やはり超高校級の妹が希望ヶ峰学園に入学するのはまちがっている。   作:おおもり

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 やっとできました。CHAPTER2(非)日常編です。問題児ともども頑張っていきます。


CHAPTER2 週刊絶望マガジン
(非)日常編


 それはいつも夢で見る、どことも知れない場所。

 

「こちらが比企谷くんの妹さん?」

 

 目の前の少し癖のある、白髪の少年がやや緊張した面持ちで尋ねる。

 

「はい! 比企谷小町です。兄とは仲良くしてくれてるそうで、これからもよろしくお願いします」

 

 小町が自己紹介すると、目の前の少年は感動に打ち震えたような顔をする。

 

「素晴らしいよ! 兄妹揃って『超高校級』の才能を持っているだなんて!

何て美しいんだろう。希望が溢れているよ! ああ、こんな幸運が訪れるなんて、後で一体どんな不幸が来るんだろう。でも、それも新しい希望への踏み台だと思えば…」

 

 目の前の少年の反応に、小町の中で2つの警戒音がなっていた。

 1つ目は『すぐに逃げろ』と発していた。

 2つ目は『もう遅い。諦めろ』と告げていた。

 

「諦めろ。この希望厨に目をつけられた時点で俺たち兄妹は終わりだ」

 

「ひどいな、比企谷くん。僕はただ、希望をこよなく愛しているだけだよ」

 

 八幡は「はぁ…はぁ…」と荒い息を吐く狛枝から、恐れるように一歩身を引く。

 

「それが怖えんだよ」

 

「ふむん。確かに、狛枝氏の言動は慣れていても怖いものがあるな。時に我の封印されし力が目覚めそうになる」

 

「……おい、材木座。なにナチュラルに会話に混ざってんだよ…いつからいたんだよ?」

 

「ふっ…我を誰だと思っている。我は八幡がいるところになら、だいたいいるぞぉ!」

 

「気持ち悪いよ。おまえ俺のこと好きすぎだろ…」

 

 心底嫌そうな顔をしながら、八幡は材木座を見る。

 

「ふっ…我ら、道を同じくする同士。忘れたか、相棒よ。共に駆け抜けた地獄の日々を!」

 

「それ、体育のペアの話だろうが!」

 

「ああ! なんて素晴らしい希望同士の友情なんだろう! 僕みたいな屑の踏み台にこんな希望の輝きを見せてくれるなんて! これじゃあ、並の不幸じゃ釣り合わないよ!」

 

 八幡はため息を吐き、小町を見る。

 

「小町、入学前は楽しそうって言ってたけど、これでもそう見えるか」

 

「あ、うん…ごめん」

 

 小町は遠い目をする兄に、謝る以外の行動が思いつかなかった。

 

(…………これはひどい)

 

 いつものように目を覚まし、夢での記憶を思い出す。

 

「人間、忘れてた方が幸せなことってあるんだな~」

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 舞園さやか殺人事件の次の日、 ラジオ体操のために集められた小町達は、モノクマの発表により、新しく二階に行けるようになり、小町達は二階の探索を行っていた。

 

「さくらちゃん、小町ちゃん、江ノ島さん! ここプールがあるよ! それにトレーニングルームもある!」

 

「小町はプールはともかくトレーニングとかってしたことないなぁ…」

 

「あれ、小町ちゃんって部活とかやってなかったの? それとも文化部?」

 

「小町は生徒会役員やってたの」

 

「ほう…そうだったのか。だが、比企谷も江ノ島も体のバランスは悪くない。特に江ノ島はかなり鍛えられてるように見えるが」

 

 大神の評価に小町と江ノ島(戦刃)はビクッとする。

 

「雑誌のモデルとかやってるし、やっぱりすごく鍛えてるんじゃないかなー」

 

「そ、そうなんだよねー! やっぱ、体型の維持とか超大変でさー」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「モデルというのも、大変なのだな」

 

「「ふぅ…」」

 

 二人は、朝日奈と大神に聞こえないよう、少し下がって二人だけで会話する。

 

(やっぱり無理だよ、小町ちゃん! 絶対にすぐにバレちゃうって!)

 

(諦めないでよ、むくろちゃん! 小町も頑張ってるんだから!)

 

 江ノ島盾子が戦刃むくろの変装だと一度わかると、彼女の変装の『雑さ』がわかる。

 

 双子の姉妹ゆえなのか、仕草や言動は、完全に妹の江ノ島盾子を模倣していたが、時たま気が抜けるのか、戦刃むくろのほうがちょくちょく顔を出し、その度に小町は冷や冷やするはめになっていた。

 特に、苗木の前ではそれが顕著で、小町は何度も「わざとじゃないの?」と疑ったほどである。

 もしも、相手が鈍感な苗木ではなく、霧切や十神であったらすぐにバレていただろう。

 

「小町ちゃん、この階って他に何かあった?」

 

 朝日奈の質問に、奥から教室の前をざっと通ってきた小町は考える。

 

「あとは…図書室があるね。他は普通の教室みたい」

 

「格闘技の本もあるだろうか…」

 

「あるんじゃない? たぶん、競技用になるだろうけど」

 

「小町的には、少しはマンガも欲しいかなぁ。ここって、娯楽とか全然ないし」

 

「あー、確かにそうだね! 私もずっと見てたアニメがあるんだけど、あれどうなったのかな」

 

 『女三人寄れば姦しい』とは、よく言ったもので、4人での立ち話は思いのほか長時間に及んだ。

 その時わかったことだが、意外なことに、朝日奈はアニメが好きらしく、特に『友情』などを題材にしたスポーツが好きなのだそうだ。

 大神は、興味がないのであまり見ないそうだが、朝日奈に出たら一緒に見ようと誘われていた。

 江ノ島(戦刃)は、仕事が忙しくて見る暇がなかったそうだ。

 小町は「仕事って…軍人の仕事?」と、突っ込みそうになるのを、なんとかこらえて、主に兄のアニメ趣味について話した。

 

