんな感じで食事会の前にこぶ作ったとかそんなことはともかくも。

パスタをもぐもぐと食べながら、エルは話を聞く、部下を交えて話が有るとはいったいなんだ、と。

そこに割り込んで答えたのは、優姫であった。

 

「実は…『スタンド』による事件がまた起きたのよ」

 

え…と、エルは一瞬放心する。

メシ食ってる場合でも遊んでる場合でもないじゃないか、と!

そう突っ込んだエルを制止して、優姫は更に事情を整理する様に話をする。

 

「場所は…確か駅前の大通りだったかしら、商店街に続く交差点。そこに現れたスタンドによる、まあ無差別な婦女暴行と言う感じね…食事中に言うことじゃないかもだけど。

能力だけ先に明かしたら、昼間に『男性』と『女性』が対面に向かい合ってるタイミングで能力が起動しそんな謎のスタンドが出現、『男性』にとり憑き女性を襲う、夜になって日が落ちるか影にそのスタンドがとりついた人が入って直射日光から逃れたらそのスタンドの呪縛から逃れられ、正気に戻る…だいたいこんな事件、ね」

 

と、淡々と優姫が言うことに違和感を覚える。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…と、そこの違和感に気付いて、事情を察した。

発動条件の異様な厳しさと、その解除条件の単純明快さ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、多分そういう事だ。

その答えあわせは、有栖川からしてくれたと言う。

 

 

「多分…()()()()()()…私の、天敵だ」

「うわぁぁ!?やっぱりぃぃ!?()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

そして、『最も聞きたくなかった答え』に、頭を抱える事になったと言う…

 

 

to be continued

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