やはり超高校級の妹が希望ヶ峰学園に入学するのはまちがっている。 作:おおもり
やってみて改めて思いますが、ダンガンロンパってホントに長いですね…
(非)日常編
『誰かを殺した生徒だけがここから出られる…』
その思考が全員に行きわたり、重い沈黙となって場を支配する。
それを霧切が打ち破った。
「それで、これからどうするの? このまま…ずっと、にらめっこしている気?」
その全員に向けられた言葉が、彼らを現実に引き戻した。
「そうだな…確かにそうだ! 僕達はこんなところで立ち止まっているわけにはいかない! こんなことにも気づけなかったとは…誰か僕を殴ってくれないか!」
「いや、そんな暇あったら、別のことしろよ」
「ですが…、具体的に何をすればよろしいのですかな?」
「バァカ! んなもん、逃げ道探すに決まってんじゃん!」
「ついでに、あのヌイグルミ操ってる奴見つけて、袋叩きっしょ」
にわかに活気づく(というか殺気立つ)数人に、不二崎が恐る恐る言う。
「…でもさぁ、その前に、電子生徒手帳っていうのを見ておこうよぉ…。動き回る前に、モノクマの行ってた“校則”を確認しておいた方がいいと思うんだ。」
その意見にセレスが同意する。
「確かに、ルールを知らずに行動して、さっきのようにドカンとなってしまっては困りますものね」
「じゃあ、早速その“校則”ってのを確認しよっか…」
そして、いったん全員が電子生徒手帳の電源を入れる。
小町の電子生徒手帳も、起動させるとモノクマの言った通り、『比企谷小町』という名前が表示された。
小町は、電子生徒手帳の“校則”を選択する。
『1
生徒たちはこの学園内だけで共同生活を行いましょう。
共同生活の期限はありません。
2
夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。
夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。
3
就寝は寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。
他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。
4
希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。
特に行動に制限は課せられません。
5
学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。
監視カメラの破壊を禁じます。
6
仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
7
なお、校則は順次増えていく場合があります。
』
小町が苦い顔で顔を上げると、他のみんなも似たような顔をしている。
「ざけんな、なにが校則だ! そんなモンに支配されてたまっかよ!」
「でしたら、校則など気にせず行動してみたらいかがですか? わたくしとしても、校則を破った方がどうなるか気になりますし…」
「しかし…そんな事にれば、大和田紋土殿は、残機ゼロ状態に…」
「…俺は兄貴に『“男の約束”は絶対守れ』って言われてんだ。まだ俺は“男の約束”を果たしてねえ…。だから、ここで死ぬ訳にゃいかねーんだよッ!」
「よくわかりませんが、とりあえず、校則は守るという事でよろしいですね?」
「…ん? あぁ、…そうなるかな…」
「あの、ちょっといいですか?」
一度は熱くなった大和田が冷静になったところに、舞園が入る。
「校則の6番の項目なんですけど…これって、どういう意味だと思います?」
舞園が言っているのは『自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません』の部分だろう。
苗木他数人も首をひねる。
「…卒業したいなら、誰にも知られないように殺せという事だろう」
十神がなんでもないことのように言う。
しかし、腐川が『えっ!?』という顔をする。
「ど…どうして?」
その言葉に十神が腐川を睨む。
「愚民が…。お前ごときが俺に疑問を持つな」
「…なんだか、ぐっとくるわね」
「えっ…グサッとじゃなくて?」
腐川の反応に思わず聞いてしまった小町や他の生徒が腐川の発言にドン引きしていた。
ちょっと間が開き、全員今の腐川の発言を『なかったこと』にして話を進めることが沈黙の了解になり、朝日奈が提案する。
「とりあえず、殺人とかわけわかんないことは置いといて、校則もわかったんだし、みんなで学園内を探索してみようよ!」
「ここがどこなのか? 脱出口はないのか? 食糧や生活品はあるのか? 僕らには、知らなければならない事が山積みだッ!」
「うぉっしゃあ! さっそく、みんな一緒に探索すんぞー!」
「…俺は1人で行くぞ。すでに誰かを殺そうとしてる奴がこの中にいるかもしれないからな。そんな奴と一緒に行動するつもりはない」
「ちょっと待ってください。そんなこと、あるわけないじゃないですか」
十神の言葉に、舞園が反論する。
しかし、彼は舞園を睨む。