「え? 小町ちゃんのお兄ちゃんってプ○キュア見てるの?」

 

「うん。プ○キュア見て………うん、よく泣いてたね」

 

「そうなんだ…」

 

「ちょおおおおおおっと待ったああああああああああああ! 誰ですかああああああああ、今プ○キュアと言ったのはあああああああああああああ!」

 

 兄のアニメの趣味について話していると、『プ○キュア』に反応した山田が走ってくる。

 

「どなたか、僕と語り合える方がいるんですかああああああ!」

 

 迫りくる山田に、小町は引き気味になる。

 

「いないよ!? 私のお兄ちゃんの話だから!」

 

「では、ここから出られたらお兄さんを紹介してください!」

 

「あ、うん。いいけど」

 

「よしっ! これでまた、同士が一人増えますぞ。それによって僕の語り部が増えることになるのです」

 

 不気味に笑いながら、山田は先に図書室に入っていく。

 

「うわぁ…びっくりしたぁ」

 

「すごい勢いだったね…」

 

「それじゃあ。私と盾子ちゃんは図書室の中を見てくるから、面白いのがあったら教えるね」

 

「じゃあ、私とさくらちゃんはプールの中をもう少し調べてくる」

 

 そうして、朝日奈たちと別れた小町と江ノ島(戦刃)は図書室へと入っていった。

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

「わかってない! 何もわかってない! それは僕の表面にある皮であって、内面の作品には何一つ触れてない」

 

「わ…わかるわよ。どうせ、あんたみたいな顔のやつが書く漫画なんて、つまらないに決まってるわ…」

 

「くっ…! これ以上の屈辱があろうか! 作者の顔だけで作品を判断されるなど…!」

 

 図書室に入ると、何やら山田と腐川が言い争いをしていた。

 訊くところによると、図書室に漫画やラノベがないことに山田が驚いていると、腐川がそれを当然だといい、そこから山田の作品批判まで始めたので口論になったらしい。

 

「んー、小町も漫画は読みたかったけど…卒業生とかの書いた本にそういうのないのかなぁ」

 

「あ、あ、あるわけないでしょ、そんなの!」

 

「そうかな? 卒業生とかのだったらありそうだけど…。ほら、『超高校級の漫画家』とか」

 

「い、いるわけないわよ」

 

「ふふふふ。つまり、僕が最初にこの図書室に漫画を置く人間になるのですな」

 

「な、な、なんでそうなるのよ」

 

 そこで、言い争っている彼らの方を苗木、霧切と話していた十神が見る。

 

「おい、お前ら。いつまでくだらない言い争いをしているつもりだ。そんなことよりこれを見てみろ」

 

 十神は、小本棚の上に置いてあった、封の切られた封筒と、その中に入っていたと思しき手紙を見せる。

 小町は、それを見て首を傾げる。

 

「それって、手紙…だよね? いったい誰から誰に宛てたの?」

 

 十神は面白そうに「ふっ…」と笑う。

 

「まぁ…見てみろ」

 

 小町は封筒を見てみる。

 

「差出人は…『希望ヶ峰学園 事務局』…え?」

 

「こっちの手紙も見てみろ」

 

 十神に促され、小町は手紙の内容に目を通す。

 

「えっと…『希望ヶ峰学園事務局からのお知らせ。 希望ヶ峰学園は長年にわたり、世界に通じる人材の育成に専心してきました。長い歴史を刻む中で、本校は政府特別認可の伝統ある教育機関として…数多くの卒業生を社会に送り出し、今や各界で、多数の卒業生が活躍しております。ですが、この度、我が希望ヶ峰学園は、その栄光ある歴史にいったん幕を下ろす事となりました。苦渋の決断ではありましたが、深刻な問題の発生により、これを余儀なくされました。しかし、希望ヶ峰学園は、これで終わりではありません。近い将来、先に述べた問題が改善され次第、すぐにでも活動を再開させる所存です。最後となりましたが…長年にわたりご支援、ご助力を賜りました関係者のみなさまに心より感謝を申し上げます。なお、希望ヶ峰学園の廃止は、政府党各機関の認可を待って行われる事を申し添えます。』これって…」

 

「どうだ、興味深い内容だろう?」

 

「これって…かなりおかしいよね?」

 

 小町の質問に、霧切も頷く。

 

「この手紙の封筒からして、かなりの時間置いてあったようだし、閉鎖は最近ってわけじゃないでしょうね。下手すれば…1年以上も前…」

 

「黒幕は、無人となったこの学園を乗っ取り、希望ヶ峰学園になりすまし、俺たちをおびき寄せたというわけだ。なかなか面白くなってきたな」

 

 楽しそうに十神が言うが、小町の耳にはもう、そんな声は聞こえていなかった。

 

(1年以上前の手紙…つまり、私達はそれ以上の期間をここで過ごしていたことになる。1年以上前だから…私たちは2年生以上ってことだよね?)

