決闘クラブが行われる大広間へと移動すると、すでに大きなテーブルや椅子は片付けられ、布が被せられていた。中央には幾つもの台が設置されており、周りには興奮した面持ちで杖を持つ生徒がひしめき合っている。誰が教えるのか、どんな内容なのか、誰もが思い思い好き勝手に喋っていた。
「決闘クラブって結局なにするの~?」
「二人で向かい合って一対一の勝負だ。怪我人が続出したから、確かダンブルドアが解散させていたな」
「詳しいのね」
「……調べたからね」
実際はその時の事を体験しただけなんだが、間違いではない。そんな他愛ない話をしながら周りの生徒の中に混ざっていく。
「痛っ!?」
変な感じがしてそちらを見ると、ハリー・ポッターが額の傷を押さえていた。
「大丈夫ハリー?」
「うん。少し傷が痛かっただけ。もしかして、またヴォルデモー」
「その名前は出すなって! きっと気のせいだよ!」
ハリー・ポッターはこちらを振り向こうとしたので、即座に移動してルサルカの影に隠れる。また、カモフラージュのためにジルを後ろから抱きしめてやる。これで周りからは仲がいい女子生徒の戯れにしか見えない。それと無言呪文で封印や結界、閉心の術を強化しておく。これでハリーも傷が痛まないだろう。
「イングランドが誇る英雄様もきているみたいね。お手並み拝見できるかしら?」
「ハリー? どうだろうね。ロンから聞く限りはたいした事なさそうだけど。去年もダンブルドアのお気に入りでグリフィンドールが勝たせてもらったみたいだし」
「そうなの?」
「聞いた話では……」
ダンブルドアが駆け込みで点数をあげた話をしてやる。これによってスリザリンの得点を抜いて勝利を掴んだみたいだ。
「何よそれ、贔屓じゃない」
「いや、ちゃんとやったから」
話していると、こちらに気付いたのかロンがやってきた。少し怒っているようだが、こればかりは仕方がないだろう。
「じゃあ、何をやったのか言ってみてよ」
「それは……」
「言えないんじゃ、依怙贔屓で入れられたのと同じでしょ」
ジニーの真似をしながらそう言ってやると、ロンは顔を真っ赤にして反論しようとしたが、すぐに隣に居た穢れた血、ハーマイオニーによって口を防がれた。惜しい。
「私達はちゃんと得点を貰えるだけの事はしたわ。ただ皆に教えられない事もあるのよ。でも先生達はしっかりと知っているから文句はでないの」
「だいたい自分の寮が勝ったんだからいいだろ?」
「それもそうね。それに今年は私達が不正なんて言われないように大差をつけて勝つしね」
「だね~ボク達がか~つ!」
「私はどうでもいいのだけどね」
「そうね。確かに貴女達はたくさんの得点を稼いでいるわ。これからも頑張ってね。わからない所があったら教えるから」
「そちらもね」
互いに握手を笑いながら交わしておく。彼女はマグル生まれにしては僕と同じで優秀だ。だからこそ、彼女は基準になる。何処までやっていいのかがわからないから、去年、彼女がやった程度に収める予定だ。
「まったく、本当に驚きだよ」
「何がなの?」
「ジニーがパーシーみたいなガリ勉になった事だよ」
「確かに三人でいっつも図書室で勉強しているか、外で運動しているかだよね」
「私達は将来の事をちゃんと考えていますから」
「偉いわ!」
ロンとハリーの言葉にルサルカが答え、その答えにハーマイオニーが前のめりになりながら賛成してきてちょっと驚いた。
「まだ入学して一年目だよ!」
「でも、偉いとは思うよ。僕はまだ考えられないし……」
「三人は何になるつもりなのかしら? やっぱり魔法省?」
「目指すのはトップかな?」
「ジニーならできそうね」
「お手伝いするよ~」
「つまり大臣ね」
ニコニコしながら答える。でも、トップは大臣じゃない。帝王だ。僕が全てを支配する王となる。だから、今は力を付ける時だ。
「あ、来たみたいだよ~」
ジルの声で扉の方を見るとちょうど先生が入ってきた。入ってきたのはギルデロイ・ロックハートがきらびやかな深紫のマントを纏い、颯爽と中央へ進み出て舞台に飛び乗り、こちらにマントをたなびかせながら振り向き、観衆に向かってサッと手を振り「静粛に」と呼びかける。その後ろから入ってきたスネイプ先生の事など気付いていない。
