やはり超高校級の妹が希望ヶ峰学園に入学するのはまちがっている。 作:おおもり
モノクマ登場です。
「あ…れ…? こ、ここは…?」
意識を失った彼女が目を覚ましたのは、硬い机の上だった。
その体勢はまるで、授業中に居眠りをしてしまったかのようだった。
体がやけにダルい。
彼女もたまに授業中に居眠りをしてしまうことぐらいあったが、なぜさっきまで
そもそも、彼女がいるのは見覚えの全くない教室だった。
「どう…いうこと?」
小町は自分の置かれている状況が、全く理解できなかった。
とりあえず、教室にここがどこかわかりそうなものがないか見る。
「……あ」
教室を見渡す彼女の目に、時計が目に留まった。
時計が差す時間は八時五分前。
つまり、小町は三十分以上眠っていたことになる。
「あれ…?」
次に目に留まったのは監視カメラだった。
いくら最近物騒なことが多くても、教室内に監視カメラがある意味が分からなかった。
「…って何…これ」
その次に目に留まったのは、本来教室の窓があるべき場所。
そこには、鉄板のようなものが打ちつけられていた。
実際に触ってみると、それは明らかに本物の鉄板だった。しかも、かあり頑丈で分厚そうだ。
後、他に目についたものと言えば、なぜか嫌な予感のする教室のテレビぐらいだった。
「……お兄ちゃん」
不安になり、泣きそうになりながら兄を呼ぶも、答える声はない。
そうして、不安のあまり俯くと、さっきまで小町が突っ伏していた机には、一枚の紙があった。
『入学あんない
あたらしいがっきがはじまりました。
しんきいってん、これからは、この学えんないがオマエラのあたらしいせかいとなります。』
それは明らかに手書きとわかる、安っぽいパンフレットだった。
「誰かの悪戯かな? あれ? 学園生活ってことは、もしかして、ここって希望ヶ峰学園の教室?」
とすると、自分は学校の昇降口で立ちくらみ、ないしは貧血で倒れ、それを誰かが運んできた?
「いや、それは違うよ。そこは普通保険室でしょ。それに…」
学校の雰囲気がどこか異様だった。
それはまるで、閉じ込めらえているかのような圧迫感だった。
「とりあえず、さっきの場所に行ってみよう…。もうすぐ集合時間だし。誰かいるかも」
小町はまず、さっき自分が倒れた昇降口に行くことに決める。
♦
廊下に出ると、そこには誰もいなかった。
「と、とりあえず、昇降口に行けばみんないるよね! うん!」
自分に言い聞かせるようにして、小町は歩き出す。
しかし、場所がわからないのでとりあえず歩いた先に、『絶望ホテル』というプレートがはめ込んである場所があった。
「ホテルってことは寮か何かかな? でも、何だろう『絶望ホテル』って」
とりあえず、そこを後にした小町は、反対方向へと進路を変えた。
「何だろう。この赤い扉」
歩いた廊下に曲がり角があり、曲がらず進んだ突き当りになる場所に、赤い大きな扉があった。
しかし、不気味なので今は開けずにいることにした。
廊下を曲がってさらに進むと、視聴覚室と購買があり、その近くに非常口のマークのある扉があった。
「あそこかな?」
小町はとりあえずそこに入ってみることにする。
♦
彼女が入った先は、やはり先ほどの
そして、そこには彼ら―――彼女と同じ新入生だと思われる少年少女達がいた。
「オメーも…ここの新入生か…?」
うにというか、爆発したような頭の学ランを羽織った生徒が小町に訊いてきた。
「じゃあ…みなさんもですか…!?」
それに答えたのは気の弱そうな少女だった。
「うん。今日、希望ヶ峰学園に入学する予定の…新入生だよ」
「これで十五人ですか…。キリがいいし、これで揃いましたかね…」
と、太った体系のリュックを背負った少年が言う。
その時、
「うわっ!?」
「あうっ…!?」
後ろから小町に人がぶつかった。