 

 小町が自分たちの記憶の喪失期間を考えていると、苗木が「あれ?」と首を傾げる。

 

「ちょっと、待って十神君。それっておかしいよ。そしたら、比企谷さんのお兄さんはどうなるの?」

 

 苗木の言葉に、十神は眉を顰める。

 

「兄だと…? おい、比企谷」

 

「な、なにかな、十神君」

 

「お前には、兄がいるのか?」

 

「うん。この学校の3年生だよ」

 

「だとすると、妙だな。比企谷の兄がこの学園に2年前に入学していたとすると、例え隠れ蓑だろうと、ここは間違いなく学校として機能していたことになる。だが、それだとこの学校に他の生徒がいない理由に説明がつかない」

 

「もしかしたら、先輩たちは別の場所に監禁されているのかもしれないわね」

 

「別の場所? 霧切さん、それってどういうこと?」

 

 苗木が首を傾げる。

 

「つまり、黒幕は何らかの異常者的な娯楽目的ではなく、私たち…あるいはもっと大きな集団を対象にした明確な目的を持って『コロシアイ』をさせていて、その舞台としてこの学園を使っている可能性があるということよ」

 

「つまり、他の生徒は邪魔になるから隔離しているか、別の場所で同じことをさせられているか…ということか?」

 

 十神が訊くと、霧切は神妙に頷く。

 

「その可能性も十分考えられるでしょうね。だけど、今は情報が足りなさすぎるわ」

 

「どちらにせよ、真実を知るのは黒幕のみということか。なかなか楽しませてくれるじゃないか」 

 

 十神は楽しそうに手紙を睨む。

 そこで、ふと、小町は「アレ?」と首を傾げる。

 

「そういえば、なんで小町やお兄ちゃんが黒幕と繋がっているって考えなかったの?」

 

 小町の言葉に、霧切と十神は「はぁ…」とため息を吐く。

 

「そもそも、黒幕と繋がっているなら、わざわざ私たちにお兄さんのことを話す意味はないわ。そんなの、自分から怪しまれるようなものだもの」

 

「黒幕側が俺たちに監視として送り込むにしても、そんなマヌケを送り込むとも思えん。まぁ…苗木はそんな疑いすら抱いていないようだが」

 

「だろうねえ…」

 

 苗木の人柄的にも他人を疑うような人間でないことはわかりきっているため、小町は苦笑混じりに同意する。

 その後は、一通り探索が終了したため、食堂での報告会が行われた。そこで、1階の捜索を行っていた石丸の報告により、倉庫に行けることがわかった。

 しかし、出口に関する手掛かりは掴めておらず、何か見つけたら事後報告ということでその日は解散となった。

 小町は自室に戻り、シャワーを浴びて、ベッドに入る。

 

(今日は狛枝さん以外の人が出るといいなぁ)

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 そこは、夢の世界のどことも知れない場所。

 

「どうだった、むくろちゃん?」

 

 小町が訪ねると、むくろは神妙に頷く。

 

「たしかに、お兄さんは川崎くんと会ってるけど、そこには川崎先輩もいたみたい。それで、川崎先輩、川崎くんと別れてから小町ちゃんと会ってるね」

 

「じゃあ、大志君はお姉さんと最後に一緒にいたってこと?」

 

 むくろは首を横に振った。

 

「違う。そのあと、川崎くんは誰かと会う約束をしてたみたい」

 

「誰かと…じゃあ、その人が犯人なの?」

 

「わからない」

 

(川崎…大志君? 一体、誰?)

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 目が覚めた小町は思ったことを、そのまま口に出す。

 

「……川崎君って誰?」

 

 首を傾げながら食堂に行くと、苗木、十神、葉隠、江ノ島(戦刃)以外のメンバーがいた。

 

「あ、小町ちゃん。おはよう!」

 

「おはよう、葵ちゃん」

 

「おはよう、比企谷君! 今日もいい朝だな!」

 

「あ…うん、おはよう清多夏君。他の人たちは?」

 

 小町の質問に、石丸ではなくセレスが答える。

 

「まだのようですわね…」

 

 言った直後、葉隠が食堂に入ってくる。

 

「おう、遅れてすまんべ」

 

「葉隠君、他の人は見なかったかね?」

 

「いや、知らんべ」

 

「ふむ…。では、僕が呼びに行って来よう!」

 

 そう言って、清多夏は食堂から出ていく。

 暇になった小町は、他のメンバーに話しかけてみることにする。

 

「みんな、今日はどうするの?」

 

「私は、今日はプールで思いっきり泳ぐんだ!」

 

「わたくしは、ゆっくり紅茶などでも飲んでようかと」

 

「へぇ…そうなんだ。小町はどうしようかな…」

 

 今日の予定を考えていると、苗木が食堂に入ってくる。

 

「あ、苗木! おはよー!」

 

「おはよう…。もうみんな揃ってるの?」

 

「盾子ちゃんと十神君がいなくて、今清多夏君が呼びに行ったよ」

 

「そうなんだ…」

 

「すぐに来るだろうし、待ってよ」

 

 小町の提案にセレスは困ったような顔をする。

 

「待つのはいいですが、わたくし喉が渇きましたわ。山田君、ミルクティーを入れてきてくれません?」

 

 頼まれた山田が「えっ?」という顔をする。

 

「あのー、なぜ僕が?」

 

「あなたがわたくしの通っていた喫茶店のマスターに体系が似ているからですが、なにか?」

 

「えー、そんな理由で…」

 

「もう喉がカラカラなんです。お願いしますわ」

 

「わ、わかりましたよぉ…」

 

 山田はしぶしぶと厨房へ入っていく。

 そして、数分後、厨房から出ていく。

 

「お待たせしました!」

 

 そう言って、山田は自信満々にセレスにミルクティーを差し出す。

 

「うふふ、待っていましたわよ」

 

 口元に笑みを浮かべ、セレスはティーカップに口をつける。

 

「あら?」

 

 セレスは首を傾げるとティーカップを床へと落とす。

 落とされたティーカップは、音を立てて中身を床にこぼす。

 当然、紅茶を淹れた山田は困惑する。

 

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとぉ、セレスティア・ルーデンベルク殿ぉ!?