「皆さん集まって。私がよく見えますか? 私の声が聞こえますか? 結構!」
好奇心と不安の目に加えてアイドルが現れたかのような歓声が鳴り響き、とても嬉しそうにしているロックハート。
「皆さんが知っての通り、禁じられた森で危険な魔法生物が現れました! ですのでダンブルドア校長先生から『決闘クラブ』を開くお許しをいただきました。私自身が数え切れないほど魔法生物との戦いを経験してきたように、自らを護る必要が生じた万一の場合に備えて皆さんをしっかり鍛え上げるためです。詳しくは、私の著書を読んでください」
ロックハートは満面の笑みを振りまきながら宣伝までしてきた。それから丸めて投げ捨てると、そのマントを数名の女子生徒が奪い合う。その中にルサルカまでも参加していた。
「今回の決闘クラブには助手としてスネイプ先生とチャンピオンでもあられたフィリウス・フリットウィック教授をお呼びいたしました! 武装解除呪文を使うだけの簡単な模範演技をお見せしますが、注意事項を教授の方からお願いいたします」
「はい。まず決闘とはいえ怪我はできるだけしないように気をつけるようマダム・ポンフリーに言われました。また開催の条件として武装解除呪文以外の直接攻撃を禁止を言い渡されております。直接攻撃には火など危険な物に限ります。金縛りや目くらましなどは問題ありません」
簡単に言ってしまえば怪我するような攻撃は禁止という事だな。拘束魔法などは問題なし、と。それ以外にもお辞儀のルールなど決闘に必要な事を教えていってくれた。
「それと一年生は参加禁止です。まだ魔法をしっかりと習っていませんからね。では、スネイプ先生、ロックハート先生。お願いします」
「はい。それでは私とスネイプ先生で模範演技をお見せします。よ~く見ておいてください!」
スネイプ先生とロックハートが舞台の上で対峙し、お辞儀をしてからフリットウィック教授がカウントを行っていく。それが0になった瞬間。互いに杖を引き抜いて相手に呪文を放つ。いや、ロックハートは倒れるように避けてスネイプ先生の武装解除呪文を回避する。同時にロックハートも武装解除呪文を放つが、スネイプ先生は瞬時に盾の呪文で防ぐ。追撃を次々と放つスネイプ先生にロックハートは転がりながら必死に避けて舞台の端まで追い詰められていく。
「「「ロックハート様っ!」」」
そして、スネイプ先生の武装解除呪文が命中してロックハートが吹き飛び、杖がクルクルと回ってスネイプ先生の手に収まった。問題はふっ飛ばされてきたのがこちらだったので、咄嗟にボク達三人が盾の呪文を使って防いだ。結果、ロックハートはまず僕の盾にぶつかり、弾かれてルサルカの盾で追撃され、最後にジルの盾によって受け止められる。だが、すぐに盾を維持できなくなって床に頭から激突した。
「大丈夫、ですか?」
「こほん。ええ、大丈夫です。この程度は旅をしていたらままある事ですからね」
ロックハートが立ち上がり、舞台の方へと戻っていく。フリットウィック先生により、スネイプ先生の勝利が宣言され、互いにお辞儀をしてからこちらへと改めて向き直る。
「このように一度体勢を崩すと巻き返すのはとても大変です。ですので、回避する時はしっかりと周りの地形を把握し、流れるように攻撃呪文と防御呪文を放つのが理想です。もちろん、制限がなければどうとでもなりましたが、今回はあくまでも生死を賭けた殺し合いではなく、試合であり負けても問題ないので皆さんも気兼ねなくチャレンジしてみてください」
「本当にあの状態からどうにかできたのか、教えてくれるかね?」
「おお、それはいいですね。どうやるか私も興味があります」
「先生方に聞かれたら答えるしかありませんね。なに、答えは簡単です。私の場合ですが、武装解除呪文を放つのではなく、広範囲に忘却呪文の霧を放ちます。これにより視界を封じると同時に相手が行動を数手は最低でも防御か、回復にかかるのでここで体勢を立て直して勝負に入ります」
「思った以上の解答が来たな」
「確かに命を賭けた時に使うべき戦法ですな。今回は不適切であり、被害が甚大になります」
