【ホグワーツ 食堂】
クリスマスが近づき、ホグワーツはどこか浮ついた空気になっている。真っ暗な世界に閉じ込められる前は取り巻き達と楽しいパーティーをしていた。良い子を演じていたこともあって大変だったが、ただの行事だ。
それは今回もかわらない。なにせジニーに化けているだけだ。だが、この二人には色々として仲間になってもらうつもりだ。だからこそ、プレゼントを上げて好感度を稼ぐべきなのだが……金がない。ジニーの全財産は5ガリオン(4500円)。これが生まれてから今まで貯めていたお金のようだ。1年で1ガリオンももらえたらいいほうだというやばさ。こんな金額ではろくなプレゼントも買えない。これは早急に金策をしないといけない。なら、絞れるところから絞ろう。そう思って手紙を書いてフクロウを飛ばす。これでクリスマス休暇中に金が入るだろう。
フクロウを出した帰りに購買によってジルにプレゼントするナイフと、白い手袋を購入する。それから必要の部屋で白い手袋とナイフに魔法を施していく。白い手袋は魔法で僕の血液でも溶けないようにして、しっかりと付けた糸で魔法陣を刺繍してやる。杖とまではいかないまでも魔法を使う補助にはなるだろう。ナイフは切断系と硬化系の魔法を付与し、切れ味と耐久性を格段に上昇させておく。いずれはバジリスクの牙で作ったナイフをやろう。その時は僕に身も心も捧げてもらうがな。
クリスマスイブ。盛大なパーティーが開かれ、馬鹿な双子が派手に悪戯をしている。僕達は料理を食べながら、これからの予定を話し合う。といっても、事前に決めている。
「じゃあ、三人とも私の家に来てくれるのね?」
「うん。どうせ孤児院にいてもご飯、ちゃんとでてこないし~」
「ジニーも大丈夫よね?」
「両親には連絡して友達のところに泊まると言ってあるから、平気」
「じゃあ、楽しい休暇になりそうね」
「ああ、ただ私は用事があるから、少しの間、一人で行動するからね」
「ええ、わかったわ。ジルはその間、私とすごしましょうね」
「うん。お洋服、いっぱい着せてくれるんだよね?」
「そうよ。いっぱいおめかししましょう」
「私はボーイッシュな奴で頼むよ」
「ジニーはそもそも、もっとちゃんとしたローブを着ないとね」
「お金が入ったら新しいのを買おうとは思うんだけどね」
「そう思って、はい」
「これは?」
「クリスマスプレゼント。手渡しよ」
「ふむ」
もらった袋には新品のローブが入っていた。黒色のローブで肌触りも良い。結構高い奴だな。母親から送られてきたセーターより断然いい。あんなのを着る気はない。
「ありがとう。大事にするよ」
「私もいい物を貰ったしね」
「私からはこれ~」
ジルはそういって鶏の丸焼きを前に押し出してきた。どういうつもりかと見詰めると、答えてくれた。
「ジニーが嫌そうにしていたから、雄鶏をいっぱい解体して、料理にしてもらったの! このナイフとっても便利♪」
嬉しそうに僕があげたナイフの鞘に頬擦りするジル。バジリスクと融合したボクにとって、バジリスクの弱点を少なからず継承している。例えば雄鶏の鳴き声を聞いたら身体が震えてぞわっとする。死にはしないが、とても不快なのだ。
「へぇ~それはありがとう。とっても嬉しいよ♪」
「やった~! 本当は他にも用意したいけど、お金がないから、ごめんね?」
「私もだよ。私達の中でお金を持ってるのってルサルカだけだろう」
「確かにそうね。私は実家……家にいる使用人から送ってもらったのが結構あるの。だから遠慮なく欲しい物があったら言ってね。できる限り買ってあげるわよ」
この言い方だと、家族から送られてきているわけではないのか。もしかして、両親と問題があるのか、それとも死んでいるのか、わからないな。
「いいの?」
「うん。皆で遊べる奴や、勉強に使う奴ならね」
「それはどうかと思うが……」
内心では嬉しいが、一応忠告しておく。変な奴に捕まったら困るからな。
「二人だけよ。それにジニーには色々と魔法を教えてもらっているから、授業料ね」
「だったら、私は二人に何を払えばいいのかな?」
「ジルは……身体?」
「わかった、身体で払うね! えっと、私を好きにしていいよ!」
「ちょっ……いや、わかった。じゃあ好きにさせてもらおう」
「きゃ~」
ジルを抱きしめて膝の上に乗せてやる。それから、ジルに食べさせながら、彼女の使い道を考える。そこで思い付くのは実験だ。ボクがやったように彼女も合成して強力な力を得させる予定だったし、今回の事は都合がいい。できれば二つの生物などを掛け合わせたいが、それの実験はまだまだ必要だし、大切な手駒であるジルでやるわけにはいかない。実験体はまず、動物でためして次に人だ。なにマグルや穢れた血を実験体にすればいいだろう。奴等も僕の役に立つのなら喜んでくれるはずだしな。ああ、それと魂に関する実験も色々とやらないと。