 何をなさるんですかぁ!?」

 

「わたくし、ミルクティーは牛乳で紅茶を煮出すロイヤルミルクティーしか認めていませんの」

 

 セレスの物言いに、小町たちは目を白黒させていた。

 

「え、せっかく作ったのにそこまでしろと…?」

 

「面倒なのは知っていますわ。ですが、手間をかけずして、何がメニューでしょう」

 

「いや、そもそも、メニューでは…」

 

 山田が反論しようとした時、セレスの顔が豹変する。

 

「いいから早く持って来い、このブタがぁぁぁ!!!」

 

「ひぃぃぃぃ!? は、はい! ブタめがすぐに持ってまいりますぅぅ!」

 

 山田は巨漢に似合わぬ速さで厨房へと駆け込んでいった。

 後に残ったセレスは優雅に笑う。

 

「うふ。恐喝は便利ですわね」

 

 とても楽しそうに笑うセレスを見る小町達は、気持ち的に彼女から数歩離れていた。

 そして、小町達がセレスに引いている時、まだ来ていないメンバーを呼びに行っていた石丸と不機嫌そうな江ノ島(戦刃)が食堂に入ってきた。

 

「みんな、大変だ! 十神君が部屋にいないのだ!」

 

 葉隠が首を傾げる。

 

「いないって…どういうことだべ?」

 

「何度インターホンを鳴らしても、江ノ島君がモノクマに注意されるほどドアをけっても反応がないのだ!」

 

「単純に出かけてるんじゃないかな?」

 

 小町の意見に石丸は首を振る。

 

「しかし、僕は朝一番に食堂に来たが誰も食堂の前を通らなかったぞ!」

 

 すると、霧切は考え込む素振りをする。

 

「石丸君の証言が正しければ、十神君は昨夜から部屋に戻っていない可能性があるわね…」

 

「と、とにかく、みんなで十神君を捜そう!」

 

 そう言って、苗木は食堂を飛び出していく。

 

「それでは、僕たちも各自で十神君を捜し、見つけ次第報告だ!」

 

 こうして、十神の捜索が始まった。

 しかし、十神の発見は思いのほか早く、苗木と霧切が図書室で見つけた。

 小町が図書室に行くと、十神と大和田が口論をしていた。

 兄直伝の隠形能力で気配を消し、聞き耳を立ててみたところ、この学園生活をゲーム扱いする十神に大和田がキレたということらしい。

 そして、十神が他のメンバーに宣戦布告した時、それに割って入る者がいた。

 それは、不二咲だった。

 彼女は、十神に怯えながらも、「仲間同士で殺しあうのはいけない」と十神に言う。

 十神は、そんな彼女が気に食わないのか、彼女に詰め寄った。しかし、不二咲に詰め寄る十神を大和田が「弱い者いじめは気に食わない」と止める。

 そして、再び十神と大和田の口論が始まる。しかし、それも朝日奈が止めに入ったのをきっかけにすぐ治まる。

 十神は自信満々に自分が勝つと宣言すると、そのまま図書室を出ていく。そして、十神の言葉に疑心暗鬼に陥った腐川も図書室からぶつぶつ独り言を言いながら出ていった。

 残されたメンバーは、なんとも気まずげな雰囲気の中、食堂に戻り朝食をとった。

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 朝食の後、小町は購買に来ていた。

 というのも、舞園さやか殺人事件の学級裁判に生き残った景品として、全員にモノクマメダルが100枚ほど支給されていた。

 仲間が死んだことでもらえるというのは複雑な気分だが、もらえて嬉しくないといえば、嘘になる。

 小町は、モノクマメダルをモノモノマシーンに入れ、カプセルが出てくると開ける、という行為をしばらく繰り返した。その結果は…

 

『マックロワッサン』

 

『レーション』

 

『スカラベのブローチ』

 

『携帯ゲーム機』

 

『桜の花束』

 

『携帯ゲーム機』

 

『華麗な王子さま』

 

『携帯ゲーム機』

 

『ペーガンダンス』

 

『プロジェクトゾンビ』

 

『動くこけし』

 

『誰かの卒業アルバム』

 

『男のロマン』

 

『携帯ゲーム機』

 

『携帯ゲーム機』

 

 小町は出てきたものを眺める。

 

「何この驚異の『携帯ゲーム機』率…一周まわって嬉しくない」

 

「それはですね」

 

 いきなり登場したモノクマに、小町は驚く。

 

「うわぁ!? …って、またモノクマかぁ…」

 

「またって…せっかくいいこと教えてあげようと思ったのに…」

 

 モノクマの言葉に小町は首を傾げる。

 

「いいこと?」

 

「そのマシンはね、回すたびに重複率が上がっていく仕組みになっていくの。そして、メダルを淹れた分だけ、重複率が下がる仕組みにもなってるんだ」

 

「なにその姑息な販売戦略みたいなの…」

 

「姑息とか言わないでよ! vitaに移行する前は、パンツとかイベント発生しないと手に入らないアイテムが1割もなかったんだから!」

 

「ごめん、何言ってるかわかんない…」

 

「とにかく、ダブらないようにしたかったらメダルをたくさん入れてから回してね。重複率は生徒手帳に出てるから!」

 

「ああ、あのプレゼントのリストってそういう使い方できるんだ…」

 

 小町が納得すると、モノクマはいつも通り忽然と姿を消す。

 

「さて、まずはいらないものは他の人にあげよっと。とりあえずは…近場かな」

 

 購買を出た小町は、まずは食堂に行くことにした。

 

「あれ、比企谷さん?」

 

 食堂に行くと、苗木が食堂でお茶を飲んでいた。

 

「休憩?」

 