「ご、ごめん。人がいるなんて気が付かなくて…」
「いえ、大丈夫です。出入り口の前に立ってた小町も悪いですから…」
そう言って振り返ると、そこにいたのはなんとも平凡を体現したかのような出で立ちの少年だった。
「失敬。どうやら、十六人だったようですね」
先ほどの太った少年の声に小町が再び彼らの方を向き、全体を見渡す。。
(なんていうか…お兄ちゃんに負けず劣らず、キャラの濃さそうな人たちだなあ)
何と言えばいいか…オーラがある、っといった感じだった。
「オメーも新入生…ってことでいいんだよな?」
爆発頭に訊かれた少年が答える。
「えっと、うん。はじめまして…苗木誠って言います…」
そう言って、苗木は小町を見る。
そこで小町は、今度は自分の自己紹介が求められている流れだと気づく。
「あっ、小町は比企谷小町っていいます。みなさん、よろしくお願いします!」
二人が自己紹介を終えると、白ランの少年が二人を指差した。
「にしても、君たち遅いじゃないか! 八時集合と知らされていたはずだろう! 入学初日に遅れるなど言語道断だ!」
いきなり叱られて、小町が目を白黒させていると、苗木が弁明を始める。
「いや、なんか寝ちゃってて遅れたんだ…」
それを聞いて、小町を含めた全員がざわつく。
「えっ!? オメーもそーなんか?」
「これはますます妙ですわね」
「むむむ…。これは異常事態宣言発令ですぞ」
彼らの反応がわからず、苗木が訊いた。
「ねえ、どういうこと? 状況がよくわからないんだけど…」
「いや、そんなことよりも君たちの厳正な処罰を―――」
苗木が事態についていけないことを『そんなこと』扱いし、白ランが何か言い始めた。
しかし、ギャルっぽいのがそれを遮る。
「はぁ!? 何言ってんのあんた!? こんな状況なんだからしょうがないでしょ!」
そう言って、ギャルが白ランを諌めていると、今度はジャージの少女が思いついたように言う。
「そうだ! それより、改めて自己紹介しない!? 遅れてきたクラスメイトの為にもさ!」
ジャージの少女の提案に、リーゼントに長ランの『俺はヤンキーだおらあ!』と自己主張しているかのような長身の男が『はぁ!?』という顔をする。
「…自己紹介だぁ? んなことやってる場合じゃねーだろ!!」
しかし、長ランヤンキーの反対に、黒髪にゴスロリの少女が反論する。
「ですが、問題について話し合う前に、お互いの素性はわかっていた方がよろしいでしょう。なんてお呼びしていいのかわからないいままでは、話し合いもできないじゃありませんか…」
その意見に、二人のそれぞれ違う制服の女子が賛成する。
「それもそうだよねぇ……」
「じゃあ、まず最初に自己紹介ってことでいいですか? 話し合いは、その後という事で…」
ここまでの流れを聞いていた小町は、すぐ横の苗木を見る。
(さりげに説明求めたこの人忘れられてる…。お兄ちゃんほどじゃないけど、存在感のない人だなぁ)
小町の視線に気づいたのか、苗木が小町の方を向く。
「えっと、比企谷さんだったよね?」
「うん、そうだよ。比企谷小町。『超高校級の妹』です」
小町の自己紹介に、苗木は『ん?』という顔をする。
「『超高校級の妹』…ってどんな才能なの?」
訊かれた小町は、少し考えてから答える。
「プロフィールのほぼすべてに兄が絡むらしいよ」
「例えば?」
「いいよ。質問してみてよ」
「じゃあ、好きなことは?」
「貯金とお兄ちゃんをからかうこと」
「…得意科目と不得意科目は?」
「基本的にできないものが多いけど、一番得意なのはお兄ちゃんと同じ『国語』で、一番苦手なのはお兄ちゃんと同じ『数学』かな」
「……特技は?」
「猫の世話とお兄ちゃんの世話」
苗木は少し考えて、何か思いついたような顔をする。
「…………えっと、お兄さんの現在の学校は?」