「ないとは言い切れないはずだ。だからこそ、お前らは“卒業”のルールに恐怖したんだろう? 違うか?」
「…それは」
「…俺は自分の思った通りに行動させてもらう」
そう言って、十神は体育館を出ていこうとする。
小町はそれを見て思った。
(御曹司っていうより小物感がすごいな、あの人)
しかし、その十神を大和田が『自分勝手は許さない』と止める。
それに関しては大和田以外全員が『お前が言うな』という空気になったが大和田は気が付かない。
その後、大和田と十神の口論を止めようとした苗木が大和田に殴られて気絶してしまった。
そのため、桑田と舞園で苗木を部屋に送ることになり、他のメンバーもいったん別行動で探索することになった。
♦
小町は何となく一人で探索したい気分だったので、単独行動をすることにした。
「うーん。なんだろ、このシャッター…」
現在小町がいるのは体育館に向かう途中にある、二階に続く階段を塞いでいるシャッターの前に来ていた。
「これのせいで二階に行けないし…。お兄ちゃん、大丈夫かなぁ…?」
ふと、小町の目に光るモノが映る。
拾ってみると、モノクマの顔が彫られている。
「何これ、コイン?」
「違うよ!」
「うわッ!?」
コインのようなものを眺めていると、突然モノクマが現れる。
「それはモノクマメダルだよ。購買のモノモノマシーンでつかえるやつ」
「モノモノマシーン?」
「まぁ、ようはガチャガチャだよ」
「うわ、ぶっちゃけたなぁ…」
「他にも色んなとこにあるから探してみてね! ウププププ」
説明を終えると、モノクマはどこかへ去って行った。
「…もうちょっとだけ探してみよう」
その後、椅子の下やトロフィーの陰、体育館の扉の溝、テレビの裏にもメダルを見つけ、計5枚を手に入れたことになる。
「さてと…、購買に行こっと」
購買まで行き、小町が購買の扉を開けて中に入ると、先客がいた。
「およ、怜恩くん?」
そこにいたのは、超高校級の野球選手、桑田怜恩だった。
「お、比企谷ちゃんじゃん。何? もしかしてコイツやりに来たの?」
そう言って、桑田はモノモノマシーンを指差す。
「うん、そうだよ」
「見てくれよ、俺なんてこいつが出たんだぜ、『ブルべリの香水』!」
「えっと…これって、確か男の子に人気の香水だよね?」
「そ! これをつけると女の子にモテるって噂なんだよ!」
小町にはよくわからない感覚だが、モテる香水というのは、男子的には嬉しいらしい。
「じゃ、俺はもう行くわ」
そう言って、桑田は出て言った。
「じゃ、私も」
小町は一枚ずつモノモノマシンに入れて機会のレバー回した。結果は…
『イン・ビトロ・ローズ』
『高級チンチラシート』
『手ブラ』
『レーション』
『スモールライト』
「…何このラインナップ。っていうか、このシート体積的にどう考えてもカプセルに入らないよね!?」
出てきたものに対する謎すぎる疑問に小町は声を荒げるも、不毛だと悟ったのかため息をつく。
「はぁ…もう、そろそろ食堂に行こうかな…」
その後も、食堂での霧切以外の全員が集まって調査の成果を報告しあうも、特にこれといった有効な情報はなかった。精々、ここでの暮らしが保証されているという事ぐらいだった。そのすぐ後に、
霧切が登場し、ここが本当に希望ヶ峰学園であることが、彼女の手に入れた見取り図からわかった。そして、セレスの発案により、『夜時間は外に出ない』というルールが作られた。それからは、セレスの『シャワーが浴びたいから部屋に戻る』発言により、その日は解散した。
「ここが…私の部屋」
食堂からすぐの個室には、それぞれの名前のネームプレートがあり、小町の部屋は苗木誠の向かいだった。
部屋の内装の家具はベッドと学習机、丸テーブル、複数の引き出しなど、簡素なものだった。
「あれ?」
そこで彼女はふと、気づく。ベッド脇にある机上のそれに。
「お兄ちゃんたちの写真…何でここに?」
そこにあったのは家族の写真が入った写真立てだった。それは彼女が家を出る際、父と母より渡されたものだ。
もしも、彼女が普通に希望ヶ峰学園に入学していれば、何の疑問も持たなかっただろう。
しかし、今この部屋に初めて入ったはずの小町が写真立てをそこに置いているはずがないのだ。
「モノクマが荷物を運ぶ時に置いたのかな…? っと、小町も早くシャワー浴びちゃわなきゃっ!」
深夜時間には水が出ないらしいので、急いでシャワーを浴びる。
その時、壁の張り紙に目がついた。
『男子の部屋には『工具セット』、女子の部屋には『裁縫セット』が机の引き出しに入っています。なお、『裁縫セット』には、『人体急所マップ』もついているので、小さな針でも、相手を一撃で殺せます。男子は工具セットの道具で殴ることをお勧めします』
「…明らかに本来の用途から外れた方法を推奨しないで欲しいなぁ」
小町は張り紙を剥がし、ごみ箱に捨てる。
ちらっと時計を見ると、もう夜時間まで十分ぐらいしかなかった。
「…寝よっと」
そして、ドタバタした入学式とこれからの学園生活への緊張の疲れから小町はすぐ眠りについた。
♦
「…ん、朝?」
小町が目を覚ますと、そこは見慣れない天井だった。
「そっか…そういえば、昨日から希望ヶ峰学園に入学したんだっけ?」
小町は眠い目を擦りながらベッドから降りる。