「うん。さっき、大和田君に捕まってここから出たらバイクの後ろに乗せてやるって言われちゃってね…」

 

 そう言いながら、苗木は困ったように頬をかく。

 

「…ああ、紋土君って暴走族なんだっけ?」

 

「うん。いつも真っ先に狙われるって…」

 

 たしかに、真っ先に狙われる人間の後ろに乗せてやると言われても困るだろう。

 

「あっ、そうだ…誠君。さっき、モノモノマシーンで『携帯ゲーム機』がたくさん出ちゃったからあげるよ」

 

 小町が差し出すと、苗木は驚いたような顔をする。

 

「え…いいの? こんないいものもらっちゃって…」

 

「うん。5台あってもしょうがないしね。ソフトはある?」

 

「それなら、1つだけあるよ」

 

「そっか。それじゃあ、いいね。ところで、ちょっといいかな?」

 

「なに?」

 

 小町は持っているものの中から『レーション』と『男のロマン』を苗木に差し出す。

 

「『レーション』を盾子ちゃんに届けてくれないかな。お礼にこの『男のロマン』もあげるから」

 

「別に届けるのはいいけど…いいの? またもらっちゃって…」

 

「いいよいいよ! 『男のロマン』なんて小町が持っててもしょうがないし」

 

 小町は苗木に『レーション』と『男のロマン』を押し付けて、足早に食堂を出る。

 食堂を出た小町は、校内を歩き回って、ある人物を捜す。

 そして、歩き回った末に目的の人物を2年の教室で見つける。

 

「いたいた! 盾子ちゃん!」

 

「あれ、小町ちゃん? どうしたの?」

 

 江ノ島(戦刃)の反応に小町は焦る。

 

「ちょ、ちょっと、ここでは『比企谷』でしょ!? いつ誰が聞いてるかわかんないんだから!」

 

 自分の迂闊さに気づいたのか、しょんぼりと様子で謝る。

 

「あ…ごめん」

 

「もう…盾子ちゃんは迂闊なんだから」

 

「そういう小町ちゃんは迂闊っていうかツメが甘いけどね」

 

「そうそう、これからここに誠君が来るから」

 

「えっ!? なんで…?」

 

 途端に、江ノ島(戦刃)は顔を青ざめさせる。

 

「私が誠君に『レーション』を届けるように言ったから」

 

「それを言いに?」

 

「うん。それと…はい、これ『携帯ゲーム機』あげるね。まだ、あと3台もあるんだ」

 

「え…うん、ありがと」

 

「それじゃ、頑張ってね!」

 

「え、ちょっと、待って!? 私一人でどうすれば…」

 

 小町は「用は済んだ」とばかりに江ノ島(戦刃)の制止の声も聞かずに教室を出ていく。

 自分の部屋に戻る途中、小町はぼそりと呟く。

 

「頑張れ、むくろちゃん」

 

 その後は、自分の部屋でさっそく『プロジェクトゾンビ』をプレイして時間をつぶし、一度、適当に食堂で夕食を食べてからシャワーを浴び、夜時間のアナウンス後に就寝した。

 

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 そこは、どことも知れない場所。

 

「○○先輩! あなたなら、何か知ってるんじゃないですか!」

 

 小町は覚えのない男に詰め寄っていた。

 

「……すまない」

 

 男は、小町から目を逸らし、ただ俯いて誤った。

 そんな態度に、小町のいら立ちが募る。

 

「どうして…どうして、○○君が、死んだんですか!? ホントのことを教えてください!」

 

「すまない…俺には…あいつらがやったという確証がない。…いや、信じたくないんだよ!!」

 

 そう言って、男は小町から離れて走り去っていった。

 

「どうして、なんで?」

 

 小町の問いかけに答える人間はいなかった。

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 その日の食堂は、随分な広さだった。

 

「犠牲が2人も出た上に、十神くんと腐川さんがボイコットしてしまいましたし、4人も減ると、さすがにテーブルが広く感じますわね」

 

 セレスがしみじみと言うと、朝日奈が恐る恐る口を開く。

 

「ね、ねぇ、腐川ちゃんだけでも呼んだ方がいいんじゃないかな?」

 

「いや、アイツは辛気臭えし、別にいいべ」

 

 葉隠の酷い一言に、小町は「うわぁ…」と呻く。

 

「いくらなんでも冷たすぎるんじゃないかな…」

 

「つーかよ、問題は十神だろ。あれじゃ、いつ誰を殺すかわかったもんじゃねーぞ。いっそ縛っといたほうがいいだろ!」

 

 物騒なことを言う大和田に、石丸が反論する。

 

「やめたまえ、大和田君! こういう時、そういう考えが一番危険なのだ!」

 

「けどよ、ほっといたら何するかわかんねーんだぞ!」

 

 昨日の十神の時のように怒鳴りながら石丸と口論をする大和田を無視して、小町は他のメンバーの反応を見る。すると、不二咲が沈んだ表情をしていた。

 

「あれ、千尋ちゃんどうかしたの?」

 

「あ、うん…ちょっと自己嫌悪中で」

 

「自己嫌悪?」

 

 小町が彼女は自己嫌悪するほど悪いところなどあったかと考えを巡らせている間にも、不二咲はぽつりぽつりと話し続ける。

 

「昨日…十神君に言われた時も、怖くなっちゃって…何も言い返せなかった。結局は大和田君に助けてもらって…。しかも、“弱い者いじめ”なんて言われて……ホントにダメだよね…弱っちくてさぁ…」

 

 不二咲が話し終えると、どこから聞いていたのか、大和田が近寄ってくる。

 

「別に気にするこたぁねーだろ。女なんだから弱くて当たり前だろッ!?」

 