「ジニー?」
「ん?」
「あ~ん」
「あ~」
ジルに食べさせてもらう。ジルは隣のルサルカにも食べさせてもらっていた。本当に楽しく思えるクリスマスだ。他の席をみると、ロンと穢れた血が言い争っている。ハリー・ポッターは時折、額を押さえているが、不思議そうにしている。完全には繋がりを閉じられないか。こればかりは仕方がないのかもしれない。そんなことを考えていると、彼がこちらを向いたので、視線をジルに戻す。
スリザリンの方をみればドラコ・マルフォイが色々と楽しそうな話をしている。ふむ。手紙は出したが、奴がそれに応じるかはわからないな。マルフォイを使って脅しをかけておくとしよう。それと三人分の臭いを消しておかないとね。
【ホグワーツ特急 車内】
クリスマスのパーティーが終わり、休暇として家に戻る。そのために汽車に乗り、私服に着替える。二ヵ月もすぎればある程度は自分でもできるようになったが……やはり女性物には抵抗がある。ただ、ジニーの服は兄達の御下がりなのでそこまで問題はない。
着替え終えて少しすると、無事に駅に到着した。三人で協力してコンパートメントから荷物を取り出し、ホームに降り立つ。するとこちらに寄ってくる人がみえる。
「ジニー!」
声をかけられてそちらをみると、女性が抱き着いてくる。反射的に後ろに下がると、不思議そうにしている。彼女の顔を見て、それが誰かわかった。しまった。つい避けてしまった。
「誰?」
「……お母さん」
「なるほど。はじめまして。ジニーの友達の……」
両親やジニーの兄達も来たので二人を紹介する。ついでにさっきのことは友達の前だから恥ずかしかったということにした。それと思春期という理由づけをしてやれば必要以上にかかわってこない可能性が高い。
「それで、今日からお友達のお家にお世話になるのよね?」
「ルサルカの家に遊びに行く……の」
「本当にいいの?」
「はい。こちらは問題ありません」
ルサルカの家族も迎えにきていた。いや、執事か。流石はお貴族様だ。その執事が両親達と話してから、僕達は無事にルサルカの城へとだとりついた。ドイツの山奥にある古城。そこに執事と屋敷しもべ妖精達と暮らしているようだ。
「探検していい~?」
「いいわよ」
「図書室はあるか?」
「もちろん」
ドイツの魔法を楽しませてもらおう。どうせ途中ででかけるしな。
【???】
手紙が届いた。かなりまずい。息子が帰ってきて、例の少女について聞いてみるが、魔法をかけられたと憤慨していた。
「どうしたのですか、父上」
「なんでもない」
それからしばらく不安な日々が続いた。手紙が書かれた日は妻や子には外出を命じて私と屋敷しもべ妖精以外は誰もいないようにした。そして、運命の日がやってきた。
「旦那様、お客様です」
「わかった」
自ら玄関に出向いて迎え入れる。訪ねてきたのはフードを被って顔を隠していた少女だった。だが、中身はまったくの別物だ。
「やぁ、こうして身体をもって出会い、会話をするのははじめてかな、ルシウス・マルフォイ」
ああ、やはりあの方で間違いない。幼女の皮を被った化け物だ。こうして対峙しただけでわかる。私がどう足掻いたとしても殺されるしかないと。冷淡な蛇のような瞳に見詰められるだけで身体が硬直してくる。必死に足掻いて身体を動かす。
「ええ、そうです。ですが、まずは中にどうぞ。誰かに見られるかもしれません」
「それもそうだね」
「はい。こちらへ」
来賓室にご案内し、上座に座ってもらう。そして、私は床に膝をついて頭を垂れる。彼女はフードを取り、その素顔を曝した。やはり、予想した通りの顔だった。
「この度は御復活おめでとうございます」
「ああ、まったく苦労したよ。君の息子でも与えてくれれば不便はなかったのだが……」
「っ!? 申し訳ございません……」
誰が息子の身体をやるものか。家族だけはなんとしても守らねばならない。そのために誰が犠牲になったところで知ったことではない。
「まあいいさ。こうして身体を手に入れたのだから。だが、罰は与えないと駄目だよね?」
「は、はい……いかようにも……」
家族に類が及ぶなら刺し違えてでも……
「お金頂戴」
「は?」
手を差し出されて言われたことが信じられなかった。お金? いや、確かに重要だが、磔とかでは?