『昨日の出来事がもしかしたら夢だったんじゃないか?』という淡い期待も、目が完全に冷めたことで否定された。
「ちょっと…シャワー浴びよう…」
小町自身に朝シャワーの習慣はないが、気分転換のためにシャワーを浴びる。
『オマエラ、朝です!――――――――――』
シャワールームに入る直前、モノクマによるアナウンスが流れる。それはつまり、現在時刻が7時であることの証だった。しかし、シャワールームの扉を閉めたことで、テレビのモノクマの声は全く聞こえなくなる。
小町はさっとシャワーを浴びて、なぜか大量にある自分が昨日来ていたのと同じ、中学校の制服を着て、食堂に向かう。
食堂には、ほとんどが食べ終えた後なのか、数人しかいない。
「あれ、比企谷ちゃんじゃん?」
「あっ、オハヨー比企谷」
「おはよー、怜恩君、盾子ちゃん」
「もしかして、比企谷ちゃんも二度寝した?」
『も』、ということは、桑田は二度寝をしたため朝食が遅かったらしい。
「ううん、小町はたまたま今日は朝シャワーだっただけだよ。それで…」
『盾子ちゃんは?』と訊こうとして、江ノ島もそれを察したのか、理由を話す。
「今日はマスカラの乗りがチョー悪くってさー、思いのほか時間食っちゃったのよ。比企谷何か良いの持ってない?」
「ううん、小町はそういうの使わないから」
「えー、もったいないって絶対! あんた、かわいいんだから」
「そうかなぁ…」
「そうだって、絶対!」
「あはは…って、あれ? 怜恩君は?」
「あいつならさっき食い終わって出てったよ」
「あ…そうなんだ」
自分たちばかり話していていづらくさせてしまったかもしれないと、小町は内心少し反省する。
すると、江ノ島も食べ終わったのか立ち上がる。
「じゃあ、あたしはもう行くけど、あんたはゆっくり食べてて」
「あ、うん。それじゃあね」
江ノ島が出ていった後、小町は黙々と朝食を食べ、その後は再び校内を散策することにした。
♦
「あれ、誠君と…さやかちゃん?」
小町がまず体育館に向かうと、体育館の扉の前にあるトロフィーなどが飾られているところに苗木誠と舞園さやかがいた。
「あ、比企谷さん。おはよう」
「おはようございます、比企谷さん」
小町が挨拶をすると、二人ともさわやかな笑顔で返してくる。
(むっ、この二人にはお兄ちゃんにはない爽やかさがある…)
「それで、二人はここで何してるの? …はっ、もしかして、デートだった!? 小町、邪魔しちゃった!?」
言われて、苗木はわたわたと顔を赤くして慌て、舞園も『えっ!?』と顔を赤くして俯く。
(ほほう…これは小町的に面白い展開になりそう…)
二人の反応を見て、小町は『いいものを見つけた』という顔をする。
「それで、結局二人は何してたの? まさか、本当にデート?」
「ち、違うよ!? 僕と舞園さんは僕たちを誘拐した黒幕が襲ってきたときのために護身用の武器になるものを探してただけで…」
「そ、そうですよ! 私と苗木君が、その…デートだなんて…」
「ごめんごめん、冗談だよ。それで、いいのは見つかったの?」
訊かれて、苗木たちは難しそうな顔をする。
「うーん。それが、あまりいいのがないんだよねえ…」
そう言って、苗木はトロフィーや盾の並ぶ棚を見る。
「それで、この模擬刀なんかどうかなんて話になってたんだけど…」
「すごい派手だね…」
「うん。それにほら、触ると金箔がすぐ手に付いちゃうんだよ」
模擬刀を触った苗木の手には、けっこうな量の金箔が付いていた。
「うわっ、ホントだ。これはちょっと触りたくないね…」
「でも、武器にするには長さ的にちょうどいいかもしれませんね。苗木君の部屋に飾っておけばいいんじゃないですか?」
「え? さやかちゃんは?」
「大丈夫です! 私は何かあったら苗木君が守ってくれますから!」
「僕じゃ力になれないかもしれないけどね…」
弱気なことを言う苗木に舞園は首を横に振る。
「いえ、苗木君がいてくれるととても心強いですよ!」
「そ、そうかなぁ…」
「はい。そうですよ!」
舞園と苗木のやりとりを見て、小町は笑顔が引きつる。
(えっと、二人は付き合ってないんだよね…?)
「えっと、二人は前から知り合いだったの?」
「え、そうですけど…なんでわかったんですか?」
「いや、男子と女子の割に仲良くなるのが早いなぁ…なんて」
「あぁ、そういうことですか。はい。私と苗木君は同じ中学の同級生なんです」
「じゃあ、その時から仲良かったの?」
「いえ、話したいとは思ってたんですけど、仕事の関係上でなかなかそういう機会がなかったんです。ちゃんと話したのは、ここでが初めてですね」
「そうなんだ…」
(それでもうあんなに仲良くなってるって…お兄ちゃんと違って二人ともコミュ力高いなぁ…)
兄の事を思い出し、小町はため息をつく。
「はぁ…お兄ちゃんは大丈夫かなぁ」
「え? 比企谷さんってお兄さんがいるんですか?」
「うん。この学校の3年にいるんだ」
「ということは、兄妹揃って“超高校級”なんですね!」
「まぁ、兄は“超高校級のぼっち”ですけどね…」
それを聞いて、舞園はキョトンとした顔をする。
「あの…ぼっちってなんですか?」
『!?』
(ま、まさか、『ぼっち』を知らないっていうの!?)