 不二咲はしばらく黙ると、嗚咽交じりに鳴き始める。

 

「オ、オメエ…泣いてんのか…?」

 

「もう、あんたがでかい声出すからじゃん…」

 

 怒ったように言う朝日奈に、大和田はすまなさそうな顔をする。

 

「お、おい泣くなって…。わ、悪かったよ…もう怒鳴ったりしねえからよ…」

 

 そう言う彼を朝日奈は疑わしそうな目で見る。

 

「ホントぉ? 怪しいんですけど…」

 

「そ、そこまで言うなら…。わーったよ! “男の約束”をしようじゃねーか!」

 

「男の…約束…?」

 

 不二咲は不思議そうな顔で大和田を見る。

 

「前にも言ったかもしれねーけどよ、オレは…ガキの頃から、ずっと兄貴に言われてきた言葉があるんだよ…。『“男の約束”だけは絶対に守れ…』それが兄貴がオレに遺した言葉だ」

 

「遺した?」

 

「あぁ…兄貴は死んだんだよ…」

 

「そうなんだ…」

 

「湿っぽい話はよそうぜ。…つーわけで、オレはぜってーに怒鳴らねぇからよ。だから、オメェも泣くなって!」

 

「う、うん…。ありがと…大和田君…」

 

「お、おぅ……」

 

 不二咲が笑顔で礼を言うと、大和田は照れたような顔をする。

 しかし、不二咲はすぐに俯く。

 

「でも、こんなんじゃダメだよね…。もっと強くならなきゃ…。すぐ泣いちゃうような弱いままじゃ…」

 

 そんな彼女を苗木が励まそうとする。

 

「べ、別に無理して強くならなくたって…」

 

 しかし、不二咲は強く首を振る。

 

「…ううん、もっと強くなりたいんだ」

 

「そういうことであれば、我がいつでも手伝ってやろう」

 

 手助けを申し出る大神に山田が戦慄する。

 

「こ、壊されちゃう…千尋タンが壊されちゃうよぉ!!」

 

 失礼なことをいう山田を小町は威圧する。

 

「山田君、今いいところだから黙っててね?」

 

「は、はいぃぃぃ!?」

 

 彼らのやり取りに、不二咲は笑う。

 

「ふふ…ふふふっ…」

 

「お、やっと笑ったべ?」

 

「う、うん。あ、ありがとうね…みんな…」

 

(よかった…。千尋ちゃん、元気になったみたい)

 

 調子の戻ったらしい不二咲に、一同は安心して和やかに朝食を囲んだ。

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 朝食の後、小町は何となく2階の散策を行っていた。

 

「さて、今日は特に購買いく気分でもないし、どうやって、暇潰そう。………あ、そうだ」

 

 小町は監視カメラの前に立つ。

 

「おーい、モノクマ」

 

 小町が監視カメラに向かって呼びかけると、モノクマがどこからともなく現れる。

 

「はい、なんでしょう」

 

「訊きたいことがあるんだけどいい?」

 

「僕に答えられる範囲内ならね」

 

「一応だけど、嘘はつかないでよ」

 

「大丈夫! 僕って、嘘がモノミの次に嫌いだから!」

 

 モノクマの自信たっぷりの言葉に、小町はきょとんとする。

 

「モノミって…誰のこと?」

 

 モノクマは途端に「はっ!」とした顔をする。

 

「いっけない!これはまだ言っちゃダメだった!」

 

「何言ってるのかわかんないけど別にいいや。えっと…これなんだけど」

 

 そう言って、小町は『携帯ゲーム機』を取り出す。

 

「これって充電できるケーブルとかない?」

 

 モノクマはポンッと手を打つと、パッと姿を消し、さっとどこからともなく現れる。

 

「いつも思うけどどこから湧いてるの?」

 

「もう、湧くとか言わないでよ…。はい、これ」

 

 モノクマはしょぼんとしながら、何かのケーブルを差し出した。

 

「うわぁ…ありがとう! …って、これUSBじゃん!?」

 

 モノクマが渡したのは、PCにつなげるタイプの音楽のダウンロードなどができる充電ケーブルだった。

 

「ひょっほう! 絶望した? じゃあね!」

 

 そういうと、モノクマはいつも通り忽然と姿を消した。

 

「なんて、地味に性格の悪い…」

 

 小町はケーブルを持って部屋に戻ると、また夕食前までゲームに没頭し、その後、夜時間前にシャワーを浴びてベッドに横になる。

 

(最近、なんかお兄ちゃんに似てきたかな…小町)

 

 そんなことを想いながら、小町は再び目を閉じる。

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 それは、どことも知れない場所。

 

「お兄ちゃん、どう思う?」

 

「お前とお前の友達の…えっと…伊佐場さんだっけ?」

 

「戦刃むくろちゃん! 小町の親友の名前を間違えないでよ!」

 

「すまん。で、その戦刃むくろが集めた情報によると、俺が死んだ……の…と会ってたのを見たやつがいるが、その時俺は……と一緒に…………に会って、その後はずっとお前といたわけだから、当然オレに犯行は不可能。てことは、でっちあげた、ないしは意図的に情報を省いたやつがいる。そして、……はそれが誰かおおよそわかっているが確定的な証拠がない…ってところか」

 

「ねえ、お兄ちゃん。どうにかならない? ……さんもかわいそうだよ」

 

「っていわれてもなぁ…。こういう時は、……とか……とかに頼ってみたらどうだ? あいつらの才能なら何とかなるかもしれないぞ」

 

「それ言ったら、……さんなんて嬉々として力貸してくれそうだけど…」

 

 小町の提案に、八幡は難しそうな顔をする。

 