「ここ」
「えっ?」
「ここの三年」
「…………ちなみ、才能は?」
「『超高校級のぼっち』だよ!」
「……………さすが『超高校級の妹』だね」
苗木が疲れたような顔で褒めるので、とりあえずお礼を言うことにしておく。
「どうもありがとう。それで、苗木君はどんな『超高校級』の才能なの?」
小町の質問に、苗木は恥ずかしそうに言う。
「僕のは大したことないよ。だって、ただ運が良かっただけだから…」
「『運』ってもしかして…」
「うん。僕が『超高校級の幸運』の苗木誠」
「そうなんだ。これからよろしく」
「うん」
その後の自己紹介によって、彼らの名前と『超高校級』がわかった。
『超高校級の幸運』苗木誠
『超高校級アイドル』舞園さやか
『超高校級の野球選手』桑田怜恩
『超高校級の???』霧切響子
『超高校級の御曹司』十神白夜
『超高校級のスイマー』朝日奈葵
『超高校級の風紀委員』石丸清多夏
『超高校級の文学少女』腐川冬子
『超高校級の暴走族』大和田紋土
『超高校級の格闘家』大神さくら
『超高校級の同人作家』山田一二三
『超高校級のギャンブラー』セレスティア・ルーデンベルク
『超高校級の占い師』葉隠康比呂
『超高校級のギャル』江ノ島盾子
『超高校級のプログラマー』不二咲千尋
(話してみると思った以上にキャラ濃いなぁ)
「おい」
クラスメイトのあまりの濃さに驚いていると、十神が言った。
「自己紹介が終わったならさっさと本題に入れ」
そこで、苗木が思い出したかのような顔をする。
「そういえば、さっき何か言ってたね。『緊急事態』とか、『妙だ』とか」
その言葉に、舞園が答える。
「えっと、それはですね。苗木君言いましたよね? 『寝ちゃってて遅れた』って。それって私達も…一緒なんです…」
その言葉に小町が驚く。
「一緒って…みんなもそうだったの?」
桑田が『参った』というように頭をかく。
「ここに入った直後に、いきなり気を失っちまってさぁ…。そんで、気づいたら校内で寝てたっつー訳! オメーらもそうなんだろ?」
桑田の質問に苗木と小町は頷く。
「でも、それって変じゃない? ここにいる全員が気を失うなんて…」
「だから困ってんだろうがッ!!」
疑問を言う小町に大和田がキレた。
「ひっ……!?」
いきなり暴走族のリーダーに怒鳴られ、小町は涙目になる。
「ちょっと! 女子に怒鳴らないでよ!」
「非力なものに手を上げるというなら、我が相手になるぞ…」
小町を庇うように、朝比奈と大神が前に出る。
「わ、わるかったよ…。つい、頭に血が上っちまったんだよ…」
「…それは、我ではなく比企谷に言うべきではないのか?」
言われた、大和田は小町の前に来る。
「いきなり怒鳴っちまって悪かった!」
そう言って、大和田は小町に頭を下げた。
「あ、いえ、大丈夫です」
まだ、若干怯えているものの何とか言葉が口に出る。
そんな小町を、朝比奈と大神は心配する。
「大丈夫、小町ちゃん?」
「あ、うん。大丈夫だよ、朝比奈ちゃん」
「私のことは葵でいいよ」
「うん。ありがとう葵ちゃん。大神さんもありがとう」
「うむ。何かあればいつでも我に相談してくれ」
「うむ! 仲がいいのは良いことだ!」
状況を見ていた石丸が感心したように言う。
「しかし、気になることは他にもある。教室の窓に打ち付けられていた鉄板…。あれは一体なんだというのだッ!?」
「それを言うなら、あたしの荷物どこ行っちゃたの? ケータイもないんだけど…」
江ノ島の言葉に不二咲や山田も同調する。
気になって小町も自分の服のポケットを探ると、自分もケータイがないことに気が付く。
「いや、それだけじゃなぞ!」
そう言って、石丸が振り返る。
「ここの玄関、奥の入り口が妙な鉄の塊で見事に塞がれてしまっている…。僕が入って来た時には…こんなものなんてなかったぞ!? なぜだッ!? なんなのだッ!?」