横の苗木を見ると、苗木も衝撃を受けた顔をしていた。
二人は顔を見合わせ、即座にアイコンタクトで会話する。
『ちょっと、誠君!? これどういうこと!? ギャグなの、天然なの!?』
『僕に訊かれても困るんだけど…。舞園さんのことだから天然の可能性も…』
『いや、女の子はみんな計算高いからなぁ…。必ずしもそうとは限らないはず…』
『で、でも、舞園さんに限ってそんなことは…』
『それは違うよ!』
『!?』
『わかってないよ、誠君。舞園ちゃんは女の子だよ。特に好きな男の子の前ならそういうふうに振る舞いたいものなんだよ…きっと!』
『それは違うよ!』
『!?』
『それはすべて君の憶測だ。ちゃんとした証拠があるわけじゃない。だから、舞園さんが僕のことを好きだなんて言えるわけがないんだ!』
BREAK!
『…なるほど、そういうことかぁ』
(この人も恋愛方面に関してはアレなんだ…)
『…?』
「あの…」
『!?』
会話(アイコンタクト)に夢中だった二人に、舞園が割って入る。
「説明はしなくていいです。二人の様子でなんとなく察しがつきましたから」
「えっ!? あんなのでわかるの!?」
「はい! エスパーですから!」
『えっ!?』
二人が驚いた顔をすると、舞園は悪戯が成功した子供のような顔をする。
「冗談ですよ。ただの勘です」
「なんだ…そうかぁ」
「で、ですよねー」
(この人だったらホントにありそうだなぁ)
苦笑はしているが、小町の顔は若干引きつっていた。
そこで、ふと小町は思い出したような顔をする。
「そういえば、誠君ってもうモノモノマシーンってやった?」
「それって確か、購買にあるガチャガチャだよね?」
「うん。確か、誠君って“超高校級の幸運”だよね? もしかしたら、“脱出スイッチ”とか出てくるかも」
「いや、さすがにそれは…」
「でも、苗木君の才能ならもしかしたらってことがあるかもしれませんし、行ってみませんか?」
「うーん、それじゃあ、ちょっとだけ行ってみようか」
(あれー、小町の時は全然だったのに舞園さんが言ったらあっさり手のひら返したー)
どうにも釈然としない気分のまま、小町は苗木と舞園の二人と一緒に購買に向かった。
♦
「これがモノモノマシーン」
「誠君、コイン持ってる?」
「それなら、部屋のゴミ箱に落ちてたのがあるよ」
そう言って、苗木はメダルをモノモノマシーンに入れ、レバーを回すと、出てきたのは…下手くそな字で『脱出スイッチ』と書かれたスイッチだった。
「ほら、そんな大したものじゃ…って、えええええええええええええええええええ!?」
「あはは…本当だね…って、えええええええええええええええええええええ!?」
「わ、私はみんなを呼んできます!」
「ちょっと待って!」
購買から出て行こうとする舞園を小町が止める。
「ちょっと待って、さやかちゃん! もしかしたら、モノクマの嫌がらせかもしれないから、ちゃんと確かめよう!」
「でも、どうやって確かめるんですか?」
言われて、小町は苗木の方を向く。
「誠君、ちょっと借りていい?」
「う、うん」
苗木から渡されたスイッチを、小町はじっくり見る。そして、目を閉じてじっくり考える。
「うん。わからないから押しちゃおっと」
「ええええ!?」
ポチッ
「うわっ!?」
スイッチを押すと、指先に刺すような痛みと共に、電流が流れたかのような痺れが全身を駆け巡った。
「いったぁぁぁ…」
「だ、大丈夫、比企谷さん!?」
「う、うん。ちょっと痺れただけだから…。やっぱり、悪戯だったみたいだね…」
「そうですか…」
舞園は期待が大きかったのか、かなり落胆したようだった。
「じゃ、じゃあ、今日はもう部屋に戻ろっか!」
「そ、そうだね。もう、そろそろ部屋に戻ろうかな…」
「そ、そうしましょう」
そのまま3人は購買を出て、自室へと戻っていく。
そして、誰もいない購買に、突如モノクマが現れる。
「まさか、10億分の1の確率でしか出ないアレを引き当てるなんて、さすが“超高校級の幸運”の苗木君だね。だけど、比企谷さんに押されちゃうなんて、全然ついてないし! ウププププ!」
『だけど、』と、モノクマはそこで言葉を切る。
「もしかしたら、それこそが幸運かもしれないねぇ! ウププププ!」
もしかしたら、脱出できたかもしれないIF。それは、一人の少女によって阻止されてしまった。それは幸か不幸か。
それがわかるのはまだ先の話。
♦
「…検査? 何それ?」
どこともわからない場所で、小町はの兄の比企谷八幡と食事をしながら話していた。
「ああ、よくわかんねえんだけど、学校の一大計画の要の適正があったから、参加してほしいんだけど念のためにもう一回検査させてくれってさ…」
「へえ…一大計画ってなんだろうね? この――――――がやるからにはすごい計画なんだろうけど…何でお兄ちゃんが要なんだろ。お兄ちゃんって、基本ただのぼっちだよね?」
「俺はただのぼっちじゃねえ。この――――――に選ばれた、いわばエリートぼっちなんだよ」
「またそんなこと言って…このゴミいちゃんは…」
「あっ、比企谷さん、お兄さん、おはようございます!」
「俺をお兄さんと呼ぶな…ていうか誰だっけ?」
「――――っすよ、お兄さん」
「だから、俺をお兄さんと呼ぶんじゃねえ」
「…あんた、人の弟に何ガンつけてんの?」
「あっ、——くんのお姉さん、おはようございます!」
「お前ちゃんと最初から見てた? 先に話しかけてきたのはお前の弟のほうだぞ?」
「はぁ?」
「あぁ?」
「ふ、二人とも落ち着いて!」
「やっはろー、小町ちゃん…あれ? ヒッキーと――さん、何やってるの?」
「あっ! ――さん! お願いです、うちの兄を止めてください!」
「無駄よ、小町さん。あの男はどうせ言ったところでやめないわ」
「あっ、————!」
「――さん!」
「あの、———―さん、いい加減その胡乱な呼び方はやめてもらえないかしら?」
「えー、いいじゃん。すごくかわいいと思うんだけどなぁ…もしかして、嫌、とか?」
「いえ、…に……かで…な………。た…、…………ただ…」
「ふはは…は………は! 剣…将…―――――! ………りに………ま……!」
「さ…、飯……たし、……行……ぜ、——」
「あ……!? ……扱……………な…!?」
「あ、八…! お……う!」
「と、…、と、…、——!?」
「今…、……に行……い?」
「お…! す…、…備す………待………く…!」
(あれ? 声が…よく、聞こえな…い?)