「あいつはな、むしろ「彼の死を乗り越えることでより希望が輝くんだ!」とか、素で言っちゃうやつだからなぁ」

 

「……そうだね、やめよっか」

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 目を覚ました小町は、「ふわぁ…」とあくびをする。

 

「ここんとこ、夢のノイズが多いなぁ」

 

 その日の朝食の時間、小町は信じられないものを見る。

 

「ギャッハッハ! 何言ってんだ兄弟ッ!」

 

「ハッハッハ! 君こそ冗談はよしたまえ、兄弟よッ!」

 

 先日、かなりの大声でケンカしていた大和田と石丸が十年来の親友のように仲良しになっていた。

 

「ねえ、誠君…これ、どういうこと?」

 

「ああ…、えっとね…」

 

 苗木によると、昨夜に大和田と石丸は性懲りもなく、また大喧嘩をし、勝敗をつけるために苗木立会いの下サウナ対決を開始し、夜時間になって苗木が部屋に戻っても、なお続けていて、今朝になったらこの様というわけである。

 苗木からことに次第を訊いた小町は、ただ二人を生暖かい目で見つめ、ぼそりと呟く。

 

「……お兄ちゃんもそうだったけど、男子って単純だなぁ」

 

「…あはは、返す言葉がないな」

 

 苗木は小町の言葉に苦笑し、二人の方に向き直る。

 

「でも、二人って昨日は白黒つけてやるって言ってたよね?」

 

「そーゆう問題じゃねーんだよ」

 

「そういうことは忘れてくれ! 忘れろ! 忘れろ! 忘れろビーム!」

 

 二人のちょっとおかしなテンションに、小町はうんざりする。

 

(うっとおしいのがまた一人増えたなぁ…狛枝さんとか中二さんの相手にしてる時のお兄ちゃんってこんな気分なのかな…)

 

 石丸と大和田を見ながら、小町は夢の中に出てきた二人の相手をする兄に心底同情した。

 この日の昼、小町は大和田と石丸と会わないように、部屋で『ペーガンダンス』をプレイして時間を潰していた。

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

『えー、校内放送、校内放送…。まもなく夜時間となりますが、その前に…オマエラ生徒諸君は、至急、体育館までお集まりくださーい』

 

「はぁ…またか」

 

 モノクマの急な招集に辟易しながらも、小町は体育に向かう。

 体育館に入ると、全員が集まって何かを話していた。

 

「あれ、みんなどうしたの?」

 

「ん? 比企谷っちか。いや、実は俺、昨日玄関ホール前でボーッとしてる時に、外で工事現場みてーな音を聞いたんだよ」

 

「工事現場…何それ?」

 

 意味が分からず小町は首を傾げる。

 

「ま、ただの気のせいかも知んねーけどな!」

 

「なになに、何の話?」

 

 気楽そうに言う葉隠の言葉に反応するように、壇上にモノクマが飛び出してくる。

 そんなモノクマを、霧切が嫌そうな顔で見る。

 

「出たわね…」

 

「葉隠君が訊いた音ってさ、工事現場の音じゃなくて、爆発音やマシンガンの音だったりしてね?」

 

 モノクマの言葉に、霧切、十神、江ノ島(戦刃)…そして、小町が反応する。

 

「それは、どういう意味?」

 

「教えまっせーん!」

 

 楽しそうに言うモノクマに、霧切は「はぁ…」とため息をつく。

 

「じゃあ、どうして私たちここに集めたのかしら?」

 

「いやー、最近ストレスで心なしか毛ヅヤが悪くなってきてさぁ…」

 

 しょんぼりと言うモノクマに、小町は「え?」という顔をする。

 

「それなら別にランドリーあるんだし、そこで洗えばいいんじゃないの?」

 

「いや、比企谷さん。そういう問題じゃないんだけど…」

 

「そうだぞ、比企谷君! ちゃんと先に手洗いか洗濯可能かを確認せねば!」

 

「いや、兄弟…そういう意味じゃねーだろ」

 

 石丸のちょっとズレた発言に大和田が突っ込む。

 

「もう! そういうことじゃないよ! 僕は新しいクロが出てこなくてうんざりしてるんだよ! ……というわけで、こんなの用意してみました!」

 

 そう言って、モノクマは自分の腹のあたりから、全員の名前が書かれた封筒を取出し、全員に投げる。

 当然、届くはずもなく、各自が自分で封筒を回収する。

 そして、小町も自分の封筒を回収すると、その封筒を開ける。

 

『比企谷さんの小さい頃の夢は「お兄ちゃんのお嫁さん」』

 

「なっ…!?」

 

 小町は自分の顔が周知で赤くなるのを感じる。

 他のメンバーは青ざめたり驚いたりと、反応が様々だ。

 確かに、これは恥ずかしい。でも、だからなんだというのだろう。

 そう思って、モノクマを見る。

 モノクマは心底楽しそうに小町達を眺めていた。

 

「どう? これが新しい“動機”だよ」

 

「これが?」

 

「そう。僕の独自の調査の元、お前たちの恥ずかしい思い出や人に知られたくないことが、そこには書いてあります。そして、オマエラが24時間以内に誰も殺人を行わなければ、その秘密を全世界に発表しちゃいます!」

 

(え、なにそれ、地味…)

 

 自分の秘密は別に暴露されたところで、「子供の時の話だから」で済む話だ。

 しかし、他のメンバーはどうなのだろう。

 小町は、周りを見る。

 

「僕たちは、こんなことで仲間を殺したりなんかしない!」

 

「そうだ! こんなことで仲間を殺すような者は、僕たちの中にはいない!」

 