そこで、江ノ島が青い顔をする。
「もしかして…犯罪チックなことに巻き込まれたんじゃ…?」
それに、桑田も顔が青くなる。
「誘拐…とか…? オレら…みんなして、希望ヶ峰学園から連れ去られた…なんてオチ?」
「いやいや、そりゃねーって。きっと学園のオリエンテーションだべ。つー訳で、俺はちょっくら一休みすんべ…」
「そっかぁ。そういうドッキリイベントかぁ」
葉隠ののんきな言葉に、不二咲は本気で安心したように言う
「何? そういうことなの…? ならオレも昼寝させてもらうけど…。オレモ昨日夜更かしして眠いし」
そうして、全員の気が緩んだとき、それは唐突に始まった。
『キーン、コーン… カーン、コーン…』
「えっ?」
それは、紛れもなく学校のチャイムだった。
そして、ザザザッっというノイズ混じりの音と共に、天井付近に設置されたテレビが砂嵐のようなノイズに影を映して映っていた。
『あー、あー…! マイクテスッ、マイクテスッ! 校内放送、校内放送…! 大丈夫? 聞こえてるよね? えーっ、ではでは…』
それは、今の状況に似あわない、場違いなほどに明るい声だった。
それに小町は強烈な不安と恐怖と不快感を覚えた。
それはまるで、誰かのお葬式で死者を大笑いで見ている人を見てしまったような気分だった。
『えーっ、新入生のみなさん…。今から入学式を執り行いたいと思いますので…至急体育館までお集まりくださ~い…て事で、ヨロシク!』
そう言って、テレビはブツンッと切れてしまった。
「なに…? なんなの、今の?」
「俺は先に行くぞ…」
状況を飲み込めずに江ノ島は慌てるが、十神は自分は関係ないと言わんばかりに出て行った。
「ちょ…ちょっと! なんでいきなり行っちゃうの!?」
「入学式…なるほど、そういう事ね…これは入学式って催し物の一部だったってか。笑えんべ! こいつは笑えんべ! 実際、リアルに笑えんべ!じゃあ、俺も行くとすっか。お次は、どんな趣向のイベントかなっと…」
十神を怒る江ノ島を尻目に、葉隠は納得したように言い、そのまま出て言った。
それに続き、桑田、不二咲、セレス、腐川と続々と出ていく。
江ノ島や舞園は不安がるも、霧切りと大神に説得され、結局体育館に行くことにする。
「ねえ、小町ちゃん、さくらちゃん、舞園ちゃんも霧切ちゃんも江ノ島ちゃんも一緒に行こっ!」
すると、朝日奈が先に行った腐川と不二崎、セレス以外の女子を誘いに来た。
「悪いけど私は一人で行くわ」
「あたしもそうする」
霧切と江ノ島は誘いを断り一人で出て言った。
小町は特に断る理由がないので、四人で行くことにした。
しかし、彼女は別に一人でもよかった。
『超高校級のぼっち』という超孤独体質の兄とそれを強固にする教育を行った父の影響により、小町は『集団に普通になじめるが、どちらかと言えば一人も平気というか、むしろ一人の方が好き』な少女なのだ。
彼の兄曰く『次世代を担うハイブリッドぼっち』…いわば、『超高校級のぼっち』予備軍でもあるのだ。
「にしても、他の生徒―――先輩方はどこに行ったん出ようね?」
「きっと、体育館で入学式の為にスタンバってるんじゃない?」
舞園と朝比奈の会話に現実に引き戻される。
この学校の他の生徒、小町の兄―――比企谷八幡はどこへ行ったのか。
小町には、先ほどから嫌な予感がしてならなかった。
まるで、これから残酷な運命を突きつけられるような、そんな予感。
「比企谷よ、大丈夫か?」
小町の様子を不審に思ったのか、大神が小町を心配する。
「いえ、大丈夫です」
それを、小町は明るい笑顔を見せて取り繕う。
「そうか。なら、いいが」
大神はそれ以上追及することなく、再び前を向く。
(お兄ちゃん…大丈夫だよね?)