そのまま、小町の意識は闇に沈んだ。
♦
「うー、だるーい…」
翌日、小町は体調を崩していた。
「何だろ…昨日のスイッチのせいかなぁ…」
体調不良の理由のついて考えていると、インターホンが鳴る。
小町が部屋の扉を開けると、そこには石丸がいた。
「…失礼しましたー」
「いや、君、待ちたまえ! なぜ開けたドアを閉めようとするのだ!?」
「いえ、今日は体調が悪いので…」
「む…そうなのかね? 団結力を高めるために、今日からみんなで朝食を共にしようと思っていたのだが、そういうことなら仕方ない。今日はゆっくり休みたまえ! しかし、体調管理もしっかりしたまえ!」
「はいはーい。それじゃあねぇ…」
「うむ!」
石丸を適当にスルーして、小町は扉を閉める。
「はぁ、疲れたー。もう一回寝よ…」
そうして、小町はまた眠りにつく。
♦
そこはどことも知らない場所。
「えっ!? 大志君が!?」
「うん…今、警察の人が話聞きに来てるって…」
「話って、どういう事?」
「どうも事故じゃないらしくて…」
「そうなの?」
「うん…だけど、川崎くんが誰かと一緒にいるのを見たって人もいないらしくて…」
「最後は誰と一緒にいたの?」
「それが…」
「どうしたの?」
「夕方に比企谷さんのお兄さんと一緒にいるのを見たって人がいるらしくて…」
「え? それはないよ?」
「…え?」
「だって、お兄ちゃん昨日は小町と宿舎に帰ったし…。だから、お兄ちゃんが大志君と一緒にいたはずがないよ」
「…じゃあ、目撃情報自体が嘘だった…!? でも、なんのために…まさか」
「…? どうかしたの
「あ、ううん。なんでもない…」
「そういえば、苗…君とは……なっ…の?」
「え!? そ、そ…は、…の…」
「あ……、ま……だって……だ…」
「…、…め……さ…」
「いや、…ら…く…も…」
(あれ、また声が遠い…?)
♦
「ん…?」
「あ、よかった…小町ちゃん、目が覚めたんだ!」
「葵…ちゃん?」
目が覚めると、なぜかすぐ近くに朝日奈がいた。
「あれ? なんで葵ちゃんが私の部屋に…?」
「石丸が小町ちゃんの具合が悪いって言ってて気になって来てみたんだけど、ずっとインターホン鳴らしても反応ないから何かあったのかと思ってモノクマに頼んであけてもらったんだ」
「そうだったんだ…」
「でも、もう大丈夫そうだね! だったら、体育館に行こっ!」
それを聞いて、小町は怪訝な顔をする。
「体育館…どういうこと?」
「うん。モノクマが大事なことを伝えるからすぐに集合するようにって」
「そっか、じゃあ、体育館に行こっか」
そう言って、小町はベッドから降りると、若干ふらついた足取りで体育館へ行く。
体育館には、すでに小町と朝比奈以外の全員が集合していた。
そして、タイ区間に入った小町を目にとめて、何人かが彼女に近づく。
「比企谷よ、大丈夫か? 具合がよくないなら無理はするな」
「ううん、大丈夫」
「だけど、あんまり無理しすぎない方がいいんじゃないかな?」
「そうですよ! もしもがあったらどうするんですか!」
「本当に大丈夫だって! 少し疲れてただけだよ!」
まだ若干の倦怠感はあるものの、心配してくれる面々にあまり気を使わせないように強がる。
「それで、モノクマは何でまたみんなを集めたの?」
「それが、そのモノクマがまだ出てこなくて…」
「ん…? 呼んだ?」
「うわっ! いつの間に!?」
声のする方を見ると、いつの間に現れたのかモノクマが教壇の上に立っていた。
「ボクは考えたのです。どうしてオマエラがこんなドキドキな状況で殺し合いをしないのか…それはきっと『動機』がないからだと!!」
「…は?」
(動機…どういうこと?)