 苗木や石丸、霧切は大したことを書かれてなかったのか、かなり強気だ。

 十神やセレス、大和田などは様子見をするつもりか黙り込んでいる。

 そして、腐川や不二咲は相当不味いことが書いてあったのか、顔が青ざめている。

 モノクマはと言うと、わざとらしくしょんぼりした様子を見せる。

 

「なあんだ。誰も殺人してくれないのか…。せっかく、頑張って情報を集めたのに…まぁ、いいや。それじゃあ、24時間後にこの情報を世界にバラして小さな達成感と優越感にでも浸るよ」

 

 そう言って、モノクマは壇上から姿を消す。

 その後、石丸から全員で秘密を共有する案が出たが、反対が多かったために却下され、その日はそのまま解散となった。

 部屋に戻った後、小町はシャワーを浴び、ベッドに入る。

 

(最近…情報が断片的だけど、少しだけ繋がってきた。でも、ここのことはまだ全然わかってない)

 

 小町は、夢からもたらされる過去の情報に、一抹の不安を抱えながら目を閉じた。

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 そこは、どことも知れない場所。

 

「ねえ、……ちゃん。これ、何?」

 

「これ? これは、…………・……っていうんだよ」

 

「アル…-…えっと、ごめんよくわかんないや」

 

「うーん、簡単にいえば、もう一人の自分…みたいなものかな」

 

「へぇ…すごいね。よくわかんないけど」

 

「あはは…」

 

「でも、こんなのを作れるなんて、さすが超高校級の………………だね!」

 

「そ、そうかな…」

 

「そうだよ! こんなすごいものが作れるなんて、さすがだね、………さん!」

 

「わっ!? ……さん!? どこから入ってきたんですか!?」

 

「あ、ごめん。驚かせちゃったね。ドアが開いてて、それを伝えようと思ったら聞こえてきちゃってね…」

 

「あ、そうだったんだ」

 

「それにしても、すごいね! こんな素晴らしいものを作るなんて!やっぱり…の……に来…よ……た…! ………も……らし…希…を………るん……ら!」

 

(今日はあまり関係なさそうだなぁ…)

 

 

 

 

 

          ♦

 

 

 

 

 

 目を覚ました小町、夢のことを思い出す。

 

「これからは起きてようかな」

 

「そういうのは健康に良くないんじゃない?」

 

「そうかもしれないけどさぁ…って、きゃああああああ!?」

 

「うわぁあああああああ!?」

 

「モ、モノクマ!? なんで小町の部屋に…」

 

「あー、びっくりした。せっかく教えようと思ったのに」

 

 モノクマの言葉に、小町は訝しむような様子を見せる。

 

「教える?」

 

「うん。オマエラの仲間に、何かあったみたいだよ?」

 

「……ッ!?」

 

 小町は、すぐに部屋を飛び出し、食堂に向かう。

 しかし、食堂には誰もいない。

 

(みんな、どこに行ったんだろ)

 

 小町は、人がいる場所の心当たりとして、まずは体育館に向かうが、そこには誰もいない。

 そして、次に小町が向かったのは図書室だった。

 そこには、十神がいた。

 

「やっぱり、白夜くんはここだったんだ」

 

「ん? 比企谷か。なるほど、お前もモノクマに言われて人を捜しているというわけか」

 

 小町は神妙に頷く。

 

「そうだよ。今は、誰が見つかってないの?」

 

「今は、霧切、不二咲、大和田、石丸、山田、セレス、腐川、江ノ島だ。苗木、朝日奈、大神、葉隠はさっき食堂にいたが各自捜索を行っている」

 

「そうなんだ…」

 

 小町は見つかっていない誰に何があったのか不安になる。

 

「ちょうどいい。比企谷、ついて来い」

 

 そう言って、十神は図書室を出る。よくわからないが、小町はその後を追う。

 十神が向かったのは更衣室の前だった。

 そして、そこには先客がいた。

 

「あれ? 誠君…」

 

「比企谷さん! 無事だったんだね」

 

 嬉しそうに笑う苗木に小町も笑う。

 

「えっと…誠君はどうしてここに?」

 

「一応、プールとかも調べておこうと思って…」

 

 苗木は男子更衣室のカードリーダーに生徒手帳をかざそうとして、「あれ?」と不思議そうな声を上げる。

 

「鍵がかかってない」

 

「え?」

 

『ピンポンパンポーン! ただいま、捜査中のため、一時的にロックを解除してあります! 存分に調べてください!』

 

 モノクマのアナウンスに、小町と苗木の顔色が変わる。

 

「今の放送…」

 

「捜査中ってことは…」

 

 誰かが死んだということが確定したということだ。

 苗木は、意を決したように男子更衣室のドアを開けようとする。しかし、

 

「待て、苗木。先にこっちから調べるぞ」

 

 そう言って、十神は女子更衣室のドアを開ける。

 

「ちょ、十神君! ……ッ!?」

 

 十神を追って、女子更衣室に入った小町は見てしまう。

 不二咲千尋の、変わり果てた姿を。

 

「あ…ああ…きゃああああああああああああああああああああああああ!」

 

「ひ、比企谷さん!? うわあああああああああああああ!」

 

 小町の悲鳴を聞いて入った苗木も。悲痛そうな悲鳴を上げる。

 

『ピンポンパンポーン…! 死体が発見されました! 一定の自由時間の後、『学級裁判』を開きまーす!』

 

 小町は悟った。

 また、始まる。

 命がけの、学級裁判が。




 次は捜査と学級裁判です。
 ところで、CHAPTER1の学級裁判で桑田が『ドアには鍵がかかってたんだから』って言って論破されてましたけど、『なんで鍵がかかってたって知ってるの?』って誰か訊いてたらあそこで終わる気がするのは自分だけでしょうか…
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