「いや、ウィーズリー家が思った以上に貧乏でね」
「……ああ、なるほど。理解しました」
「うん。とりあえず、援助してよ」
「かしこまりました。少々お待ちください。おい、すぐに飲み物などを用意しろ」
「ただいま!」
急いで隠してある金庫に移動し、そこにある裏金を全て鞄に詰め込んでもっていく。我が王は紅茶を飲みながら待っていた。
「とりあえず、1000万ガリオンが魔法省に気取られずに現状で用意できる全額です。残りは回収などせねばなりません」
「ああ、助かる」
「ははっ」
王がお礼を言われただと。もしや、変わられたのか? いや、話を聞いた限りでは日記帳に封じられていたのは学生時代の王だ。だったら、今なら……
「ああ、言い忘れていたが、しばらく行動は控えておけ。誰にも僕が復活したことは気取られるな」
「な、何故でしょうか?」
「今の状態じゃダンブルドアやハリー・ポッターに負ける」
「ダンブルドアはともかく、ハリー・ポッターにですか?」
「奴には守護がある。僕達にとっては天敵だ。だから、それを解除するためには色々と必要だ。それこそ……ああ、君には伝えていた方がいいのかな。よし、伝えよう。いいかい。オリジナルの僕は亡霊として生きている」
「な、なんと……」
「君がどちらにつくか、彼が復活する前に決めておくといい」
「わ、わかりました……」
「あと、用意して欲しいのは実験ができる隠れ家と素体だね。魔法生物や機材とか色々といるんだ。君、そういうところを保存している場所、持ってるだろ?」
「確かにございます」
「それをくれ。代価は、これでいいかな」
王が手首を切り、カップに血をそそいだ。するとカップが溶けていくではないか。
「これはバジリスクの毒だ。どのように利用するかは任せる」
「お、王よ……ま、まさか……」
「ああ、オリジナルの僕は敗北した。だから、ダンブルドア達を確実に殺せるようにこの子の身体を素体にして秘密の部屋にいたバジリスクを取り込んだ。もちろん、魔眼もある。だから、下手なことを考えないほうがいい」
「も、もちろんです……」
ニヤリと口が裂けているかのように笑う顔は化け物といえる。少し口が開けられると鋭い歯と伸びた犬歯。そして、滴り落ちる唾液。それら全てが私にとって死を直感させる。ましてやバジリスクの魔眼を持っているのなら、見られただけで終わりだ。だが、私は生きている。なぜだ?
「今は目に封印を施している。これを解除したら殺せるからね」
「……ダンブルドアとハリー・ポッターはキメラになるほどの相手ですか?」
「オリジナルと僕には時間という開きが大きい。だからこそ、オリジナルが絶対にやらない手を使うことで追いついて追い越す必要がある」
「それがキメラだと……」
とんでもないことをしてくれた。これでは息子を人質に取られたのとかわらない。ここで息子をホグワーツから転校させたら、叛意ありと判断されたら殺されてしまう。
「それによく考えてみてよ。前の戦いって、僕達の戦力が少なかったから負けたわけだ。だったら、今度はもっと戦力を用意し、連中を圧倒しないとね。最悪、味方だと油断させたところで殺すけど」
「わかりました。色々と用意いたします」
「頼むよ」
「お任せください」
お土産を検知不可能呪文がついた鞄に入れ、引き渡して我が王を見送る。
「じゃあ、またお金をもらいにくるから」
「かしこまりました」
彼女が帰ってから、ほっとして床にへたり込む。
「ち、父上……い、今のは……」
「お前は何もみなかった。いいな?」
「はっ、はい……」
「誰にも絶対に伝えるなよ。そして、彼女には絶対に関わるな。それがお前のためだ。噂にもするな。徹底的に距離をとれ。だが、あちらから話しかけられたり、頼み事をされたりしたら絶対に断るな」
「……わ、わかりました……」
これでドラコはどうにかなるだろう。問題はどちらにつくかだ。ナルシッサと相談しないといけない。
「(あれはウィーズリーの女だった。父上の言葉。そして、お金……ま、まさか、父上は浮気をしているのか! 彼女が母親になるかもしれないから、あのような……いやいや、父上に限ってそんなこと……)」
はい。お金を手に入れるためにルシウス・マルフォイを脅しました。ちなみに拒否したら殺されております。むしろ、使えるから生かしているだけです。だって、自分の正体がバレる可能性が高いのはルシウス・マルフォイが一番だから。
どう考えても幼女の皮を被った化け物だね♪ キメラ大隊を組織しなきゃ!
続けるかどうか
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続けて欲しい
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いらない