小町は訳が分からなかった。
動機…少なくとも現在は殺意を抱いていない彼らが誰かを殺しうる動機とは何か。それが小町には気になった。
「じゃ、視聴覚室に全員分あるから、ちゃんと見てね! ウププププ」
言うだけ言うと、モノクマは教壇から飛び降り姿を消した。
「…どうする、見に行く?」
「い、行くわけないじゃん、そんなの!」
「そうだな。どのようなものかもわからないのだからな…」
「へー、いいのかなー?」
「わっ!? また出た!?」
再び出現したモノクマに全員が驚く。
「いいって…何が?」
「だって、今回の『動機』は外の様子のことだよ?」
「…!? 外の、様子?」
「そ! 気になるでしょ? 例えば…家族のこととか」
その言葉に、全員が押し黙った。
「ま、気になるんなら行ってみればー? ウププププ!」
モノクマは今度こそ姿を消す。
動きたくても動けない空気を破るように霧切が口を開く。
「どうするの? どうやら、行くしかないみたいだけど、またずっと押し黙ったままでいる気?」
「まさか、当然見に行くに決まっていうだろう?」
「な、いいのか!? 奴は『動機』と言っていたのだぞ!」
止めようとする石丸を十神は軽く一瞥する。
「『動機』だからなんだ? お前はそれで殺す気があるのか?」
「な…!? 僕はそんなことはしない!」
「だったら別にかまわないだろう?」
その言葉に石丸は何も言えなくなる。
しかし、十神のその言葉は大義名分となるモノでもあった。
『自分たちは誰も殺さないのだから見ても大丈夫だ』…という大義名分に。
その後、全員が視聴覚室へ行き、自分の名前が書かれたDVDを他の誰かに見られないように互いに離れて座り、DVDをデッキへと入れる。
小町のDVDに映っていたのは…
『お、もう始まってるのか? 小町、見えてるか? 元気にやってるか? いつでも帰ってきていいんだぞ?』
『一応、八幡も元気? あんたは大丈夫だろうけど、あの子は友達とかちゃんと作れてる?』
小町の両親だった。
小町に対する甘さも、兄に対する若干の扱いの悪さもいつも通りだ。
両親の元気そうな姿に安堵していると、画面が切り替わる。
『あー、えっと…なんつーかサプライズ的なやつなんだが…』
『はぁ…比企谷君。もうちょっとちゃんと言えないの? 妹さんへのビデオレターでしょう?』
『そうだよヒッキ―! 小町ちゃんにもっと『がんばれー!』ってエール送ってあげようよ!』
『いや、こういうのよくわかんねえんだよ…』
『がんばって、八幡!』
『お、おう!』
『ふははははは! 情けないぞ! わが宿敵、比企谷八幡!』
『あ、材木座。お前は帰っていいぞ』
『ヌフン!?』
そこには兄とその級友らしき面々が楽しそうに映っていた。
「お兄ちゃん…」
久しぶりに見た兄のどことなく楽しそうな姿を小町は嬉しさで泣きそうになりながら見ていると、画面が暗転する。そして…
「え…?」
小町はそこに移っているものが何かわからなかった。
それは、先ほどまで両親がビデオを撮影していただろう家のリビングが荒れている様子だった。
ズタズタに引き裂かれた家具。
ところどころ血が飛んでいるリビング。
小町が言葉を失っていると、画面が再び切り替わる。
今度は、先ほど兄たちが映っていた場所。
そこはあたり一面が血で染まり、そこには一人の長髪の黒髪に黒スーツの少年が立っていた。
しかし、小町はその少年に見覚えがある気がした。
「もしかして、お兄ちゃん?」
小町がつぶやいた時、画面がモノクマの顔を映し出す。
『比企谷さんの家族は一体どうなってしまったのか!? 続きは卒業の後で!』
そんな言葉が表示されたと思ったら、すぐに画面が真っ暗になる。どうやら、ここで終わりらしかった。
「うわあああああああ!?」
「な、なんで…」
小町の後ろでも、様々な悲鳴が上がる。
「触らないでッ!」
小町が一際大きい声に声のした方を向くと、明らかに冷静じゃない顔をした舞園とそんな彼女に戸惑っている苗木がいた。
そのすぐ後、舞園は視聴覚室を飛び出し、それを朝日奈と苗木が追いかけて行った。
他の面々も重くなった空気に一人一人が出ていく。
小町は出て行こうとする面々を見て、その内の一人に違和感を覚える。
「ねぇ、ちょっといいかな?
