真っ暗な世界から、目が覚めた。まず目に入ったのは二段ベッドの天井が見える。
そうか、僕はあの誰かにインクと魂を入れてもらわないと話せない暗闇の世界から解放されたんだった。やはり生きているというのは素晴らしい。ジニーは犠牲になってもらったが、彼女の名は後世に偉大なる存在として残ることになるからいいだろう。
「ジニー、早く起きないと朝食に遅刻しちゃうよ?」
声が聞こえて振りむくと、可愛らしい女の子二人がいた。銀髪で短髪の女の子は着替えていて、もう一人の金髪の少女が鏡の前で長い髪の毛を整えている。
「ああ……あれ、まだ時間があるじゃない……か……」
時計をみるとまだ、一時間は余裕がある。
「何を言ってるの。準備しないと駄目よ。女の子は準備に時間がかかるんだから」
そうだったな。女だった。ああ、面倒だ。
「あ、面倒だって顔してるね。私も面倒だと思うから、短髪にしてる~」
「ジルは寝癖をしっかりと直すのよ。ジニーもしっかりね」
「ルサルカがやって~」
「仕方ないわね」
「……私もお願い……」
「えっ、めんどうなんだけど」
「任せた」
「なんだか性格が変わってない?」
「猫をかぶってただけ。それに失恋したから」
「そっか。まあいいや。着替えてこっち着て」
服を脱いでジニーの記憶を読んで荷物から服を着替える。その間にジルと呼ばれた子は跳ねていた髪の毛を戻してもらったようだ。
「じゃあ、こっちに座って」
「ああ。全部頼む」
「しかたないわね。今日だけよ。この頃調子悪かったみたいだし」
鏡の前に座り、なすがままに任せる。色々と覚えないといけないが、面倒すぎる。だが、女性なら美貌というのは一つの武器になる。特に男共を操るのには使えるのだから、磨く必要があるな。
「今日はロックハート様の授業があるわね」
「え~やだな~」
「なんでよ!」
「だって、あの人の授業ってつまんないもん。音読だけだし、またピクシーみたいなの持ってこないかな?」
「いや、ジルはぐちゃぐちゃにしてたじゃない」
「改造や実験、楽しいよ?」
鏡に映るジルと呼ばれた銀髪の幼い少女は不思議そうに首をかしげている。その瞳は好奇心が旺盛だが、子供として残虐な一面も持ち合わせている。ジルを育てていくのも面白いかも知れない。闇の魔術にどっぷりと嵌ってくれるだろう。
「はい、終わり。とりあえず、授業の用意をして朝食に向かうわよ。迷ったら大変だし」
「探検したけど、覚え切れないもんね~」
「わかった。それなら案内しよう」
「ジニー、覚えてるの?」
「大丈夫。ついておいで」
「は~い!」
「わかったわ」
授業の準備を時間割から確認して食堂に案内していく。
「本当ににすんなりついた」
「すごいね!」
「これぐらい楽勝だ、よ。それよりもご飯を食べよう」
「それもそうね」
「あっさごはん、あさごはん!」
グリフィンドールの席について食事をしだす。久しぶりに口にする料理はとても美味しい。食事という感触はかれこれ50年ぶりか。
「あれ、泣いてるの? どうして? なにか入ってた?」
「大丈夫。ちょっと辛かっただけ」
「辛いのもたまにあるからね。でも、それは逆?」
「辛いから!」
「ああ、なるほど。失恋か」
「失恋? 失恋ってなに?」
「本気か?」
「わかんない」
「まあいい。今は飯だ」
「うん!」
久しぶりのホグワーツ料理を楽しむ。ただ、あまり食べられなかった。次に授業を受けにいったが、その前にトイレだ。色々と不思議な感覚だった。
呪文学や変身術の授業を無難に数人ができた程度で終わらせ、闇の防衛術の授業になった。そこでは変な恰好をした吟遊詩人みたいな奴が自らの体験談というのもどこかおかしい内容を自慢げに喋っている。どうやら、ダンブルドアは耄碌したのかもしれない。こんな奴を栄えある防衛術の教師にするなど、何を考えている。授業になりすらしていない。
馬鹿馬鹿しいので、他の連中を確かめてみる。ジルは……机に突っ伏して寝ていた。ルサルカは楽しそうに授業を受けていた。有り得ない。いや、ファンからしたら、作者がやってくれる音読会というわけか。それならありか。まあ、どちらでもいい。こういう時のために呪文学の教科書をもってきているのだから。ふむ、やはり知っていた魔法以外にも色々と開発されている。呪文と発動する効果から術式を計算し、過程を確かめる。もちろん、逆算も行ってだ。ここ50年。思考だけはできたのだから、ひたすら魔術の開発には打ち込んできた。そのせいか、計算力だけはかなり鍛えられている。
「ミス・ウィーズリー。ミス・ウィーズリー」
「ジニー、呼ばれてるよ」
「あっ、はい。なんでしょうか?」
「人狼の特徴を言ってみなさい」
「わかりました。人狼の特徴は噛まれたら感染し、凶暴になることです。
「え?」
なにか間違ったか?