そして、小町は、これからはじまる最悪に絶望的な運命を予感しながら、それを否定し、いつも通りの兄の顔を見れること願って、体育館の扉を開けた。
♦
そこは、人数分の椅子がある普通の体育館だった。
「入学式…みたいだね? どこからどう見ても…」
自分が思った事と同じことを苗木が言った。
「ほら、俺の行った通りだべ? 今のトコ普通の入学式じゃねーか」
『ほら見ろ』というふうに葉隠が言った直後、その『普通』を否定するモノが現れた。
「オーイ、全員集まった? じゃあ、始めるよ~?」
その声に全員が教壇の方を向くと、教壇の後ろから何かが教壇に飛び出してきた。
「え…? ヌイグルミ?」
それは、黒と白の悪趣味なデザインのクマのヌイグルミだった。
「ヌイグルミじゃないよ! ボクはモノクマだよ! キミタチの…この学園の…学園長なのだッ!!」
全員、一瞬何を言われたのか理解できなかった。
「ヨロシクねッ!!」
「え、えええええ!? ヌイグルミが喋ったぁぁぁぁ!!」
「落ち着くんだ山田君! ヌイグルミの中にスピーカーが仕込んであるだけだ…!」
石丸が山田を落ちつかせようとするも、彼も顔が引きつっていた。
「だからさぁ、ボクはヌイグルミじゃなくて、モノクマなんですけど! しかも、学園長なんですけど!」
それからもふざけたやりとりがあるも、小町どうにも不安がぬぐえない感じがした。
「それじゃあ、そおそろ本題に本題に入ろっか」
おふざけがひと段落したのか飽きたのか、ようやく話が始まる。
「では、これより記念すべき入学式を執り行いたいと思います! まず、オマエラのような才能あふれる高校生は“世界の希望”でなければありません! ですので、オマエラにはこの学園内で、秩序を守って楽しく暮らしてもらいます!」
(……あれ? なんだろう。すごい違和感がある。何かはわからないけど、すごく嫌な予感がする)
きっと気のせいだろうと思ったが、モノクマの次のセリフが、その嫌な予感が本物であると証明した。
「そして、この共同生活に期限はありませんっ!! 一生ここで暮らしてもらいます!」
「はっ?」
全員モノクマの言ってる意味が分からないという反応をするも、モノクマは全く取り合わない。
「それと、外の世界とは完全にシャットアウトされてるから、外の世界の危険はないよ」
そこで小町は強烈な引っ掛かりを覚えた。
「すみません」
「ん? 何かな比企谷さん?」
「…外の世界の危険ってなんですか?」
「えっ?」
今度はモノクマが固まる番だった。
「今言いましたよね? 『外の世界の危険はない』って…。ってことはこの学園の外が危険ってことですよね?」
その言葉にモノクマはにやりと笑う。
「さぁ、どうでしょうねぇ…まぁ、どうしても出たいなら、方法はあるけどね。『卒業』って言うんだけど…」
「…どんな、方法ですか?」
「この学校の秩序を破ったものが出た場合…そいつだけをここから追い出すんだよ。で、その秩序を破る方法は…」
そこでモノクマは言葉を切って、全体を見渡して、再びにやりと笑う。
「この学園で、誰かが誰かを殺す。それだけの、簡単なルールなのです! 殴殺、刺殺、撲殺、斬殺、焼殺、圧殺、絞殺、惨殺、呪殺…方法は問いませ~ん!」
その言葉に全員が凍りつく。
「てめぇ! さっきからナメたことばっか言いやがって! っざけんじゃねえぞこらぁ!!」
凍りつく空気の中、大和田がモノクマに掴みかかる。
「ふざけてる? それって君の頭の事?」