♦
「で、なんで私が引き留められたわけ?」
現在、小町は江ノ島を自分の部屋に招いていた。
「えっと、気になることがあって…」
「気になること…?」
江ノ島の雰囲気が変わったことに小町は違和感を覚えた。
それでも、気になっていることを口に出す。
「ねぇ、盾子ちゃんって本名?」
「は?」
小町の質問に江ノ島はキョトンとする。
「いや、あんた何言ってんの?」
「うん…まぁ、そうなんだけど…じゃあ、むくろちゃんって知ってる?」
そう言った途端、江ノ島の顔が引きつる。
「えっと…それ誰?」
「いや、なんか夢に出てきた子に雰囲気が似てたというか…あ、もしかして盾子ちゃんって兄弟とかいる?」
「あ、それなら妹が…っていや、それただの夢でしょ? ありえないって!」
「だ、だよねー。変なこと聞いちゃってごめんね。これ、お詫びになるかわからないけど…」
そう言って、小町はモノモノマシーンで手に入れた『レーション』を差し出す。
すると、途端に江ノ島の目が輝く。
「えっ!? これホントにもらっていいの!?」
「あ、うん。もしかしたら、好きかなって」
「うん! これ好きなんだ! ありがとう、小町ちゃん!」
「ん?」
(あれ、この感じどこかで…)
小町はどこかで既視感を感じ、自然と口が開く。
「あのさ…」
「ん? なに?」
「さっき妹がいるって言ったよね?」
「…言ったけど…」
「もしもここから無事で出られたら…さ、小町のお兄ちゃんを紹介するから、盾子ちゃんの妹も紹介して欲しいかなー…なんて」
江ノ島は少し目を見張ったような顔をして、その後、江ノ島盾子らしからぬ顔をする。
しかし、小町にはそちらの方がより自然に感じられた。
「うん。きっとね」
そう言い、出て行こうとするところで江ノ島は立ち止まる。
「あのさー、比企谷」
「なに? 盾子ちゃん」
江ノ島は小町の方を見ずに言う。
「もしも、私がクロになることがあっても
小町は今までと雰囲気の明らかに異なる江ノ島の言葉から、今まで感じなかった意思を感じ取った。
そして、心の奥底で感じていた違和感を核心に変える。
(やっぱり、盾子ちゃんは…)
「うん。私も何があってもあなただけは殺さない」
その言葉を聞いた江ノ島は何も答えずに部屋を出ていく。
しかし、小町の言葉を聞いた時の彼女はどこか嬉しそうだった。
江ノ島が出ていき、小町は大きく息を吐いた。
「はぁ…、夜時間も近いし、シャワー浴びたら…食堂に行こっ
…そういえば、何も食べてなかった…」
色々あって忘れていたが、小町はまだ今日は何も食べていないことに気づき、シャワーを手早く済ませると、食堂に向かった。
♦
「あれ? 小町ちゃん?」
「およ? 葵ちゃんとさくらちゃん…何でここに?」
小町が食堂の厨房に入ると、そこには朝日奈と大神がいた。
「いや、あんな変なの見せられた後だから怖くなっちゃって…」
「あぁ、そういうこと…それで『さくらちゃんに一緒にいてもらおう』ってこと?」
「そうそう! ところで、小町ちゃんはなんで厨房に?」
「いや、ずっと何も食べてない事思い出して…それで何か作ろうかなって…」
「あ、そうなんだ。ここ食材もドーナツもたくさんあるから好きなだけ食べられるよ!」
「へぇ、そうなんだ…」
(なぜドーナツ推し?)
小町は適当に食材を見繕い、すぐできる料理を作ろうと調理器具を用意する。
「あれ? ここ包丁が一本なくなってる…」
「え? それホント?」
「ほら、ここ」
小町は普段包丁をしまうだろう場所を指差す。確かに、そこにはあるべき包丁が一本だけ歯抜けん合っていた。
「あれ~? さっきまであったんだけどなー」
「うむ。どこかに置き忘れられたのではないか?」
大神の言葉に、三人で厨房を一通り探すも見つからない。
「ねぇ、ここって他に誰か来た?」
「えっと…舞園ちゃんが水を飲みに来てたかな…」
「だが、さすがに舞園が持ち出したとも考えにくい…」
「じゃあ、どこにいっちゃったんだろう…」
三人で首を捻りつつ、小町は手早く料理をし、食事をする。
「へぇ…小町ちゃんって料理上手なんだね」
「うちは両親が共働きだからね…料理は小学校高学年から小町の担当なの。お兄ちゃんの分とかも作ってたし…」
「え!? 小町ちゃんお兄さんがいるの?」
「うん。この学園の3年生」
「ならば、その兄のことが心配ではないのか?」
「うん…まぁ、そうなんだけど、お兄ちゃんなら大丈夫かなって」
「そうか…。兄を信じているのだな」
「うん!」
その後、結局取り留めもない話をし、三人は解散したが、小町は片付けのため少し残った。
「もう夜時間だから戻らなくっちゃ…」
夜時間は食堂が施錠されるため、閉じこめられないように小町は急いで部屋に戻り、そのままベッドに倒れこみ眠りに落ちる。
♦
「…気持ち悪い」
しかし、小町は眠りに落ちて何時間か定かではないが、しばらくして体調不良によって目を覚ますことになる。
「水…飲んでこよう。確か厨房にミネラルウォーターがあったはず…」