「はい。そういうわけで魔法の使い方次第では劣勢を覆す事も可能です。ですが、今回は広範囲に影響を及ぼす魔法は当然禁止ですからね!」
先生達の話を聞きながら、これからどうするかを考える。どうせ参加はできないのだから、見学だけするか。それとも図書室へと向かうか。どちらにせよ……
「流石はロックハート先生ね!」
「思ったよりもやるね!」
「ああ、そうだな」
ロックハートの戦術は確かに正しい。相手の攻撃を避けてこちらは回避不能な攻撃を行う。それによって相手の行動を封じて攻撃か逃げるかを選択する。なるほど、理にかなっている。色々と問題があるが、戦闘には見るべきものもあるか。少しは見直した。
「でも参加できないのか、残念~」
「ジル、私達は普段からやってるじゃない」
「でもでも、やっぱり慣れた人じゃなくて初めての人と
「残念ながら直接攻撃は禁止されている。それに参加もできない」
「本当に残念だね~」
「そうだな」
「まあ、見学だけしていきましょうよ。ほら、イングランドの英雄様が次にやるみたいよ」
「確かにポッターとマルフォイの戦いか。これは見物かもしれないよ」
舞台では二人が互いにお辞儀をしてから、離れていく、そしてカウントが終わる前にマルフォイが振り返って魔法を放つ。
「エヴァーテ・スタティム!」
しかし、ハリーは予測していたのか、声に反応して回避してから即座に魔法を放つ。
「リクタスセンプラ! 笑い続けよ!」
「タラントアレグラ! 踊れ!」
今度は互いに魔法が命中し、ハリーは踊ってマルフォイは笑い続ける。見ていておかしな戦いだった。どちらもまだまだ子供だ。
「フィニート・インカンターテム! 呪文よ終われ!」
スネイプ先生が魔法を強制終了させてから二人を見る。
「マルフォイとポッター。もう一度だ。皆の者。これから我等が英雄であるハリー・ポッターとマルフォイが戦う。しっかりと見て参考にするように。1―2―」
有無を言わさぬスネイプ先生に二人は慌てて準備をしていく。
「3―」
「サーペンソーティア! ヘビ出よ!」
マルフォイの杖からヘビが出てきてハリーへと向かう……なんて事はせずにこちらへと恐る恐る振り向きながらじーと見つめてくる。
「
蛇の王たるバジリスクを感知したのだろう。このままでは不味いので視線と顔の向きをハリー・ポッターへと向ける。それに気付いた蛇は今まで無視していたマルフォイの命令に従ったように見えるぐらい即座にハリー・ポッターへと襲い掛かる。更にマルフォイは巨大化の呪文を使って蛇を大きな大蛇へと変化させた。
「エクスペリアームス!」
蛇に向かってハリー・ポッターが放つが、一切効果がない。そして、鋭い牙がハリー・ポッターへと向かっていく。この時点で教師陣が動く。
「ヴォラーテ・アセンデリ」
ロックハートが魔法を放つが、こちらは効果なし。だが、それでも蛇は一瞬だけロックハートを見てから即座に尻尾を振るって排除する。しかし、その間にスネイプ先生がハリー・ポッターの前に立ち、魔法を放つ。
「ヴィペラ・イヴァネスカ!」
蛇がスネイプ先生の魔法によって消えかけながらも牙をスネイプ先生へと突き立てようとする。
「
ハリー・ポッターから放たれた蛇語により、蛇は停止してこちらとハリー・ポッターへと視線をやる。もちろん、僕はボク達を守りにきている教授の後ろのルサルカの後ろに隠れている。故にばれないだろう。蛇がこちらにこようとしたところを更にハリーが蛇語を使って止める。そこで先生達が同時に魔法を放って蛇は完全消滅した。
その後、皆がハリー・ポッターが蛇語を使えると知って偉大なるサラザール・スリザリンの末裔や継承者ではないかと噂しだした。更に秘密の部屋の怪物と禁じられた森について関連付ける者も出てくる。これは非常に困る。部屋を暴かれたら困るのだ。故に僕は前と同じようにハグリットを利用しようと思う。蜘蛛を禁じられた森の浅い場所と城の中に放ち、秘密の部屋と何の関係もない事を証明しなくてはいけない。何故なら秘密の部屋はボク達が使っている工房だ。バレると困るのだ。色々とヤバイ品物も置かれているのだから。
ジニーは蛇が苦手と周りから認識されました。
蛇は存在の格が違う王様が近くにいたら委縮するのは当然。
ロックハートが強化されたのが謎