身体が動かない。それに私が私でないような気がする。私じゃない誰かも私の中にいる。知らない記憶がある。怖い、怖い、助けて、助けて、お兄ちゃん……ハリー……
暖かな温もりを感じると同時に柔らかいなにかに身体が縛られている。目を開けてみると、目の前に可愛らしい整った顔立ちの幼い銀髪の女の子の姿があった。上半身はぶかぶかのシャツだけで、後は下着だけで上もつけてないし、スカートやズボンも履いていない。だからか、視線を下にやれば胸とその頂きも見えてくる。
「なんでここにいる」
僕に抱きついて一緒の布団で寝ているのは、ルームメイトのジルだ。本名はジル・ニトラ。魔法が得意な竜神からあやかったのだろう。両腕を放させて布団からでようとして、止めた。外が物凄い寒いのだ。それにくらべてジルの体温と合わせてなんと心地良い暖かさか。これはアレだ。湯たんぽの代わりとしていい。
「よし、寝るか」
身体の中身は蛇だ。寒い場所では冬眠することだっておかしくない。
「寝るか、じゃない!」
「っ! な、なにをする……」
思いっきり頭を叩かれて、そちらを恨めがましく見詰めると、そこにはジルと同じくルームメイトのルサルカ・シュヴェーゲリンの姿があった。金髪碧眼の彼女は頬を膨らませている。
「なにをするじゃない。早く起きなさい! ジルもよ!」
「……あと……」
「あと? 五分? それなら……」
「ろくじかん~」
「却下よ!」
「「っ~~~」」
布団が無慈悲にも取りあげられ、寝間着姿の僕とジルは互いに抱き合って暖を取る。冷たい風が僕達を襲ってくる。おのれ、この僕になんて仕打ちだ。覚えていろよ……
「
「ああ、そうだった……」
「う~ねむいしさむい~」
「なら、ジルは休んでいなさい。私とジニーは行ってくるから。一人になるし、置いてかれるでしょうけど」
「や~いく~」
「じゃあ、おきましょうね」
「ん~ジニー、抱っこ」
「はぁ……やれやれ……」
ジルを抱き上げてベッドから出る。それからルサルカに引き渡す。ジルの温もりが消えて少し寒くなる。その感じが忌々しく思うが、今は仕方がない。ジニーとして過ごさなければいけないのだから。
「……ズボンはない? すごく寒いんだけど……」
「ないわ」
「ちっ」
「舌打ちしない。仕方ないでしょ。タイツで後は魔法で誤魔化すだけね」
「はぁ……」
溜息をつきながら着替えていく。窓から外を見れば、雪が降っている。もうまもなくクリスマス休暇がやってくる。こんな気温なのに足をほぼ出すとかありえない。まあ、男としては歓迎できるが、自分がそうなると思うと御免こうむる。
「今日のメニューは?」
「ランニングからだな」
「こんなに寒いのに~」
「私も嫌だけど……」
「走っていれば温かくなる」
調べてわかったことだが、魔法使いの戦いでも必要なのは魔法力だけじゃないとのことだ。体力や反射神経など、肉体的にも鍛えないといけないというのは納得だ。如何にして魔法を素早くあて、相手の攻撃を回避する。これらは全部、必要な技能だ。特に少数精鋭になる僕達には重要なファクターだ。
「さて、いくか」
「は~い!」
「頑張らないと……」
三人で外に出てランニングを開始する。走りながら杖を振って浮遊呪文を使って雪を持ち上げ、目標を作っていく。二週目にはそれを攻撃していくので、走りながら魔法を使う練習と攻撃の練習ができる。今日は特に雪が積もっているのでとても大変だ。周りからみたら雪で遊んでいるぐらいにしかみえない。
三周ほどしてから、息も絶え絶えな二人と格闘訓練をする。二対一でルサルカを殴り飛ばし、ジルを蹴り飛ばす。ルサルカは簡単だが、ジルは普通に反撃してくるが、バジリスクを取り込んだことで身体能力はかなりあがっているのでなんとかなる。二人が雪に埋もれてから、杖を振るって回復させてを繰り返す。
「無理! 肉体面じゃ二人に勝てない!」
「私も勝てないよ~」
「まだまだ」
「にゃろう……くらえ!」
「うわぁっ!」
ルサルカが魔法で無数の雪玉を作って放ってくる。そう、彼女は肉体面では僕達に勝てないが、魔法を使えば別だ。雪玉の弾幕を避けながら、こちらも同じように放っていく。ジルは素手で丸めてそれを僕達二人の弾幕を避けながら近付いて投げてくる。回避能力が高い。
「ゲームだ。今日のデザートをかけよう」
「「乗った」」
「当たったら1点。点数の多い人が負けだからね」
「任せて!」
「覚悟なさい」
三人で雪の上に倒れるまでやりあって、結局点数がわからなかった。ただ、そのまま横を向くと雪塗れで濡れて酷い姿にふと笑い声をあげてしまう。
「あははは、変な顔~!」
「髪の毛も雪だらけで、なによこれっ!」
「まったく、おかしい」
ああ、本当におかしい。まさか、僕がこんな風に笑うなんてな。そういえば、生きていた時に友達と呼べるのはいなかったな。母親や父親に捨てられ、孤児院では低俗な力もない愚か者ばかり。魔法を使える奴だって僕のことを馬鹿にして……
「ジニー、どうしたの? どこか痛い?」
「大丈夫? 変な所にあたってないわよね?」
僕が憎しみと怒りで歪んだ顔を覗き込んできた二人は心配そうにこちらを見詰めながら、治療の魔法を使ってくる。まだまだ下手糞で、それでも温かい感じがする。
「大丈夫。二人は?」
「大丈夫だよ~」
「ええ、平気よ。身体中が痛いけれど」
ジルが抱き着いてきて、頬をすりすりしてくる。彼女の温かさとすべすべな肌が気持ち良い。このまま眠ってしまえば──
助けてっ、二人共! 騙されないでっ! お願いっ、気付いてっ!