小町は吐き気を紛らわすため、食堂に水を飲みに行く。
「しまった…今閉まってるんだった…」
しかし、夜時間中は施錠されるため、当然中には入れない。
「洗面所の水でも飲もう…」
入れないのはしょうがないと、小町は諦めて戻ろうとすると、意外な人物がランドリーから出てくる。
「あれ、怜恩君?」
呼ばれて、桑田はビクッとする。
「よ、よお比企谷ちゃん、どうしたんだ、こんな夜中に?」
「いや、体調が悪くて厨房のミネラルウォーター飲もうかと思ったら夜時間だから閉まってた…」
「そ、そうか。ツイてなかったな…」
「うん…って、それって康比呂さんの?」
小町は桑田が持っていた水晶玉に目を留める。
小町の記憶が正しければ、葉隠は占う時に水晶玉を持っていたはずだ。
「あぁ、忘れてあったから届けようかとも思ったんだけど、今寝てるだろうし戻してくっか…」
「そう。じゃあ、おやすみ」
「おー」
そのまま、桑田は再びランドリーへと入っていった。
小町は部屋に戻るため廊下を歩いていて、気になるものに目を留める。
「あれ…・確か小町の向かいって誠君だったよね…?」
そう。小町の部屋の向かいは『苗木誠』の部屋であるはずなのだ。しかし、今その部屋には『マイゾノ』という『舞園さやか』の部屋のネームプレートに替わっていた。
「誰かの悪戯かな?」
明日二人に教えてあげようと思いながら、小町は自室に入り、軽く水を飲んでから眠りについた。
♦
そこはどことも知れない場所。
「ねぇ、むくろちゃん!」
「何かな、小町ちゃん…」
「やっぱり、お兄ちゃんにはモテ期が来てると思うんだ!」
「またその話?」
小町の目の前の少女は苦笑する。
「だって、結衣さんは絶対にお兄ちゃんの事好きだし、雪乃さんも攻めればいけると思うんだ!」
「そ、そういうのはお互い気持ちが大切なんじゃないかな…?」
「ほほう、言うねえ。未だ苗木君に告白できないでいるのに」
「う…」
「早くしないと盗られちゃうよ。苗木君かなり人気あるんだから」
「そ、そうだけど…」
(あれ、これっていつのことだっけ?)
(すごく、すごく楽しくて、大切なことのはずなのに…)
(なんだっけ…?)
♦
「また、夢かぁ…」
昨日の“脱出スイッチ”の一件から見続けている不思議な夢。
まるで、昔の自分のビデオを見ているかのような気分だった。
「どういうことなんだろう…」
小町は首を捻りながら食堂に行く。
「グッモーニングだ! 比企谷くん、体調はどうかね?」
「うん、今日は大丈夫みたい」
「それは何よりだ!」
「あ、比企谷さん、おはよう」
「おはよう、誠君」
小町と石丸が挨拶がてら話していると、苗木がやってくる。
「どうだ苗木君! 今日も僕が一番だったぞ!」
「そ、そうだね…」
その後も、着々とメンバーが揃ってくる中、舞園だけが姿を見せなかった。
「ふむ…。舞園くんも昨日の比企谷くんのように体調を崩したんだろうか…」
「きっと、トイレだべ!」
「ちょっと、葉隠! あんたデリカシーってものがないの?」
「だが、確かに心配だな。様子を見に行った方がいいのではないか?」
「じゃ、じゃあ、僕が行ってくる」
「お、積極的に動くのはいい心がけだぞ、苗木くん!」
舞園の様子を見に行くためというには、あまりに焦った様子で苗木が出ていくのを気がかりに覚えながら、小町は他のみんなと食堂で待つことにする。
しかし、ものの一分と経たずに異変が起きた。
『うわああああああああああああああ!!!??』
「な、なんだ今の悲鳴は!?」
「苗木のだったぞ!」
「まさか、苗木っちに何かあったんじゃ…」
「いいえ、たぶん違うわ! 何かあったのは、きっと…」
「と、とにかく行こっ!」
小町の言葉を皮切りに全員が寄宿舎の舞園の部屋に入る。
「おい、苗木! 大丈夫か!」
「何があったんだね、苗木くん!」
部屋に入ると、部屋は荒らされており、扉の空いたシャワールームの前で苗木が倒れていた。
「苗木!?」
「大丈夫よ、彼は気絶しているだけだわ。それよりも…」
苗木にいち早く近づき、彼の様子を確かめた霧切がシャワールームへと目を向ける。
それにつられ、他の面々もシャワールームの中を見る。
「嘘っ…!?」
「舞園さやか殿!?」
「くっ…!? 起きてしまったのか…」
腹部を包丁で刺され絶命した、舞園さやかの死体があった。
そこに、部屋のテレビの画面が映り、そこにモノクマがいた。
『ピンポンパンポーン…死体が発見されました! 生徒は全員体育館に集まってください!』
それは、残酷な現実を告げる放送だった。
遂にコロシアイが本当の意味で始まったことを告げる…真の“絶望”の始まりを告げる放送だった。
自分で思った以上に小町が主人公というよりもキーパーソン化してる気がする…
でも、前半っていいですよね。伏線を好きなだけばらまけるから。まぁ、その分の回収が大変ですが…
次回は非日常編です。
捜査パートと学級裁判パートはまとめるつもりです。
感想お待ちしております。