「んだとこらぁ!!!」
モノクマの言葉にさらに大和田がヒートアップする。
「君こそいいの? さっき言ったよね? 『秩序』を乱す生徒は追い出すって」
モノクマの言葉に大和田が怪訝な顔をする。
「あん? そりゃ、誰かを殺したときだろ?」
その言葉に、モノクマは答えない。
その代わり、モノクマから『ピコン、ピコン』と電子音がする。
「あぁ! だんまりかてめえ!」
モノクマはなおも答えず、電子音の間隔がどんどん短く、早くなる。
「危ないッ! そのヌイグルミを投げてッ!!」
突如、何かを感じ取ったのか、霧切が大和田に叫んだ。
「あ…?」
「早くっ!!」
「くっ…」
気圧されるようにして大和田がモノクマを投げた瞬間、モノクマが爆発した。
「爆…発した?」
「ってことはあのヌイグルミはもういないのか?」
「だからヌイグルミじゃなくてモノクマだっつってんだろ!」
モノクマがいなくなって喜んだのもつかの間、再びモノクマが教壇から現れる。
「大和田君…今のは警告だけど次はないよ? 学園長への暴力は校則違反だからね? 他にも校則違反をしたら殺すからね?」
「もしかして、アンタみたいなのが他にもいっぱいいるってゆーの?」
「うん。モノクマは校内のいたるところに配置されているよ。他にも監視カメラがあるから、校則違反をした生徒は今みたいな目に合うから気を付けてね。…というわけで、」
絶句する生徒たちを尻目に、モノクマはごそごそすると、機械のようなものをとりだす。
「これはボクからの入学祝の『電子生徒手帳』です! かっこいいでしょ? これは学園生活の必需品だから絶対に無くさないでね! それと、起動時に本名が表示されるからちゃんと確認するようにね! 詳しい校則もここに書いてあるから、確認のためにじっくり読んでおいてね! 何度も言うけど…校則違反は絶対に許さないから! では、これで入学式を終わります。 豊かで陰惨な学園生活をどうぞ楽しんでください! それじゃあ、まったね~!」
そう言って、モノクマはどこかへ去って行った。
呆然としていた小町たちも、これからどうすべきか騒ぎ始める。
「これはどういうことだ!?」
「どうもなにも…訳わかんねーよ!?」
ほとんどパニック状態になっている中、冷静な者もいた。
「みんな…落ち着いて…。とりあえず、今の話をまとめると、私たちに与えられた選択肢は二つ。一つは、『みんなと共にこの学園内で“期限のない学園生活”を送る』こと、二つ目は」
「『生きて出る為に、“仲間の誰かを殺す”』…でしたわね」
霧切とセレスが説明する。
「殺し合いなんて…そんな」
「いきなり殺しあえとか、どんなクソゲーですか!?」
「ありえない!? こんなの嘘だ!?」
石丸の言葉を十神が鼻で笑う。
「本当かウソかが問題ではない。問題となるのは、この話を本気にするやつがいるかどうかということだ」
その言葉に全員が押し黙り、お互いの顔を見回していた。
そこには、お互いの真意を探る、薄らとした敵意があった。
『誰かが裏切るのでは?』という疑心暗鬼は、先ほどのモノクマの殺し合いの言葉を、心の底に植え付けるかのようだった。
小町は思った。
期待に胸を膨らませて来た、私立希望ヶ峰学園。
ここは“希望”の学園じゃない…“絶望”の学園だったんだ、と。
というわけで、次回『CHAPTER1 イキキル(非)日常編』
もしかしたら、前後編になるかもしれません。
では、みなさまの感想お待ちしております