「眠っちゃ駄目よ」
「寒いしはやくお風呂いこ~」
「そうだ、ね」
いやぁぁぁぁぁぁっ、お願いっ、お願いィいいいいぃぃぃぃっ!!
──二人に差し出された手を握って立ち上がり、魔法で軽く水を飛ばして乾かしてから風呂に移動する。風呂場に移動し、服を脱いでから身体を洗ってもらう。女の洗い方なんてわからないが、一ヶ月はこの身体なので、ある程度はわかる。なのでジルを洗って、僕はルサルカに洗ってもらう。
風呂が終わり、食事を食べたら授業を受けて図書館で過ごす。しかし、図書館の本は大概読んでしまった。変わっていない本もあったからだが、もうここには禁書しかない。
「少し出てくるから、二人は勉強していてほしい」
「どこ行くのよ?」
「ロックハートのところ」
「ロックハート様の! 私も行く!」
「ジルはどうする?」
「ん~まだここで勉強してる~」
「わかった」
さて、ルサルカと一緒に司書の人に許可証用の用紙を貰ってから二人で移動していると、前方からスリザリンの生徒が歩いてきた。その先頭は銀髪オールバックの生徒で、後ろに大きな男子生徒を連れている。
「げっ」
「やあ、グリフィンドールの諸君。おや、君はウィーズリー家の娘か。なんで君の兄とポッターはまだホグワーツのいるのかな? あれだけの事をしでかしておいて。ああ、それは君の父親もかわらないか。なにせ取り締まる側が違法行為をしているのだから、魔法省の恥だ」
お父さん……お母さん……
これは何を言っている?
「なんのこと?」
「車の件だよ、もう忘れたのかい? 頭はだい──」
杖を軽く振るって無言呪文で
「ま、マルフォイ?」
「「ドラコ!」」
「じ、ジニー、なにをしたの?」
「少し五月蠅いからお仕置きしただけ。別に命の別状はないよ」
「そう、よかった。まあ、これでこりたでしょう。行きましょう」
「ああ、そうだね。そこの二人、彼を保健室に連れていってあげるといいよ。どうやら、貧血みたいだし」
「「っ!?」」
二人はこちらを見て驚いた表情をしてから、すぐにドラコ・マルフォイ、ルシウスの倅を連れていった。僕達はそのままロックハート教授の部屋へと到達した。
「ロックハート教授、いらっしゃいますか?」
「はい、いますよ。おや、可愛らしいお嬢さん方。この私にどのような御用かな?」
「実はサインを頂きたくて……」
「サインですか! もちろん大歓迎です。どうぞこちらへ!」
「ロックハート様のサイン! 感激よ!」
部屋の中にロックハートのポスターやグッズでいっぱいで、頭がイライラしてくる。だが、ここは我慢だ。まず、ロックハートが好きなルサルカに話させ、教科書を取り寄せ呪文で持ってきて、それを差し出してサインを頼む。
「先生、母がファンなんです。ここにサインをしていただけませんか? できれば複数に……」
「もちろんかまいませんとも。お二人のような可愛らしいお嬢さんのお願いならね!」
三枚の書類と教科書モドキにサインをしてくれた。この教科書はすぐに売ろう。今なら高く売れるだろう。それにしても、本当にコイツが教師とか、ダンブルドアは耄碌したんじゃないだろうか?
少し試してみるか。ルサルカに楽しそうに自慢話を放している時に開心術を使う。反応することすらできずに面白い情報が伝わってきた。コイツ、他人の功績を横取りしてから、忘却術で記憶を消してあたかも自分がやったかのように本に書いて出版していたようだね。さて、この愚か者をどうしようか? まあ、今の所は利用させてもらえばいいか。
「ありがとうございました。ルサルカ、そろそろ戻らないと、ジルが可哀想」
「あ、そうよね。それでは先生、またきます」
「ええ、何時でも歓迎いたします」
部屋を出て図書室に向かう。そこで禁書の閲覧許可書をみせて新しい本を借りる前に……ジルと遊ばなければいけなさそうだ。長い時間を一人にされて拗ねていた。
なんで、気付いてくれないの……?
落差が激しい? 境遇の違いだね。 はして彼と彼女の未来は……
次回
クリスマスイブと休暇の突撃マルフォイ邸!
未定です。
続けるかどうか
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続けて欲しい
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いらない