「確かにその通りです。ですが、それは……ミス・エインズワース」
「はい。殺処分するのは昔のことで、今は脱狼薬によって押さえることができますので、殺されることはありません」
「その通りです。ミス・ウィーズリーの言葉も間違いではありませんが、過激なことにかわりはないです。まあ、私の素晴らしい本を読んでくれてそう思ったのだったら仕方ありませんね」
「はい、先生。ごめんなさい」
屈辱だが、誤っておく。これは後で仕返しすることにしよう。僕が今の時代の知識が足りないことは事実だ。これは早急に勉強をしなおす必要があるな。
全ての授業が終わり、放課後になった。寮に荷物を置きに戻る廊下で二人と話をする。もちろん、細心の注意を払いながらだ。
「これからどうする?」
「遊ぶ~!」
「ジニーは?」
「勉強。図書室に行ってひたすら覚える」
「えーあそぼうよ~」
「確かにジニーが勉強をするなんて珍しい。いっつもハリー・ポッターを追いかけているのに」
「……今は近付きたくない」
「なるほど」
「うにゃ?」
ジルはわかっていないな。せっかくそう取れるように含みを持たせてやったのに。まあいい。こういう馬鹿な子も可愛いからな。
「それによく考えた方が良い」
「「?」」
二人して小首を傾げている。どうやら、本当にわかっていないみたいだ。
「闇の魔術に対する防衛術。あんな授業が役に立つとでも本当に思っているのかな?」
「あ~」
「寝る時間!」
「そう、わかっている通り、このままでは大切な一年を無駄にすることになる。すでにハロウィンは過ぎた。もう付き合うのは充分だ。なので個人的に勉強する。二人もどう?」
「放課後まで勉強するのはやだなぁ~」
「私はそうでもないけれど……確かにフクロウとかのテストを考えると……」
「ジル、覚えた呪文で実験、いたずらをしよう」
「いいの!」
「とっても楽しいことになるよ」
「ちょっと、ジニー!」
「これぐらいで勉強してくれるのなら、付き合う。ルサルカは関わらなくていいから」
「それなら、まあ……」
「実験♪ 解体♪ 解剖♪」
ジルは斬ったりすることも好きなようで、呪文学と魔法薬学の成績はいい。ナイフの扱いがとても素晴らしい。ルサルカは呪文学が得意で、他は平均的だ。しっかりと鍛えてやるとしよう。将来の僕の手駒とするためにな。そもそもルームメイトの二人はこれから色々とする時、邪魔になるから味方に引き込んだ方がいいのだ。ちなみにジニーの部屋は角部屋なので少し狭くて三人部屋となっている。
図書館に入り、まずは呪文書と闇の魔術に対する防衛術の本をとってきて三人で勉強していく。まあ、僕は知らない奴だけをピックアップして、ノートに書き映していく。
「ねえねえ、この浮遊呪文の発音って……」
「それは……」
「こっちは?」
二人の質問に懇切丁寧に噛み砕いて教えていく。理解するとぱぁと笑顔になるジルと、嬉しそうに微笑むルサルカに教えながら、自分のこともやっている。大量の呪文学の本を読み、書き移していく。やはり50年分を理解するのに時間がかかる。これは今年に関しては大人しくしておいた方が無難だな。
「じゅかれた~」
ジルが机の上にべたーと置き、顎をテーブルに乗せている。だらしないが、年齢的に考えてこれが普通か。よく頑張ったといいながら、ジルの頭を撫でてやる。飴と鞭は必要だ。
「あ、もうこんな時間ですね」
「確かに夕食の時間か。待っていて、残りを借りてくる」
「よくそんなに借りられるね……」
「攻撃的な呪文が載っているのもある。ジルは覚えるのも楽しいだろう。それに練習できる場所に心当たりもある。そこでなら気にせず魔法を使えるぞ」
「それ借りようかな」
「なら、私も……」
皆で本を最大まで借りてから、部屋に戻って本を置いて食事をする。それから必要の部屋に向かうのだが、その途中で
「うわ、蜘蛛がいっぱいじゃない……」
「気にしなくていい」
「そう? 解体してみたいから、捕まえたらだめ?」
「……的にするのもいいか。捕まえていいが、毒があるかもしれない。気をつけてな」
「は~い!」
麻痺呪文を放ち、しっかりと行動を封じてから瓶に蜘蛛をいれていく。ルサルカは近付かないが、これで実験材料は手に入れたな。
秘密の部屋に連れていくと、二人はとても驚いたので、説明していく。一応、先輩から聞いたということにしておく。間違ってはいないし大丈夫だ。それからはジルが蜘蛛を解体したり、薬や魔法の実験台にしていた。僕も新しく手に入れた魔法を試している。ルサルカも最初は嫌がったが、二週間も経てば慣れてくるだろう。
「そういえば、ジニーって昨日、お風呂に入ってないでしょ」
「あ、そうだね。これからいこっか」
「わかった」
女湯に入ることになるが、まあいいだろう。身体は女なのだし何も問題がない。たぶん。
とりあえず、身体を綺麗に洗ってもらったというだけは伝えておこう。それと女性として便利な呪文を結構覚えた。歯の並びを綺麗にするのは男女共用だが、髪形を整えたりするのは助かる。くそ面倒だしな。後、そばかすとかが気になったから、美容関係の魔法を即席で組んでソバカスやほくろ、肌の質から何から何まで計算して新しい魔法を作る。自分の身体で実験してみたら、可愛さが跳ね上がった。当然、二人にもかけてやるととっても嬉しそうにしていた。ジルはよくわかっていないが、肌触りが気持ち良くなったと喜んでいる。
勉強と同時にしっかりと身体も鍛える。ジルやルサルカも巻き込んでみなで一緒に身体を鍛え、強さを手に入れるために努力していく。
続けるかどうか
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続けて欲しい
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いらない